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新リレー小説

1キャプテン:2017/02/20(月) 23:08:56
少年は…立ち尽くすしかなかった。

黒い影が立ち去る。
眠り倒れる人々の真ん中で、その少年一人だけが目を覚ましていた。
少年は必死になって人々を揺さ振り、呼びかけ起こそうとする。しかし、寝息が聞こえるだけで人々が目覚める事は無かった。

やはり少年は、立ち尽くすしかなかった。

2ノートン:2017/02/25(土) 20:15:26
「記憶が…思い出せない…何がどうなっている?」
自分の名前すら、思い出せない。
眠る人々を掻き分け、ゆっくりと前に進む。

ただひたすらに荒野。ここがどこかも、思い出せない。少年は恐怖を感じざるを得なかった。

「ここは何だ?」
しばらく進んだ先に、無数のクレーター(窪み)を発見する。確実に、何かが戦った跡。

3キャプテン:2017/02/26(日) 20:30:33
「隊長、生存者です。」
少年が振り返る。レスキュー隊の一人が駆け寄る。しかし、眼前の光景に足が止まる。
「何なんだ…このデケェ凹みは?!」

隊員に連れられ、少年は他の隊員と眠る人々のいる場所へと戻る。
「全く起きん、完全に昏睡状態だ。君、名前は?」
運び出される人々を少年が眺める。
「何も…思い出せないんです。」

なぜか…涙が流れた。

「…大事な人達…だったんだね。」
分からない、この悲しみの正体さえ。
少年は膝から崩れ落ち、ただ涙を流した。
記憶に無い涙を…。

4ノートン:2017/03/07(火) 00:33:25
少年はレスキュー隊の車に乗っていた。
凸凹道を進む。向かう先は、レスキュー隊舎。

「大丈夫か?」
少年に声をかけるレスキュー隊員。年は25。金髪でヤンチャそうな風貌だった。
「はい。今は記憶を取り戻す事に専念します」
「そう気を張るなよ。バテちまうぞ」
「…」
「年はいくつだ?」
「…17です」
「なんだ、名前は分からないのに年は分かるのか」
「…俺だって混乱してんだよ…」
ボソッと呟く。黒髪をワシャワシャとかきむしる。

「すまん、お前を混乱させるワードはNGだったな。俺の名はジェノ。ジェノ・ラインだ。困ったことがあれば声をかけてくれ。」

5キャプテン:2017/03/14(火) 22:17:23
「“モニュメントバレー”から昏睡患者達を“ラスベガス総合病院”へと緊急搬送する。」

…車が止まる、どうやら眠っていたらしい。
景色は昼から夜へ、荒野からラスベガスの光の街並みへと変化していた。
「済まないが今日はここで我慢してくれ。」
ジェノから隊舎の個室を与えられた。狭いが“他の部屋より”かなりマシだった。ベッドに入ると疲れからか直ぐに眠ってしまった。

…ラスベガス総合病院
「居ない。」
瓦礫の山の真ん中に“黒い人影”がたたずむ。“黒い砂”が蠢き、辺りにまとわりつく。黒い砂を指でなぞり壁に文字を残し、人影は立ち去っていった。
『Give me boy's black hair(黒髪の少年を寄こせ)』

6ノートン:2017/03/26(日) 18:04:17
朝陽が昇り、隊舎を明るく照らしてから暫く。レスキュー隊員の掛け声で、少年は目覚めた。
「イッチニーサンシー」

少年は部屋を出る。トレーニングをしている隊員の姿が目に入った。
「まだ6時か、こんな早い時間からトレーニング?」
「時間なんて関係ないさ。俺たちは24時間レスキューに命かけてんだ」

ジェノが現れる。少年の元に、朝食を持って来ていた。
「今日の朝はパンとコーンスープだ。少しハズレなメニューだな」
「ありがとう、ジェノ」
「少年…じゃ呼びづらい。名前は思い出せないんだよな?」
「…」
少年はコクリと頷く。

「わかった。俺が名前を付けてやるよ。本当の名前を思い出すまでのあだ名さ」

7キャプテン:2017/03/28(火) 18:37:37
「そんなもの…要らない。」
不安からか、顔を伏せてしまう。
「“リコル”…リコールrecall(訳:思い出す)から取ってみたんだが…これだとリカルrecalになっちゃうか。」
ジェノのごまかし笑いに少しだけ胸が軽くなった気がした。
「…リコルでいいよ。」

リコルは部屋に戻り、もらった朝食をとる。
テレビで昨日のモニュメントバレー集団昏睡事件が流れている。さらに昨晩、昏睡患者達の搬送先であるラスベガス総合病院の襲撃事件。ジェノ達が救助活動している姿がテレビに映る。リコルが眠った後の出来事のようだ。
「(襲撃…狙いは俺なのか?)」
その考えを振り払い、リコルは残りのパンを無理矢理スープで喉に流し込んだのだった。

8ノートン:2017/04/04(火) 15:06:40
「※※※の能力は、いずれ大いなる力を生む。さぁ、私の元へ来い」
「嫌だ、お前の側には付かない!」
「そうか、なら※※※は邪魔な存在だ。死ぬがいい」
ブロンドの髪をなびかせながら、美しい女性が話す。その目は冷たく、奥深くに闇があった。

「何をするつもりだ!?この村にはまだ人が…!」
「ほう、人の心配をするのか…人ではないお前が…面白い」
「やめろっ…!!」

「グッドナイト流星群」

空に大粒の隕石が点々と現れる。隕石の大粒が、村目掛けて降り注ぐ。
「やめろーーー!!!」

ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ

「リコル!おい、リコル!」
リコルは目を覚ます。レスキュー隊員の車の中だった。
「うなされてたぞ。どうした?」
「ゴメン…何でもない」
「お前がレスキュー任務に参加したいって言った時は驚いたが、まさかビビってる訳じゃねーよな?」
「違うよジェノ!ビビってない」
「それなら良かった。そろそろヤードビット高原に到着だ。さぁ、任務スタートだ」

9キャプテン:2017/04/08(土) 20:58:12
「…おかしい、山林火災だと聞いていたが黒煙ばかりで火がない(ヤードウッド?…何だろうこの違和感は?)」
そう思いながらジェノが高原の黒煙の根本を見る。黒く蠢く人型から黒煙が立ち上っていた。その黒い人型に警官達が銃を発砲している。
「撃て撃て撃て!!」
弾はその黒い人型に当たるが身体の表面の黒い物質が結晶化し弾かれる。黒煙の粉塵が警官達や隊員達を覆い尽くす。
「あの時、荒野に居た人影?!ゴホッ…それにこの粉塵の匂い、鉛筆とかの…“黒鉛”?!」
リコルが呟く。警官達や隊員達が悲鳴とともに倒されていく。ジェノとリコルがレスキュー用斧を構える。眼前で黒い人型がリコルに話しかける。
「僕はシルエッター(影法師)。見つけたよ、黒髪の少年!!」

10ノートン:2017/04/10(月) 14:20:50
「今までどこにいた、少年…。大人しく病院に居てくれれば、こんなに探さずに済んだ。犠牲者も少なかったろうに」
「!?まさか、お前がラスベガス病院を!!」

ジェノがリコルの一歩前に立つ。
「おい、何者か知らねーが、俺の仲間達からあの〝不気味な粉塵〝を外せ!!」
ジェノが斧片手に突っ込む。しかし、黒鉛の粉塵がジェノを覆い、締め付ける。
「うっ…動けな…」
「バカか君は…黒鉛が君の仲間を捉える様を見ていたはずだろ。何の策も無しに突っ込んでくるなんて」
「ジェノを離せ!!」

11キャプテン:2017/04/12(水) 21:18:13
体が動かない。黒鉛がリコルの足元から肩まで上がり結晶となり固まっていた。
「病院から黒鉛とダイヤが検出された。貴様は炭素を元素レベルで組み換え変化させ操る。信じ難いが…。」
ジェノの言葉にシルエッターが近づく。
「僕の注意を引くつもり?彼を隊員達でかくまったり、ほっとけないんだね。」
黒煙が晴れ、血まみれで苦しむ警官や隊員達がリコルの目に映る。それが荒野での昏睡状態の人々の光景と重なり怒りがこみ上げる。
「“少年は”殺さないよ。」
シルエッターは結晶を纏った拳をジェノの頭部目掛けて振り下ろす…瞬間…

リコルの右肩から先が消える。右腕はバラバラになり宙に浮き、個々の断面は白く光る。掌がシルエッターの腹部に打つかる。
「手ぇ出すなぁ!!!」
黒い体がバラバラになり、あちこちに飛散する。そしてリコルの腕が元に戻り、シルエッターの体は倒された状態で元に戻った。

12ノートン:2017/04/21(金) 18:26:43
「…何が起きた…!?」
動揺するシルエッター。目の前にいるリコルにも、同じ感情があった。

「なるほど、君は目覚めた訳だ。少年」
黒煙がシルエッターの周囲を舞う。
「(自分の能力に気付かれたら厄介だ)大人しく捕まれよ、ガキ!」

「クソっ…黒煙で何も見えない…!」
焦るリコル。その時、ジェノが叫ぶ。

「集中しろ!神経を研ぎ澄ませ!さっきの感覚を思い出せ!!」
「ジェノ…!?」
「いいかリコル…今は何も分からなくていい…ただ思い出せ…お前が使った能力の感覚を!!」

シルエッターがジェノに向かう。
「五月蝿いな…やっぱり先に消しておくべきだった。死ね」

13キャプテン:2017/04/23(日) 21:55:25
「やめろ…やめろ!!」
リコルの身体から周りに白光線の筋が縦横無尽に入り、辺りを積み木のように崩す。
「コントロールが効いてない。無茶苦茶じゃん!?」
シルエッターは危険を感じ、更に全体に黒煙を撒き散らして姿を消した。その間も周りの人々を巻き込み崩壊が広がる。
「止まらねぇ、このままじゃみんなが…?!」
小丘から根暗な男が現れ、あくびをしながらリコルに手をかざす。リコルの身体が細切れにズレて空間に散らばり意識を失う。

しばらくし、遠くからの救急サイレンの音でリコルが目覚める。辺りや身体は元に戻っていた。
「もう…ここには居られない。」
横たわる皆を残し、リコルはうつむいて立ち去る。

14ノートン:2017/05/03(水) 11:42:23
「まて、リコル!」
立ち止まるリコル。しかし、振り返らない。
「ごめんジェノ。自分自身が怖いんだ。それに、迷惑はかけられない。多分俺は、狙われてる。」
少しの沈黙が流れた後、ジェノが話し始めた。

「このままお前をレスキュー隊に引き止める気はねーよ。お前が辛い思いしてまで、ここにいる事はない。」
心のどこかで、引き止めてくれる事を期待していたリコル。その期待は裏切られた。
「…(やっぱり俺はお荷物なんだよな)」


「ただ、去ってくお前をほっとく訳にもいかねぇ。先輩としてな」
「…え?」

すると、ジェノは1枚の名刺を差し出す。
銀に輝く名刺。「ペプシマン」の文字が大きく書かれており、裏には住所が記載されていた。

「俺の師匠だ。そこに行って、学んでこい。能力の事、そして、自分自身の事を。記憶が無いんだ、どうせ行くあても無いんだろう」
「そんな急に言われても…」
「俺もレスキュー任務の合間を縫って顔出すよ。師匠は濃い性格だ。頑張れよ」

「…ありがとう、ジェノ!」

15キャプテン:2017/05/07(日) 20:25:19
リコルが足を止め、ジェノを振り返る。
「…能力の事、知ってたんだな。」
「俺が知ってるのは能力の存在だけだよ。お前や他のことは分からない。不安なのは分かるが、すまないな。」
…救急隊員達が高原に着く頃にはリコルの姿は無かった。…

…身体の表面の黒い塊りが剥がれ落ちていき、栗毛の青年の姿が露わになり施設へと入っていく。
「ヤードビットでガキを取り逃がしたらしいなシルエッター?…いや、ヒドゥン・ステイフロアさんよ。」
「ドーヂさん、また酒臭いよ。」
呼ばれた日系の中年男性は背広を着崩しており、黒髪のボサボサ頭をかいた。
「ヒドゥン、テメェが病院壊したおかげで、昏睡患者達は簡単に施設へ運べたよ。ニュースじゃ別の病院に移った事になってるがな。」
二人がガラス張りの壁から下を見下ろす。たくさんの患者服の人々がチューブに繋がれ、昏睡したまま大量のベッドに寝かされている。それを白衣姿の人達が見て回っている。
「うん、そうだね。」

16ノートン:2017/05/14(日) 20:40:58
ジェノから指示された住所へと向かうリコル。道中の一人旅は、リコルの不安を大きく煽るものだった。
「僕は何者なんだ…あの力は…またあいつらが襲ってくるんじゃ…殺されるのか俺は…怖い…」

そして、2日後の夜。
何事もなく辿り着いた先は、古びたモーテルだった。ボロボロの看板には、英語で書かれた「ようこそ ペプシティへ」の文字がチカチカとライトアップされていた。
「…ここ?」
疑いながら、モーテルの受付へと進む。
中には、三角帽子を被った老人が座っていた。しかし、そのガタイは筋肉隆々であった。
「いらっしゃい。お客さんかい?ラッキーだね、今一部屋空いてるよ」
「すみません、泊まりに来たんじゃ無いんです。ペプシマンという人を探していて…」

老人はスッと立ち上がった。リコルの倍はあろうか、かなりの大柄だった。
「おじさん、大きいね…」
「そうかね?私はまだまだ大きくなりたいと思っているよ」

そういうと、顔の皮をベリベリと剥がし始める。
「なっ!?!?」
さらに、服を脱ぎ捨てる。全身銀色で逞しい体が露わになる。その顔も銀色一色。目や口は無く、明らかに人間ではなかった。

「ひっ!!化け物!?」
「慌てるな少年!確かに私は人間ではないが、化け物ではない!」
右手をスッと差し出す。握手のポーズだった。

「紹介が遅れた。私が「ペプシマン」だ。ハッハッハッ」

17キャプテン:2017/05/16(火) 19:58:10
ジェノは『総監室』のフダの部屋に入り、威厳漂う中年白髪の黒人男性に敬礼する。
「バルト総監、少年の件は恩に着ます。」
「お前さんの頼みだ、情報は隠蔽したよ。隊員達のケガは残念だったな。増援がてら新人をみてくれんか?」
バルトが受話器で誰かを呼び出す。扉が開き、見覚えの無い栗毛の青年が現れる。
「ヒドゥン・ステイフロアです。」…

…モーテルにおんぼろ車が停まる。ペプシマンがいち早く気づき、外へ出る。リコルもそれに続く。ヤードビットで見た根暗な男がいた。ペプシマンが叫ぶ。
「キャプティお前、今までどこに?!」
「ふわぁ〜…その子、頼む。」
玄関に水浸しの少女が横たわる。12.3歳程だろうか、黒髪の三編みで薄い褐色の肌をしている。男はおんぼろ車で去ってしまった。突如、少女がリコルの服を引っ張り言った。
「みんなを…助けて…。」
そして意識を失った。仕方なく少女を最後の一室に寝かせた。キャプティという男についてペプシマンは教えてくれなかった。仕方なく今日はソファーで寝る事になった。

18ノートン:2017/06/03(土) 22:24:04
翌日、ペプシマン・リコル・少女の3人がテーブルを囲んでいた。
目の前にはトーストなどの朝食が置かれていた。
「さぁ、食べたまえ。私の自慢の朝食だ!」
ペプシマンの姿は、全身銀の姿から三角帽子を被った老人の姿へと変わっていた。

「変装してるのか?」
「その通り!本来の私の姿だと、客は皆逃げてしまうからな。この三角帽子がトレードマークだ!」
「(朝っぱらからテンション高いな…)」

会話の途中、少女は黙々と朝食を食べ始めていた。
「待て待て少女!食事の前には頂きますだろう!」
「ごめんなさい…」
「謝る必要は無い!時に少女よ、君の名前は何だ!?」
「…ホリデー」
「そうかホリデー。今日から暫くヨロシク!」

リコルはペプシマンに問いかける。

「ヨロシクって…。こんな素性のしれない子をずっと置いとくの?」
「分かっていないなリコル。親友が私にこの子を託したんだ。それ以上の理由がいるか?」
「親友…あのキャプティって人の事か」
「その通りだ。素性が分からないというなら、君も同じだ少年リコル。愛弟子ジェノの頼みではあるから信用しているが、君は何者だ?」

19キャプテン:2017/06/06(火) 21:26:13
「…知っていればこんな所に居ませんよ。能力の事だって何も。モニュメントバレーの事件より前の記憶が無いんですからね。」
リコルの食事が荒くなる。ホリデーが顔を覗いてくる。
「何だ?」
「覚えてないの?あたしもあそこに居たのよ。」
リコルが食事を喉に詰まらせもがく。牛乳で何とか流し込む。
「はあ?!何言ってる。昏睡患者以外に…」
荒野で昏睡した人々は、そこの先住民なのか黒髪に褐色の肌のインディアン系の人が多かった事を思い出す。
「あたしだけ目覚めたの。あたし達、病院から連れ出されたみたいなの。みんなまだあの“施設”に閉じ込められてる。だからお願い、一刻も早くみんなを助け出し…「二人とも、食べ終わったら外に行くぞ!!!」…

…話を遮り、ペプシマンが無理矢理二人を森へ連れ出す。
「ここでいいな。いいか、焦ったってこのままじゃ死ぬだけだぞ!!二人掛かりで構わん、かかってこい。そして実力差を理解するんだ!!!」

20ノートン:2017/06/18(日) 20:10:29
「ぬぅぅん!」
ペプシマンの銀色の肌が露わになる。
「さぁ、かかって来なさい」

リコルが踏み止まる。
「何をいきなり…俺はまだ能力の事が分からないんだ!また能力が暴走したらどうするんだ!?」
「はっはっは!君のヘナチョコ能力が暴走した所で、何の影響もない!遠慮しなくていい!」
「…し…しかし」

その時、ホリデーがリコルを突き飛ばす。
「どいて、意気地なし」
「何だと…!?」
ホリデーの両の腕から吸盤が出現する。
「ほう、面白い。まずは君からか、ホリデー!」
ペプシマンが構える。
「安心したまえ。私は能力を使わない。この拳のみでお相手しよう」
「バカにしないでよ!はぁっ!!」

21キャプテン:2017/06/20(火) 21:26:22
ホリデーにペプシマンの銀色の拳が打たれる。しかし、クッションのように腹にのめり込む。
「打撃は無意味よ、オクト!!」
ホリデーが両手の吸盤をペプシマンにくっつけ腕が異常に伸びる。周りを走り、伸びた腕でペプシマンの首から下をグルグル巻きに拘束する。
「さあ、降参する?」
「…その甘さが命取りだ!!」
ペプシマンが力任せに足を抜き出し、木に向かってぶつかる。ホリデーから嗚咽が漏れ、ペプシマンを離してしまう。ペプシマンが拳どうしでホリデーの体を挟み潰す。ホリデーが苦しみ倒れ込む。
「挟めば打撃の逃げ道はない。」

「あーもークソが!!」
リコルが木に触れ、分割してぶつける。ペプシマンはソレをタックルで押しのけながらリコルに突進する。木がズタボロの状態で元に戻る。
リコルが自身を分解して突進を避けるが、ペプシマンはリコルの居た位置で構え、別れた頭部に石を投げ放つ。とっさにリコルは体を元に戻して避けてしまう。
「…じゃあね。」
眼前のペプシマンの右ストレートがリコルの体が戻った瞬間にぶつかり、ぶっ飛ばした。

22ノートン:2017/06/23(金) 21:08:52
リコルが目覚めた時には、モーテルのベットに横たわっていた。
「痛っ…」
ペプシマンの右ストレートは、未だ鈍い痛みを残していた。

「やっと起きたわね、意気地なし」
ホリデーが様子を見に来ていた。
「生意気なガキだ…」
「あんたもガキじゃない」
そう言うと、ホリデーは部屋を出ようとする。
「どこ行くんだよ」
「決まってるじゃない。助けに行くのよ。施設に閉じ込められてるみんなを!」
「助けにって…ペプシマンとの戦闘で分かったろ!お前にそんな力は無い」
「うるさい!あんたなんか関係無いわ、意気地なし!!」

その時、ペプシマンが部屋を覗く。

「リコルの言う通りだ。その程度の実力じゃあ、何の役にも立たない。施設には刺客がいるやもしれん」
「でも…」
ペプシマンがホリデーの背を優しく叩く。
「だが君は運が良い。私の親友が2人、ちょうど今日このモーテルにやって来る!名はキャプティとノートン。2人とも地味な男だが、私に匹敵する実力を持っている。その2人に相談してみなさい。」
「えっ!?」
「彼らがOKと言えば、私も含め3人が力になろう」

23キャプテン:2017/06/27(火) 21:54:48
モーテルの一室。
ノックしてリコルが扉を開けた。ホリデーが掌の吸盤を眺めていた。
「そろそろ来いって…どうした?」
「気持ち悪いでしょ?『オクト』って言って吸盤を皮膚に発生させ、体の伸縮性を変化させれる。コレのおかげで狭い通気ダクトから抜け出せた。こんな姿になった私をみんなは部族の一員として扱ってくれてた。だから…今度は私がみんなを!!」
ホリデーが掌をギュッと握る。
「俺もあんたもたいして変わらないと思うけどな。気持ち悪いだろコレ?」
リコルが手と指を分離してホリデーに見せる。断面は白く光っている。
「空間断裂、自身や触れた物体を空間ごと一時的に分離するんだってさ。空間の修復力で自然と元に戻る。『ウィンドウブレイカー』って言うらしいよ。」
「…あっそ説明どうも。行きましょ。」
少しだけホリデーの表情が和らいだ気がした。
ペプシマンが待っていた。
「よっしゃ、来たな!!!」

24ノートン:2017/09/24(日) 10:54:25
モーテルの前に、オンボロの車が停まっていた。ペプシマンが出迎える。
「待っていたぞ、友よ」
2人の男が車から降りる。
「どうも」
「久しぶりだな、ペプシマン。今キャプティと映画を観に行っていたんだ」
「そうだったのか!何の映画を!?」
「エイリアン コヴェナントだよ」

話し込む3人を、遠くから見つめるリコルとホリデー。
「あれが、ペプシマンに匹敵する実力の持ち主だって!?どっちも雰囲気ショボいぞ…」
「そうね…メガネに天然パーマの男、あれがノートンね。そして、ジーパンを履いた地味な男、あっちがキャプティ。外見は聞いていた通りね」

25キャプテン:2017/10/02(月) 22:47:38
キャプティがあくびしながらコルサのボロ車を運転する。そこには男女4人が乗り合わせていた。
「そろそろ説明してくれ、この状況を。」
後部座席、ホリデーの隣でイラついているリコルが沈黙を破る。キャプティがあくび混じりのため息をついて言った。
「ペプシ、何も教えてないのか?その坊主がいっ…痛?!」
後部座席のペプシマンがキャプティの席を蹴り、助手席のノートンがキャプティの顔を殴っていた。
「あーあのね、まあ僕たちみたいな能力者が奴らの狙いなんだよね。生き残る為にはお互い助け合わないと。」
ノートンが話をはぶらかすように言った。明らかに“何か”を隠している。ヤードビットで暴走した俺をキャプティが“何らか”の能力で止めた“理由”、そもそもあそこに居たのは偶然なのか?

