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Shangri-La――シャングリラ――

1bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/04(水) 15:33:06 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
≪In the world without you, how I would be alive?≫


皆様初めまして、今回初めて小説を書かせて頂きます『bitter(ビター)』と申します。
最初に言っておきますが、かなりの初心者ですのでなるべく温かく…いえ、生温かくでも良いので見守ってくださると嬉しいです。
以下、注意事項です。↓

Ⅰ.ジャンルはファンタジー、天使と悪魔が登場します。ストーリーを進めていく中でどうしても戦闘が入る為に、最小限には抑えますがグロ表現が入る可能性がありますので、苦手な方はご注意下さい。基本はシリアス・バトルをメインに、サブ要素としてギャグや恋愛を混ぜていく予定です。
Ⅱ.作中の人物、地名(国名)は全て架空のものです。盗作は一切しておりませんが、あまりにも酷似している……という場合は一言お知らせ下さると嬉しいです。
Ⅲ.未熟者故にありきたりな設定が目立つとは思いますが、どうかご容赦下さい。
Ⅳ.チェーンメールやアスキーアート等は一切控えて下さい。加えて一行書き込み、明らかな荒らしコメントがあった場合もスルーさせて頂きます。
Ⅴ.最後になりましたが、習作に近いものである上に誤字脱字等の可能性があります(なるべく気をつけますが)ので、あらかじめご了承下さると嬉しいです。

あ、もう一つ。更新は不定期で基本亀ペースです。それでも感想やアドバイス等下さる方がいらっしゃれば喜んでお受けしますので、お暇な時にコメントして下されば泣いて喜びます←

それでは、次レスから開始しますねノ

2bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/04(水) 15:34:58 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

Episode.1 A White nightmare<白い悪夢>

天使や悪魔……彼ら非科学的な存在を信じたことはあるだろうか。
もし本当にいて、尚且つその役割が入れ替わってしまっていたらと、考えた事はあるだろうか。
下らない、そう笑う者が多いだろう。私も同じ考えを抱いて生きてきた。
―――世界が反転したあの日までは。


鮮やかな茜色がすっかり漆黒(くろ)に塗り変わった午後8時。
空に輝く一番星を合図に、大国ケルントの都市は光を纏う。
闇の濃さをより強調するイルミネーションの中、ゆっくりと移動する3つの影があった。
一つは可愛らしくも気品の漂う少女、もう二つはどうやらその後をつけているらしい怪しげな男達。
視線に気付いた少女――イリーシャ=エステヴァスは紅茶色の髪を揺らし、翡翠の瞳を警戒に光らせて後方へ振り返った。男達の視線は未だ向けられたまま、外される気配は無い。
(またお父様をを狙ってきたんだわ……本当に低脳な人達ね……)
ケルント内で上流貴族として数えられるエステヴァス家。その令嬢であるイリーシャはこれまでの経験から瞬時にそう確定したが、何もしてこない相手方に背を向け立ち去ろうとした瞬間、
「血を寄越せ!!」
「きゃあっ!」
いつの間にか距離を詰めていた男の一人が叫び、それに驚いて尻餅をついてしまった。
瞬時に心を巡るのは単なる驚きではなく、ましてや不用意に背を向けてしまった事への後悔でもない。
――ただ一色の恐怖。
血走り紅く染まった瞳を隠そうともせず更に近付いてくる男の右手には、一本のダガーナイフが握られていた。
イルミネーションの光を鈍く照り返すそれは、紛れも無く殺害を可能とする凶器だ。
「……血っ、て……なん、なのよ……何なのよあんた達ッ」
「血は血だよ、キミ頭悪いの? 大丈夫?」
「っ、!」
すっかり取り乱して叫ぶように吐き出した問いへの、余りにも軽い言葉。同時に背中に何かが当たり、それがもう一人の足だと認識するのにそう時間は掛からなかった。前方にはナイフを持った大男、背後には無邪気な声色の人物。体勢の都合上姿は見えないが、恐らく自身と同年代ぐらいの青年だろう。その口から紡がれた言葉に対し失礼だと言い返す気力も無く、イリーシャは口を噤(つぐ)んだ。
「俺達は天使だ」
「………………は?」
血の次は、天使? 
どうこの場から逃れようか……そちらへ傾いていた思考が一気に彼ら二人の正体へと引き戻され、先程閉じたばかりのイリーシャの口からは、これでもかという程の間を置き疑問府が零れた。
「ふざけるのもいい加減にしなさいよ、貴方達が天使ですって?」
「そ、僕達は天界から来た天使様だよ。……なにその偽者を見るような目」
「当たり前の反応よ! ナイフ持ってる天使なんて聞いた事が無いし、人を襲うような存在じゃないはずだわ。それに、そもそも……」
―― 天使なんて存在しない。言い切ってしまっても良かった筈なのに、何故か最後まで言えずに止まってしまう。構わず言おうと口を開いた時、
「天使なんて……存在しない?」
背後から放たれた、一語一句同じ言葉。心を読まれたような感覚に息が詰まりそうになる。
妙に冷たい声色が、体の芯を刺すような感覚をイリーシャに与えた。
再び黙り込んだ少女に構わず、男達――改め天使二人は続ける。
「まさか存在否定されるなんてねー……流石にショックじゃない? ルイルイ」
イリーシャの背後に佇んでいる、ダークシルバーの長髪をポニーテール風に束ねた青年――シキは相棒にそう笑い掛けた。
ルイルイ――と呼びかけられた190cm越えの大男ルイトは、無造作に切られた肩口までの金髪を片手で掻きながら、「俺は別に。それはお前一人だろう、シキ」と呆れ気味に返す。
その声色は低く、誰がどう聞いても上機嫌ではない。
まだ何か言いたげなシキをスルーし、ルイトは座り込んだままの少女へ視線を戻した。先刻までと寸分違わぬ血走った目が、再びイリーシャを見据える。
「………………」
足が動かない。否、足も手も、何かに縛られているようでピクリとも動かせない。その様はまさに――蛇に睨まれた蛙。
妙に冷静な思考でそんな事を考えていたイリーシャの頭上に、冷たく重い言葉が降りかかる。
「まァ別に殺すって言ってる訳じゃないんだからさ、緊張する事無いって」
「嗚呼、すぐに終わる。即死したくなけりゃあ大人しくしてな」
声色は違えど同じ事を意味する二人の声に抵抗らしい抵抗を示せないまま、ナイフの先端が首筋に触れた。その何とも言えない冷たさに、イリーシャが思わず目を閉じた瞬間、

