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狙撃兵日誌

1クリーグラント軍曹:2005/09/15(木) 19:30:15 ID:G0QGw5JI
Y連邦国の都市・バルグラッチス。ここがY連邦国第8軍とU帝国軍第57軍の戦場となり、激戦が続いて9ヵ月となり、すでに両軍の死者だけで7万人を越えた…。まだ九月中盤だというのに街はすでに雪化粧となっている。街には両軍の兵士の死臭や血の鉄のような匂いが漂う…。凍りついた死体、戦車などの残骸があちこちで見られ、雪がそれらに積もってはその上からまた赤く染まっていった…。



この物語、『狙撃兵日誌』はこの街を舞台とした一人の連邦国軍の兵士のお話です。舞台は独ソ戦の激戦地、スターリングラードがモデルとなってます。

2クリーグラント軍曹:2005/09/19(月) 18:07:23 ID:G0QGw5JI
ゴォォーーーンッ………!!
爆撃機が低空を飛び去る音が工場地跡に響き渡る…。その工場地跡に一人のデスクワーク将校が怯えて潜んでいた。彼はコナー少尉。前線視察に来たところ3人の帝国兵と遭遇し、彼の衛兵2人は応戦したが射殺された…。コナーは拳銃を携帯していたが恐怖にかられ抜くことができなかった…。そのとき、帝国兵の一人が彼の気配に気付き近づいてきた。ひょいと顔を出した。するとコナーを見つけニヤリと笑い、銃を構え引き金に指をあてた…。
コナーの顔がこわばる。
(…死にたくない。)
次の瞬間に銃声が響いた……。

3クリーグラント軍曹:2005/09/20(火) 16:03:04 ID:Qp2Sf.xA
パァァンッ…!!!
長く響いた銃声だった。しかしどうした事かコナーは痛みを全く感じなかった。恐る恐る目を開くと、さっきまでそこにいた帝国兵が倒れているではないかっ!?彼は目を疑った。しかし現実である。そこへ銃声を聞きつけた残りの帝国兵2人が近づいてくる。今度は短く1発、2発と銃声がした。いずれも頭部に命中していた。コナーの頭のなかは混乱した。
「いっ、一体何が起こったんだ!?」
すると、300m程離れた建物から声が聞こえてきた。
「大丈夫かっ!?」
振り向くとそこから駆け付けてきたのは一人の青年兵士だった…

4クリーグラント軍曹:2005/09/20(火) 16:09:56 ID:PrnMBIA6
コナーが唖然としていると彼は聞いてきた。
「あの…、大丈夫ですか?」
先刻とは違い、敬語でだった。おそらく肩にある階級証に目がいったのだろう。
「あっ、あぁ。だっ、大丈夫…。えっと…、その、たっ、助けてくれて、あっ…、ありがとうっ。」
まだ混乱していてロレツが回らなかった。
「きっ、き、きみ…名前は?」
コナーは聞き返した。
青年兵士は軽く敬礼して答えた。
「はっ、自分は、ジョー・エイブル・クリーグラント連邦国軍一等兵であります。」
この彼こそがこの物語の主軸となる人物である。
「…立てますか?どうぞ。」

5クリーグラント軍曹:2005/09/22(木) 13:21:15 ID:Rn4d3ql.
そう言うとコナーに肩を貸し、味方陣地に向けて歩きだした。途中、コナーは彼の肩に掛かる狙撃ライフルを見て口を開いた。
「…そのRs‐17ライフルで…、一人で3人を撃ったのかい?」
ジョーは答えた。
「…?そうですよ?なんでです?」
「!?」
コナーは驚いた。彼がたった2、3秒足らずで正確に2人の頭をブチ抜いたからである!!しかもボルトアクションライフルでだ!!
………40分程歩き、味方陣地に入ると、コナーはジョーと別れジープに乗り司令部に報告に向かった。無論、ジョーのことも含めてである……。