歩道を歩く派手な服の女。両の掌を合わせて離す。緑の光の線が掌の間をつなぐように現れる。光の帯を湾曲させ、通り掛かったコルサのボロ車に透き通る。その光に触れたキャプティの身体から“力”が“抜ける”。車は制御を失ったように蛇行し建物に向かって突っ込んだ。
「サァ、ハジメヨウ。」
女が片言の言葉で呟いた。

26ノートン:2020/03/14(土) 14:07:19
ビルの建物に突っ込み、煙を上げるコルサ。
女がハイヒールの靴音をコツコツと鳴らしながら近づく。
その時…。
「ドゴッ!!!」
コルサの天井が吹き飛び、宙に舞う。吹き抜けとなったコルサの天井から、ペプシマンが高くジャンプする。
「シェイッ!!!」
空中に舞っているコルサの天板を捉え、思い切り殴る。
天板は高速で女にぶつかる。

…女は避ける間も無く、天板ごと吹き飛び、向かいのレストランの窓ガラスを突き破った。

「ペプシマン、僕のコルサに何やってんの!?」
キャプティが絶望する。キャプティはリコルを、ノートンはホリデーを抱えてコルサから脱出していた。
「もうコルサは替え時だったんだよ、キャプティ。次はアクアとかどうだい?」
ノートンがキャプティに語りかける。暗闇の中立ち上るコルサ煙は、虚しくキャプティの瞳に映るのだった。

27キャプテン:2020/03/16(月) 22:03:41
「火蓋は切って落とされた訳だね。」
燃え上がるレストランを見ながらペプシが言った。中から人影が現れる。
「かわいそうに、シィちゃんはもう戦闘不能みたいだね〜。…ゲプッ!!ヒックッ!!全くビールが台無しだよ〜。」
ペプシに蹴り飛ばされたであろう傷だらけの女の子を抱え、ありえない姿の男が現れる。
「…何なんだよアレ、無茶苦茶だ。」

頭が"信号機"なのだ。

「…ふざけてやがる。」
いつの間にか背後に回り込んだペプシが信号男の顔面を強烈に殴る。
「…シュワ?」
しかし、信号男は微動だにしない。

「…ペプシさんの…パンチが?!」
キャプティが唖然とする。リコルは思わずキャプティにしがみ付く。しかしキャプティでさえ震えているようだった。

「ヒックッ!!…”赤は止まれ”、学校で習っただろう?」
信号機が赤が光っている。そして黄色、青へと発光が移り変わる。その瞬間、信号男はありえないスピードで5人の眼の前から消えた。

28ノートン:2020/03/19(木) 01:07:57
敵が去ったことを確認すると、ペプシマンは話す。
「敵の刺客は何故ここに現れたのか。我々が施設に向かうのを阻止するため?否!狙いは恐らく君だろう、リコル。君は狙われていると、ジェノから聞いている」

「刺客の中に、恐らく君の位置を特定する能力者がいる」
ノートンが続く。そして、キャプティが口を開く。
「僕とノートンの2人で施設の人質奪還に向かうよ。どんな敵が待ち受けているか分からない以上、この大人数での移動は危険だ」

ホリデーが口を開く。
「はっきり言ったらどうなの。私とリコルがいると、邪魔なんでしょ?」
「そういう事かよ、俺だって戦える!行かせてくれ!」

リコルが叫ぶ。しかし、ペプシマンが諭す。


「いいかい、今の君は”足手まとい”なんだ。キツい言い方かもしれないが・・・」

少しの間、沈黙が流れる。リコルには分かっていた事実。自分は、役には立たない。むしろ邪魔者。
頭では理解していても、言葉として聞かされたとき、胸の内に大きな絶望感が生まれていた。

「俺は、弱い・・・」

その時、ペプシマンはリコルの肩をポンッとたたく。
「”今の”君はね。鍛えれば、大きな戦力になる。知り合いに、いい能力者がいてね」

そう言うと、ペプシマンは身支度を始める。

「今から次元の狭間へ行く。さぁ、準備してくれ」

29キャプテン:2020/03/20(金) 09:31:00
…真っ黒なモヤモヤの人型が廃屋にたたずむ。
「…ドーチのおっさん…シイちゃん…何やってんの?」

床では2人が眠っていた。
中年のおっさんドーチは酒瓶を抱えて、シイと呼ばれる女性はよだれを垂らしながら卍の姿勢になっていた。
「(シイちゃん、能力で体を治したのかな)…しばらくは目覚めないかな。せっっっかく僕が黒鉛をリコルに付着させて追跡したのに…”シルエッター“」
漂う黒い物質が晴れ、青年ヒドゥンが現れる。ヒドゥンは栗毛をいじりながら微笑する。
「ペプシマン達が気になるけどまぁいいや。命令は命令だし、残りの2人と遊ぶかな…フフッ。」
そう言いながらヒドゥンは廃屋を後にした。

…施設の門付近
草むらに隠れながらノートンとキャプティが覗く。警備員達があちこちで警戒していた。
「キャプティ、忘れてるよ!」
施設突入前、ノートンがおもむろに手を伸ばしキャプティがハッとしてその手をとる。2人は互いを奮い立たせるために友情の証としてハンドシェイクをした…だが少しぎこちない。
「…まあ、こんなもんだよノートン。」

30ノートン:2020/03/21(土) 18:22:03
「目的は、この謎の施設に連行された先住民たちの救出と事件の調査。行こうかキャプティ」
「分かった。どうする?このまま正面突破する?」
「いや、どこに何が潜んでいるか分からない。正面突破は危なくないか?」
「そうだね。じゃあ、どうしようか・・・」

2人はその場でしばし考え込む。ノートンが口を開く。

「・・・正面突破で行こう」

広い駐車場を抜けた先、施設の入り口は、巨大なビルの割に小さなドアが一つ。厳重なドアだった。
「これをぶち抜いたら、多分警報とかなるよね」
「そうだね。どうしよう・・・」

2人は入り口でしばし考え込む。ノートンが口を開く。

「・・・ぶち抜こう」

ノートンは指先にエネルギーを集中させる。
暗闇の中、ノートンの指が明るく光る。
「やまビーム!」

ドアのキーの部分を破壊。意外と簡単に、ドアは開いた。
2人は、オットセイ内部に潜入。案の定中は暗く、非常口の緑のライトが点滅していた。
「やっぱり暗いね、まずは明かりを探さないと・・・」

31キャプテン:2020/03/22(日) 14:00:19
カチッ!カチッ!
ノートンが手探りで壁のスイッチらしき物を押すが全く明るくなる気配がない。
「何だかヤバくない?ゴホッゴホッ!!」
2人とも口の中が砂っぽい。息苦しい。とっさにキャプティが手探りで窓に触れる。
「グラスオブハード!!!」
窓がグニャリと溶け、キャプティの掌で波打ち踊る。窓が無くなり風が一気に建物に吹き込み黒い砂ぼこりが晴れ、電灯が辺りを照らす。
「ノートン、後ろだ!!」
ノートンの指先が振り返り様に光る。眼前に全身真っ黒な男が真っ黒な刃物を突き出す。
「(ダメだ、間に合わない。)」
パキンッ!と何かが破れる音がする。ノートンにも見えていなかったガラスの壁に黒い刃物が突き刺さりヒビを入れていた。
「(サンキュー、キャプティ!)山ビーム…スパーキンッ!!」

32<削除>:<削除>
<削除>

33ノートン:2020/03/23(月) 08:22:56
廃屋にて、横たわるシィを、ドーチは眺めていた。
「ヒック…しかし見れば見るほど良い女じゃないか…警察の立場では何も出来んが、今はただの酔っ払い…少しくらいは…」

傷だらけのシィの胸に手を伸ばす。その時、廃屋の扉が開く。

「これはこれは、ボス。何しにここへ…?」

ボスと呼ばれた男の風貌は、長身で痩せ気味。茶色のパーマがかった頭を触りながら、話し出す。

「そういうあんたは何しようとしてる?ダメでしょセクハラは」
「いやぁ、単純に傷の具合を見ようとしただけだ。勘違いしちゃぁいけねえよ…ヒック」

少し呆れた顔で、ドーチを見つめる。
「まぁいいけど…あと俺の事をボスと呼ぶのはやめてくれ。ハレンでいい。今の状況は?」

警察では警部という上役な立場でありながら、自分より年下の男に指図される事が、ドーチにとっては少し不満だった。

「いずれは別のグループへ転属してやる…こんなガキに…」
「何か言ったか?ドーチ」
「いや、何も言ってねぇ。状況を話す」

事の成り行きを聞き、ハレンは少し興奮しているようだった。

「マジか。何という巡り合わせ…またあの2人に会えるとは。ペプシマンに会えないのが残念だが…」
「…?」
「ヒデゥンは優秀だが、あの2人の相手は務まらない」

そういうと、ハレンは歩き出す。

「俺が行こう。久々に旧友に会いにね」

34キャプテン:2020/03/24(火) 06:28:32
「…そうだ、忘れてた。」
歩みを止めたハレンが不意に2人に向き直り、マシンガンを放った…何の造作もなく。
「少し”演技“が過ぎるなぁ…2人とも。」
ドーチは既に信号機を被り赤を発光させ、シイもすぐさまハレンの数センチ手前まで両手から緑の光の帯を伸ばしていた。しかしハレンが放った弾は全て外れていた。
「アエテ…外シタ(私の“グリーンカーテン“がボスに触れていたら、銃の軌道はズレて私に向かっていた。寝たフリもバレてた。)」
「…酔ったフリ、バレてたのか。」

「…じゃあ。」
固まる2人をよそ目にハレンはマシンガンをしまい、すたすた廃屋を去っていく。…

…某施設内
ノートンの指先から放たれた光線は真っ黒な人型を貫く。だが人型は砕け落ちた。
「こいつ、ターミネーターT-1000のパクリだ!!」
ノートンがキャプティに伝える。砕けた物質が溶けてくっ付き人型になっていく。
「そいつは潤滑油や鉛筆の原料、黒鉛だ。そんなに固くはない。空気中に漂ってるのが口に入った瞬間、子どもの頃よく嚙ってた鉛筆の味がしたんだ。」
ノートンはキャプティを二度見した。

35ノートン:2020/03/25(水) 12:37:31
「やまビーム!」
真っ黒な人形に向けビームを放つ。穴は空くが、すぐさま再生する。
さらに、人形は手をカマの形にして襲いかかってくる。
「ここは任せて」

キャプティはガラスで盾を作り、弾き返す。
さらにキャプティは、辺りのガラスを全て液状化し、自身の目の前に集める。
「ノートン!」
「分かった!」
やまビームをガラスに向けて放ち続ける。液状化したガラスが赤く染まっていき、蒸気が立ち昇る。
「T1000の殺し方は、高温の液体で再生不可能になるまで溶かす事だ!」

真っ赤なガラスを人形にぶつけ、混ぜ合わせる。
「ジュワァァァァ…」
激しい音と共に、床は溶け、地面が焼け焦げる。
人形は、完全に消滅した。

すぐさまキャプティは次のガラスを集め、キャプティとノートンの周りに、薄くガラスの膜を貼る。

「ガラスのバリヤ。強度は保証するよ」
「キャプティさすがだな、惚れそうだぜ!」

36キャプテン:2020/03/27(金) 19:08:34
ヒドゥンが栗毛をかきむしる。遠くに施設オットセイの灯りが見える。
「黒鉛の反応が消えた、シルエッターも発動しない。クソッ、ここまでか!!」

ノートンとキャプティが施設内を探索する。
「キャプティ、今のうちにまだ使えそうなガラスを集めといて。また敵が襲ってくるかもしれない。」
キャプティは頷き、少ないガラスの残骸を能力で溶かして集めて行く。
「(何故だ、あれほどいた警備員達はどこへ行った?)」
不安がりながらも何事もなくオットセイ最深部へとたどり着く。重い扉を2人がかりで開く。…光の中に絶望を見た。

モニュメントバレー昏睡事件の患者達は簡易ベッドに寝かされていた…体が“半透明”になって。

立ち尽くすキャプティ。ノートンが近づき触ろうとする。しかし触れた感触はほとんど無く透き通ってしまった。
「(どういう事なんだ。存在が消えかけているのか。このままじゃ)…クソッ、オレたちが助けに来た意味は何だったんだ?!」…

…同時刻、次元の狭間???
「…ああ、分かったよ。リコル達にその事を伝えるのはやめておこう、修行に支障が出る。そこで待っていてくれ。先住民達はジェノにも連絡してこちらで対応するよ。いいな、希望はある!!!」
ペプシマンはスマホを切った。

37ノートン:2020/03/28(土) 13:06:52
ただ、呆然と立ち尽くす2人。キャプティが口を開く。
「とりあえず、他を調べよう。何か情報があるかも」
「そうだな…2手に分かれようか」
その時、部屋に足音が近づく。2人は急いで振り返る。

「早川君!?」

ノートンは驚きの表情を浮かべる。
「いや、この世界ではハレンって呼んでよ」
ハレンが素早く突っ込む。
「あぁゴメン。久しぶりだねハレン…3年ぶりくらいか。何でここに!?」

ハレンは茶髪の髪をモサモサと触りながら、話し始める。
「ヒドゥンが来てるって言うから、瞬殺されないように助けに来たんだけど、意外といいバトルしてたみたいじゃん」
「…ん?言ってる意味がよく分からないけど…」
「さっき、キャプティ達を襲った黒い影。あれは俺の部下の仕業なんだよね」

ハレンのあまりにも唐突な話し。2人の思考回路が追い付くのに時間がかかった。

「俺は今”早川組”のボスをやってる。元々俺の爺ちゃん”早川二郎”がボスをしてたんだけど、この前隠居したから引き継いだんだ」
キャプティが突っ込む。
「何やってんのハレン!エロマンガ家になるって言ってたじゃん!」
「いや、話し聞いてたら面白そうだったから何となくやってみようと思って。飽きたら転職するつもり」
「(ハレンらしい…独特な思考回路やな)」
キャプティ・ノートンは、旧友のクセの強さを久しぶりに実感した。

「今辞めなよ、こんな事」
ノートンは半透明になった患者を指差した。

「いや、これは俺知らないから。俺達早川組は”ブラックボックス”って組織に雇われてるんだ。依頼内容はオットセイの警備と侵入者の排除さ」

ハレンはキャプティ・ノートンの方を指差す。

「2人は侵入者か?それなら友達だとしても、容赦しないぜ…」

38キャプテン:2020/03/29(日) 16:38:33
黒い物質がハレンから噴き出す。
「その能力は、ヒドゥンってやつの能力と同じ。どういう事だ?!昔のお前の能力と違うぞ!!」
ハレンが鼻で笑う。漂う物質がキラキラと光だす。
「残り物だと少ないなぁ、キャプティ。」
キャプティができるだけ硬くガラスの壁を作る。しかし、光る物質は空中移動し、ガラスの壁をたやすく貫通する。
「黒鉛じゃない、硬すぎる!?」
黒鉛とダイヤモンドは同じ炭素でできているが、通常では黒鉛はダイヤに変化する事はできない。
「シルエッター…スクエアガーデン。」
ノートンとキャプティが巻き上がる変化したダイヤモンドの粒に体を切り刻まれていく。
「グハァッ?!」
ハレンの目の前に2人が倒れ込む。
「昔のよしみだ、生かしてあげるよ。2人の能力は有効活用するけどね。」

39ノートン:2020/03/31(火) 12:32:17
「強い…ヤバいぞキャプティ」
ハレンの能力”スクエアガーデン”を前に、防戦一方。ノートンとキャプティは、攻めあぐねていた。
さらに、ハレンとの友人という関係性が、2人の心を大きく揺さぶり、決定打を出せずにいた。

「やめてよハレン!俺達は友達だ…これ以上戦いたくない!」
キャプティが、情に訴える。ハレンはキャプティの静止を振り払う。

「このまま戦いが長引けば、キャプティ達の情が移ってしまう…。大きな力で、早く終わらせてもらう!」
ハレンは攻撃の手を止める。と同時に、ハレンの体が光り始める。
「何をするつもりだ!?」
さらに、ノートンの体が光り始める。

「チェーンジ!!」

光が収まる。その時間、約5秒。

「何をした!?」
焦るノートン。そして…
「能力をチェンジしたのさ。スパーキングの破壊力は、今一番都合が良い」

ノートンは指先にエネルギーを溜める。が、全く反応しない。
「こ…こんな事が…」
「信じられないか?だがノートンのスパーキングはもう俺の物だ。新しい能力を授かると、使いこなすまでに数年の鍛錬が必要。だが俺は違う。百聞は一見にしかず」

ハレンは両の手を合わせる。

「や…ま…は…め…」

両手から、エネルギーの光が溢れる。
「まさか…やめろ!!こんな人の多いところでその技を使うなっ!!!」

「波ぁぁぁあああーーーー!!!!」

40キャプテン:2020/04/02(木) 08:15:54
ズルンッ?!ハレンが突然、姿勢を崩してスパーキングが外れる。
「足下がお留守だぜハレン、スパーキングの威力は踏ん張りが大事なんだよ。」
ハレンの足裏に液化したガラスがキャプティまでつたっていた。ハレンはそのまま後ろに滑り、エネルギー波で押され続けて壁が迫る。
「ヤバい、壁に?!チェンジ!!」
手からエネルギー波が消失しハレンが尻餅をつく。しかし、先のエネルギー波で部屋が崩れ外への穴が開いていた。既にノートン達の姿は外への穴の暗闇へと消えていた。
「…くっ…ああああああ!!!」

2人の背後で唸るハレンの咆哮。合流したジェノに助けられ、ノートンとキャプティは何とかオットセイから脱出した。…

…「あーもー!!」
ホリデーが膝を崩して仰向けに倒れる。タコ化した足が元に戻る。ペプシマンが顔を覗く。
「タコは筋肉の塊だが骨が無くて体を支えれない。だからタコ筋を鍛えるんだ。さあ、シュッワアアアアァ!!!」

次元山の谷間、通称『次元の狭間』、リコル達がここに来て数日が経っていた。

41ノートン:2020/04/03(金) 22:32:04
修行にグチグチと文句を言うホリデー。
「黙って修行しろよ!」
苛立つリコル。自分の無力さ、謎の刺客に追われる恐怖、さらには、自身の記憶喪失。
精神的に、かなり追い詰められていた。