「その辺りで止めて頂きましょうか」

この状況に不釣合いすぎる、透き通った男声が響いた。

3bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/06(金) 01:22:56 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

Episode.2 A white evil spirit<白い悪魔>

突如として割り込んだ新たな存在。
イリーシャを除く二名が音を立てて声がした方向を振り返り、警戒を示した。
その視線が向く先は、二メートル程離れた石造りの道に佇む人影。

「チッ……こんな時に乱入者?」
そう悔しげに漏らされたシキの言葉は、白い吐息となり冷めた空気に溶ける。
イルミネーションで染まってしまいつつある夜空の闇の中、やけに眩い輝きを放つ月を背に、その男は立っていた。
やがてその口がもう一度開かれる。
「淑女(レディ)を男二人でとは……醜いとは思いませんか」
「知らないよそんなの、キミみたいな優男お呼びじゃないんだけど」
それぞれが違う冷たさを纏い、交わされる男とシキの会話。
「ちょっと、どういう事なの? 貴方一体……」
今日は本当にどうかしている。目の前で次々と繰り広げられる非現実的な光景に耐え切れず、死の恐怖も忘れてイリーシャは問い掛けた。
天使と名乗る二人と似通う、白いコートのような装束を纏う男へと……一言。
「……、…………」
「……え? どうして……」
イリーシャの問いを受け取った男は、手袋に包まれた指先を唇に添え無言で〝し〟の形を作った。
それは恐らく、今この場で正体を明かす事を拒んだジェスチャー。
どうして教えてくれないのか――そう言おうとしたイリーシャだが、その問いは横槍のごとく真横から迫ったシキの剣(つるぎ)に遮られる。
「ひっ……!」
――ザシュッ
悲鳴を上げ思わず身構えたイリーシャだが、いつまでも襲ってこない痛みと鈍い音に顔を上げた。恐る恐る見た自身の体には、大きな切り傷どころか掠り傷すら無い。
「……切れて、ない?」
(今確かに切れた音がしたのに……)
そう不思議に思った刹那――
「失礼」
頭上からそう呼びかけられたのとほぼ同時、座り込んでいた筈の体が浮いた。驚きの声を上げる間も無く、一瞬にして横抱きに持ち上げられる。状況を把握しようと上を見上げると、透き通った薄群青の瞳と目が合った。
微笑みかけてきたそれが妙に気恥ずかしく、視線を下へ落とす。
「……もう少しの辛抱ですからね」
男は壊れ物のように抱えたイリーシャにそう囁き、返事を聞く前に眼前で剣(つるぎ)を構えるシキへ意識を戻した。その冷静な瞳が癇に障ったらしく、いかにも〝不愉快だ〟と言いたげなシキが男へ詰め寄る。
「勝手に乱入しといて無視とは良い度胸じゃん、そんなに殺されたい……?」
「殺されたいかどうかは別として……気にいらねぇな」
シキの後に続いたルイトも、そう言うと同時に自身の武器を取り出した。
ナイフだった筈のそれは、巨大な斧のような形に変化している。
しかしそれらの光景を目にしても男の余裕が崩れる事は無く、それどころかクスクスとわざとらしい……それでいて馬鹿にするような笑みを零し始めた。
「何が可笑しいんだよテメェ!」
笑い続ける男の頭部を目掛けて、腹を立てたルイトの戦闘斧(バトルアックス)が勢いよく振り下ろされる。
少女を抱えた男の両腕は塞がっている。誰もがその死を確信した瞬間、

4bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/06(金) 01:25:25 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
――音も無く振り上げられた足が斧を弾き飛ばした。
「えっ、…………」
シキとルイト、そしてイリーシャ。誰のものとも分からない小さな声(おと)が、静かな空間に吐き出される。
「これは申し訳御座いません、余りにも滑稽(こっけい)だったものですから……。ですが、私は申し上げた筈ですよ? ……〝その辺りで止めて頂きましょう〟と」
聞こえていたでしょう、と男がルイトを見る。
「まだ〝やる〟おつもりなら、……相応の覚悟を」
瞬間、場が凍りつく。
輝いていた筈のイルミネーションの光もいつの間にか消え、男の碧い瞳が闇に浮かび上がった。その色は何処までも冷たく、鋭い。
「チッ……シキ、撤退するぞ!」
男と真正面の位置で対峙していたルイトはそう言って身を翻し、シキを待たずに駆け出した。
「え、ちょっ……ルイルイ!? 待ってよ!」
相棒の突然の行動についていけず、分かり易く動揺するシキ。
状況が把握出来ないままルイトを見つめていたが、数秒の時間を要してハッとしたように立ち上がると、その背に追いつこうと走り出した。
が、途中で振り返りイリーシャ達に向かって舌を出す。
「ああもうメチャクチャだよっ! キミ達二人共、いつか殺すから!!」

随分と派手な宣戦布告を去り際に残し、天使二人はその場から完全に姿を消した。
再び灯りだした光が、薄暗い夜道を照らす。
そこから暫く進み路地裏に入って漸く、男はイリーシャを解放した。
「お怪我は御座いませんか?」
「ええ、何とか平気よ。有難う……と言えば良いのかしら」
先刻までと何一つ変わらない薄群青の瞳。それは白い肌と白銀の髪によく映えていて、僅かにイリーシャの頬を色付かせた。お陰で安否を聞かれても何処かたどたどしく、「いえ……貴女がご無事で何よりです」と返してきた男の顔をまともに見られずに俯く。
そんな様子を体調不良と捉えたのか、心配そうな声が振ってきた。
「……どうかなさいましたか」
その問いに弾かれたように顔を上げ、首を振る。
「! いっ、いいえ……何でもないわ。それよりも……貴方は何者なのか、聞いても良い?」
現れた瞬間も、抱えられている間もずっと聞きたかった事。
天使達が去った今なら良いだろうかと、イリーシャは目の前の男を見上げ問いの答えを待つ。
それに対し男は一瞬驚いたような表情を浮かべ、それから口を開いた。
「嗚呼、申し遅れました。私は、人間(あなた)達を天使の毒牙から護る為に遣わされた〝白い悪魔〟……」


「バラリオと申します」



――私を救った白い悪魔。その名を聞いた瞬間から、日常が歪み始めた。

5bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/07(土) 01:44:51 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

Episode.3 Blood of oath<誓約の赤>

――白い悪魔。悪魔……。
目の前の男から告げられた言葉が、頭を巡って止まらない。
先程まで体を支えていてくれた暖かい腕も、心配そうに此方を見ていた瞳も、
今は恐ろしくてしょうがなかった。
無意識に一歩退いたイリーシャの肩を、バラリオの腕が捕える。
その右の掌(てのひら)が迫り、殺されるのかと肩を震わせビクリと身構えた瞬間
――ちゅ、と軽い音が響いた。
同時に感じるのは、額に触れた何かの温もり。
バラリオの右手はイリーシャの左頬にそっと添えられており、離れていく顔に額へキスを落とされた事を理解する。
「……え、何…………」
両頬を朱(あか)に染めたイリーシャの片手を取り自身の両手で包むと、バラリオはその足元で静かに膝を折った。その様を例えるなら、姫に忠誠を誓う誇り高き騎士。
そしてその状態からイリーシャを見上げ、口を開いた。
「どうか怖がらないで……私は貴女を傷つけたりは致しません。ただ、お願いがあるのです」
「お願い……?」
「はい」
人間などよりも遥かに力を持つだろう悪魔が跪き、願いを打ち明ける。
今この瞬間――間違いなく前代未聞の光景が其処(そこ)には在った。
しかし、バラリオが告げた次の言葉を聞きイリーシャの表情が凍りつく。


「私と、契約を結んで頂きたい」




目の前が真っ暗になり、気が付けば彼を拒絶し突き飛ばしていた。
ドサッ――と重い音を立てて倒れたバラリオに構わず駆け出し、息が切れるまで走り続ける。
「っはぁ…………は、……」