6クリーグラント軍曹:2005/09/22(木) 18:51:31 ID:dIkls6mk
コナーの乗ったジープを見送るとジョーは弾薬の補給に向かった。元いたあの建物に戻るために彼は多めに補充しておいた。彼は他に3人とチームを組んで行動していて偶然狙われているコナーを見つけたのだった。独りで街に向かうのは危険なので前線へ偵察にいく分隊に混ぜてもらい街中にはいっていった…。
…戦線停滞線を越え20分ほど歩いたところで先頭の兵士が立ち止まった。すぐに分隊長が近寄る。
「どうした!?」
「なにか気配がします…。」
彼が辺りを見回し、右方向を見たとき建物からキラリとスコープの反射が見えた…。

7クリーグラント軍曹:2005/09/27(火) 17:54:28 ID:0.T2Qkmg
「スナイパーーッ(狙撃兵っ)!!2時のほぅあ゛っ…!」
建物から閃光が走り、それが彼がこの世に残した最後の肉声となり次の瞬間、彼は後方に引っ繰り返った。一呼吸遅れて分隊長が叫ぶ。
「スナイパーだっ!!隠れろ!!」
そう言い終わった直後に彼も首の付け根に被弾した。彼もまた後方に倒れる。分隊長がもがいているのを見た分隊員の1人が叫んだ。
「まだ生きてるぞっ!!援護してくれっ!!」
言い終わると彼は飛び出していった。一斉に残り5人の分隊員が激しい斉射をはじめた。その間に飛び出した兵士が分隊長を引きずってきた。

8クリーグラント軍曹:2005/09/27(火) 18:16:29 ID:P2U79b2.
しかしあと数歩のところで彼も背中に被弾し、前方に倒れた。
「ぅああっ…!!いっ、いてぇっ!!ちきしょ〜……!!」
幸い軽傷のようだ。
「おいっ!狙撃兵っ!あのスナイパーをなんとかしてくれっ!やられちまうっ!!」
別の分隊員がジョーにすがりついた。
「…正確な位置がわかるか!?」
隊員はジョーの質問に答えた。
「前方の右上が壊れた建物の二階だ!左から2番目の窓!」
「よし、わかった!」
ジョーは顔を少しだけだして確認した。
「……400くらいか?」
ジョーは風を確認し、ライフルを肩にあてた……。

9クリーグラント軍曹:2005/09/28(水) 17:46:03 ID:3jw2wkOg
帝国狙撃兵に狙いを付け、引き金に指を掛けた…。そのとき帝国狙撃兵は背中を撃った3人目の分隊員に止めを刺すために狙いを付けて、引き金に指を掛けようとしていた。
パァァァンッ!!
銃声が響いた…。
………帝国狙撃兵は頭を撃ち抜かれバランスを崩して窓から落ちた。直後歓声があがった。
「ブラボーッ!やったぁ!!」
「クリーグラント!よくやったぁ!」
…驚異は去ったが分隊の損害は重軽傷2、戦死1。しかも分隊長がこの状態ではまともに動けない。引き上げることになった分隊と別れ、ジョーは単独で3人との合流を目指した…。

10クリーグラント軍曹:2005/09/29(木) 16:29:56 ID:PtP1C5sQ
その後、彼は独りで街を進み目標の建物までは残り200m程の直線となった。走れば35秒程で着く…。しかし、狙撃兵がいればいくら早く走ってもやられる可能性が高い…。だからと言ってちまちま行けば歩兵と遭遇してしまうかもしれない…。遠距離戦用の武器である狙撃兵にとっては後者のほうがとりわけ面倒である。ジョーは突っ走ることを決心した。目を閉じ深呼吸をして呼吸を整えた。
カッと目を開き彼は猛然と建物を目指して走しだした。
(はぁ、はぁ、はぁ…やっ、やけに遠く感じるぜ…。)
すると建物から声が聞こえてきた…。