「うっさいわね、村のみんなを助けられずに、こんな所で修行してる私の気持ちも考えてよ!」
心が疲労しているのは、ホリデーも同じだった。

「(2人ともそろそろ限界か…まだか!?)ん…!?」
ペプシマンは後ろを振り向く。すると、銀の口のにやりとさせ、話し始める。

「リコル、ホリデーよ。なぜこの静かな谷が”次元の狭間”と呼ばれているか知っているかい!?」
「知るわけないわよ…」
呆れた顔で言葉を返すホリデー。するとペプシマンは丘の上を指差す。

「到着したようだな」

丘の上から、人影が近づいてくる。
「ちょっと待て、何だあれは…!?」

リコルとホリデーは驚愕した。

ペプシマンと同じく、銀色のボディで目や口が無い。但し、ペプシマンとの違いは、筋骨隆々ではなく、ふくよかな胸や、女性らしいくびれ。
女バージョンのペプシマンだった。

「紹介しよう。私の姉、ペプシウーマンだ」
「えっ!?」

ペプシウーマンは、腰のくびれに手を置き、セクシーな立ちポーズで話し始める。

「初めまして坊やたち。ペプシウーマンよ。ヨロシク♡」

リコルとホリデーは、開いた口が塞がらなかった。
「(き…強烈な個性だな…)初めまして…」

ペプシマンが話を続ける。

「端的に話そう。彼女の能力は”タイムトラベル”。時の門を解放するには、この谷が一番効率が良いのさ」
「タイムトラベル!?」
「そうだ、刺客など存在しない時代。今から100年前の世界へタイムトラベルする。そこで実戦を交えて修行だ!」

42キャプテン:2020/04/04(土) 14:05:22
「今はノートン達が敵の陽動になっている。だがそれも時間の問題だ。」
リコルとホリデーが更に口をあんぐりさせる。
「タイムトラベル?そんな事が…?!」
リコルが言葉を切る。いつの間にかペプシマンが大量の荷物を抱え込んでいる。2人はすぐさまペプシウーマンを見やる。周りの空間が歪み始める。
「それじゃあ”また”ね、ターイム…トゥラァべェル!!!」
リコルが止める間も無く周りのものが高速に変化する。明るく暗く、木々が縮んでは伸びる。…そして変化が止まる。

木陰からペプシウーマンが現れる。
「あらペプシマンお久しぶりね。ところでその子達は?」
リコルとホリデーが倒れ込み胃の内容物を吐き出す。ペプシウーマンが何かを察する。
「な〜るほど。ペプシマン、未来で何かあったの?」
3人は別荘に泊めてもらい、今までの経緯をペプシマンが説明する。どうやら彼女は過去のペプシウーマンらしい。ホリデーが口を挟む。

「聞きたい事が山ほどあるけど先ずは…ペプシマン、ペプシウーマン、あなた達いったい何歳なの?」

43ノートン:2020/04/04(土) 20:36:09
食卓テーブルに、夕食が並び始める。
「まずは食事にしよう。姉の作る料理は美味いぞ」

席に着く3人。ペプシウーマンがセクシーに食事を運ぶ。
「わぁ、美味しそう!ステーキにピザにサガミのうどんまであるわ!100年前でも、料理は変わらないのね!」
「これは美味そうだ…サガミはクーポンを使ったのか!?」
はしゃぐホリデー。リコルもテンションが上がっていた。
「ペプシマンは、コーヒーでいいかしら?」
「シュワァァァァ!愚問!ペプシコーラに決まっている!!」
「冗談よ。坊や達は…」
「俺はコーヒー」「私はオレンジジュース!」

4人は食事を食べながら、話を進める。

「私と姉はかれこれ1000年以上生きている。どうやら、人間では無いみたいなのだよ」
「弟と私以外に、似た種族は見た事がないわ。私達は、自分が何者なのか、ずっと探しているのよ」
まるでSF映画のような話。しかしリコルとホリデーは、疑う事なく受け入れた。

「姉の”100年前にタイムトラベル”という奇妙な能力は、我々を知る為の重要な手掛かりだと思ってな。こうやって頻繁に時代を行き来しているのさ」
「それで、何か分かったの?」
「ああ、我々は月からやってきた宇宙人なのだ。我々は、故郷である月に行かねばならんのだよ」

リコルは、話の内容に興奮していた。
「月に行くなんて、面白そうじゃん!」
「今は手段が無いがな。ただリコル、我々は君と似た境遇だとは思わないか?」
「え?」
「君は自分が何者か分からず、苦しんでいるだろう。我々もだ。まるで同志!そして、いつか答えは見つかるのさ」
「はは…そういう事かよ」

リコルは、満遍の笑みで笑った。

44キャプテン:2020/04/05(日) 21:14:35
夜風に吹かれホリデーは星を眺める。背後にリコルが現れ、ホリデーが口を開く。
「卑怯ね私、皆を助けるなんて強がって。いざ安全と分かると心の底から安心している…自分を許せない。」
ホリデーの肩が震える。リコルが肩に手を触れようとするが握り締めて引っ込める。酷い無力感が2人の間に広がった。

数ヶ月後、山の中。
「オクト、窒息で眠らせろ!!!」
ホリデーのタコ化した両腕が中距離から伸ばされ、ペプシマンの上半身と頭部を容赦なくグルグル巻きにする。
「距離はとった。今度は…容赦しない!!」
膝をつくペプシマン。しかし、巻きつく上半身からブクブクッと何か泡が吹き出し弾ける。強烈な爆風が起こりホリデーが吹き飛ばされる。
「やっと…能力を使ったか。」
木陰から現れたリコルがペプシマンを捕まえる。何故か片腕がない。
「ウィンドウブレイカー、引き寄せろ!!」
リコルの体が何かの力で引っ張られ、その先の崖へと2人で落ちる。向かい側の崖の木を掴む片腕へとリコルの体は引き寄せられ、体にくっ付いた。
「さすがに…この高さなら…ダメージ通るよな、ペプシマン。」

45ノートン:2020/04/06(月) 23:05:01
底の見えない谷底に、ペプシマンは落下していった。
「やったの!?」
駆けつけたホリデーが大声で叫ぶ。
「分からない!まさか死んだりしないよな
…」

その時、底から爆発音が鳴り響く。
揺れる大地。さらに、ドスン、ドスンと地響きがし、徐々に大きくなる。
「何の音だ!?」

ペプシマンは垂直にそびえ立つ崖の側面に足をめり込ませ、1歩、一歩と歩いて登ってきた。
「相変わらず化け物だな…」
「はっはっは!今の連携攻撃は中々良かったぞ!私も思わず能力を使ってしまった」

崖の上に、3人は集まる。
「勝てるわけないわ、あんたには」
ペプシマンは腰に手を当て、大声で笑う。
「まぁそう腐るな。地球上最強の男をここまで追い詰めたんだ。自信を持って良いぞ!」

そして、その日の夜。
「携帯が使えないか…不便!黒電話は…」
ペプシマンはある男に電話していた。

「久しぶりぶりだな、ヴィヴィ!私だ!」
「師匠…最近オレオレ詐欺が流行ってるんです。名前を言ってくださいよ…」

受話器越しの男は、気怠そうな反応を見せる。男の名は、ヴィヴィ・ネットワーク。この時代のペプシマンの弟子(卒業済み)である。

「はっはっは、すまん!所でヴィヴィ、一番弟子であるお前に頼みたい事がある」
「何です?」
「今、2人の弟子を鍛えていてな。最終試練として、またお前に協力して欲しいんだ」
「またですか?修行に付き合うのはジェノで終わりと言ったはずですが…」

ヴィヴィは少しため息を漏らした。

「まぁ固い事は言うな!お前は私の右腕なんだ、宜しく頼むぞ」
「ご冗談を…まぁ、あなたには大きな恩がある。協力させて貰いますよ。ただ、その中に女はいますか?女がいるならお断りしますよ」
「いるにはいるが、まだ幼い少女だ。例のことは、心配する必要はないぞ」
「それなら安心…か。分かりました」

46キャプテン:2020/04/08(水) 12:29:36
ペプシマンが車椅子の三十路くらいの男性を紹介する。あくびをしながら逆立った緑髪の後頭部をかいていた。
「(彼がヴィヴィ・ネットワーク、100年前のペプシマンの仲間。なら…もう現代には…)」
リコルは何ともいえない気持ちになる。それを頭から振り払いヴィヴィに向き直る。
「車椅子で?って質問は野暮よね。」
2人とも余裕綽々なヴィヴィに騙されず警戒する。

「…オクト!!」
先に仕掛けたホリデーがヴィヴィに向かってタコ化した腕を伸ばす。だがヴィヴィは車椅子ごとあり得ない速さでかわし、ホリデーの懐に入り込み手をかざす。
「(ショック・ウェーブ・パルサー)」
手からバチバチッと電流が走る。
「オクト、縮まれ!!」
ホリデーの伸ばした手はヴィヴィの背後の奥の木を掴み縮む。そしてホリデーの体を引き寄せて攻撃をかわした。

「…へぇ。」

47ノートン:2020/04/10(金) 08:21:58
「蛸か…面白い能力だな」
「隙あり!」
リコルが突っ込むが、ヴィヴィは攻撃をサラリと避ける。

「やれやれ…ペプシさん!あんたの教え子は、浅はかな考えで突っ込んでくるガキが多くないですか?ジェノの奴もそうだった」
「いや、君も似たようなもんだったぞ」

ツッコミを入れるペプシマン。リコルが会話に割り込む。
「ジェノ!?あんたジェノを知っているのか!?」
「あぁ…知っているさ。奴は俺を捕らえる事が出来た。お前達はどうかな?」

ヴィヴィは車椅子の車輪に電気を流し、宙に浮き始めた。
「宙に浮いている…何の能力だ!?」
「よく観察しろ!これから出会う敵は、お前達にいちいち能力を教えてはくれないぞ」

ヴィヴィは、高速でバックし屋敷に入る。
「ここがなんて呼ばれているか知っているか?幽霊屋敷だ。お前たちに、こういう特殊な戦闘もあるんだと、教えてやるよ」

幽霊屋敷の暗闇へと、姿を眩ますヴィヴィ。
「行くぞホリデー!」
突っ込むリコル。だが、ホリデーは付いて来なかった。
「ホリデー、何してる!」
「ごめんなさい…私駄目なのよ…幽霊とか…」
「情けねぇ!」

リコルは単身、幽霊屋敷へ突入した。
薄暗い出入り口に、看板があった。看板にはこう書かれていた。
”お前たちには無理だ”
「何だコレは…意味が分からねぇ!」

奥へ進むリコル。暗闇が濃くなる。
キッチンに入ると、バタンと音がする。振り返ると、扉がひとりでに閉まっていた。

光はほとんど無い。暗闇に目が慣れ始め、辺りを見渡すと、無数の包丁が、宙に不気味に浮いていた。
「操作系の能力者か!?」
リコルを目掛けて飛んでくる包丁。かろうじて避け、物陰に隠れる。

「こんなのが戦いか!?チクショウ…ホリデー、俺だって怖いんだよ…」

48キャプテン:2020/04/10(金) 17:40:17
「(ポルターガイストなんて…あるわけ無い!!だったらこっちも。)」

屋敷内に静けさが広がる。突然、一部屋にドタドタと物音が響く。扉がひとりでに開き、ナイフ達が一斉に部屋中に突き刺さる。
「…(やったか?)」
ヴィヴィが廊下から部屋を覗いた瞬間、ばらけた左腕がヴィヴィの横顔を殴り飛ばした。拳から血が滴る。
部屋にはナイフで串刺しにされかけた右手がバラけて転がっていた。
「物音の正体はバラけた右手か、やられたよ。」
廊下奥から現れたリコルにナイフ達が部屋から抜け出し飛んで行く。リコルは傷ついた右手を引き寄せくっ付けナイフに向かって血を払った。
「ウィンドウブレイカーは自分の体の一部なら引き寄せ合う。”アンタ”や”ナイフ“につけた血液同士も同様にね。」
血塗れのナイフ達が突如止まり、ヴィヴィに向かう。
「(こいつ…キレてやがる?!)」…

…同時刻、山中。
空間が歪みドーチが突然現れ嘔吐する。
「ボスの野郎、二日酔いの気分だ!!あれ…何だよ俺が一番乗りかよ。」

49ノートン:2020/04/11(土) 22:06:50
さらに空間が歪み、シイが出現する。
「うえぇぇ・・・」
激しく嘔吐するシイ。それを見ていたドーチが、貰いゲロをする。
「くそ・・最悪だ・・二回もゲロしちまった」
「う・・・気分が悪い。少し休みたいワ・・・」
「そうだな。少し休むか」

ドーチが辺りを見渡す。

「ここが100年前の世界か。夢でも見てる気分だな」
「今回のターゲットはあのクソ宇宙人ヨ。まずはどこに潜んでいるか調べないといけないワヨ」
「分かってる。現役刑事舐めんなよ?得意の捜査で、あの銀色野郎を追い詰めてやるよ・・・」

一方、幽霊屋敷では・・・

恐怖心から、ホリデーがただ佇む状況が続いていた。

「今の破壊音・・・リコルが戦っているな」
「よく戦えるわねリコルは。私はパスよ」

ペプシマンはホリデーに近づき、そっと肩に手を置く。
「恐怖心は大切だ。それを捨てるなとは言わない。だが・・・」
ペプシマンは、幽霊屋敷を見据える。
「時には、その恐怖心に立ち向かう”勇気”も大切なのさ。シュワァァァ」

「何よそれ、少年マンガみたいな事言わないでよ」
「今目の前で仲間が賢明に戦っている。必死に助けを求めているかもしれない。そんな時”私怖いから”とただ立ち竦むだけでいいのか?ホリデー」
「それは・・・」
「これは君達の”勇気”を試す試練なのだよ」

相変わらず熱い指導。だが、この師の指導で、言葉で、ここまで強くなれた自分が確かにいた。

「分かったわよ、この熱血教師!」

勇気を振り絞り、幽霊屋敷へ突入するホリデー。
自分のため、仲間のため、そして、愛する村の人々のために。

50キャプテン:2020/04/13(月) 12:19:42
幽霊屋敷、二階大廊下。
向かい合うリコルとヴィヴィ。動くナイフ達からバチバチッと火花が散り、ついた血が焦げてナイフが止まる。
「(車椅子、包丁、ナイフ、ドアノブ…ヴィヴィの能力は多分、磁力で金属を操る事。だけど今の火花は?)」
辺りからナイフや金属類がリコルを包囲する。
「体をバラけさせヴィヴィに引き寄せろウィンドウブレイカー!!!」
リコルの体がバラバラになり、金属類をかわし元の姿に戻る。そしてヴィヴィに付けた血痕に引き寄せられ勢いよくタックルする。
「…ショックウェーブパルサー。」
リコルは驚愕した。…ヴィヴィが車椅子から立ち上がり近づくリコルの体にカウンターで蹴りを入れた。リコルの体に電流が走る。

「リコル?!」
二階へ上がってきたホリデーが蹴り飛ばされたリコルを受け止める。体からは煙が上がっていた。
「ヴィヴィの…能力は…電…気。」
そう言い残し、リコルは気絶した。

51ノートン:2020/04/15(水) 09:46:13
「リコル!?大丈夫!?起きてよ!」
懸命に叫ぶホリデーだが、リコルは目覚めなかった。
「そいつ…リコルは暫く目覚める事はない」

自分の足で立つヴィヴィを見て、ホリデーが叫ぶ。
「あんた、騙してたんでしょ!本当は歩けるのに、ワザと障害があるフリをして!」
「俺の能力は”電気”。脳に直接電気信号を送る事で歩行可能だ。但し、能力を使っている間限定だがな」

すると、ヴィヴィはズボンをめくり上げる。
足には、大きくえぐれた傷があった。
「足に難があるのは本当の事さ」

ヴィヴィはリコルを指差す。

「リコルは俺の能力の”答え”に辿り着いた。気絶しちまったから、まぁギリギリ合格だ」

すると、ひとりでに扉が開く。中からナイフ、ハンマー、ゴルフクラブ…次々と鈍器が出て来る。
「嘘でしょ…」
「お前はホリデー…だったか?村人や仲間の為に修行していると聞いている」

リコルとホリデーの周囲を、ぐるりと囲う。
宙に浮く無数の鈍器が、一斉にホリデーの方へ向く

「仲間を守りたいんだろう?守ってみせろよ」

52キャプテン:2020/04/16(木) 08:25:16
ホリデーが眠るリコルの顔を家族と重ね合わせる。
「父さん、母さん、バカ弟、村のみんな。」
ホリデーが顔を上げる。周りを囲む鈍器が一斉にホリデーに向かう。
「うらあああああああ!!!」
ホリデーが恐怖を振り払う。タコ化した腕を伸ばして振り払い鈍器を全て吸盤でくっつける。その状態でヴィヴィに向かって鞭打つ。
「(鈍器を電気で操られない様に掴み、鈍器ごと鞭攻撃か。)…恐れで状況が見えてないな。」
ヴィヴィが足を払うと小さい雷撃が飛び、ホリデーにくっついている金属類を避雷針にしてタコ腕に落ちる。電流が体に走り腕が縮みホリデーは倒れた。
「残念だがホリデー、今回君は不合か…?!」
屋敷の外で轟音が響く。慌ててヴィヴィが車椅子に乗って二階窓から飛び出した。…ホリデーの手が微かに動いく。
「ま…だ…。」

幽霊屋敷外。
ヴィヴィが車椅子ごと着地する。辺りには泡や爆発跡が残りペプシマンとペプシウーマンが倒れていた。
「何…とか…爆発音に気づいてくれたか。気を付けろヴィヴィ、”体に力が入らない“。奴らは…まだ近くに居る。」

53ノートン:2020/04/16(木) 20:35:32
時間は少し遡るー。

100年後の現代。ここは、とある屋敷。
広い敷地の中には、手入れされた松や池などが並ぶ、大きな庭が広がっていた。ししおどしの音がコーンと響き渡る。

屋敷の中の一角、和部屋にて、2人の男が座っていた。

「じいちゃん、見てよ。今の俺の能力をさ」

そう言うと、ハレンはガラスを溶かしたり固めたりしてみせる。

「はっはっは。また変わった能力を手に入れたんじゃな」

ハレンの祖父、早川二郎が笑う。老人とは思えない程、筋骨隆々。ハレンとは真逆の、圧倒的存在感と威圧感があった。

「どうじゃ、ハレン。早川組のボスとしての責務は果たせておるかの?ドーヂのやつを手懐けるのは大変じゃろ」
「ああ、何とかやってる」

ハレンはガラスを元の形にもどす。

「この能力、友達のなんだ」
「…?そうなのか。それが何じゃ?」
「興味本位で入ったこの世界だけど、友達と戦うなんて聞いてない。悪いけど、もう早川組を辞めさせてもらう」

二郎のオーラが激変する。その形相は、穏やかな素顔から鬼の如き表情へ一変した。

「…ならん!友の屍を踏み潰してでも、お前は早川組の頭を勤め上げねばならぬ!」
「それじゃ、ただのブラック企業だ!」
「口答えするでない!!!」

二郎の拳が、ハレンの顔面を思い切り殴る。ハレンは吹っ飛び、障子を突き破る。

「ぐっ…痛え…」
「お前が首を突っ込んだ世界は、甘くはないぞハレンよ。任侠の世界を舐めるなよ…!」

二郎は部下に電話をかける。
「沖田か!1週間以内に、ペプシマン・ノートン・キャプティの3人の首を、ここへ持って来い!早川組、総出で殺すのじゃ!!!」

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55キャプテン:2020/04/18(土) 12:47:27
「もういい、下がりなさい。」
「…失礼します。」
そう二郎に言われ、ハレンは俯きながら和室を出て、そのまま早川家屋敷を後にした。

次元の狭間、ペプシウーマンが倒れている。
「何してるんだボス?留守番のはずだろ?」
ドーチ、シイがハレンと向き合う。
「だからボスはやめろ。状況が変わった。奴等は100年前に時間移動した。お前達も追ってペプシマン達を迎え撃て。…タイムトラベル!!」
ドーチとシイの姿が消える。近くに倒れているペプシウーマンに手をかざすと光が溢れた。
「これで2人は過去のペプシウーマンの任意でしか現代には戻れなくなった。この状況をじいちゃん達が知る事はもうない。」 

山を降りながらハレンは夕陽を眺める。
「じいちゃん、俺の世界は甘いかな。」

56ノートン:2020/04/20(月) 15:03:13
時は100年前ー
ペプシマン達の危機。ヴィヴィは単身、見えない敵と対峙していた。

「隠れてるのか…遠隔操作系の能力者か?」
ヴィヴィの足元から砂鉄が吹き出し、宙を舞い始める。
「電磁気を帯びた砂鉄は、俺にとってはソナーの役割だ。半径10メートル程度の敵ならこれで分かる」