「何処へ行かれるのです……?」
「!?」
寂れた家屋の影――大分逃げたから大丈夫だと安心していたところへ掛けられた言葉に、イリーシャは音を立てて振り返る。
視線を移した先には、バラリオが息切れもせずに佇んでいた。
そういえば彼は悪魔――人間の足に追いつけない筈がない。
その姿を目にした瞬間熱が引き冷静な頭でそう理解するが、嫌なものは嫌だと此方を見据える瞳へ叫んだ。
「どうせ人間(わたし)じゃあ貴方に勝つ事なんて出来ないんでしょうけど、嫌よっ! 何で悪魔と契約なんか……」
「落ち着いて下さい、私の話を……」
「嫌! もうどこか行ってよ!! 何度言われようと私は」
「ご家族を見殺しになさっても良いのですか!」


激しい言い合いの末、バラリオの叫びによりその場は夜の静けさを取り戻した。

「……落ち着きましたか?」
「……ええ、御免なさい…………」
暫くして頃合いを見計らって声を掛け、返ってきた謝罪にバラリオは苦笑を浮かべた。
寧ろ謝るべきなのは此方だろうと、イリーシャへ向き直り頭を下げる。
その様子に小さく首を振ったイリーシャが、「それよりも……」と話を切り出した。
「家族を見殺しに、ってどういう事なの?」
自分が悪魔(バラリオ)と契約を交わさなければ家族が死ぬ――そんな言い回しだったように思える。それは何故なのかと――真っ直ぐな疑問をぶつけられたバラリオは近くに転がっていた大きな瓦礫の上に腰を下ろし、イリーシャを隣へ促してから語りだした。
「天界から出た天使達が、この人間界で暴れ始めているのです。天使は……先程貴女も御覧になりましたよね?」
「ええ、あの変な二人組みがそうなんでしょう? ……私には未だに信じられないのだけど」
だってあの人達翼が無かったもの――そう訴えるイリーシャにバラリオは首を横に振り、否定を示すと共に群青の双眸を鋭く細めた。

「いいえ、翼は存在しています。ただ……闇に溶けてしまっているのです」

6月波煌夜:2012/04/07(土) 10:40:47 HOST:proxyag097.docomo.ne.jp
>>bitterさん

こんにちは!
読ませていただきました(≧∀≦)
タイトルからして格好良くて惚れ惚れします…!
イリーシャは反応が初々しくて可愛いし、なんといってもバラリオが素敵すぎる…!
横抱きグッジョブです( ´艸`)

それにしても、あまりの文章力におののきました。もうプロですよねこれ。普通の本読んでる気分です。

これからも見に来ますね(^-^)v
駄文失礼しました←

7bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/07(土) 13:27:07 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

こんにちは!コメント有難う御座います^^
タイトルは大分迷ったのでそう言って頂けて凄く嬉しいです…!
書き込む直前までかなりうだうだやってましたからw←
意味は興味があれば調べてみて下さいなノ

所謂姫抱きですねwその二人は一応メインヒロイン&ヒーロー的存在
なので、どう動かしていこうか考え中です。

いえいえ、恐れ多いです…!!文については現在進行形で迷走中なので←
私も時間がある時にそちらの小説を覗きに行きますね、これからも宜しくお願いしますノ

8bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/07(土) 16:41:43 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
「翼が、闇に……?」
「そうです。しかし、本来天使達(かれら)は何色の羽を持つのか……ご存知ですか?」
「ええと……白の筈よ」
だから闇に溶けるなんて事はあり得ない――暗闇が濃ければ濃い程、その中に在る光(しろ)は際立つのだから。
もしそれが不可能になるとしたら――そこまで考えて、イリーシャはある一つの答えに辿り着いた。

「まさか……黒くなった?」
その言葉を聞いたバラリオは小さく頷いて肯定を示し、懐から一枚の羽根を取り出した。
人類が古来より空想上の存在として描いてきた天使の翼は、例外なく純白(しろ)――しかしバラリオの手の平に置かれた羽根は、それに反して濃い漆黒(くろ)を主張している。
一見鴉(からす)のような黒い羽根――しかし鳥類と言うには異質な雰囲気を纏うそれを手に、バラリオは言った。
「これは、先程の現場で回収した天使の羽根です。白い翼を持つ者など……居ても片手で数えられる程度でしょう」
――今や天使は堕ちてしまった。悪魔を白く塗り替えてしまう程に……。
そう、彼は語った。
今まで一切信じようとしなかった存在とはいえ、正義と悪――その両者を確実に覆した事実。妙な重圧に押し潰されるような感覚に、イリーシャは黙り込んだ。そんな彼女の様子を気に掛けながらも、バラリオは続ける。
「しかし堕ちたとはいえ、彼らはまだ〝聖〟の力をその身に宿しています。……所詮〝魔物〟である悪魔(わたしたち)が単身で止めを刺す事は出来ません。それを可能とする為には……」
「…………?」
何も言えずに俯いていた頭上に突然掛かった影に疑問府を浮かべ、イリーシャは瞳を瞬かせる。顔を上げた先には、此方を覗き込むようにしているバラリオが居た。