11クリーグラント軍曹:2005/09/30(金) 18:48:11 ID:1WJoggCM
「ジョー!あともうちょいだ!!走れっ!!」
建物まであと50m…25m…5m…。ジョーは倒れこむように建物に入った。二階から出迎えに2人おりてきていた。
「戻ってきたのか?ジョー。」
「大丈夫か?」
モントゴメリ伍長とエヴァンズ一等兵だった。ジョーのチームの隊員だ。
「はぁ、はぁ、…たっ、ただ今戻りました。」
「まぁ、よく戻った。まずは水飲め。」
伍長はそういって水筒を出した。ジョーはそれを受け取りおもいきり飲みこんだ。
「…ぷはっ!はぁ…、ありがとうございます。」
そう言って水筒を返した。

12クリーグラント軍曹:2005/09/30(金) 19:44:09 ID:HctoeWGM
「さぁ、上にいこう。軍曹が待ってる。」
そういって伍長は階段に向かった。ジョーも立ち上がりつづく。エヴァンズは辺りを警戒し、見回してからつづいた。
階段を昇る途中エヴァンズが話し掛けてきた。
「なぁ、ジョー…。何で危険を冒してまで戻ってきたんだよ?軍曹に『無事に陣地に着いたら危険だから戻らなくていい』っていわれたのに。怒られるぞきっと…。」
ジョーは答えた。
「なんだ?エヴァ?せっかくこんなに沢山いいもの持ってきたのに怒られると思うか!?」
そういって胸に掛けた弾薬帯3本と弾薬が目一杯入った雑のうを見せた。

13クリーグラント軍曹:2005/10/01(土) 10:22:20 ID:zTQRSvjE
ジョーがそう言い終ると一行は階段を登り終えた。そうして廊下を少し進んで右にある部屋に入った。
部屋に入るなり壁に寄り掛っている下士官が不機嫌そうに口を開いた。
「……なんで戻ってきた?戻らなくていいと言ったはずだろ…?」
彼はロジャース軍曹。戦争が始まる前から軍にいた生粋の軍人である(伍長も同じく、エヴァは開始3ヶ月前に入隊、ジョーは徴兵された)。
静かな声であったがその声にはかなりの怒りが隠れているのがすぐに分かる。伍長が止めに入った。
「まぁ、軍曹…。無事に戻ってきたんですし、ここは…」
「黙っていろ…。」
「………。」
伍長を沈黙させると軍曹はジョーをにらんだ。ジョーは抗弁した。
「軍曹…、自分は弾薬を…」
「言い訳はいいっ!!」
その怒鳴り声でジョーもまた沈黙した。
「あんな危険なトコからきやがってぇ!!狙撃兵がいたら絶対お前は死んでたぞっ!!夜になったら戻るといっただろぉっ!!死にてぇのかぁ!!」
「………。」
下を向いて沈黙するジョーに軍曹は付け加えた。
「まったく…。頼むから心臓に悪いことをしないでくれ…。目の前で部下が死ぬのなんかもう見たくないんだ…。」
その言葉には軍曹の優しさがあった。軍曹は部下の死をなによりも嫌う…。小隊の下士官の中で一番部下を大切にする軍曹は好かれている。
軍曹の「もう」という言葉については後に語ることにしよう…。
「とりあえず…、よく、無事に戻ったな…。なによりだ…。」
軍曹の顔に笑みが浮かんだ。怒ると小隊一怖いが、この笑みもまた小隊一やさしいものだった。
軍曹はすぐにジョーの持って来た弾薬を全員に分配し、二人一組で2方向の見渡せるかどの部屋に配置させることにした。
ジョーはエヴァと組んでコナー少尉のいたあの工場地跡方面を担当することになった。配置につくとエヴァがやっぱりなと言う口調で話し掛けてきた。
「やっぱ怒られてやんの。」
「う、うるさいっ!!さっさと前みろっ!!」
その後は両者共に喋らず、静寂が続いた。聞こえてくるのは散発的に行われる戦闘の銃声や爆発音だけだった…。

14クリーグラント軍曹:2005/10/01(土) 13:14:37 ID:zTQRSvjE
40分ほどそんな状態が続いた…。すると、いきなりエヴァがその沈黙を破った。
「静かだなぁ…。」
ビックリした顔でジョーは言葉を返した。
「…あっ、あぁ。最近は大規模な戦闘が無いからな…。小競り合いばっかだし…。」
「………何か、嫌な予感がする…。」
そう不安そうにエヴァが言う。
「いっつもそんなこと言ってないか?まぁ、戦場なんてそんなもんだと思うが…。」
「いや…、いつもとは違う感じなんだ…。なんかこう…、何か粘っこいつーかぁ、なんつーか…。」
「不吉なこと言うなよ…。またただの思い過ごしだよ。」
「そうだといいが……。」
また一時の静寂が訪れた…。その時………!!