砂鉄がいっせいに四方八方に散らばる。
と同時に、ホリデーが蛸化した腕で幽霊屋敷からジャンプし、ヴィヴィの横に立つ。

「お前…動けるのか!?」
「ゼェ…ゼェ…舐めないで…まだやれるわ…」
「ふふ…その根性だけは褒めてやるよ」

すると、ヴィヴィが背後を振り向く。
「捉えた!…逃さんぞ」

建物の影から、シイが出て来る。
シイの周りには、砂鉄がグルグル舞っていた。

「女か…それ以上近づくんじゃねぇ!このまま砂鉄で握り潰すぞ!」
「何女ってだけで毛嫌いしてるのよ」
「俺にも色々あるんだよ」

シイは両手を上に上げる。
「降参ヨ。私を殺さないで…」
「黙れ!まずペプシさん達を解放しろ!」

猛るヴィヴィ。だが、シイの更に背後に潜む信号機の男に、2人は気付いていなかった。

57キャプテン:2020/04/21(火) 12:17:30
目にも止まらぬ速さで信号頭の男が現れ、ヴィヴィを車椅子から離し羽交い締めにする。
「今だぜ、シイ!!」
「ドーチ、わかったヨ…グリーンカーテン。」
シイと呼ばれた片言の女の子の両掌の間から緑の光の帯が出てヴィヴィに向かって伸びる。
「その光に触れると力が入らなくなるぞ!!」
倒れているペプシマンが叫ぶ。
「なるほどな(ショック・ウェーブ・パルサー)」
ヴィヴィの体に電流が走り、信号の男ドーチに流れ出す。
「グワーッなんてな。シグナリオン赤!!」
青→黄→赤と信号が変わる。ドーチは電気に微動だにしない。ヴィヴィがもがくがドーチの羽交い締めもまるで固まった様に動かない。
「おかしい、何かの能力か?!」
「ヴィヴィ?!(くそ、状況を…よく見ないと)」
ホリデーが険しい顔になり、タコ化した両腕を伸ばしてヴィヴィとシイにくっ付ける。
「やれ、ヴィヴィ!!」
ヴィヴィが躊躇しながらも電流を流すとホリデーのタコ化した両腕を通してシイに電導する。
「くそ、マジかよ?!シグナリオン青!!」
電流が伝わる前にヴィヴィとドーチの姿が高速で森に消え、ホリデーは電流に耐えきり何とか立っていた。

58ノートン:2020/04/23(木) 22:01:08
「動けるわっ!」
「奴の能力の射程距離外になったか!?」
立ち上がるペプシマンとペプシウーマン。
しかしホリデーは既に、満身創痍だった。

「ヴィヴィを…助けて…」
その言葉を残し、倒れるホリデー。
ペプシマンは怒りに打ち震えていた。

「…許さんぞ!姉さん、ホリデーの介抱と、この刺客の拘束を頼む」
「分かったわ…でも、あなた1人で大丈夫なの?」
「俺も行きます」

リコルが幽霊屋敷から出て来る。

「ヴィヴィが連れ去られる所は見たよ。今回の敵は”幻術”や”操作”で相手を惑わせるタイプだ。”力”で戦うあんたには苦手なタイプだろ?師匠」
「…その通りだ。共に戦ってくれるか?リコルよ」
「勿論だ!」

走り出す2人。幽霊屋敷の周辺は森に囲まれており、探索時間は日没までが必須だった。

「あの信号機野郎…まさかヴィヴィを未来へ連れて行きはしないだろうな!?」
「否、それは不可能だ。姉の能力は”100年前へのタイムスリップ”。過去の人間を、未来に送る事は出来ない仕組みさ」
「なるほど…」
「さぁ、急ぐぞ!夜になれば、森は真っ暗だ。」

59キャプテン:2020/04/24(金) 23:53:28
森の中、ヴィヴィが投げ飛ばされる。ドーチの体は電流で焦げて煙が上がっていた。
「数分間電流をくらったのに、結構タフだな。」
ヴィヴィが立ち上がり静電気でボサボサの頭を払っているとペプシマンとリコルが合流して来た。
「よく見つけれたな。」
「コレですよ。」
リコルの血がヴィヴィの服の血にくっ付いた。
「な〜る程、ウィンドウブレイカーで俺の服に付いたリコルの血を血液同士で引き寄せたのか。」
加速するドーチが3人の周りを走り出す。
「異常な加速だが頭(の信号機)が悪いな。ショックウェーブパルサー!」
ドーチの頭の信号機が磁力によって3人の方に引き寄せられる。しかし青信号の発光が赤に変わり動かなくなった。ペプシマンが突っ込むのをヴィヴィが止めた。
「無駄だ、青は加速能力、赤は動けないが絶対防御能力だ。赤から変わった瞬間を狙うしかない。」

動けないドーチを3人で囲む。
「(3人相手かよ、まあ少し無茶するかな。)」
ドーチの万事休すかに思われた。しかし、止まったドーチの体に運動エネルギーが蓄積されていく。

60ノートン:2020/04/25(土) 21:50:37
一方、現代ではー

早川組事務所の一室にて、7名の男女が並ぶ。
そして、それをまとめる坊主頭の若頭。彼の名は、沖田総司。
腰に長剣をぶら下げており、年齢40にて早川組 ”若頭”の地位まで上がる。その歴史は凄まじく、体中に切り傷が刻まれていた。

「倣えぃッッ!!」
沖田の言葉で、10名の組員は背筋をピンと伸ばす。

「元頭の二郎さんから、直々に指示があった。今から配る資料をしっかり頭に叩き込めッ!!」

資料には、ノートン・キャプティ・ペプシマン3名の情報が記載されていた。

「能力者と戦えるのは、能力者だけだ。能力の無い者が束になったところで無意味!よって、ここにいる7名、早川組の能力者のみで奴らの首を刈る。いいなッ!」
「はい!!」

黒人のエドモンドが手を挙げる。

「おぅ、どうしたエドモンド」
「早川組能力者の内数名、ここに居ないですが」
「うむ、ドーヂとシィは既に動いていると現組長から連絡があった。ヒデゥンは”オットセイ”事件直後から行方不明だ」
「行方不明…ですか」
「他に質問のある者はいるかッ!?」

エドモンドが再度、手を挙げる。

「エドモンド、次は何だ!」
「奴らの足取りは?今どこにいます?」

それを聞いた瞬間、沖田が凄まじいスピードでエドモンドの胸ぐらを掴む。

「エドモンドォ…俺は資料を読めと言った…俺をあまり怒らせるな」
「す…すみません」

沖田は怒りの形相で他の6人を見る。

「ノートンとキャプティの2人は今”阿歌古(あかご)市”に潜伏している。探せッ!!!」

61キャプテン:2020/04/27(月) 12:23:38
「わかったらお前らとっとと行け!!」
「うっす!!」
沖田の号令で早川組の7人が部屋を出る。だが白髪中年の黒人男性を途中で呼び止める。
「バルトゥース・グーナゥベック、ラス消防署総監の立場から何か情報は来ていないのか?それにブラックボックスで動いていたのは実質お前らだろ?」
呼ばれた男性が頭を横に振りながら言う。
「いいえ、私は待機でしたし。ですが最近のハレン様の行動は少し引っかかります。」
沖田が腕を組む。
「うーむ、(やはり二郎の伯父貴と揉めてから何か変化が…しかし)…いや、今は阿歌古市に集中してくれバルトゥース…いや、バルト総監。」…

…100年前、次元の狭間。
森の中、私と彼しかいなかった。目の前にはよろよろで膝をつくドーチだけ。
「シュワー。」
「流石…だな…ペプシマン、打つかる前に泡をクッションにしたか。だが…2人はぶっ飛んだな。」

数秒前、
「シグナリオン『青の一方通行』。」
ヴィヴィ、リコル、ペプシマンに囲まれるドーチ。だが被る信号機が青に変わった瞬間、既に運動エネルギーを溜め込んでいたドーチは青の加速でトップスピードになり瞬時に赤の無敵状態で3人に突進した。

「さっきの技、体に負担が大きいみたいだな。勝負アリだ。」
ペプシマンの言葉にドーチが冷笑する。信号機が変形し赤信号の周りに8方向の矢印信号が現れた。
「30秒だ、技の名は『赤の交差点』。赤の無敵状態に矢印信号を加え、無理矢理に体を超加速させ8方向から打撃する。アンタの泡のクッションも無意味だ。この一撃を耐えれれば…貴様の勝ちだペプシマン。」

62ノートン:2020/04/28(火) 22:14:44
急加速で四方八方からへ移動。
常人の目では捉え切る事の出来ないスピードだった。
「この超速で、今からお前に連打をする…!?」

ドーヂに衝撃が走る。高速移動の刹那、ドーヂが見たものは、ペプシマンの笑い顔だった、

「私はね、そうやって”力”でぶつかって来てくれた方が嬉しいのさ」
ペプシマンの全身から、ブクブクと小さな気泡が出現する。気泡はペプシマンを覆う。

「私の能力は”炭酸”だ。時には爆発的な攻撃力を生み出し、時には絶対的な防御となる」
「だから何だ!?無駄な足掻きだ!」

多方向からドーヂの超高速攻撃。
しかし、ドーヂの攻撃が泡に触れた瞬間、爆破が起きる。
「何っ!?」

ドーヂが攻撃する度に巻き起こる爆発。
ボッボッボッボッと激しい爆音が炸裂する。

数秒後、倒れたドーヂをペプシマンが見下ろしていた。
ドーヂの全身は爆破の影響でボロボロになっていた。

「ぐっ…あの攻撃を喰らって無傷とは…完敗だ。これ以上打つ手がねぇ。煮るなり焼くなり好きにしろ」

「君が操作系の能力で攻めて来ていたら、私も危なかった…今から君を拘束するが、私の要求を飲めば、殺しはしないさ」
「要求?」

「一つ、これ以上我々に危害を加えない。二つ、君たちの目的の開示。事が済んだら、君たちを無事解放すると約束しよう」

話を聞いた後、ドーヂは両手を上に上げる。
「分かった、降参だ。要求を飲もう」

63キャプテン:2020/04/29(水) 19:28:35
ペプシウーマンの所へ戻るとみんなが待っていた。ぶっ飛ばされたヴィヴィの体のあちこちに木が刺さって血が止まらない。リコルが顔を伏せる。彼は体をバラけさせて木をかわしたらしい。ドーヂがシイの方を見る。
「シイ、俺は人を操ったり命令するのが嫌いだ。だからあくまでもお願いだ。頼めるか?」
シイがため息をつく。掌を合わせて広げ緑の光の帯を出し、ヴィヴィの傷口に通す。
「グリーンカーテンは癒しの力。でも傷が治ってもリラックス効果で脱力して1日は動けないヨ。」
ヴィヴィ、リコル、ドーヂ、ホリデーの姿が元に戻った。

「…ペプシマン、ノートン、キャプティの首を取る。今回の命令はハレンではなく早川組元組長、二郎からの命令だ。300年以上続く早川組だが目的は俺達も分からないんだ。」
別荘で横になりながらドーヂが話す。周りがざわつく中、ペプシウーマンとヴィヴィだけが浮かない顔をしていた。

「何を言ってるの?早川組はもう断絶しているわよ。」

ペプシウーマンのその言葉に場が静まり返る。その場にいる全員が何か恐ろしい現象の一部を垣間見たようだった。

64ノートン:2020/04/30(木) 12:37:06
「早川組は、滅んでいた…のか?」
どよめく空気の中、ペプシマンが席を立つ。
「さて…と。姉さん、後の説明は任せていいかい?」

ペプシマンはドーヂ達を見る。
「彼等の話で、未来の姉さんが無事な事は分かったが、やはりキャプティ達が心配だ。一刻も早く、現代へ戻らなくては」

リコルはガッツポーズをする。
「師匠、後でかけつけるよ」
「うむ、待っているぞ!」

ー時は現代。ペプシマンがワープした先は、阿歌古市だった。ビルが立ち並ぶ都会である。
「ん…!?」

ペプシマンの目に止まったのは、黄色のアクアだった。運転席からはキャプティが出て来る。

「キャプティ!無事で安心したぞ。良い色の車に乗ってるな!」
「まぁね。この色なら目立つから探しやすいでしょ?」

すると、キャプティは車のボンネットをバンバン叩き始めた。
「キャプティ、何してるんだ?」
「猫が下にいないか、確かめてるんだよ」

後ろから、ノートン、更にジェノが出て来る。
「その様子なら、今のこの状況は把握してるみたいだね」
「ああ。それにしても、ジェノか!?何故ここに!?」
「ペプシマンさん達の危機ですからね。俺が駆けつけない訳にはいかないでしょう」
「しかし、君は今能力を使えないはずだ」

ジェノは目をギラギラさせ始める。

「ええ、いるんですよ早川組に。俺の能力を”封印”した奴が。数珠を持ったババァです。丁度いい機会だ…炙り出してやる」

ノートンが話し出す。
「それと…今の俺たちは、訳あって能力が使えない。彼も含めてな」
ノートンが指差す先に、ヒデゥンがいた。

65キャプテン:2020/05/01(金) 12:33:46
「コイツは?」
ヒドゥンの屈託のない笑顔にペプシマンが身構える。
「初めましてだね。僕はヒドゥン・ステイフロア。ブラックボックス直轄早川組組員だよ。」
殴りかかるペプシマンをノートン達が抑える。
「ここに来たのは交渉のためさ。今現在、ハレンの能力によりノートン、キャプティ、ハレン自身と僕も含めて4つの能力がシャッフルされてるらしいんだ。能力は元の能力者以外うまく使用できないみたい、ハレン以外はね。」
ペプシマンが仕方なく腕を組み聞く態勢になる。
「僕は自分の能力を取り戻したい。そっちもだろ?」
「…早川組にとってはこちら側の能力が使えないこの状態はメリットだと思うが?」
ペプシマンの指摘にヒドゥンが栗毛をくりくり弄り、わざとらしくため息をつく。
「それだと僕は用済み、消されるだけさ。組員にこの事がバレずに能力を取り戻したい。今この町は組員によって包囲されてる。色々と手伝うよ。」
ペプシマンが前に出る。
「嫌だと言ったら?」
ヒドゥンが微笑みトランシーバーを取り出す。
「この町にいる組員全員に君達の居場所がバレるね。どうする?」

66ノートン:2020/05/02(土) 21:52:58
「従うしか無いようだな。不本意だが…」
「懸命な判断だね」

ヒデゥンは話始める。
「早川組か…ふふふ…君達はとんでもない組織に目を付けられたのさ。正直言って、命を諦めた方がいい」

「何だとッ!?」
「早川組は君達が思っている以上の巨大組織なんだ。裏での様々な暗躍…多くの仕事をこなしてる。その依頼主は、警察やレスキュー隊、ブラックボックス。様々な組織と裏で繋がっているのさ。」

言葉に詰まるノートン。ヒデゥンは話を進める。

「外部からの派遣も多くてね。僕もそうだが。これは早川組が裏で暗躍する代わりに”人材”を取り引きとしている為さ。等価交換ってやつだ。」

「そうなのか…シュワァァ。興味深い。早川組で働く派遣社員は誰がいる?」
「例えば、ドーチは”警察”からの派遣。バルト総監は…」

「バルト!?レスキュー隊のバルト総監か!?」
ジェノがヒデゥンの胸ぐらを掴む。
「ぐっ…。ほ…他に誰がいるって言うんだよ」
「でたらめ言うんじゃねぇ!!レスキュー隊の”総監”だぞ!?」
「痛いな…離せよ!」

ヒデゥンは強引にジェノの腕を振り払う
「僕の知ったこっちゃない。自分の目で確かめろよ」

ヒデゥンはジェノから離れる。
「指令を出した”元頭”早川二郎をどうにかしない限り、早川組は君らを殺すまで追ってくるよ!傑作だな」

静まり返るメンバー達。暫くして、ノートンが口を開く。
「敵の”大きさ”が推し量れた所でだ…こちらでまともに戦えるのはペプシマンだけだ…どうする?」

「先ずは、”数珠使いの老婆・たけたけ”、”早川組組長・ハレン”この2人を探すべきだ。それでみんなの能力は戻る…シュワァァ」

キャプティが拳を握りしめる。
「全員の能力が戻ったら…早川二郎を倒す…!」

67キャプテン:2020/05/03(日) 17:51:33
「ハレンはノートンとキャプティとヒドゥンで。キャプティが相手なら能力交換は元の能力に戻す形になるから簡単には使えない。たけたけは私とジェノで。それと”これ“を持って行け。」
そう言うとペプシマンが鞄をキャプティに渡す。そして二手に分かれた。

ハレンが阿歌古市に到着した。
「ヒドゥンのヤツ、突然通信してきたと思ったら阿歌古市で待ち合わせだと?まあ上からの捜索協力の要請なら仕方ないか。」
誰かの気配を感じる。カランッと何かが足元に転がって来た。よく見るとそれはペプシコーラの缶だった。
「何だ、ポイ捨てか?」
プシューッと缶から音がしてハレンが何かを察する。急いで離れようとした瞬間、缶が破裂し吹き飛ばされた。
「ペプシマンの”シュワー“か?!」

「命中!!これなら戦える。」
キャプティが物陰から次のペプシコーラ缶を構える。

68ノートン:2020/05/04(月) 12:43:35
「このペプシ缶…まさか」
体勢を立て直すハレンだが、次のペプシ缶はすでに足元にあった。
「しまった…!!」

ペプシ缶、爆発。巻き起こる爆風。
「やったか!?」
「いや、キャプティ。よく見てみろ…」

ハレンの体を、ガラスの膜が覆っていた。
「グラスオブハート。ヒデゥンに嵌められたか」
ハレンが語り始める。

「ここにいるんだろ?キャプティ、ノートン。悪いけど俺は戦う気はないよ。トンズラさせてもらう」

キャプティとノートンが物陰から飛び出す。

「ハレン!」
「もう止めようこんな事!俺たち友達なのに…何やってんだよ」

ハレンは暫し沈黙を続けた後、重い口を開く。

「俺だって後悔してる…でももう遅いんだ。爺ちゃんは止まらない。早川組は止まらない」

その時、キャプティ達の後ろから、何者かに攻撃される。

「冷凍ビーム!」
氷の微粒子がキラキラと、ノートンの足元目掛けて発射される。

「やばい!逃げろ!!」
ヒデゥンがノートンを突き飛ばす。ノートンがいた場所は、瞬く間に氷漬けとなった。

「何が起きた!?」
ノートン達が後ろを振り向く。そこに立っていたのは…

「何だ…あれは!?」
キャプティ達に衝撃が走る。外見は等身大の雪だるま。現在の季節は秋。ありえない光景だった。
「組長を狙うと信じていた。ビンゴだ。」

話す雪だるまに、動揺が隠せない2人。
「雪だるまが喋ってる…」
「いや、キャプティ。着ぐるみだよ絶対」
「着ぐるみじゃねぇ!!!」
雪だるまは怒っていた。

「俺の名はスノーボールΩ。正真正銘の雪だるまだ」

冷凍ビームを発射しながら、ハレンに話す。
「組長!逃げてくれ。ここは俺が引き受ける」
「…分かった。無茶するなよ、スノーボール」
「Ωを忘れちゃいけねぇ組長!俺の名はスノーボール”Ω”だ!」

69キャプテン:2020/05/05(火) 12:25:57
ハレンの姿が路地裏へと消える。スノーボールΩがそれを見届けて頷き、トランシーバーを取り出す。
「ヤバイな、これ以上敵が増えたら勝てない。」
キャプティがスノーボールΩに缶を投げつける。炭酸が爆発し、トランシーバーが壊れてスノーボールΩの雪だるま姿が崩れる。…しかし欠けた部分からビームの光が漏れてパキパキッと音を立てて凍り始める。
「ノートン、いったん退こう。ペプシマンの特殊炭酸入り缶じゃ無理がある。能力が取り戻せないんじゃ勝ち目が無い。」
しかしノートンは氷漬けになったヒドゥンを見つめ、そしてスノーボールΩに向き直る。
「いや、戦おうキャプティ。敵とはいえヒドゥンは僕達に勝負を託してくれた。彼を助ける。それにまだ勝機はある。」
元に戻ったスノーボールΩに向き直り、2人はペプシコーラ缶を取り出して戦いを挑む。スノーボールΩが笑う。
「ハッハッハ!!いいぜ、氷像になりな!!」

70ノートン:2020/05/05(火) 21:31:02
「勝機って…何か作戦でもあるの?ノートン」
ペプシを持ったまま静止するノートン。その時、ノートンは何か思い付いた顔をした。

