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小さな街の中で。

26とある人:2011/05/28(土) 19:37:37 HOST:KD111098194105.ppp-bb.dion.ne.jp

 016


 休み時間。
 「質問!!」
美野里が大声を上げる。
 最近雄哉、博也、美野里に亜矢、勇人、洋子が加わり、六人で話すことが多くなった。
「嫌いな食べ物は何?」
「好きな食べ物じゃなくて、嫌いな食べ物かよ。」
博也は鼻で笑う。
「いいの!!嫌いな食べ物は何!?はい、雄哉!」
美野里は雄哉を指差す。
「俺?ん〜、キノコ類全般と、マニアックな果物、軟体動物、それからナス・・・くらいかな。」
「はい次!!」
美野里は雄哉の隣にいる博也を指差す。
「えーっと、いちごを加工したものと、ミートソースかな。イチゴ自体とトマトソースは大丈夫なんだよね。」
「はい次!!」
美野里は勇人を指差す。
「ぼ・・・僕?」
「そう、澤田勇人!!」
「えぇっと・・・僕は芋類と大根おろし、それから辛いもの・・・だね。」
「ええ!?うまいじゃん、芋類!特にじゃがいも!!」
雄哉は勇人に詰め寄る。
「はい、次!」
美野里は洋子を指差す。
「俺らのことはスルーか!?」
よく見ると、美野里はメモを取っている。
「私は里芋ね。」
「それだけ?」
美野里が聞き返す。
「それだけよ。少ないでしょう?」
洋子は無表情で他の五人を見下ろす。
「・・・はい、最後。」
美野里は亜矢を指差す。
「私!?え・・・えーっと・・・えぇっと・・・・・・」
亜矢は下を向く。
「えぇっと・・・しいたけと・・・タコ・・・」
「それだけ?」
美野里は亜矢の顔を覗き込む。
「それから・・・それから・・・イカと・・・ハマグリと・・・キウイと・・・それから・・・・・・それから・・・・・・・・・それから・・・・・・・・・・・・」
ボフン、と亜矢の頭が爆発する音が聞こえたような気がした。
 亜矢は卒倒し、雄哉のほうに倒れこんでくる。
「大丈夫か!?」
雄哉は両手で受け止める。
「うん、大丈夫だと思・・・」
目が合った。
 立ち上がりかけた亜矢は再び倒れこむ。
「大丈夫じゃねえじゃん!」
「雄哉ぁ。」
「ん?」
美野里が笑いをこらえながら言う。
「分からないの?」
「いや、全く。」
心当たりがない、と言うように雄哉は首を振る。
「はぁ〜・・・」
「なんでそんな大きなため息をつくんだよ。」
「んもぉ〜。まったく、鈍だね。」
「なまくら?」
「あっ、違った。鈍いね、と言おうとしてたの。」
『い』を抜くだけで全く違う意味になる。
「俺が?」
「あんたねぇ。」
美野里は再び大きなため息をつく。
「じゃあ、言い方を変えるよ。というより、質問!」
彼女は雄哉をびしっ、と指差す。
「あなたがとても可愛い女の子に抱きつかれたらどう思う?」
「どうって・・・ちょっと驚くくらいかな?」
「はぁ〜〜。」
「『〜』が一本増えたぞ?」
『〜』←これを一本と数えるのかどうかは疑問だが。