15クリーグラント軍曹:2005/10/01(土) 19:14:22 ID:zTQRSvjE
パァァンッ…!!
近くで1発の銃声が響いた…。慌てて2人は床に伏せた。
「どっからだっ!?」
「分からん!!」
パァァンッ…!!
また響いた。ジョーが耳を澄ますとそれは軍曹達がいる方向から響いていた…。
パァァンッ…!
タァンッ!タァンッ!タタタッ!!
パァァン…!パァァンッ…!!
明らかに銃撃戦になっていた。
「行って来る!!ここ頼んだぞ!!」
「まかせろ!」
そこをエヴァに任せてジョーは軍曹達の援護に向かった。
パパパッ!!タタァン!!
軍曹達の部屋に向かう途中また銃声が聞こえた。
パァァンッ…!!
タタッ!!
…パァァンッ…!!
その銃声が響いたあとジョーは部屋に入った。すると伍長がジョーに気がついた。
「…おっ、遅かったなぁ。もう終ったよ。…軍曹3人、俺1人仕留めた。」
伍長は上機嫌にそう言った。軍曹は何も言わずに弾を装填していた。
…軍曹は敵を仕留めても喜ばない…。なぜなら彼はアイリート教(この世界の宗教)の純教徒であるからである。
「…そうですか。じゃあ戻ります。」
そう言ってエヴァが待つ部屋へ戻った…。

16クリーグラント軍曹:2005/10/01(土) 23:26:14 ID:zTQRSvjE
部屋に戻るとエヴァがすぐに飛びついてきた。
「なんだった?」
「軍曹達が数人を倒した音だったよ…。」
「そっか。そりゃいい知らせだ。……さっきのはやっぱ思い過ごしか…。」
「そうだよ。思い過ごしだ…。」
…以来、敵は現れず時だけが流れた…。
5時になり、空は暗くなり始めた…。
伍長が部屋に入ってきて2人に伝えた。
「おいっ!!2人共!!撤収するぞっ!!」
エヴァが待ってましたと言わんばかりににんまり笑って答えた。
「Yes sir(了解)!ジョー、撤収だってさ。」
そう言ってエヴァは立ち上がった。
「あぁ、わかった…。」
ジョーはギア(装具)をまとめて振り返った。その瞬間…パチュンッという音がしてエヴァの頭が少し斜めに傾いた…。

17クリーグラント軍曹:2005/10/04(火) 18:13:31 ID:ey43xkoQ
ァァァンッ……!
銃声の響いてくるのと同時にエヴァの体は傾き、崩れ、倒れた…。伍長は銃声が響いてきたと同時に床に伏せた。
カラン…カラン……
側頭部分に穴の開き、少し血のついたヘルメットがジョーの足元に転がってきた…。
「……?!?」
一瞬にしてジョーの頭の解析能力がショート(容量オーバー)し、呆然と立ちすくむ。
「ジョー!!伏せろぉ!!」
伍長が叫ぶがジョーはピクリとも反応せず、伏せようともしない…。
「くっそ!!」
伍長がそう言って匍匐前進(ほふくぜんしん)でジョーに近づこうとしたとき、伍長の上を飛び越していく人影があった…。