「キャプティの中には俺の”スパーキング”が眠ってる。どう、全く使えないか?」
「この前試してみたけど、全くだね」

ノートンはキャプティの肩を叩く。
「キャプティ、昔の自分の名言を思い出せ!」
「名言?」
「俺の肉を食らえ!とか、ほら…学生の頃に色々言ってたでしょ」

キャプティは少し呆れた表情をする。
「いやいや、このタイミングで何言ってんの!」
「”人はピンチをチャンスに変えるんだよ”ってキャプティ言ってたじゃん!今まさに、有言実行する時だよ。さぁ、気を溜めてみろ!」
「いや…いきなり言われても…」
「体内の気を感じるんだ。ゆっくりでいい。気の流れをコントロールして…」

スノーボールΩが若干待ちぼうけしながら、話しかけてくる。
「おーい。もう攻撃していいか?」
「駄目だ!もう少し待て、雪だるま!」

”雪だるま”のワードを聞いた途端、スノーボールΩがプッツンした。
「雪だるまじゃない、スノーボールΩだ!!何度も言わせやがって…許さん!冷凍ビーム”冷凍ボックス”」

キャプティ達の周囲を、氷の箱が覆っていく。
「まずいぞ!閉じ込められる前に逃げろ!」

しかし、時すでに遅し。キャプティ達の足元が凍っており、動けない状態だった。

氷の膜が2人を覆い、完全なキューブ型となり、閉じ込めた。
「このまま極寒の中で凍え死んでしまえ!」

71キャプテン:2020/05/06(水) 20:23:02
「クソ、コーラの中身が凍って爆発しない。」
体を身震いさせながら閉じ込められた氷の内壁に缶を投げつけるが転がるだけだった。キャプティが膝をつく。
「ノートン、すまない。」

「…終わったな。」
スノーボールΩが背を向ける…するとポーヒーッと音がして光線が通り過ぎ背後を見る。氷の箱にヒビが入り隙間から大きな炭酸の気泡が溢れて破裂する。氷の箱に穴が開き、キャプティとノートンが身を寄せ合いながら現れる。
「待たせたな。さあ、反撃開始だ。」
「そうだな、ここからだ。」
そう言うとノートンが鞄を振り回してスノーボールΩへ投げ飛ばした。
「またコーラの缶か?冷凍ビーム!!」
スノーボールΩが鞄に冷凍ビームを打つ。すかさずキャプティが指先からスパーキングを放つ。鞄が破裂して大量の炭酸水がスノーボールΩにぶっかかって雪の体に染みていく。
「貴様ら、何のつもりだ?!」
疲労困ぱいのキャプティの体をノートンが支える。

72ノートン:2020/05/07(木) 23:56:23
倒れ込むキャプティ。無理な技の使用の為、体の負荷はかなり大きかった。
「ごめんノートン…。山ビームを出すので精一杯だ」
「いや、良くやってくれたキャプティ。あとは任せろ」

一方、ペプシマンとジェノはある場所を目指していた。

「ヒデゥンの情報によれば、たけたけの行動ルーティンは…

①必ず2人以上で行動する。
②戦闘前には、近くの神社でお祈りをする。
③お祈り後、1万円のお賽銭を入れる。

だそうです。奴を信じれば…ですが」

ジェノはペプシマンに情報を伝える。

「今は信じるしかない。この町には神社は一つだな?」
「ええ。阿歌古神社です。今もそこにいるかは、正直望み薄ですが…」

「1万円も賽銭箱に入れるんだろう?そんな大金入れる奴そういないからな、確かめれば良いさ。それで足取りが分かる」
「どうやって確かめるんです?」

ジェノの疑問に、ペプシマンは即答する。
「勿論、神社の賽銭箱を片っ端から破壊するのさ」
「えっ…!?何て罰当たりな…」
「私は神や仏の類は信じない類なのさ。シュワッハッハッハ」

2人は、阿歌古市の神社に到着した。

73キャプテン:2020/05/09(土) 21:54:02
階段下から隠れて鳥居の先を覗く。殺風景で寂れた神社の社に男2人が手を合わせる後ろ姿が見えた。1人はスーツ姿にマフラーを深く被っている。もう1人は…
「バァールートーッ!!!」
ペプシマンが止める前にジェノは怒りで走り出していた。スーツマフラーの男が振り向くがジェノの拳は既にバルトの後頭部を殴りかけていた…瞬間

ジェノは組員2人の足元に倒れていた。
「(殴った感触はあった。なのに同時に俺自身の後頭部が殴られていた。これじゃまるで…“俺が俺を殴った”みたいじゃないか?!)」

焦ってジェノが2人から後ずさる。
「ジェノ・ライン、久しいなぁ。だが…目上の者への態度がなっとらんぞ!!」
「兄貴、大丈夫ですかい?コイツはあっしに任せてくだせぇ。この名古・筆字(なご・ひつじ)がケジメ付けさせます。」
スーツマフラーの男が名乗り、バルトとジェノの間に割って入った。

74ノートン:2020/05/10(日) 20:46:09
階段下から、ペプシマンが飛び出す。ジェノを庇うように、彼の前に立った。
「バルトさん、こいつまさか!」
名古が叫ぶ。バルトは手配書を確認した。
「あぁ、そのようだ。まさかそちらから現れるとは…罪人ペプシマンよ」

ペプシマンは静かに話す。
「ジェノ、ここは引くぞ!私が合図するから…」

しかし、ジェノはペプシマンを振り払おうとする。興奮状態の為、全く話を聞き入れなかった。

「どいて下さい!俺は確かめたい!バルト総監が敵なのか、味方なのか…痛った!!」

ペプシマンは、興奮するジェノの頬を引っ叩いた。

「聞けジェノ!!私達は早川組と争いに来たのでは無い!能力を取り戻し・敵の大将を討ち・平凡な日々を取り戻す。これが目的!冷静になれ!!」
「し…しかし…」

「いちいち出食わす相手と戦闘していたのでは、こちらの身が持たんぞ!引く勇気を持て!」

その時、ペプシマンの周りに、突如具現化された巨大な数珠が発生した。フワフワと周りを舞う数珠は、ペプシマンを締め付け、そして…

「この技は見覚えがある…!逃げて下さい、ペプシマン!!」

ジェノの言葉が虚しく空に響く。
ペプシマンの能力は、封印された。

阿歌古神社の隣、高層ビルの7階、カフェテリア”トモアキLIFE”
カフェの窓辺から、2名の人影が揺らぐ。

そこに居たのは、たけたけとエドモンドだった。

「ヒッヒッヒッ…最近ワシはお賽銭は止めて、神社を見ながら茶を飲む事にハマっておっての!敵自ら姿を表すとは、何を考えてるのやら…」

笑うたけたけ。エドモンドも優雅に下の景色を眺める。
「しかし、運が良かったですね。こんな呑気にコーヒーブレイクをかましていて、大丈夫かと思っていましたが」

「人間ゆとりが大事なのじゃよ。ワシらは下で戦闘をする必要は無い。しかし、こうも容易く!能力を封じられるとは…愉快愉快♪」

75キャプテン:2020/05/12(火) 00:00:55
筆字が拳同士を打つけ、ビルの方を見上げ走り出そうとする。それをバルトが殴って止める。
「バルトの兄貴、無力な奴を痛ぶるなんて仁義に反しやす。」
「馬鹿野郎!!この戦いはもう、そういう次元の話じゃねぇんだ。勝たなきゃ早川組は”消えちまうんだ?!“」
バルトの言葉に場の全員が目を向ける。
「消える…どう言う意味なんですバルト総監?!」
ジェノが必死に詰問する。バルトが握り拳を広げ筆字の肩に乗せて言う。
「…分かってくれ。」
筆字が口を開こうとする…が思いとどまり、ジェノとペプシマンに向き直り戦意の眼差しを向ける。

「ジェノ、使いたくは無かったが奥の手だ。」
ペプシマンがリュックサックから有り得ない物を取り出した。”信号機“だった。バルト達は驚きを隠せない。ペプシマンがそれを被りジェノを無理矢理に担ぐ。
「ドーヂ、加速してくれ。シグナリオン…リモートランナー!!」

76ノートン:2020/05/13(水) 12:22:07
「どうなってやがる!?あれは…」
「そうだな、あれはドーヂの能力。奴らの中に、能力を奪う者がいるのか?」

バルトが考えを深める。

「しかし、1人に対し能力は1つ。2つ以上の能力を持つ事は不可能。ならば奪ったのでは無く、ドーヂが我々を裏切ったか?」

名古が焦り、バルトを鼓舞する。

「バルトさん、そんな呑気に構えてて良いんすか!?奴らを追わねぇと…」
「ふふ…焦るな焦るな。追跡はしている」

バルトはポケットからレーダー探知機を取り出す。

「ジェノが飛びかかってきた時に小型発信器を付けておいた。ジェノが奴らと離れる事は無いだろうからな…追跡するぞ」
「うす!」

カフェテリア”トモアキLIFE”では、たけたけがゲラゲラ笑っていた。

「バルトの奴め、まんまと逃げられおって…情けない奴じゃ!ヒャヒャヒャ」
「俺たちも動きますか?」
「何度も言わせるで無い!ワシらはここを1歩も動かん!他の組員が”奴らの首を取った”との報告を待つだけで良いのじゃ」

同刻、町の外れではー

ノートンとスノーボールΩが対峙していた。

「俺の秘策、見るが良い。雪だるま野郎!」

77キャプテン:2020/05/15(金) 12:22:40
「無駄なことを、炭酸も凍れば意味がない。食らいな、空気すら凍てつく冷凍ビームを!!」
スノーボールΩからビームが拡散する。空気がパキッパキッと音を立てて凍り始める。その中をノートンが避ける事すら出来ずに必死に進みスノーボールΩに近づく。
「もう…少しで…。」
やっとの事で目の前に辿り着き、ノートンが握っている”何か“をスノーボールΩに突き立てる。…そこでノートンの体は凍りついた。
「最後まで諦めない、敵ながら天晴れ…?!」キュイイイイイイイイイイィィィィィィィン!!

スノーボールΩの体内で何かが削れる音がする。慌ててノートンの手を見ると、”シャープペンシル“が握られていた。
「何を…何をしたああああああ?!」
スノーボールΩの体から気泡が溢れ出し、とてつもない爆発を起こした。スノーボールΩが雪の残骸となる。氷が溶けてノートンが立ち上がる。
「今の俺の能力、スクエアガーデンでシャー芯をダイヤに変化させアンタの体内で削り合せ摩擦熱を生じさせた。そして体内のペプシマンの炭酸を溶かして爆発させたのさ。アンタの雪の体は動く為に柔らかく出来ているみたいだから凍らせて邪魔もできない。」

78ノートン:2020/05/16(土) 11:27:28
氷が消え、目覚めるヒデゥン。
「僕は氷漬けにされたはずじゃ…まさか、スノーボールを倒したのか!?」

ノートンとキャプティは疲労から意気消沈していた。
「こりゃ、暫くは動けんな」
「やっぱり俺たちに合ってないんだよ、シャッフルされた能力は」
「だな。ペプシマン達は大丈夫かな?」

キャプティが不安げな表情を見せる。
「ペプシマン、悪い癖が出てないといいけど…」
「癖?何だっけ?」
「賭け事だよ。あの人は根っからのギャンブル好きだからね」

ーその頃、逃走したペプシマンとジェノは、裏路地の隅に隠れていた。

「すみませんペプシマン…俺が暴走したせいであなたの能力まで…」
「シュワッハッハ!気にするな。大した問題じゃないさ」

刹那、2人は殺気を感じ、振り返る。後ろには筆字が立っていた。
「見付けたぜぇ!覚悟しな」
「あの野郎…何故俺達の居場所を!?」

動揺するジェノ。それに比べ、ペプシマンは極めて冷静だった。
「君、名は筆字…だったな。1人か?」
「てめーらなんぞ俺1人で十分よ!バルトの兄貴は別行動だ」

ペプシマンがニヤリと笑う。
「どうだ筆字…私と一つ賭けをしないか?」
「賭けだとぉ!?」
「私が勝ったら、たけたけの居場所を教えてくれ。その代わり、私が負けたら…ノートン・キャプティの居場所を教えよう」
「待って下さい!仲間を売る気ですかっ!?」

更に動揺するジェノをよそに、筆字も笑い始めた。
「良いだろう、乗った!(能力が使える俺が勝つに決まってる…馬鹿だぜこいつ)」

筆字の了承を得た途端、ペプシマンは道路を思い切り殴る。轟音と共に地面にヒビが入る。
「な!?何て力だ…」
「私は基礎身体能力には自信があってね。能力が無くても、私は強いよ」

79キャプテン:2020/05/17(日) 10:02:08
「…なるほど、ならこっちも手の内を魅せるのが礼儀っちゅうもんですなぁペプシマンはん。」
筆字が社に供えられていたリンゴを持ち出し、代わりに小銭を置いた。そしてポケットからハンカチを取り出すとリンゴに被せた。
「俺の能力の名は”天っ衣(あまっころ)“、布や服の繊維を操る事ができる。」
ハンカチがクシャッと縮まると中から潰れたリンゴの汁が垂れてきた。ジェノがそれを見て慌てて服を脱ごうとする。
「安心して下さい、あんさんには手ぇ出しまへん。せやろ?俺の相手はペプシマンはん、御前さんや。」
それを聞いてペプシマンが豪快に笑いながら、服を脱ぎ捨てる。全身の銀色の筋肉が露わになる。
「シュワッハッハッハッハ!!こりゃあいい勝負ができそうだ。」
ペプシマンが真っ直ぐ突っ込み殴りかかった。だが筆字のスーツが膨らみペプシマンのパンチのクッションになった。逆に筆字のスーツが筋肉の様に膨らんでペプシマンを殴り飛ばした。
「一種のパワードスーツっちゅうモンですなぁ。この能力、いろいろと応用が効きますんや。」

80ノートン:2020/05/18(月) 23:27:23
ペプシマン達が路地裏で戦闘を始めた頃ー

路地裏の少し先、小さな古本屋で立ち読みする大男がいた。
彼の名は、花園 龍雅(はなぞの りゅうが)28歳。早川組能力者メンバーの1人である。
金髪の風貌に、両腕にはドラゴンの刺青。見た目は派手だが、無口で静かな性格だった。

何より彼は極度の”めんどくさがり屋”であった。

誰かが尻を叩かなければ、全く動かない。逆に花園が動けば、戦況が大きく変わる事が多々あった。それほどの戦闘力を持ってしても、彼の脳裏には、常に「面倒臭い」の言葉が過ぎっていた。

そんな彼が唯一夢中になれるものが『読書』である。
読み始めると、最後のページまで一気に読み続ける癖があった。

彼が今回の抗争の最中、たまたま古本屋が目に止まり、たまたま読みたい本があった。
それだけの理由で、彼は抗争を放棄し、今現在本を読み続けている。

彼がもし動いていたならば、ペプシマン達は更に苦しい窮地に立たされていた事は容易に推測される。だが結果として、”花園は動かなかった”。

これはペプシマン達にとって大きな幸運であった事を、誰も知る由はなかった。

そして、路地裏ではー

ペプシマンが上半身を落とし、グッと構える。
「なるほど、良い能力だな。ちなみにさっきのは軽いジャブさ。今度は少し強く行くぞ」

目にも留まらぬ高速パンチ。ドゴッ!!!と凄まじい音がするが、結果は…ノーダメージだった。

「無駄でっせ。俺の天っ衣は最強だ」

81キャプテン:2020/05/20(水) 07:46:35
「次はこちらから行きまっせ。」
筆字のスーツが伸縮し、ペプシマンの体を拳で連打する。ペプシマンは微動だにせず、ガードを崩さずに語りだす。
「アンタみたいな仁義に熱い男が何で二郎なんかの手先をやっているんだ?」
筆字が眉間にシワを寄せた。上着を脱ぐと大きく広がりペプシマンを包み込む。
「テメェに二郎の伯父貴の何がわかんだ?!」
上着が収縮してペプシマンを絞り潰そうとする。
「ペプシマン?!」
ジェノが叫んだ。
「俺みたいな自分を曲げる事ができねぇ馬鹿に、伯父貴は盃を交わしてくれた。テメェに何がわかんだよ!!」
不意にペプシマンが上着を摘む。そのまま指の力だけで引きちぎり始めた。穴が開き、上着を細切れにする。
「シュワーッ…分かってないのはアンタの方だぜ筆字。本当は気付いてるはずだ。二郎が”この世界“を破壊している事を。」
筆字が今度は”マフラー“を外した。隠れていた傷だらけの顔が露わになり、怒りの形相に満たされる。

82ノートン:2020/05/21(木) 12:06:29
「この顔の傷は全て、二郎の叔父貴に殴られた時のものなんや」
「そうか…災難だったな」
「誤解すんじゃねぇ!これは叔父貴なりの愛の形…そして、俺の誇りや!!」
「シュワァァァァ…ちょっと気持ち悪いぞ…」
「殺す!!!」

マフラーを頭上でグルグルと振り回す筆字。
繊維を操作し、どんどん長くなる。

「そんなに長くしてどうする…!?」

伸ばしたマフラーは、強力且つ広範囲を攻撃可能なムチへと変化。
バチッッ!!と激しい音を立て、ペプシマンの太ももの皮膚を鞭打する。叩かれた皮膚は一気に腫れ上がった。

「ぬぅぅぅ…ただのマフラーがこの威力…堪える…」
「まだまだ行きまっせ」

強烈な鞭打の応酬。バチッバチッッ!!と激しい音が鳴り響き、全身を満遍なく打ち付ける。防御に徹するしかないペプシマンだが、ダメージは確実に蓄積していった。

「ぬん!!!」

ペプシマンが地面を思い切り殴る。
割れたアスファルトを盾にして、筆字に突っ込む。

「無駄だ、俺の能力は繊維。忘れた訳じゃあるまい、ペプシマンはん」

マフラーが元の長さにシュッと戻ると同時に、繊維をギュッと固める。
硬質感したマフラーは切れ味の鋭い剣となった。

「斬ッ!!!」

一刀両断。筆字の剣は、アスファルトごとペプシマンを切り裂いた。

83キャプテン:2020/05/22(金) 12:18:45
「往生セェや!!」
ペプシマンから血が滴る。そのまま筆字のマフラーの剣が蛇の様にウネる。
「シュワー。(”アイツら“が来るまで何とか耐えないとな!)」
ペプシマンがマフラーの剣先を脇に挟んで掴んだ。そのままマフラーを綱引きの様にして筆字を引き寄せて腕を掴む。
「つかまえたぞ!!」
筆字が残っている服を膨らましてガードする。しかしペプシマンはその服を摘んで力任せに何度も引きちぎる。ボロボロの格好になった筆字をペプシマンがタコ殴りにする。
「シュワシュワシュワシュワシュワー!!!」
倒れ意識の遠のく筆字、ふと昔を思い出す…

…雨が降っていた、倒れている筆字に二郎が傘を傾ける。
「ボウズ、ウチの組に入る気はないか?」…

…意識が戻った筆字は、ボロボロの体で何とか立ち上がる。
「まだだ…まだ終わっちゃいねぇ!!」

84ノートン:2020/05/23(土) 17:55:50
時は100年前ー

ペプシウーマンがワープゲートを開く。
「阿歌古市の入り口まで送るわ。敵はあなた達を知らないはずだから、いきなり襲われる事はないでしょうけど、十分気を付けるのよ」
「俺は未来へは行けないが、無事を祈ってる」
「はい。色々とありがとうございました」

リコルはチラッとドーヂ達を見る。

「こいつらはどうするの?」
「しっかり見張っとくわよ。ヴィヴィがね」
「えっ…?」
ヴィヴィが動揺する。

「前から気になってたけど…何で女を避けるのよ」
ホリデーの問いに、ヴィヴィは暫く沈黙を続けた後、話し始める。

「リコル、ブラックボックスという組織を調べてるって言ってたな。その組織に”ネットワーク男爵”と名乗る幹部がいるのを知っているか?」
「いや…」
「端的に言おう。ネットワーク男爵は俺の孫だ」
リコルは真実を聞き驚愕する。

「本名セオドア・ネットワーク。勿論会った事は無いが…大量殺人鬼である事、危険な組織の一員である事。それらの事実を聞いた瞬間、絶望したよ」

ヴィヴィは悲しげな表情を見せる。対してリコルの気持ちは昂っていた。自分の正体を突き止めるチャンスは、意外な所に転がっていた。

「こんな所で情報を聞けるとは…100年後、現代の幽霊屋敷に行ってみるか。それで、なぜ引きこもりを?」

「子孫を残さない為だ」
「…?」

「俺が外に出れば、女と関わるだろう。そうなれば何処かのタイミングで俺の子孫が誕生する。だから俺は未来を守る為、引きこもりをしている」
「なるほど…」
リコルは納得した様子だが、ホリデーは不満げに話しを聞いていた。

「そう言う事だ、だからホリデー。正直お前にも会いたくは無かった。女だからな」
「それってつまり、私があんたの事を好きになるかも?って思った訳…?」
「そうだ。俺に惚れられたら困るからな」

その一言を聞き、ホリデーはプッツンした。

「はぁ!?ばっかじゃないの!?あんたみたいなダサい男、興味ないわよ!そもそもあんた、自分がモテるとでも思ってるの!?笑っちゃうわ、あんたなんか一生引き篭もってればいいのよ!このナルシスト男!」

「何だと、このクソガキっ!!」
「ホリデー、言い過ぎよ…」

このホリデーの暴言をきっかけに、後にヴィヴィは引き籠りから脱出。物語の大きな歯車となっていくのだった。

85キャプテン:2020/05/26(火) 07:47:10
現代へと戻り、リコルとホリデーが阿歌古市に到着すると壮絶な光景が待っていた。

…阿歌古公園。
ペプシマンとジェノは全身が切り刻まれ、解けた糸とブランコの支柱に絡まり宙吊りになる。キャプティは全身が光り、ノートンの体は半分がダイヤに変化して、2人とも砂場で苦しんでいた。
「まったく、他人の能力を使ってアレルギー反応が起きたんだ。いずれ死ぬ。」
声がして突如、2人は囲まれる。

アクビをする男、傷跡だらけの男、老婆、真面目そうな男、何故か冷蔵庫?…そして、白髪の男。

「何で…バルト…総監?」
リコルの言葉を無視して老婆が喋り出す。
「私の能力なら、この2人を救ってやれるぞ。ふぇっふぇっふぇ。だが引き換えに坊や、アンタを貰うよ。」
「狙いはペプシマン、ノートン、キャプティの命じゃないの?!」
ホリデーが叫ぶ。真面目そうな男が喋り出す。
「それ自体が隠れている貴方を引きずり出すための若頭の策略だったんですよ、リコル。」

86ノートン:2020/05/28(木) 08:24:18
果たして、何が起きたのであろうか?