「〝聖〟と〝魔〟両方をその身に宿す、人間(あなた)の力が必要です。……そして私との契約を可能とするのは、貴女のみ」
「私だけ……?」
妙に縮まった距離に動揺する間もなく、再び言葉が紡がれる。
その内容を復唱して首を傾げたイリーシャを見て、バラリオは両眼を一旦閉じ
「単刀直入に申しましょう、このまま放置すれば……人間は滅亡します」
淡々と言い切った。
「なっ…………!」
瞼が上がり再び覗いた群青の瞳――まるでガラス玉のように感情の無いそれを前に、イリーシャはただ驚愕を示すしかなかった。
自分を救ったあの時、天使――ルイトへ向けた眼光と全く同じ、氷のように冷たい色を浮かべた二つの瞳。


少しの間二人の間に漂った心地の悪い沈黙を破ったのは、バラリオの声だった。
「もう余り時間がありません、天使達は瞬く間に人々を食い荒らしてしまう……どうかご決断を、貴女の未来の為に」
――選ぶしかない。再び足元に跪いたバラリオの姿に、イリーシャはそう悟った。
愛する父と母、血の繋がりは無くとも家族同然に接してきた使用人や友人達……彼らの命を見捨てるなんて事は、自分には出来ない。
翡翠の瞳に決意を宿して立ち上がり、バラリオに告げた。

「解ったわ。私と、私に関わる人達の未来の為…………貴方と契約します」
――その代わり、しっかり護って頂戴ね。
そう付け足し微笑んだイリーシャの手の甲へくちづけを落とし、バラリオも口元に弧を描く。
そのまま〝契約者(あるじ)〟を見上げ、眩しいものを見るように目を細めた。
「この契約によって、私は貴女の内なる力を手に入れる…………何者からも御護り致しますよ。さぁ、お名前を聞かせて下さい……我が主」

「……イリーシャ=エステヴァス」


瞬間、眩い光が辺りを包んだ。
口移しで口内へ注がれた何かを飲み下し、イリーシャの口端を赤い雫が伝う。
ぐらりと傾いた華奢な体を、バラリオの白い腕が支えた。
「おやおや……流石に少女の身体では、悪魔(わたし)の血液は刺激が強すぎたようですね」
スー、と寝息を立てている少女を助けた時と同じように横抱きにして持ち上げ、その寝顔にそっと囁く。……起きる気配は全く無い。
しかし、これで契約は完了――イリーシャを軽々と抱きかかえたまま、バラリオは人気の無い夜道を進んだ。


「……もう戻る道はありませんよ、イリーシャ様」

9bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/08(日) 13:31:03 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

Episode.4 New every day <新しい日常>

「……これはまた、立派なお屋敷ですね」


午後22時45分、エステヴァス家表門前。
その堅剛且つ豪勢な門構えを遠目に捉え、バラリオは呟いた。
――豪華絢爛。
そう呼ぶに相応しい広大な敷地と、美しい庭園……窓から察するに部屋数は軽く10を超えるだろう。全てが全て、〝豪邸〟の要素で満たされていた。
正面突破はほぼ不可能――まともに行っては中々骨が折れそうだ……。
「仕方ない……少々大人しくして貰いますよ」
そう言うや否や一瞬にして門の正面へ移動し、朱金(しゅきん)に変化させた瞳で門番を睨むように見据える。
瞬間二人の門番は何かに憑かれたように敬礼し、バラリオの指示を待つ体勢をとった。
まず門を開けるよう命じ、ずり落ちないようイリーシャを抱え直す。
その際肩に走った僅かな痛みは気に留めないまま侵入を果たすと、瞬き一つで瞳の色を戻し此方を見ている門番へ
「ご苦労様、元通り施錠(せじょう)しておいて下さい」
と告げて歩き出した。
一度使用した者には効かない上、有効時間も精々30分のこの能力(ちから)――使う機会は少ないが、こういう時は役に立つのだな……と自分の事ながら納得する。
やがて目の前に迫った屋敷を前に一言、薄い笑みを口元に湛(たた)えながら呟いた。
夜風に踊る銀糸が月明かりを照り返し――妖しく煌(きらめ)く。