18クリーグラント軍曹:2005/10/05(水) 22:20:34 ID:ey43xkoQ
ロジャース軍曹だった。
「軍曹っ!??」
伍長が言っているのと同時に軍曹は着地し、少し上体がくずれて少しかがんだ状態になった。…次の瞬間、姿の見えない敵はさっきまで軍曹の頭があった高さにピンポイントに狙撃してきた…。
どうやら窓の下の壁に下半身は隠れて見えず、軍曹が走っているように見えたらしい…。外れたにしてもたった3,40cmの一瞬で目標を捉えたには違いない。軍曹がジャンプせずにそのままきていたらピンポイントに頭を捉えられたであろう…。
…敵は相当の熟練であり、とんでもない狙撃センスを持っていることがそのことで分かった…。しかし、軍曹はそんな事はお構いなしにジョーに飛び掛って押し倒した。
そして胸倉をつかみ、
「………死にたいのかっ!?このバカッ!?エヴァがっ…!エヴァが命で危険を教えてくれたんだぞっ!!その危険は回避できるんだぞっ!?お前まで死んだらっ…!エヴァの死はどうなるっ!?お前はっ…!お前はエヴァの死を無駄にする気かぁっ!?」
と荒い呼吸をしながら大声で言い放ち、…頬には大粒の涙がつたっていた…。
「さぁ、ついてこいっ…!!」

19クリーグラント軍曹:2005/10/05(水) 22:56:19 ID:ey43xkoQ
そういって匍匐で進んでいった…。ジョーもそれに習って匍匐で進んだ…。しかし頭の中では何が起きたのかまださっぱり分かっていなかった。
(………エヴァは?…どうなったんだ?)
そう思いながら進み、ふと見ると横にエヴァの死体が転がっていた。
このときジョーは自分が何をしているのかもよくわからずに(後に聞いても覚えて無かった)、エヴァの兵員認識識別票を胸から取り…、開いたままの目を閉めた…。
…エヴァの顔は最後のあのにんまりと笑ったままだった…。死の恐怖など…全く感じていない顔だ…。まさに即死である…。
即死…。一瞬で命の炎が消えることだが…逆にそれは苦しまず、恐怖も感じず…楽に逝けるだけあって一番マシな死に方だった…。

20クリーグラント軍曹:2005/10/06(木) 18:46:09 ID:rYlpD4zg
狙撃の基本に反するが行動を開始した。暗くなり始めているし、敵はこちらの位置を正確に把握しているがこちらは位置すら掴めていない状況…。分が悪すぎる…。暗がりに紛れ敵の狙撃を避けて3人は陣地に向けて移動した…。
…ジョーは陣地に戻ったあとすぐに自分の営舎(といっても半壊した学校を軍が徴収しただけのものだが)に入り、そのまま自分の寝床に座った…。
そのままほぼ1日呆然として自分からは一言も喋らず、配給される食事も摂らなかった。そんなジョーを心配して伍長や同室の小隊の兵士達が声を掛けるがうわの空だった…。
エヴァの死の翌日1830時…
1台のジープが営舎前に停車し、1人の将校が降りてきた。

21クリーグラント軍曹:2005/10/11(火) 21:45:28 ID:ey43xkoQ
それはコナー少尉だった。
コナーは一度、雲のある空を見てからまっすぐジョー達の営舎に入った。入り口にいた警戒の二等兵にジョーのいる部屋を尋ねてその部屋に向かった…。
ジョーのいるはずの部屋の前に着くと中を確認すると部屋には疲労のみえるボロボロの2,30人の兵士が寝転がったり、話したりしていた。コナーはそのなかにジョーを見つけた。
「失礼…。」
そういって制服姿のコナーが部屋に入ってくると部屋の下士官兵はスミス小隊長(小隊長も少尉である。が、コナーは軍司令部直属の将校であるため)の
「Attention(気を付けぇっ)!!」
という号令で立ち上がり敬礼した。コナーも軽く敬礼を返し
「ご苦労、少尉。みんな楽にしてくれ…。」
…そう指示を出すと全員が休めの姿勢となった。
「いや、違うよ…。個々の行動に戻っていいよってことだよ。」
コナーがそう言うと…隊員同士が頭に?マークをつけた顔で互いを見合わしてから改めて自分達の行動に戻っていった…。
それを確認したコナーはジョーに近づいていった。
「クリーグラント君。……?どうしたんだ?元気が無いな…。」
「いえ…、ちょっと…。」
ジョーは沈んだ声で言った。…それしか言えなかった。
「……。クリーグラント君、ちょっと話しがある。外に出てくれるか?」
「…?……はぁ。」
気のない返事を返した。
「先に行っててくれ。」
ジョーはトボトボと部屋を出て出口に向かった。出口にいる警戒の二等兵はジョーが出て来たことに驚き、声を掛けた。
「クリーグラント一等兵…!もう大丈夫なんですか…?」
「…あぁ、大丈夫だ。ありがと…。」
そう言葉を交わすと営舎を出た。丸一日ぶりに…ジョーは外気に触れた。そして庭の中央にある壊れた噴水に向かい寄り掛った…。