リコル達が現代に到着する、30分前ー
裏路地にて、ペプシマンと筆字が激闘を繰り広げていた。

ノックダウン寸前、ギリギリの所で意識を保つ筆字。
ペプシマンがゆっくりと歩み寄る。

「今から君の腹部に私のパンチを叩き込む。その前に教えてくれ。賭けの勝敗は、君にも分かるよな?」
「ゼェ…ゼェ…俺ぁ…約束は守る男や。たけたけは『カフェテリア・トモアキLIFE』にいる…行くなら急いだ方がいいぜぇ…」
「ありがとう、君は男気がある!」

ペプシマンのパンチは、筆字を気絶させた。

「ペプシさん、傷は大丈夫ですか!?」
「あぁ、問題無い。それより…」

殺気ー。

背後からの強烈な殺気だった。
2人は急いで後ろを振り返る。そこに立っていたのは、沖田とバルトだった。

87キャプテン:2020/05/29(金) 17:43:50
「…大刀を損じれば小太刀を、小太刀を損じれば鞘で、鞘を損じれば…素手で…。」
カチンッ…沖田が刀を鞘に納めた時、ペプシマンとジェノは全身から血飛沫をあげて倒れた。
「後を頼むぞ、バルト。」…

…「さあ、どうなさいますか?」
現時刻、公園。満身創痍の4人の仲間の姿を見てリコルは唇を噛みながら言葉を絞り出す。
「…わか…った…協力…する…だから!!…?!」
突如、公園に巨大な影が落ちる。予想だにせず全員が空を見上げる。巨大な光る球体が公園に落ちてくる。
「”やま…元…気“。」
いつの間にかキャプティが仰向けで両手を空に掲げていた。組員達が逃げ出そうとするが地面からダイヤが現れて組員達の足を固めていた。
「…諦…めるんじゃ…ねぇよ、走れ!!リコル…ホリデー!!」
2人に向かって苦笑いで二本指をピッと立てるノートン。助け出そうとするホリデーをリコルが必死に止める。たけたけが手を出して巨大な数珠を出現させ、キャプティとノートンを円く囲む。
「させるかぃ、”封の印“「「遅ぇ!!」」…

…涙を貯めて走る2人。後方で巨大な光る玉が公園に衝突し巨大な爆風が広がる。リコルが咄嗟にホリデーを守るようにして体で覆い伏せる。そして2人の姿は爆風の砂埃に消えた。

88ノートン:2020/05/31(日) 13:52:28
キャプティの放ったやま元気により、凄惨な状況に陥ったかに思われた。
しかし、借り物の能力の上に、半身しか動けないキャプティ。本来の20分の1程度の威力しか出せていなかった。

早川組メンバーは咄嗟の行動で回避。
ノートン達は…。

「おいおい…どうなっている!?」
沖田が言葉を漏らす。

ノートン達の頭上に、巨大なガラスの膜が張っており、やま元気によるダメージは皆無だった。

「グラス・オブ・エレベーター」
突如、魔法の絨毯のような、ガラスのエレベーターが出現。
ガラスは一人でに動き始め、ノートン・キャプティ・ジェノ・ペプシマン次々と乗せていった。

「逃すなッ!!」
沖田達がエレベーター目掛けて走る。その時。

「グラス・オブ・ルーム」
沖田達一人一人をガラスの膜が多い、固める。強固なガラスは、鉄壁の牢屋となり沖田達を閉じ込めた。
「なんじゃこれは!?」
「この能力…まさか組長か!?」

1人の男がゆっくりと、早川メンバーに歩み寄る。

「裏切りやがったな…組長…いや、ハレン!!」
「隠居したじいちゃんの命令ばかり聞きやがって。組長は誰だと思っている」

エレベーターに乗るハレン。ノートン達を連れて逃亡した。

一方、町の外れまで来たリコルとホリデー。
ホリデーは、涙をボロボロ溢していた。
「うわぁぁぁん…もう嫌だぁぁぁ」
「泣くな!俺だって…チクショウ!!」

その時、リコルとホリデーの前に武装した集団が現れる。
リコル達を取り囲み、銃口を向ける。
「えっ…えっ…」
「何なんだよ!?」

武装兵長が無線で連絡を取る。
「応答せよ、こちらブラックボックス武装兵。標的を捕らえた。指示を求む」

89キャプテン:2020/06/01(月) 20:29:15
「お前ら、大人しくし…ろ…?」
涙を拭い、武装集団を睨むリコルとホリデー。
「「こんな時にどいつもこいつも!!」」
リコルとホリデーが集団に突っ込む。
「なんだこいつら、打て…打てー!!」
「ウィンドウブレイカー!!」「オクト!!」
銃弾の雨。しかし、リコルに弾が触れる瞬間に体が塵の様に粒子に分解して弾を貫通する。ホリデーも蛸化した体がクッションとなり弾の威力を相殺して弾丸がポロポロと落ちる。そして2人はそのまま集団に殴りかかる。
「どおリャー!!」…

…息を整える2人の周りに武装集団が横たわる。ホリデーが一息ついてからリコルに頭を下げる。
「…公園の時、庇ってくれて有難う。あと…取り乱してすまなかった。」
その言葉にリコルも少し落ち着きを取り戻した。
「正直、あれで正しかったのか分からない。」
リコルの言葉にホリデーが返す。
「誰だってそうだよ。」

話しながら歩く2人の背後で1人の武装兵がヨロヨロと立ち上がり腕から円盤状の“鱗”の様なものを生やして2人に向かって投げ飛ばす。
「全く、またサービス残業だ。」

90ノートン:2020/06/02(火) 21:40:56
『ある夜の事でした。
少年が1人夜道を歩いていると、ピンクのウサギのぬいぐるみが転がっていました。

少年はそのぬいぐるみが気になり、拾い上げてしまいました。
すると、どこからともなく声が聞こえてきました。

「君はラッキー?アンラッキー?ラッキー?アンラッキー?…」
同じワードをひたすら繰り返していました。

気味が悪くなった少年は、ぬいぐるみを投げ捨てます。
その場を去ろうとした瞬間、ぬいぐるみが立ち上がりました。

「君の願いを一つだけ叶えてあげる。ただし、僕のこのコイン、表が出たら地獄、裏が出たら天国。君の運命は、このコイン次第さ!」

少年は喋るぬいぐるみを不気味がりながらも、願いを言います。

「億万長者になりたい」
「君の願い、この運命のコインに委ねよう!」

ぬいぐるみはコインを投げます。出た目は表でした。

ウサギのぬいぐるみは黒く染まり、悪魔の翼が生え、表情も一変しました。

「キキキキキ!!!!オメーは表を出しちまった!!!約束だ…オメーは地獄を見る!!!」
「う…うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

少年は悪魔に連れて行かれ、闇の中へと姿を消しました』

パタンと本を閉じる、1人の女。痩せた体付きに、十字架のネックレスをしている。
年齢は若いはずなのに、その暗い風貌から、年老いて見えた。

「私、ウポポイ。都市伝説が好きなの。あなたの人生も、いつか都市伝説として後世に残してあげるわ」

リコルを指差す女。狙いは、リコルだった。
正面には不気味な女。背面には鱗を操る男。

「挟み撃ちか…行けるかホリデー」
「今、頭の中ぐちゃぐちゃなのよ?こんな時に襲って来るなんて…許せないわ」

91キャプテン:2020/06/04(木) 07:51:26
「貴女が早川組の尻拭いをするなら私は帰らせてもらえませんか?もう3日連続泊り込みだ。」
やつれた男性がウポポイと名乗った女性に話す。
「ダメよ。今やリコルの件は私達のお仕事。それとも闇の中に姿を消したい?遡上 逆流君。」
ウポポイが不気味に微笑むと逆流と呼ばれた男性が身震いする。

リコルが遠く公園の方を振り返り、そして向き直る。
「(戦わなきゃ、もう…先輩達はいないんだ。)」
「また残業か…“鱗紋様”。」
逆流の両手に複数の鋭利な鱗が生え、全身で遠心力を加え、リコルとホリデーに投げ飛ばす。リコルがそれを目で追い、体を塵状までバラけさせ飛んでくる鱗を貫通させる。しかしホリデーは全てを回避しきれず鱗が幾つか掠って血が出る。
「ホリデー?!」
リコルが叫ぶ。それを見てウポポイが笑みを浮かべる。
「(リコルは粒子レベルまで身体を分解できる様になったようね。でも“自分で認識して”発動する必要があるみたい。それにホリデーの蛸化能力では斬撃は無力化できないようね…ウフフッ。)」

92ノートン:2020/06/05(金) 08:24:46
「いでよ、ウヌンガの女神…」
ウポポイの足元の空間が捻じ曲がる。
約2メートル程の、女神の石像が出現。石像は両の手を交差させ、何かに祈っているように見えた。

「ウヌンガの女神て言うの。綺麗でしょ?更に良いもの見せてあげる」

ウポポイはナイフを取り出し、自身の掌を刺した。

「何してんだあいつ!?」
「うぅ…痛い痛い…」

不思議な事に、ウポポイの掌からは血は一滴も出ていなかった。
そして、ウヌンガの女神の瞳から”血の涙”が流れ始める。

「ねぇリコル…私…体が重い…」
「俺もだ。体が…思うように動かない…?」

リコルとホリデーの体に、奇妙な感覚が走る。

「呪いよ?私の血で呪ってあげるわ」

ウポポイと逆流が戦闘態勢に入るのを、リコルが止める。

「待て!戦う前に教えろ。テメーら、ブラックボックスか?」
「そうよ?私はブラックボックス 生物兵器課ウポポイ。よろしくネ」
「!?勝手に正体明かしてんじゃねーよオイ!」

リコルが叫ぶ。

「教えろ!何故俺を付け狙う!?俺は…俺は何なんだ!?」

93キャプテン:2020/06/06(土) 17:35:31
動けないリコルとホリデーをウポポイがまじまじと見る。
「まあ…いいわよ、“餌”は必要よね。」
しょうがないという顔をしつつ、ウポポイは話したくてウズウズしている様子だった。

「モニュメントバレーで“ある人物”が“ある能力”を発動した。あなた達も“知っている人物”よ。それにより世界は一変した。」
逆流が『待て』の仕草をするがウポポイがそれを制する。
「世界は改変され、その影響で人々の特殊能力が少なからず変異し没落したはずの早川組は復活した。しかし逆に、改変した世界に適応できず存在が消失していく人もいた。ホリデー、あなたの村の人の様にね。」
それを聞いてホリデーが驚愕と怒りの表情をウポポイに向ける。リコルがそれを見て口を挟む。
「やめろ!!今は俺の話のはずだろ!!」
ウポポイがリコルの顎を掴む。

「鈍感ね…その“世界の改変”にリコル、貴方が関わっているのよ!!」

94ノートン:2020/06/08(月) 21:58:35
ー阿歌古市より数キロ離れた、とある協会の地下。

ハレンはノートン・キャプティと能力チェンジを行なっていた。2人の能力が元に戻り、クリスタル化した体が徐々に戻って行く。

「ハ…レン…?何で…?」
「ごめん。友を裏切るなんて、間違ってた」

完全に体の調子が戻り、立ち上がるノートンとキャプティ。しかし、ペプシマンは起き上がれない程の大きなダメージを負い、ジェノは意識不明の重体だった。

「レスキュー医療班を呼んだ。もう少しの辛抱だ、ペプシ」
「シュワァァ…ありがとう、ハレン…」
「いいんだ…じゃあ…」

その場から去ろうとするハレンを、ノートンが引き止める。

「行かないでよハレン。お前の助けが必要なんだ」

その頃リコル達は…。

「あなたの能力は”破壊”と”構築”の相反する力を兼ね備えてる。世界の改変…それには、あなたの力が必要不可欠なのよ」
「俺の力だと!?お前らが一体俺の何を知っているってんだ!!」

リコルの言葉を聞いた途端、ウポポイが笑い始める。

「あなたの事はなんでも知っているわよ。あなたは私達ブラックボックスの所有物なのだから!」
「…!?」

言葉を失うリコル。ウポポイは話を続ける。

「あなた、記憶がないでしょう?あるわけ無いわよ。だってあなたは…作られた人間なのだから」

理解が、出来なかった。この女は何を言っている?リコルの頭がぐるぐる回り始める。

「私はブラックボックス”生物兵器課”。分かる?私達が作り出したのよ、あなたと言う兵器をね」

95キャプテン:2020/06/11(木) 13:20:49
リコルは意識がもうろうとする。ホリデーが蛸化した腕を伸ばして無理矢理リコルを引き寄せる。
「クソ、しっかりして。ちゃんと戦って!!」
「もう…無理だよ。思い出す記憶なんて無かったんだ。戦う理由なんて…もう無いんだ。」
逆流が地面に手を置くと鱗が急速に地面に移り動けないホリデー達を取り囲み広がっていく。
「ホリデー、僕を置いて逃げて。」
ホリデーがリコルの手を掴む。
「“また”私を…一人にしないで!!」
泣き叫ぶホリデー。鱗が2人を覆い尽くしきる中でリコルは思い出した。…

モニュメントバレーの赤土の大地…突如倒れる原住民達…大地に降り注ぐ流星…空に浮かぶ巨大な???…泣き叫ぶ女の子
「(そうか、君もあそこに居たのかホリデー。)」

…ズガッガガガガッズガガガアアアアアッ
激痛で意識が戻る。状況は一変していた。ホリデーを抱えるリコル。自分の体の一部が粒子化し、砲撃状となって鱗をバラバラに撃ち砕いていた。
「…あり…えないわ。(粒子化した人体同士が引っ張り合い、その力で…人体を弾丸の様に打ち出した?!)」

96ノートン:2020/06/13(土) 21:09:24
リコルの体の至る所が粒子化し、くっついては離れてを繰り返す。
「どうなっちまったんだ…俺の体…!?」

リコルは近くにいるホリデーを押し飛ばす。理解不能な危険に巻き込まない為、との咄嗟の判断だった。

ウポポイの呪いによって、リコルとホリデーの肉体のスピードは2分の1となっている。
その為、全てのモーションはノロノロと遅いが、ウポポイと逆流は攻撃をしなかった。

それどころか、ウポポイはリコルを凝視しながら、必死にメモを取り始めた。
「こんな状態、実験中には無かった事象だわ…逆流!動画!撮りなさい早く!!!」

安定しない肉体も、徐々に新たな体を構築し始める。
リコルの全身の皮膚は赤く変色。鼻も長く伸びていた。
「あれは…まるで天狗!?」

リコルの体が完全に安定した時、彼の姿はまるで天狗を思わせるような、赤い生物へと変貌していた。

ウポポイが体を震わせる。
「あの子は…”エンド”。そう名付けた。エンドは自分では内なる力を引き出せないように作ったわ。そう、生物兵器として、私達ブラックボックスの科学力を使わなければ…エンドはただの木偶。その筈なのに…」

ホリデーがゆっくり近づく。
「リコル…どうしちゃったのよ、その体!?」

「分からない…でも、溢れてくる…力が!!!」

97キャプテン:2020/06/15(月) 19:59:54
逆流が鱗の鎧を纏いリコルと掴み合いになる。
「(馬鹿な、ウポポイの“右手の贖罪”だぞ。動作が遅延してもこの身体能力なのか。)ウポポイ、早く逃げ…」
ウポポイが倒れる。顔が青ざめている。
「…ウフフ…天狗は元は凶事を知らせる流星の意味…咆哮を上げ天を駆け降りる狗の見立て…災禍の凶星…つ…ま…り…。」
ウポポイが訳のわからないうわ言を話す。
「(貧血の症状、呪いの維持に血を使い過ぎたか。マズい、ウポポイが気絶すると呪いが解ける。)」
逆流が必死に思考し、周りを見渡すと何かに気づく。逆流が鱗の鎧から抜け出し動きの鈍いホリデーに走る。
「(彼女を人質にすれば!!)」
「クソ、射手硝子!!」
リコルが人体粒子を構えるが射線にホリデーがいて撃てない。ホリデーを人質にとり逆流が叫ぶ。
「撃つな!!彼女に当たるぞ!!」

98ノートン:2020/06/17(水) 21:20:49
―ここは、オットセイ地下研究施設。ブラックボックスの生物兵器課が所属しているフロアである。

テレビのモニターに、白衣を着た研究者達が群がり、論を交わしている。
見ている映像は、何と天狗と化したリコルだった。逆流が撮影している映像をリアルタイムで観察していた。

「何て興味深い映像だ…おい、課長を呼んでこい!ネットワーク男爵を!!」
「会議中のはずでは?」
「馬鹿者!これを今報告しなければ、後で殺されるのは我々だぞ!」

そして、渦中のリコルは、ホリデーを人質に取られた事で身動きが取れずにいた。

「私の事は構わないで!私ごと攻撃して!!」
「出来るわけない…これ以上、失うわけには行かないだろ!」

「エンド!簡単な事よ…ふふふ。あなたの能力で2人共バラバラにし、彼女だけ元に戻せばいいのよ」

信じられないアドバイスをするウポポイに、逆流が食ってかかる。
「貴様…何をほざくか!」

「黙りなさい!我が子が今まさに覚醒しようとしているのよ…研究者冥利に尽きる事象だわ。あなたの命なんか、今起きているこの瞬間に比べたら、ちっぽけなものだわ」

99キャプテン:2020/06/19(金) 17:57:45
「やって、リコル!!」
ホリデーの言葉に押され、リコルが逆流に人体粒子を撃つ。しかし…リコルの体が元の姿に戻ってしまう。撃たれた粒子はホリデーの前で散り散りになる。リコルに激痛が走り、体のあちこちが粒子に分解されていく。
「…エンド、がっかりだわ。」
リコルの哀れな姿にウポポイが落胆する。ホリデーも絶望してしまう。
しかし、リコルは笑みを浮かべて全身が塵になる。そして撃ち出されて浮遊していたリコルの人体粒子に集まり、逆流とホリデーの間に割って現れた。
「まさか…クソ、鱗紋様!!」
「ゼロ距離だ、撃ち抜け射手硝子!!」
逆流が身体を鱗で覆うが、鱗ごと逆流の体がリコルの人体粒子に撃ち抜かれ、倒された。
「(人体の一部を粒子化させ撃ち出し、撃ち出された先で体を再構築する。射手硝子という技を攻撃手段ではなく移動手段に使い、ウポポイの遅れる呪いを攻略したのか。)天狗の姿に気を取られて…本質を…見抜けな…かった…。」

100ノートン:2020/06/20(土) 10:18:38
オットセイ地下研究施設にて、若い研究者が走り回る。
「先輩!男爵がどこにもいません!会議にも出ていないようで…」
「何だと!?」