27とある人:2011/05/28(土) 19:37:58 HOST:KD111098194105.ppp-bb.dion.ne.jp
 雄哉は絶賛昏倒中の亜矢を椅子に座らせる。
「じゃあ・・・」
美野里は雄哉の頭をつかみ、抱え込むようにして抱きしめる。
「実践してみた方が早いかな?」
「おわっ!?」
そこまで大きくはない胸の膨らみで鼻と口がふさがれる。
「い・・・息が・・・できない・・・・・・。」
美野里は手を放す。雄哉は大きく咳込む。
「どお?感想は?」
「ゲホゲホッ・・・。あ〜、死ぬかと思った。」
「・・・それだけ?」
「他にあるのか?」
「はぁ〜〜〜。」
美野里は何回目かのため息をつく。
「『〜』が三本になったぞ?」
顔をずいっ、と近づけて美野里は言う。
「いろいろあるじゃない、胸が当たってどきどきしたとか、柔らかかったとか。」
「お前の思考回路は博也か!」
「何でそこで俺が出てくる!」
博也は怒鳴る。
「何よ、異性に興味を持ち始めた男子中学生にわざわざ合わせてあげてるのよ。」
「何だよその上から目線。それに、俺の場合、それには当てはまらない。」
「ん? どういうこと?」
「俺はだな、」
雄哉は一旦タメて、堂々と言った。
「既に興味を通り越し、好奇心をも超越した、知識、経験として脳内に蓄えられている。つまり、ちょっとやそっとのことでは動揺しないのだぁ!!!」
雄哉は美野里を指差す。びしぃっ!!という効果音付きだ。
「その知識というのはいつ蓄えられたの?」
「えぇーっと、小学五年生くらいかな。」
「それって自慢できることなの?」
美野里の視界から雄哉が消えた。
「・・・そうなんだよね〜・・・できないよね〜。」
下の方から声が聞こえた。
 見ると、足元で雄哉がうずくまって、床に指で円を描いていた。
「いや、そんなに落ち込まなくても・・・」
美野里は視線に気付き、顔を上げる。
 博也、洋子、亜矢の三人が生暖かい視線を送っている。
「な、何か言いたいことがあるならはっきり言ってよ!」
「「「別に何も。」」」
「声をそろえて言うなぁ!!」
まさに異口同音。
「うち、なんか悪いこと言った!?」
「「「言ってないんじゃないんじゃない?」」」
「だから声をそろえて言わないで!!なんか寂しくなる!」
 そんな中、勇人だけが会話についていけず、隅でつっ立っていた。
「澤ちゃん、」
美野里は早との肩を叩こう・・・と思ったのだが、手が届かず、代わりに胸の辺りにしがみつく。
「さ・・・澤ちゃん!?何で澤ちゃん!?」
勇人は突然しがみ付かれて動揺する。
「澤ちゃん!」
「スルーですか!?」
「澤田勇人だから澤ちゃん!」
「分かったけど、その言い方やめて。」
「あんたしかいない!あんたしか分かってくれない!!」
「は、はい!?なにを!?ぼ、ぼ、僕が何を!?」
美野里は上目遣いで勇人を見上げる。
「知らなくてもいいこともあるよね? ね?」
「お、大橋さん、しがみつかないで、そんな目で見上げないで!それ反則だよぉ!」
勇人の顔が真っ赤に染まる。
 美野里は勇人の心臓の辺りに手を当てる。
「お〜、すげ〜。めっちゃバクバクしてる〜。」
「人の心拍数を勝手に計らないで!」
「お、速くなった。」
「お願いだからやめてください!僕が悪かったです!」
「なぜ謝る?」
美野里は勇人から離れ、数歩後退する。
「お?」
足に何かが当たった。
 そのあたりから半径1メートルほどの範囲でものすごくどんよりした空気があふれ出ている。
「う〜。俺なんて、どうせ俺なんてぇ〜」
「・・・・・・ねえ、そろそろ、機嫌直してよ。」
「・・・」
「おやつあげるからぁ。」
「本当!?」
雄哉はがばっと起き上がり、美野里の肩をゆする。
「じょ、冗談よ、冗談。学校にお菓子を持ってこれるわけないでしょ。」
「・・・それもそうだな。ちぇっ、お菓子ないのか〜。」
(単純でよかった。)
美野里はほっと一息つく。いつまでも落ち込んでいられても困る。
「俺は今単純モードだ。脳の起動可能領域を全て立ち上げれば結構複雑になるぞ。」
「突っ込みを入れるべきところありすぎ!」
「厳選してひとつ言ってみろ。」
「何でうちの思考が読めるの!」
「・・・さあ?以心伝心ってやつ?それともテレパシー?」
「この世界のリアリティーレベルを勝手にいじくらない。」
チャイムが鳴り響く。
「あ〜、次国語かぁ。嫌だな〜。」
博也がぼやく。
「嫌なら寝ろ。タイムスリップできるぞ。」
雄哉はそう言って、ククッ、と笑う。
「成績下がる!あとそれはタイムスリップとは言わない!!」
雑談タイム終了。


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