「……さて、行きますか」




翌朝。春先とはいえ、風に冷たさが残る3月10日。
来月に誕生日を控える齢(よわい)16の少女イリーシャは、いつになく気だるい目覚めを迎えていた。
だるいというか――重い?
きっと昨夜の騒動で疲れているんだわ、と呟き体を起こした瞬間
「失礼いたします――もうお目覚めでしたか、おはよう御座いますお嬢様。目覚めの紅茶(アーリーモーニングティー)をお持ちしました」
ガチャリと扉が開き、暗い金色の短髪を揺らす青年が顔を覗かせた。
無駄のない動作で一礼し、紅茶を運び入れる彼の名はサイカ=クロフォード――此処、エステヴァス家の執事だ。
普段は父の世話や警護に当たる事が多い為こうして自室で会う事は少ないのだが、しっかり着こなした黒い燕尾服と、凛々しい容貌を裏切らない彼の働きは知っている。
でもどうして今日は此処に――?
目の前でカップに紅茶を注ぐサイカの洗練された手つきを眺めながら、イリーシャは考えた。
そして、差し出されたティーカップを受け取ると同時に口を開く。
「私の所に来るなんて珍しいわね、サイカ。お父様はどうしたの?」
紅茶の優しい香りを楽しみながら答えを待っていると、サイカは一旦給仕の手を止め青碧(せいへき)色の瞳を僅かに泳がせた。

10bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/08(日) 13:32:35 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
「旦那様は既に準備を終えておられました。今日は良いから、イリーシャ様の所へ行きなさいと仰せに……」
言い辛そうという程ではないが、その顔には困ったような笑みが浮かべられている。
「……そうなの。今日、何かあったかしら……」
特別な予定があるとは聞いていないし、急な何かがあるのだろうか――
そう思案すると共に呟いたイリーシャの耳に、今度ははっきりと返答が届いた。
「本日から新しい使用人を迎える事になったのです、恐らくその影響もあるかと」
――旦那様は好奇心が旺盛(おうせい)でいらっしゃるので、とサイカが小さく微笑む。
そこに先程のような感情は無く、ただ素直に笑っている事が窺えた。
それにしても、新しい使用人か――調子を戻したサイカとは逆にまた一つ疑問が増えたイリーシャは、ティーセットを片付け一言添えて退出しようとするサイカを呼びとめ、控えめに尋ねた。
「待って、その新しい使用人になるって人は……もう来ているの?」
「はい、朝食の席で既に控えている筈ですよ」
そう淡々と答え、では私はこれで失礼致します――と一礼したのを最後に、サイカは今度こそ退出した。
彼と入れ違うようにして入室した二つの人影が、パタパタと足音を響かせながらイリーシャの傍らへ近付く。
「お嬢様―、おはよう御座います―」
「ます―」
お揃いの紺色のエプロンドレスを纏い、共に背中まであるストレートのブロンドを揺らす双子のメイド、オレンジの瞳を持つミュウとイエローグリーンの瞳を持つファイだ。
かれこれ3年は一緒に暮らしているのだが、未だに姉か妹かの区別はついていない。
瞳の色まで一致していたらそれこそ区別がつかなかっただろうと、別の意味で背筋が寒くなった。


それから約30分後。
いつも通りミュウとファイの手を借りて身支度を終え、イリーシャは広間を目指していた。
やがて見えてきた入口の扉を抜け、コツンとヒールの音を響かせる。
中の様子を窺うように首を巡らせていると、

「おはよう御座います、お待ちしておりました」

聞き覚えのある澄んだ男声が耳に届いた。
それを聞いた瞬間脳裏に一つの存在が浮かんだが、まさかという風に声の主へ視線を移す。
そうする事で視界に入ったのは、白銀の髪に透き通った薄群青の瞳を持つ青年――


「………………バラリオ?」

11月波煌夜:2012/04/09(月) 09:00:13 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>bitterさん

またまたお邪魔します(o^_^o)

イリーシャはお嬢様だったんですね!
執事に双子メイドキタ―――!と歓喜した月波をお許し下さい……
うーん、バラリオはどんな役職になるのでしょうか??

ワクワクしながら待ってます(^-^)/



あ、シャングリラ(カタカナすみません)って“地上の楽園”とか“理想郷”とかいう意味なんですね!
楽園はエデンとかギリシア神話のエリュシオンくらいしか知りませんでした(*´д`*)
でもシャングリラが一番格好良いな……

12bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/11(水) 17:50:37 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