その時、モニターに群がる研究者達がざわつき始める。
「おい…あれったまさか…」
「何であそこに!?」

リコル達の目の前に現れたのは、貴族服を身にまとい、大きめのシルクハットを被っている、不思議な風貌の男だった。

倒れ込んだ研究員2人を、冷たい視線で軽蔑する。
「ウポポイと逆流は気絶ですか…情けない」

技の反動で、体中に激痛が走るリコル。立っているのがやっとだったが、何とか意識は保っていた。
「誰だお前」

「おっと、これは失礼。我輩”ネットワーク男爵”という者であーる」
「ネットワーク男爵…!?」

つい先程、ヴィヴィから得た情報。ネットワーク家の子孫であると、リコルは直感した。

「…で?その男爵様が俺に何の用だよ」
「貴重な実験サンプルを我が施設に連れ戻しに来たのであーる。お前の脱走劇もこれで終幕!」

101キャプテン:2020/06/21(日) 16:03:49
「ネットワークの家系は途絶えたはずだ。」
ネットワーク男爵が紳士的な笑顔を向ける。
「ウポポイ殿から聞いたであろーう?“世界の改変”で早川組同様、我が家系の歴史も書き換えられ復活したのであーる。」
「(そんな、このままでは?!)リコル、私に構わず逃げて!!」
ホリデーがリコルの方を見て愕然とする。リコルは倒れ込み、体がところどころ粒子に変異し苦しんでいた。
「災禍の凶星、天狗としての覚醒にあの大技の連発。エンド、リコル君は既に限界を超え死にかけている。…どうであろう?リコル君の体を治せるのは我々ブラックボックスだけだと思うのだが?」
ホリデーが苦しむリコルを見て苦渋する。そして覚悟を決め、ネットワーク男爵に頭を下げる。
「お願い…リコルを助けて!!」

数時間後、リコルとホリデーは別々の護送車に乗せられ、連れて行かれた。

102ノートン:2020/06/22(月) 20:53:21
リコル達が連れ去られてから3日後ー。
ここはハイウェイ23号。荒野に囲まれた、高速道路である。

時刻は深夜11時、一台の高級車がハイウェイを駆ける。乗っていたのは早川二郎。会合の為の移動である。

暫く走ると、運転手が目先の異変に気付く。
「叔父貴!この暗がりの中、何ですかあの強烈な光は…」
「やまはめ…波ぁぁぁあああ!!!」

強烈なエネルギー波がリムジンを貫通。車は爆発を起こす。

「これで良いんだな?ハレン」
「あぁ。本番はここからだ。全力で行くぜ、2人共」
並び立つキャプティ、ノートン、そしてハレン。

スクラップと化したリムジンから、運転手を背負った二郎が現れる。

「何のつもりじゃ餓鬼共ぉぉ…誰に喧嘩売っておるのか、分かっておるのかッッ!!!」
二郎は激昂していた。放つ怒りのオーラが3人に突き刺さる。

「俺は早川組を乗っ取る。そして、早川組を利用し仲間を救う。悪いがじいちゃんは今日で引退だ」
ハレンは黒鉛を巨大な槍へと変化させ、二郎に撃ち込む。

すると、二郎は筋骨隆々な姿を露わにし、拳に力を込める。
「拳骨!」

猛スピードで接近する槍を、何と拳で思い切り殴った。槍はパァンと激しい音を立て消滅した。

「孫だからとて、承知せんぞ。この馬鹿者共がぁぁぁ!!!」

103キャプテン:2020/06/24(水) 23:19:37
準備されていた二台のダンプカーからそれぞれ黒鉛砂とガラス砂が大量に流れ出す。それをハレンとキャプティが操り、二郎目掛けて放つ。…

…「消耗戦だ。」
3日前、ハレンに助けられたノートン、キャプティ、ペプシマンは未来に呼び戻したシイのグリーンカーテンの能力で治療を受けていた。
「ついさっき、覚醒したリコルとホリデーがブラックボックスに攫われたらしい。アンタらの状況は最悪だ。」
黙ってしまう全員にハレンが話の続きをする。
「だが、まだ可能性はある。うちの爺ちゃんを倒すのを手伝ってくれればな。」…

…現在
「拳骨」
二郎が大量の黒鉛とガラスの砂に拳打を叩き混むが、砂は散るだけでまた集まり襲いかかる。
「(何とか接近して、俺の能力“チェンジ”で爺ちゃんの能力を奪う。だが爺ちゃんは接近戦に長けてる。爺ちゃんのスタミナを消耗させるしかない。)」

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105ノートン:2020/06/25(木) 12:33:25
「俺に戦わせてくれ、2人とも」
ノートンがエネルギーを両手に溜める。

「連続で行くぞ…やまはめ波っ!波っ!波ぁぁぁ!!!」
「拳骨・鬼!!」
幾度となく放たれる、強烈な閃光。しかし、全ての技を消滅させる二郎。ノートンの技が、力が、二郎には届かなかった。

「ゼェ…ゼェ…クソ…」
「大丈夫か、ノートン!?」

ことごとく技を返され、誰もが”ノートンは戦意喪失する”事を考えた。何故なら彼の性格は気弱で、ストレスが溜まるとすぐ胃を壊す程だったからだ。

また、ノートンの能力”スパーキング”は強大なエネルギーを凝縮し・溜め・放つ。どれもが大技となる為、相手が弱ければ、簡単に死に至らしめる。

強力な力と同時に、危険な力である事を本能的に理解していたノートン。彼の気弱な性格と相まって、相手を殺さないよう手加減して戦う事が癖となっていた。そう、ノートンは常に全力を出せずにいたのだ。

だが、目の前にいる老人は、自分より遥か格上。力を出し切らなければ、勝てない相手。

ノートンが抱いていた感情は、絶望では無く…。

「何が起きても気分は…へのへのカッパ〜🎵」

ノートンの全身から、全力で戦える喜びがエネルギーとなり溢れ出す…まさにこれは、スパーキンッッ!!!

106キャプテン:2020/06/28(日) 21:46:39
「シルエッター!!」
「グラスオブハード。」
ハレンとキャプティが叫ぶ。黒鉛とガラスが混ざり合いドロドロの黒い物質になる。それが二郎に纏わり付き動きを封じる。
「(溶けた粘性のガラスに俺の黒鉛が混ざって強度が増す)そのまま潰して固めろキャプティ!!」
二郎が黒い溶けたガラスに埋れて押し潰されていく。パキパキと音が鳴り固まっていく。
「よし…このまま!!」
「拳骨…双骨!!」
溶けた黒いガラスが風船の様にブクブクに膨れていき、弾け飛ぶ。二郎が憤怒の顔を見せる。
「や〜ま〜は〜め〜っ」
ノートンが両手に気を貯める。二郎が後方に拳を構える。
「飛ばせ双骨!!」
「波!!!」
二郎の後方で空気が強烈に弾ける。そして爆風に乗ってノートンのスパーキングをかわし、3人の目の前に一瞬で到達する。二郎が更に拳を構える。
「食らえガキども!!!」

107ノートン:2020/06/30(火) 21:38:40
”二郎との接近戦は絶対避けろ”。戦闘前、ハレンが2人に出したオーダーだった。

二郎の能力″拳骨″は最強の盾であり矛。ただ殴るだけの技が、全て致命傷になる。至近距離で技を喰らったら…即死。

「まずは、お前からじゃ」

ノートンの眼前に突如現れる怪物。腹部目掛けて拳骨が飛ぶ。脳裏に浮かんだのは″死″の一文字。
「ヤバい…死ぬ…」

コンマ数秒の狭間で、グラスオブハートがノートンの前にガラスの分厚い壁を作る。だが二郎は止まらず。ガラスを破壊し、そのままノートンを激しく殴った。

吹き飛ばされるノートン。ハレンの黒鉛が受け止める。だが、負った傷は深く…。ノートンの右腕の骨は砕け、見るも無残な姿となる。

「う…腕が…このままじゃ…終わらないぞ…」
残った左腕を天に掲げる。頭上に、徐々にエネルギーが溜まる。

「ハレン…キャプティ!1分稼いでくれ…特大のやま元気を喰らわせる!」

ハレン達は、親指をグッと立て合図を返す。

一方、二郎はキャプティを見ていた。
「ガラスの方はお前か。ここまで自在に操るとは…器用な男じゃ」
「そりゃどうも。自分ではこの能力、気に入っていないけどね」

ーその昔、キャプティ達3人でドライブしていた時の事である。

話題は能力について。3人は盛り上がり、能力マニアであるキャプティも饒舌になっていた。その時、ハレンが唐突に問う。

「キャプティってさ、自分の能力にガッカリしてるんでしょ?何で?」

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109キャプテン:2020/07/02(木) 17:24:09
「グラスオブハードか…強化ガラスの強度はダイヤモンド最低強度の約11分の1。正直言って脆い。応用も溶かすか透明まででつまらない。まあ唯一の強みは物量のお手軽さかな。」…

…現在、ハイウェイ23号。
「シルエッター!!」
ハレンが大量の黒鉛を空気中に巻き上げ視界を奪う。
「スクエアガーデン!!」
「こざかしいわい、消し飛ばせ双骨!!」
二郎が拳同士を打つけると大気が弾け、黒鉛が吹き飛ぶ。すると目の前に輝く分厚いドーム状の結晶が現れた。中にボヤけて3人の影が映る。
「ダイヤのかまくら…時間稼ぎかい。拳骨五月雨!!」
強烈な拳のラッシュ。二郎の両腕が残像すら見えなくなる。ものの数分でダイヤが砕け落ちた。立ち尽くす3人を見つけ五月雨の拳が襲う。

バリンッ。

3人の映る鏡は意図もたやすく破れた。ハッとして二郎が後ろを振り返る。複数の鏡合わせの先に3人が見えた。
「ガラスの鏡だよ。やっぱり脆いな。」

110ノートン:2020/07/03(金) 21:49:51
何度壊しても、終わらない悪夢。合わせ鏡が見せる無限回廊に二郎は迷い込んだ。
「こりゃまるで異世界じゃな」

大量の鏡で怪物を翻弄する異様な光景。キャプティはそれを見守っていた。
「1分、しっかり稼がせてもらうよ」

突如、二郎はグッと腰を落とし静止。集中力を高めていた。
「儂の拳骨″双骨″は空気を殴り、空気砲を放つ。″さみだれ″は拳骨を連続で放つ。そしてこれが…」

二郎の拳がブゥーンと音を立て、赤いオーラを纏い始める。
「″双骨″と″さみだれ″を合わせた秘技″拳骨 飛雨(ひう)″」

ドドドドド…と激しい音を出しながら、空中を殴りまくる。強力な空気の弾丸となり、猛スピードで合わせ鏡を次々と破壊。その矛先は、キャプティ達にも…。

「これはじいちゃんの″飛雨″!?みんな…逃げろォォーーーー!!!!」

ハレンが叫ぶ。が、時すでに遅し。
数秒間降り注いだ、拳骨の雨。

ハレンは何とか自身のスクエアガーデンで凌いでいた。しかし、ノートンに身を守る術は無く…。
「ノートン!!!」

自らの身を盾にし、ノートンの″やま元気″を守るキャプティ。ガラスの衣を纏うも″飛雨″の前に敗れ、打撲・骨折・内臓破裂…瀕死の状態に陥っていた。

「キャプティ…何で…うわぁぁぁぁ!!!!」
「ノートン…その″やま元気″に…俺の魂も…乗せて…く…れ…」

キャプティはノートンのやま元気に全てを託し、意識を失った。

111キャプテン:2020/07/05(日) 16:26:48
二郎の拳骨、飛雨の風に3人は飛ばされ、二郎本人は孤立していた。そのど真ん中目掛けてノートンのやま元気が悲痛な叫びと共に落ちる。
「くらええええ!やま元気いいいぃぃぃ!!!」
「受け止めろ!拳骨、飛雨うううぅぅぅ!!!」
二郎が赤いオーラを纏い、巨大な気の球体に拳を打つけ続ける…

…数時間後、砂煙が晴れる。道路には巨大なクレーターができていた。その瓦礫が崩れ、中から二郎が現れる。
「ふんっ、ガキどもが。」
「…ガキで悪かったな。」
背後から声がして二郎が振り返る。ハレンが空に両手を上げていた。空には巨大な気の塊が浮かんでいた。
「(まさか“チェンジ”を?!)…嘘…じゃろ?!」
「よくやったノートン、投手交代だ。…くたばれジジィ、やま元気!!!」
日出に照らされながら巨大な気の球体は二度、大地を揺さぶった。

112ノートン:2020/07/07(火) 22:12:51
2撃目のやま元気に喰らいつく二郎。あまりに強大な威力…耐え切る事が困難だと悟った二郎は、ある行動に出る。
「拳骨…”死神”!!」

片手でやま元気を受け止めながら、もう片方の腕で地面を殴る。そこから出現したのは、背中に骨の腕が何本も生えた不気味な骸骨だった。

「死神よ…この攻撃を…消してくれ」
『いいだろう…代償は…お前の右目だ』

二郎の右目をえぐり取り、握り潰す死神。そのまま闇へ消えていった。

そんな事態になっている事に気付かず、勝利を確信したハレン。その時、やま元気が音もなくサラサラと消滅していく。
「な…何が起きてる!?」

ハレンが目にしたものは、右目からドボドボと血を流し、残った左目でハレンを睨む二郎の姿だった。
「儂が血を流すのは何十年ぶりか…今のは効いたぞ」

絶体絶命。ゆっくり近づいてくる二郎。ハレンは死を覚悟した。しかし、二郎の口から出たのは思わぬ一言だった。

「ハレンよ、気は済んだか?」
「な…何!?」
「そこに転がっとる2人、お前の大事な友じゃろう?早う病院に連れて行ってやれ。儂も命までは取らん」

完敗。3人がかりで全身全霊戦った。しかし、届かなかった…。ハレンはやり場のない感情を抑え切る事が出来なかった。
「違うよな…キャプティ、ノートン。こんな結末、望んじゃいないよな」
「何をもたついておる。早よう負けを認めんかい。死んでしまうぞ」

ハレンの全身が徐々に光り輝き始める。”チェンジ”を使用する時より激しく輝き、目や口など細かな情報は消え、人間の外形を整形した発光体となった。

「まさか此奴…友がいつ死ぬやもしれぬこの状況で…進化…じゃと!?」

113キャプテン:2020/07/09(木) 19:52:48
…一瞬で理解した。この能力の残酷さに。全身が青く、冷たく光る。二郎の放つ挙骨、飛雨が己の蹴りで打ち消される。驚きを隠せない二郎が挙骨、死神を召喚する。その髑髏の化身の首を掴む。青い光が増し、もがき苦しみながら死神は崩れ落ちた。そしてハレンは二郎を背後から羽交い締めにする。
「チェンジ」
二郎の能力が流れ込み、己の能力が流れ出すのを感じる。
「デストラクショニズム(破壊主義)」
流れ込んだ能力を己の掌で握り潰す感触がした。ハレン自身の中でも能力が崩れる感触がして青い光が消えていく。能力達が解放され、元の持ち主達へと帰っていく。

「コレで能力は破壊された、俺も、アンタも。俺が任意で自分の能力を治さない限り、アンタの能力も治らない。そういう仕組みだ。」
力にこだわっていた二郎。ソレが失われた今、彼は抜け殻の様に横たわっていた。
「…帰ろう、ノートン、キャプティ。要は済んだ。」

114ノートン:2020/07/13(月) 00:00:20
進化能力を発動した反動…。体が動かず、その場に座り込むハレン。
「ブワッハッハッハ!!!」
その姿を見て、二郎は突如大声で笑った。

「何だよじいちゃん、頭おかしくなったのか?」
「孫の成長が嬉しくての!ええじゃろう。早川組は譲る」
「じいちゃん、マジか!」
「儂は早川組から完全に引退する。その意味が分かるかの?辛いのはこれからじゃぞハレン」

そして、激闘の後ー。

病院で目覚めるキャプティ。隣のベッドにはノートンが横になっていた。
「傷が治ってる!?けど、何この体の重さ…」
「シィの能力で2人の傷は癒したが、能力の副作用で2人は脱力状態。1ヶ月はまともに動けないぜ」

ある男が病室に入ってきた。見舞いの果物を持っていた。
「目覚めたか、キャプティ」
「ハレン!戦いは終わったの!?」
戦いの結末を話すハレン。そして、話しの主軸は現在の早川組へ…。

「2人の治療をした後、シィは早川組を辞めたよ。他にも何人か辞めた」
「えっ!?」

早川二郎という大きな柱が無くなり、早川組に混乱が生じ始めた。その隙を見て、バルトがブラックボックスへ引き抜きを実施。
早川組能力者メンバーの行く末は、果たしてどうなったのか…?

たけたけ・エドモンドはバルトの申し出を快く快諾。ブラックボックス”他社連携課”への配属が決まる。

花山は”興味が無い”と言い放ち、早川組の残留を決めた。

そして、早川組”若頭”沖田はブラックボックス”武力行使課”への移籍を決めた。二郎の完全な離脱が、決定的な要因だった。

115キャプテン:2020/07/14(火) 21:50:28
…リコルは隔離室で目を開く。体が粒子に分解して苦しみ始める。それをモニター越しに見て慌てるウポポイとたけたけ。
「能力を戻して、検体が死んじゃうわ!!」
たけたけが慌てて封の印の数珠玉を叩き砕く。リコルの体が元に戻っていく。
「やはり、覚醒状態じゃなきゃダメじゃのう。」
リコルが密室に戻され閉じ込められる。何も無い、真っ白な部屋。隣の部屋から声がする。
「リコル。村のみんな…消えちゃってた。」
沈んだホリデーの声。

オットセイの施設に連れて来られた際、空っぽになって置かれた大量のベッドを2人は見てしまった。それはつまり、“世界の改変“によりモニュメントバレーの村人達が完全に消失したことを意味する。

「世界を元に戻せたら、みんな元に戻るかな?」
ホリデーの言葉にリコルは天井を見上げる。
「(世界を元に戻したら…この世界は…)」
嫌な考えを消す様に頭を横に振った。

116ノートン:2020/07/16(木) 21:17:09
ここは、オットセイ最下部″生物兵器課″。
実験が繰り返され、多くの科学者が行き交う。

中枢にある″実験サンプル管理区″。その中にリコルはいた。

部屋の扉には小さな窓があり、そこから外を覗くと不気味な光景が広がっていた。

丸い筒型のカプセルがずらりと並んでいるのだ。中には、大量に斧が刺さった木、ピンクのウサギ、顔の無い人間…得体の知れないものが入っていた。

「あのピンクのウサギ…ウポポイが都市伝説で語っていた生物に似てる…いや、まさかな」

リコルとホリデーが拘束されてから2週間が経つ。これまでの生活で分かった事は、ブラックボックスという組織像。

ブラックボックスは”統括リーダー”いわゆる社長を筆頭に、5つの部署で構成されている。

《生物兵器課》《世界革命課》《武力行使課》《他社連携課》《組織潤滑課》

それぞれの課には課長と呼ばれるリーダーがおり、全員が能力者。そして、リコル達が捕らえられているのは《生物兵器課》

課長ネットワーク男爵を含め、能力者は僅か3人。ウポポイと逆流がそれに当たる。その他は研究員で構成されている。

勿論リコルはこの場からの脱出を企てていた。しかしそれを防ぐ為、あえてホリデーを隣の部屋へ拘束。いつでも殺せるよう人質として利用していた。

ホリデーが人質となっている以上、リコルの脱出は不可能。実験サンプルとして行動する他、道は無かった…。

117キャプテン:2020/07/19(日) 13:01:51
消防庁総監室。
総監席に座るバルトにジェノが向き合っていた。
「よく来たな、傷は大丈夫か?」
「何とか。傷は浅かったもんで。」
「そうか、能力も元に戻ったか。」
「ええ、阿歌古公園で放たれた『やま元気』でたけたけの数珠がちょうど壊れ、能力が解放されたようです。」
「そうか、で、何の用事だ?」
ジェノが真剣な眼差しを向ける。
「…最初は早川組、次はブラックボックス。…どうしてあんな奴等の仲間になったんです!!」
バルトがため息をつき、胸ポケットから写真を取り出す。そこにはバルトが男の子と写っていた。
「息子だ。あと一回の世界の改変で戻ってくる。そのためなら!!」
「他の人達が消えてもいいってのか!!」
バルトが立ち上がり、ジェノの前に立つ。互いに憤怒の表情を向き合わせる。次の瞬間、互いの拳が互いの顔を殴り合い、お互いをお互いに突き飛ばした。

118ノートン:2020/07/21(火) 21:08:48
ここは、とあるバーのVIPルーム。中にいたのは早川二郎、そして…。
「呼び出してすまんのぉ、オズマよ」
「ジジイには世話になった。元早川組として、断る訳にはいかねぇ」

彼の名は、オズマ・ファクトリー。マフィア”ファクトリーファミリー”のボスである。二郎に引けを取らない筋骨隆々な男で、頭にバンダナを巻いており、服は少し汚れたコートを着ていた。

「で、その女が俺のファミリーに入りたいって奴かい?」
二郎の後ろに立っていたのは、シィだった。
「面倒見てやってくれ。優秀な人材じゃ」
「…お前、名は?」
「シィ言います。よろしくデス」

