伝説の唐揚

1：猪熊芳則：2009/09/11(金) 00:10:06: 数年前、俺が認めた数少ない腕のいい中華料理店があった。そこの店主は腕はいいんだが、商才がなくてわずか数年で店をたたんでしまう。そもそも下町でバカ高い中華なんて売れるはずなんてない。喜ぶのは食通の俺くらいなモンであって、どこかの自称食通の芸能人なんて側にもよりつかない。
そんな店だが、俺は伝説の唐揚が気に入っていた。普通「若鶏のからあげ」というのは、もも肉か胸肉を使う。されどそこの店は手羽先を使ってるんだ。手羽先と言うのは、調味料を入れてからあげにするとどうしても油がゲチョゲチョになってしまう。１０代の喰べ盛りでも油っぽくて美味しくないだろう。

ところが、そこの手羽先のからあげはカラっと上がっていて、コッテリしているのに少しもしつこくないんだ。何でこんなからあげを作れるのか店主に聞きたかったが、なにせ同業者なんで聞くわけにはいかない。俺は失敗を繰り返しながら、ようやく伝説のからあげを完成させる。我ながら自分の料理の才能には感服するが、なぜかシロウトにしか褒められない。
その店主も店をたたんでからさっぱりで、昼間からワンカップ大関片手に街を歩いてる姿を何度か目撃している。一流の腕を持ちながら、くすぶってるその姿はもったいない。外見から見てもぶっきら棒で不器用そうだが、今の世の中にはめずらしい職人気質でそんなお人だから本当の温かさを知っている。

あまりに腕のいい中華スープを作るのでやり方を聞くと、木目細かく俺に伝授してくださったのがなつかしい。

新着レスの表示

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

（画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります）

掲示板管理者へ連絡無料レンタル掲示板