22クリーグラント軍曹:2005/10/12(水) 22:20:34 ID:ey43xkoQ
…数分後、コナーが出てきた。
「わるいね…。待たせて…。」
そして営舎の方をチラリとみて口を開いた。
「少し営舎から出よう…。」
そう言って歩きだした。ジョーも下を向きながらそれに続いた。少し歩いて瓦礫だらけの道の端に座り重い口を開いた…。
「…聞いたよ。仲の良かった班員が死んだんだって…?気の毒に…。」
コナーはロジャース軍曹にすべてを聞いていた…。馴染みの人間が脳漿を吹っ飛ばされるのを目の前で見てしまったことを…。
ジョーは…下を向いて沈んだ声で言った。
「……………。戦争ですから…。仕方…ありません。」
ポタッ…
膝に一粒、涙が落ちた…。
「仕方ないんです…。わかってます…。……でもっ!奴の…、奴の死に顔が頭からっ…!!頭から離れないんですっ…!!」
ポタッ…ポタッ…
また涙を落とした…。
……コナーは頷きながらジョーの背中をさすってやった…。

24Mr.名無しさん:2005/11/13(日) 19:23:35 ID:SVbMGCrQ
「すみません…。」
ジョーは涙を袖で拭いた。
「…それで?少尉殿…。何かお話があったのでは…?」
「…あぁ、そうだね…。でも君は今は精神状態が良くない…。またあとで話すよ。」
「そうですか…。」
ジョーはそういうとボーっと空を見上げた。相変わらず雲があった。
「話を変えよう。」
コナーが唐突に話も持ちかけた。ジョーはきょとんとした目でコナーを見た。
「何の話がいい?故郷のことがいい?それとも、子供の頃のことがいいかい?」
コナーが自分に励ましを掛けようとしてくれている…。ジョーはそう感じた。
そんなこんなで…話はお互いの故郷の話にはいっていった。

25クリーグラント軍曹:2005/11/14(月) 21:29:50 ID:SVbMGCrQ
訂正
すみません、レス24。Mr.名無しですがこれ自分です。申し訳ない。
では、本編スタート↓↓!!

「自分は、ガルドバートル州出身です。」
「ガルドバートル?山間のとこか。シルンクスかい(ガルドバートル州の州都)?」
「いえ。もっと山奥の田舎です。グライト村ってとこです。…知らないでしょうね。知ってたら相当の人間ですよ。」
「う〜ん、知らないなぁ…。」
「でしょうね。少尉は?」
「僕?僕はヴェラグラックス(Y連邦共和国首都)だよ。」
ヴェラグラックスは人口約650万人の大都市である。
「都会生まれなんですねぇ…。自分は生まれて此の方ほぼ村から出たことがありませんから…都会というものに全く縁がありませんでした。入隊するためにシルンクスに登ったとき初めて汽車を見ましたよ。」
首まわりをなでながら恥ずかしげにジョーは言った。
「おまけに駅で迷っちゃって…、やっと着いたと思ったら乗る汽車がもう発車しはじめてて…あわてて走って追いついて飛び乗りましたよ。ありゃまいりましたよ。」
「ははっ、汽車に追いついたのか。すごいな。…シルンクスに行くのも初めてだったの?」
「覚えてませんが…父が言うには小さい頃に行ったことがあったらしいんです。」
首を傾げながら言う。
「…戦争が終ったらゆっくり都会というものを味わってみたいと思います。」
それを聞いてコナーがふと考えて言った。
「……じゃあもう味わってるじゃないか。」
「はっ?」
ジョーの頭に?マークがついた…。