Episode.5 Monochrome fight<白黒闘争>

「昨夜振りですね、イリーシャ様」

イリーシャだけに届くよう……そう呟いて微笑むバラリオは、昨夜と同じようで全く違う雰囲気を纏い其処に居た。
すらりとした細身の部類ではあるが、華奢な印象は与えない引き締まった躯(からだ)と――それを包むサイカとは対照的な純白(シロ)を主とした燕尾服。
ジャケットの下に着込まれた黒色のベストは銀糸を紡いだ繊細なレースで縁取られ、同色のシャツと共にホワイトタイを際立たせている。
髪も服も白いが眩しすぎる事は無く、黒い革靴と手袋……銀のボタンがシックな美しさを添えていた。
「一体どうやって此処に来……」
契約を交わした事は覚えているが、流石に予期していなかったかたちでの再会。
それもすっかり人間らしくなって現れた悪魔を見上げ、率直な疑問を紡ごうとしたイリーシャの口を、漆黒(クロ)に包まれた人差し指が塞いだ。
その柔らかな唇に指を添えたまま、バラリオが囁く。
「そのお話はまた後程……今はお食事と致しましょう、皆様お揃いですよ」
その言葉が終わると同時に指が離れ、バラリオの体で死角になっていた広間の様子がイリーシャの視界に入った。そこには、既にテーブルに着き談笑している両親と傍らに控えるサイカの姿。
あんなに賑やかなのに、何故少しも気が付けなかったのだろう――そう不思議に思いながらも食事の席へ促すバラリオに従い、ある程度歩み寄った所で両親に声を掛けた。
「おはよう御座います。お父様、お母様」
「おはようイリーシャ」
低いけれど優しい声。これは父、クラスト=エステヴァス――翡翠の瞳が穏やかな光を映している。
「あら、おはよう。今日も可愛らしいわね」
程よく高く、澄んだ美声。これは母、リベイユ=エステヴァス――紅に近い茶色の髪は綺麗に結い上げられ、今日も美しい。
その少し奥で、サイカが小さく頭を下げるのが見えた。
タイミングを見計らってバラリオが椅子を引き、イリーシャが腰掛けた時
「ああそうだ、イリーシャに彼を紹介しなくてはね」
とクラストが切り出す。
「彼……?」
彼――というクラストの視線は確実にバラリオに向いているのだが、イリーシャはわざと疑問府を浮かべ父を見た。
「そこに居る〝白い彼〟だよ、今日から家(うち)の使用人になるんだ。名前は……」
姿を目にしてから薄々気付いてはいたが、どうやら今朝聞いた〝新しい使用人〟とはバラリオの事らしい。
更に言葉を続けようとしたクラストをやんわりと遮り、バラリオが口を開いた。
「失礼。旦那様、後は私(わたくし)が」
「おお、そうか?……では頼もう」
遮られた事に何の不満を吐くでもなく、クラストが頷く。
それに「はい」と返し、バラリオはイリーシャへ向き直ってから続けた。
「お初にお目にかかります、イリーシャ様。私は本日より此処、エステヴァス家の従僕(フットマン)を兼ね、貴女様の護衛を務めさせて頂く……バラリオ=フェレスと申します」
どうぞ宜しくお願い致します――そういって礼をするバラリオの態度は〝初対面〟に対するそれ以外のなにものでもなく、違和感など何一つ無かった。
「……ええ、宜しくお願いするわ」
完璧すぎるが故の恐ろしさ――何となくそんなものを感じた所為か少々口元が引き攣りそうになりながらも、笑顔を作ったイリーシャがそう答える。
それからすぐに、ばちぱちと数回の拍手が響いた。
「良かったわ〜……これであなたも安心ね」
鳴らしていた手を止め、母――リベイユが嬉々とした様子でそう告げる。
その勢いでサイカを振り返り、声色そのままに声を掛けた。
「きっと頼りになるわ、サイカもそう思うでしょう?」
「え、ええ……勿論です奥様」
リベイユに同意を求められ、サイカが小さく頷く。その際口元の弧が僅かに引き攣るが、一瞬の事であった為指摘されることはなかった。


朝食後。
「新しい使用人が来る……今朝そう聞いたけど、貴方の事だったのね」
広間を後にして長い廊下を進みながら、イリーシャがそう話を切り出す。安閑とした空気の中唐突に響いた言葉だったが、一歩後ろを歩くバラリオはまるで気に留めず、言い終わると同時に振り返ったイリーシャと視線を交わせた。
「ええ、契約者(あなた)をお傍で御守りする為には……この役職(ポジション)が最適かと思いまして」
淡々とそう語るバラリオの口元には、相変わらず綺麗な弧が描かれている。
青い宝石のような瞳も流れるようなストレートの銀髪も、リボンで軽く結わえて右肩に掛けている事以外は全て――出会った時のままだ。しかし、それでも見事に人として溶け込んでいるバラリオを翡翠の双眸で捉えたまま、再びイリーシャの口が開かれた。
「それはそうね。でも、どんな方法を使ったの?使用人を新しく入れる予定なんて無かったし……」

13bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/12(木) 22:46:52 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
広間でも尋ねようとしたのだが、流されてしまった素朴な疑問。
それを改めて口にすると共に記憶を探り始めた時、
「嗚呼、それでしたら……ご両親と使用人の皆さんの記憶に、〝新たな使用人を雇用する〟という〝予定〟を上書きさせて頂いたのですよ」
思考を断ち切るように響いたバラリオの声(ことば)に、イリーシャの時間(とき)が一瞬止まる。
記憶に、上書き?――これまでの常識ではまず考えられない方法。しかし、悪魔という存在が目の前に在る時点で常識(そんなもの)は覆されていると言って良い。
先程まで心中で膨らんでいた悩みが急激に萎んでいくのを感じながら、イリーシャは溜息を漏らした。
「……悪魔って、結構便利なのね」
「お褒め頂き光栄です」
「褒めてないわ」
心の底から出た言葉に対しクスリと笑みを零したバラリオに対し、ぴしゃりと言い切る。
まるでダメージを受けない――それどころか益々深まる悪戯っ子のような笑顔を見て、イリーシャはまた一つ溜息を吐いた。


その日の夜――
イリーシャを自室まで送り届けたバラリオは、早い内に大体の造りを覚えておこうと屋敷内を徘徊していた。上流貴族の屋敷に相応しい煌びやかな装飾と、壁に飾られた様々な色合いの絵画――それらを視界の端に捉えつつ歩き続け、やがて厨房付近に差しかかった時。光が漏れる扉の隙間から微かな話し声が聞こえ、そっと歩み寄った。
中に居るのは、漆黒の燕尾服に身を包むサイカのみ。手つきと響いてくる音からして、どうやら食器を片付けている最中らしい。メイドの他に料理人(コック)や家政婦(ハウスキーパー)も居ることには居るのだが、今は事情があり屋敷を離れていると聞いた。その分の仕事は現在、サイカが執事(バトラー)と兼ねて行っているのだとか。
取り敢えず此処で黙っているよりは何か手伝おうか――そう思い扉に手を掛けた瞬間、
――シュッ
「っ!」
突如、鋭い音と共に飛ばされてきたナイフの刃先が迫った。素早く身を引いて避け、金属音を響かせて床に転がったそれを片手で拾い上げる。
前方へ視線を戻すと、完全に開かれた扉の奥から此方を見据えるサイカの姿があった。
「なんだお前か、足音を潜めて近付くな紛らわしい……」
青碧(せいへき)の瞳を警戒に細めたまま溜息を落としたサイカに、ナイフを差し出しながらバラリオが口を開く。
「おや、それは申し訳御座いません。ですが少々直接的すぎるのでは?」
謝罪の後に紡がれたのは、確実に人間の急所――首筋に向けられていた凶器への指摘。
自分でなければ今頃立ってはいられなかっただろうと、バラリオは内心で呟いた。
しかしその呟きが届く筈もなく、ナイフを受け取ったサイカはその代わりとでも言うように白い布を放る。
「私はエステヴァスの使用人として当然の事をしたまでだ。それに……〝あれ〟でやられる程度の輩など此処には必要ない」
布を投げ渡されたバラリオはその意図を察し濡れた食器を手に取りながら、サイカの言葉に耳を傾けた。そして一言、
「……成程、それが貴方の〝美学〟という訳ですね」
と告げる。訪れた沈黙を無言の肯定と受け取り、一呼吸置いてからバラリオは唐突に問い掛けた。
「ときにサイカさん、私の事はお嫌いですか?」
「何故そう思う」
黙った事を指摘されるのかと思えば、全く違う調子で声を掛けてきたバラリオにサイカが無感情に聞き返す。
「……朝食の席で、奥様への賛同を躊躇しているように見受けられましたので」
「気付いていたのか……」
「ええ、他者(ひと)の表情の変化には鋭いつもりですよ。それで……結局どうなのです」
朝方の広間にて――リベイユがバラリオについて語ったあの時、僅かだが確かに浮かべられていた苦笑。
恐らく気付いた者は居ないだろうと思っていた事を指摘され、サイカが呟くように言葉を零す。そして答えを促すバラリオに対し、スッパリと言い切った。

「嫌いだ」
――と。
「……普通そこまで言い切りますか」
「何か言ったか?」
「いえ何でも」

サイカ=クロフォードは自分の心に嘘を吐けぬ真っ直ぐな人間――もとい、〝真っ直ぐすぎて厄介な人間〟。
この夜、黒い執事(バトラー)と白の従僕(フットマン)――対極の色を纏う二人の間で何かが始まった。

14bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/12(木) 22:56:03 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>かぐやさん

おお、また来て下さって嬉しいです^^

そして…バラリオの役職は従僕でしたー。ついでにサイカの本性も表に出てます(ぇ)
あ、執事と双子メイドのセットは私の趣味でs←




調べて下さったんですか++
一応テーマでもあるので、近々本編でも登場させようと考えていますノ

15bitter ◆Uh25qYNDh6:2012/04/12(木) 23:04:23 HOST:p1181-ipbf1608sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp

すみません、ミスを発見したので訂正しますね;

>>13本文中の
「光が漏れる扉の隙間から微かな話し声が聞こえ」という部分は
「光が漏れる扉の隙間から微かな物音が聞こえ」の間違いです。

以後気をつけます><;

16ファイヤーマンゴータイムなボーボボ:2012/04/13(金) 05:09:47 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
シャングリラリラる


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