26クリーグラント軍曹:2005/11/27(日) 12:53:26 ID:SVbMGCrQ
「ここ。ここがそうだ。」
ジョーはそうかという顔をして
「なるほど…。確かにここも大都市ですね。気が付きませんでしたよ。」
と言った。
バルグラッチスは元は人口200万の活気ある大都市であったのだ。…いまはほぼ両軍の兵士と死と破壊だけを生む兵器しかいないが……。
「少尉殿はご家族は?」
ジョーは話を切り替えた。
「んっ?両親と三人だよ。君は?」
「自分は両親と祖母。あと兄が3人、弟が1人います。」
「ずいぶんいるね?」
「ええ。ケンカが絶えなくて、いっつも誰かアザを作ってましたよ。」
ふふっと吹きながらジョーは言った。
「ご兄弟はいくつ?」
「兄達は27、25、24で、弟は16です。弟はちっちゃい時から軍隊に憧れて一番入隊したがってましたが、村に残った最後の兄弟ですし親が許さないでしょうね。」
「……ん?最後?じゃあ、お兄さん達は…軍に?」
「ええ。全員軍隊にいますよ。一番上の兄は空挺隊に、二番目の兄は戦闘機パイロット、三番目の兄は医大を卒業と同時に徴兵されて衛生兵をやってます。」
ジョーは三人の顔を思い出すように目をつぶった。
「国のために兄弟で戦ってるんだね…。…接敵しただけで腰が抜けた自分が恥ずかしく思えてきたよ…。」
コナーは赤面して下を向いた…。

27クリーグラント軍曹:2005/12/21(水) 00:41:21 ID:P/CVH0qY
「そ、そんな事無いですよ!!まだ実戦を経験していなかったんですし、無理もありませんって!」
「ううっ、逆に「お前はまだまだなんだよ」って言われてるみたいで辛い…。」
「……(じゃあど−すりゃいいんだよぉ(汗))。」
ジョーは話題を変えようととっさに考えた。
「…えと、そのぉ、少尉は大学に行っていたんですか?」
「ん?ああ、行ってたよ。ん?そー言えばさっきお兄さんの1人が大学がどーとか…。ドコの医大?」
「えっ?えーと、たしかニューなんとかトール大言っていたような気が…。」
「ニューデルトール医大かいっ!?」
「あぁ、そうですそうです。ソコです。…知ってるんですか?」
「知ってるも何も連邦国内の10本指に入る医大だよ!?知らないのっ!?」
「「知らないのっ!?」って知るわけないですよ(興味なかったし)。へ〜、そんな有名なとこだったんですかぁ。道理で…。」
「道理で…何?」

28クリーグラント軍曹:2005/12/23(金) 00:49:48 ID:P/CVH0qY
「……たいしたことじゃありません…気にしないでください。」
「んっ?そうかい??」
「……(疎遠だった親戚が入学時に集まって学費を出資したのは、おこぼれあずかりの為か…。おかしいと思ったんだよナァ…。)。」
「……?どうしたの?黙っちゃって?」
「えっ!?あぁ、いえ。ちょっと。」
一瞬両者の会話が途切れた…。
その一瞬を貫くように遠くで撃ち合っている発砲音が聞こえた…。
ジョーはその瞬間ここが戦場である事をふと思い出した…。話に夢中になり今の今まですっかり忘れていたのだった…。

………その後も2人はいろいろ話した。家族の事、趣味や好物…とにかくいろいろと。思いつく限りはなした…。
…ジョーは話すうちに、心が楽に…溜まっていたモヤがとれていった…。
コナーは上官という立場を捨てて1人の人間接してくれた…。それが素直に喋れるおおいな要因だった。
そしてコナーもこの『ジョー・クリーグラント』という人物を知っていったのだった…。

29クリーグラント軍曹:2005/12/23(金) 00:55:05 ID:P/CVH0qY
訂正
12行目中盤、
「1人の人間接してくれた…」×→「1人の人間として接してくれた…」○
です

失礼しますた…


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