オズマは巨大な葉巻を吸いながら、話す。
「ファクトリーファミリーはたった4人の少数精鋭のマフィアだ。ジジイの推薦する人材だから入れるが、少しでも気にいらねぇ行動したら叩き出す。いいか?」
「ハイ、わかりまシタ」

オズマは、アルコール度数50度のバーボンをグビっと飲み干す。
「時にジジイ、眼帯なんぞ付けて、右目はどうした?」
「孫への餞別でくれてやったわい。早川組は新時代へ進むのじゃ」
「そうかい。結局、早川組に残った能力者は名古と花園だけ…だったな」
「他のメンバーの大多数はブラックボックスへ行った。皆優秀な人材じゃ。新天地でも活躍してくれるじゃろう。ただ1人を除いては…」
「?」
「バルトという男がおってな。奴だけは、儂でも御し切れなかった。底の見えぬ男じゃった。奴の心の奥底には、儂には想像もつかぬ大きな闇が潜んでおる」


ー消防庁総監室。
ジェノが倒れ込む。そして、それを見下ろすバルト。
「(バルト…こんなに腕力あったのか!?)」
「蚊が止まったかと思ったぞ。ジェノよ、お前は知りすぎた。ここで消える運命だ」

119キャプテン:2020/07/24(金) 11:07:31
「俺はあなたを許さない。」
不意にジェノの袖口からスルスルと剣が現れる。そして素振りを数回する。ズザザザザッと音がして総監室のあちこちに切傷が現れる。…この間わずか1秒。
「…見事だな。」
微動だにしないバルト。ジェノが憤怒の表情から眉を潜める。
「(どう言うことだ?怒りの感情は充分だった。俺のセットスラッシュは確かにバルトを捉えた。じゃあ何故斬撃が当たらねぇ?!)」
バルトが走り出す。ジェノの剣が空を切り斬撃を放つ。しかしまたしても飛ばされた斬撃はあらぬ方向へと飛んでいき、部屋を破壊するだけだった。
バルトの姿が消えたかと思うとジェノの胸ぐらを掴み、足払いから背負い投げされる。そして腕の関節を極められる。しかし、ジェノは剣を頑なに離さなかった。
「たいした奴だ。」

120ノートン:2020/07/29(水) 12:29:07
10年前。念願だったレスキュー隊への入隊が決まったジェノ。齢15歳、史上最年少での入隊だった。

彼の配属先は、レスキュー3番隊。当時バルトが隊長を務める部隊だった。

バルトの指揮のもと、様々な救助をこなすジェノ。時には怒られ、時には褒められ、次第に難度の高い救助も任されるようになっていった。

「この人について行けば、俺は立派な救助隊員になれる!」
ジェノは次第にバルトを尊敬するようになっていった。そして、時は現代へ…

「あんたが総監になった時、俺は嬉しかった。誇らしかった。あんたに近付きたいと、心から願った」
ジェノは涙を流し始める。
「残念だったな。お前の思い描く”バルト”はもうこの世にはいない」

その時、バルトの背後から、巨大な斬撃が襲い掛かる。
「斬撃!?どこから打ってきた!!??」
ジェノの拘束を解き、回避。しかし間に合わず。バルトの背中を切り裂いた。

「ぐおっ…馬鹿な…確かに奴を剣毎押さえ付けていたはず…剣を振るう素振りなど無かった…」

血が滴り、苦しむバルト。一方、ジェノは立ち上がる。
「俺のセットスラッシュは、剣を振って斬撃を飛ばす能力じゃない」

セットスラッシュの真価は、亜空間より様々な方向から斬撃を放つ。さらに、斬撃の威力はジェノの精神力に比例する。喜び、怒り、悲しみ…多くの感情が高まる時、彼の斬撃は強くなる!

121キャプテン:2020/07/31(金) 17:50:00
ジェノがバルトから距離を取る。
「セットスラッシュ!!!」
カチンッと剣を鞘に納めると、風切音と共に斬撃が四方八方からバルトを斬りつける。バルトの体が突風に煽られる凧が如く揺れ、血を撒き散らす。
「(何故、抵抗しない!!アンタの力はそんなもんじゃ無いはずだバルト?!)」
やられっぱなしのバルトを見て、ジェノの中での怒りや悲しみに躊躇いが生じる。ジェノはバルトから目を背けたかった。…しかし覚悟を決め、剣を抜き、床に突き立て両手で強く握る。
「うあああああああああああああ!!!」
ジェノは泣き叫び、全身全霊を剣に込めてバルト目掛けてセットスラッシュを全方位から放った…バルトの能力に気づかぬまま。
「ブリッジウェイ」…

…ジェノは全身に切り傷を受けて倒れていた。ジェノの能力発動時に壁や床、天井が『ゴムの様に伸び縮み』して無数の斬撃のど真ん中に自分が移動したのが見えた。
「ジェノ、お前の『感情的な強さ』は『冷静な判断力を失う弱さ』になる。」
立ち去ろうとするバルト、何故かバルトの切り傷は塞がっていた。ジェノが最後の力を振り絞り、亜空間から斬撃が生じる。しかしバルトの腕が『白銀に染まり』、瞬時に斬撃を突き消した。
「俺の『この世界』への絶望を舐めるなよ…ジェノ・ライン。」
その後、扉の閉まる音がした。

122ノートン:2020/08/01(土) 22:01:07
バンッ!と総監室の扉が開き、無数の警察官が侵入。その中央にいたのは…。
「警察だ。殺人未遂の容疑で、お前を逮捕する」
「お前は…ドーチ!?」
手錠をかけられ、なす術なく連行されるジェノ。

「ドーチさん!このまま連行して良いんですか!?傷だらけですよこいつ」
「仕方ねぇ…歯向かった相手が悪かった、それだけだ」

総監室の外で、ドーチとバルトがすれ違う。
「早川組を抜けて、真面目な刑事に戻ったか、ドーチよ」
「真面目だぁ?笑わせてくれるぜ」

ドーチはバルトを指差す。
「俺は悪だ。悪が悪を裁く所を見せてやるよ、バルト」
「お前が、俺をか?面白い冗談だ」

2人はその場を後にする。険悪な空気を漂わせながら…。

ジェノが乗ったパトカーが、ある酒場を通り過ぎる。酒場ではオズマが1人酒を飲んでいた。
「オズマ・ファクトリー様。初めまして」
オズマに名刺を渡す、黒スーツに眼鏡を掛けた男。
「私、ブラックボックス”他社連携課”アップルソルジャーと申します」

オズマは名刺を即座に破り捨てた。
「お呼びじゃねぇ。酒が不味くなる。消えな」

するとアップルソルジャーはアタッシュケースを取り出す。蓋を開けると、中には札束の山。
「ほう、とんでもねぇ大金だな!」
「仕事の依頼です。早川組との縁は切れましたので、あなた方のお力添えを頂きたい」

後日、ブラックボックスとファクトリーファミリーの協力関係が結ばれた。

123キャプテン:2020/08/02(日) 16:45:31
1日前、酒場のオズマとアップルソルジャーの密会。仕掛けた糸電話を巻き取り、傷だらけの男、名古 筆字は路地裏から一人走り出していた。そして酒場で聞いた情報を直ぐに早川組組長、ハレン・ハヤカワに伝えた。
「ハハッ、ブラックボックスとファクトリーファミリーが手を組んだか。お互い、新しい『改変世界』で生き延びるのに必死だな。」
「オズマの野郎、伯父貴との盃を忘れたんか、あの裏切りもんが!!どうしやす、組長?」
険しい顔で筆字が問いかける。一緒に聞いていた花園 龍雅が大きくあくびをする。ハレンが立ち上がり大声で言った。
「俺達はこの『間違った世界』を元に戻す。」…

…そして現在、オットセイ生物兵器実験室。
リコルはアザだらけになりながらエドモンドと対峙していた。
「戦いなサーイ。さもないと死にマスゾ!!」
後ろで見ているネットワーク男爵がリコルに言い聞かせる。だがリコルはただ立ち尽くし、エドモンドに殴られるのを許していた。
「このままでいいんですか?ネットワーク男爵。」
エドモンドが同じ質問を何度もしてきて、ネットワーク男爵が困り顔になる。
「(無抵抗デスか。極限の戦いでないと『天狗への覚醒』はありえナーイ。だが、リコルもこちらの狙いが天狗である事は既に承知している。このままでは…)」

124ノートン:2020/08/08(土) 21:24:49
「俺…こんな所で生まれたのか…このまま死んでも良いや…」

度重なる実験。繰り返される苦痛。リコルは真の力を発揮するどころか、精神に異常が出始める。ネットワーク男爵はこの状況を危惧していた。
「ウーム…天狗状態となったエンドを操る計画だが、このままではマズいであーる。何か決定打が欲しい。大きなきっかけが…」

その時、中年の男が部屋に入ってくる。他の研究員と違い、宇宙服の様な重厚な防護服を身に纏っていた。

「ターグ博士。何用でアールか?」
「いや、ただ君が困惑している姿を見たかっただけだ…男爵」
「相変わらず嫌らしい性格だな。殺したくなる」
「ククク…君も相変わらずジョークがキツい」

軽くリコルの様子を見た後、ターグ博士は退室する。

「どこへ行くのだ、ターグ博士」
「エリア13さ。私も忙しいんだ」
「総括リーダーとエリア13で何をしている?いくら総括リーダーの指示と言え、ここは私の管轄でアール。課長である私が知らされていないなど…道理が通らんと思わないか?」
「文句があるなら総括リーダーに言うといい。どうなっても知らんがな…」

ターグ博士はエリア13へ向かう。
幾重にも施された、厳重なロックを解除し、中に入る。そこにいたのは…。

「ククク…ここまで私を惹きつける生命体は初めてだ…」

強化ガラスの内部にて、完全に拘束されている銀色の男。ガラス内は常に催眠ガスが充満し、まともに動けなくなっていた。

「さぁ、実験の続きを始めようか、ペプシマン」

125キャプテン:2020/08/12(水) 09:51:08
様々なドラマが並行するこの状況。しかし、とある意外な人物が意図せずにそれを打ち破った。

昨今の出来事に度重なる研究と資料。男は山積みにされた紙の束の中でパソコンをカタカタ言わせる。思考は途絶し、無意識にキーを打つ指先。しかし次第に頭に血が上り、遂に男はキレた。

「…俺1人に押し付けてんじゃねえええ!!!」

遡上 逆流。彼の鱗が変異し、頭部が甲羅のお面に覆われ、全身が亀甲模様に覆われる。そこからオットセイ研究室内部を全て亀甲模様が無差別に覆い尽くす。
「覆い尽くせ『甲乙うううううぅぅぅ!!!』」
施設関係者たちの多くが瞬時に亀甲模様に覆われ、オットセイ施設のシステムが破壊された。

「…何じゃこりゃ?!」
冷蔵庫がきれて、中から出てきたスノーボールΩがその状況に唖然として言った。

126ノートン:2020/08/12(水) 11:44:00
早川組本部。ハレンが慌しく電話に出る。

「何!?ペプシマンとジェノが入院中に行方不明!?何故早く報告しない!!」
「病院側はレスキュー隊へすぐ通報したらしいのですが、どうやらそこから情報操作を…」
「バルトの仕業か…くそ、次から次へと!」

組長の部屋に、花園・名古が呼び出された。
「どうしました、組長?」
「単刀直入に言う。お前たち2人には俺の友の友を救い出して欲しい」

今までの経緯を話し、ハレンはある地図を2人に渡す。
「施設の名はオットセイ。ここにリコルが捕らえられている。危険を伴う仕事だが、頼めるか…?」
「勿論ですぜ、組長!」

漲る名古に対し、花園はやる気の無い表情をしていた。
「俺は嫌です…めんどくせぇ」
「花園ぉ…てめぇ組長に何言ってやがるコラァ!」
名古が花園の胸ぐらを掴む。ハレンがとった行動は…。

「花園、お前は本が好きらしいな」
引き出しからある本を取り出す。
「リレー小説”青空隊”。お前がこの本の大ファンな事は把握済みだ。さらに俺は、この本の作者”キャプティ”と”ノートン”を知っている」

生唾をのむ花園。
「仕事の報酬は2人のサインでどうだ?」
「うっす、引き受けます!」

花園が本気の顔つきになる。名古はこの光景に驚愕していた。
「さすが組長…この”怪童”花園を動かしやがった!!」

ハレンは2人の肩を叩く。
「俺は別件で動くから行けないが…頼むぞ2人とも!」

127キャプテン:2020/08/15(土) 12:58:17
早川組の花園と名古が動き出したその頃、偶然にもオットセイ施設内部は無防備な状態だった。

電気がきれ、あちこち壊れていた。
「あ痛たたた、転けたわい転けたわい…何じゃあこの甲羅、生きとるのかい?」
ウポポイとたけたけが通路に現れる。あちこちに亀甲模様が張り付き、今現在もオットセイ施設内部を侵食している様だった。人型のもチラホラ見られる。研究員または警備員だろう。この不測の事態、しかし、ウポポイはワクワクしていた。
「施設を侵食する正体不明の甲羅型生命体。素晴らしいわ?!都市伝説はね、全体がわかっちゃ意味無いの。わかる?謎が残るからこそ怖くも有り、でもソレを超える探究心が生まれ…」
喋り続けるウポポイにたけたけがうんざりする。すると手元の数珠が幾つか壊れている事に気づく。
「(あちゃ〜、またやってもうた。さっき甲羅に躓いて転けた時かい。)」…

…同時刻、オットセイ内部密室。
扉が開きホリデーキャトネイルが現れた。
「(能力が、戻ってる。)」
辺りを見渡す、あちこちに甲羅の様な模様が張り巡らしている。
「(コレは一体?ウポポイの実験動物かしら?とにかく、密室に居て助かったわ。見つからないうちに探さないと。)」

128ノートン:2020/08/16(日) 23:23:25
実験中のネットワーク男爵達ー
「何事であるかっ!?」
「施設内に大量の、謎の甲羅が出現!電力がダウン!隔離中の生物兵器も何体か逃げた模様!」

ネットワーク男爵は、リコルを強引に連れ出す。
「エンドは私が直接隔離部屋へ入れる!お前たちは原因の解明、電力の復旧、生物兵器の確保を急ぎなさい!」

男爵がリコルを連れて、隔離部屋へ向かう、その最中…。
「やっと2人きりになれたな…ネットワーク男爵」
「何かねエンド、まともに話せる状態ではないはずだが?」
「あんた、本名はセオドア・ネットワークだろ」

ネットワーク男爵は歩みを止める。
「貴様あの精神状態はフェイクか。何故その名を知っている」
「さぁな。真っ当な人間になれよ。先祖が泣いてるぜ?セオドア」

ネットワーク男爵は怒り始め、リコルの顔を地面に押し付ける。
「私をその名で呼ぶな…殺すぞエンド」
「やってみろよ。セオドア!!」

一方、オットセイの外ではー。

「地図だとここだ、花園」
名古と花園はオットセイへの侵入を試みる。しかし、玄関前にはある男が立っていた。

「久しいな名古、花園。元気だったか?」
巨大な葉巻を吸いながら、2人の前に立ちはだかる。
「ここは通さねぇぜ。死にたくなけりゃ、失せな」
「オズマァ…この裏切り者がぁ!」

129キャプテン:2020/08/19(水) 09:59:11
オットセイ施設廊下をホリデーが走る。
「早くしないと…?!」
突然、角から眼鏡の青年が現れ殴りかかられる。
「(オクト!!)」
ホリデーの体幹がタコの様に柔らかく曲がり拳を交わす。しかし、青年エドモンドの腕が突然大きくなり、そのままホリデーを押し潰した。
「全く、冷や冷やさせないでくださいよ。」…

…同時刻別所
「やってみろよ。セオドア!!」
ガンッ…ガンッ…ガンッ…。その強烈な足音にリコルとネットワーク男爵の動きが止まる。そして廊下の先を見て2人は唖然とする。

「甲羅の…鎧?!」

そう呼ぶしか無かった。甲羅の面に、六角形の亀甲模様がまさに鎧の様に全身に纏わられている。ソレが拳を振り上げる。
「覆イ尽クセ…覆イ尽クセ…甲乙。」
その声にネットワーク男爵がハッとする。
「その声は…遡上?!」
拳を床に叩きつけた瞬間、亀甲が床を張り巡らしながら2人へと向かう。それを見て咄嗟にリコルがネットワーク男爵を突き飛ばす。
「エンド(リコル)!!」
甲羅がリコルの体に纏わり付く。体を能力で分解して離れようとするが、そのたびに甲羅がくっ付いてきて上手く離れない。

130ノートン:2020/08/22(土) 16:56:13
「ぐぐぐ…このクソ甲羅…」
奮闘するリコルを、ネットワーク男爵は注意深く観察し始める。
「これはまさに、エンドが天狗になる絶好のチャンスであーる!!」

男爵の思わぬ反応に、憤るリコル。
「助けてやったのに、礼も無しでその態度かよ…クソ野郎がぁ!!!」

一方、暴走した逆流の甲羅は、オットセイ全体を覆い始める。オズマに侵入を阻まれた名古は、その奇妙な現象を見て、咄嗟の判断を下す。

「花園ぉ!お前1人でオットセイに侵入せい!このアホんだらは俺が止める!!」
花園は頷き、入り口へと走り出す。

「行かせるわけねぇだろ、こっちは大金もらってんだ」
オズマが花園を止めようとする、その瞬間。名古の伸縮した布がオズマをぐるぐる巻きにして捕らえた。
隙を見た花園は、オットセイ入り口を突き破り侵入。直後、甲羅がオットセイ全体を覆い尽くし、侵入不可な要塞となった。

「これで俺もお前も入れなくなったな、オズマ」
「…名古、お前さっき何て言った?」
「あぁ?」
「俺を”止める”って言ったな。”倒す”ではなく”止める”。お前の本能が言ってんだよ、俺には勝てねぇってな」
「意味わかんねぇよ、このまま締め殺す!!」
「フラッシュ・レオパルドォォ!!」

名古の背後に殺気ー。振り向くと、どう猛な3体の獣(巨大なライオン)がいた。
「しまった…!?」

その内の1匹が、名古めがけて毒の霧を吐く。
「ぐぁぁぁあああ!!!!」
苦しみ始める名古。その場に倒れ込んだ。

「弱ぇ…だからお前は三流なんだよ」

131キャプテン:2020/08/25(火) 07:01:44
獅子が吐き出す毒ガスが名古の周囲を囲む。オズマが注意しながら毒ガスから後ずさる。
「…そろそろだな。行け!!フレッシュ・レオパルド、噛み殺せ!!」
毒を出した獅子が毒ガスの中へと飛び込み姿が見えなくなる。獰猛な獅子の雄叫び。しかし、鳴き声は止み、中から名古が現れた。
「ありえん、何故動ける?!」

眼から血が流れ、繊維で作られたであろうマスク越しに血が染み、吹き出す。それでも服の繊維が収縮して筋肉の役割を果たし、毒に侵された体を無理やりに動かしていた。

「…ふっ、そんな体で何…を…(しまった、奴は毒を浴びている?!それに残りの2匹は毒ガスの向こう側だ?!)」
毒ガスを吐いていた獅子は口に繊維を詰まらせて倒れていた。名古がオズマに突っ込む。
「(クル…苦しい?!だが毒に耐性があるのはあの獅子1匹らしいな。2匹は毒ガスに阻まれこちら側には来れねぇ。3匹同時に毒ガスの中の俺を襲わせなかったのがその証拠だ。…例えここで死んでもオズマ、オメェはこの体に浴びたテメェの毒で殺してやる。ソレが鉄砲玉の俺の役目だ!!!)」

132ノートン:2020/08/28(金) 00:09:48
名古の捨て身。しかし、現実は虚しく…。
「名古よ、教えてやる。フラッシュレオパルドの攻撃は、術者には干渉しない。分かるか?お前の毒は、俺には効かない」
「そんな…馬鹿…な…」

毒が周り、意識を完全に失う名古。その場に倒れ込んだ。
「お前のその根性だけは大したもんだ。さて、もう1匹の侵入者を探すとするか。まずはどこから侵入するか…」

一方、オットセイ内部に侵入した花園は、リコルを救い出すため真っ先に地下階段へと向かっていた。階段を猛スピードでかけ降りる、その時。
「待て、侵入者」

振り向く花園。そこにいたのは、見慣れたシルエットだった。
「スノーボールΩ!?何故ここに…」
「おいおい、俺はスノーボールΣ(シグマ)だ。名前を間違えるんじゃねぇ」
「Σだと!?」

さらに奇妙な展開は続く。
「俺はスノーボールγ(ガンマ)」
「俺はスノーボールβ(ベータ)」
「俺は…」

次々と現れる雪だるまの生物。その数、20体。
「…」
「よう、久しぶりだな花園」
大量の雪だるまの軍勢の最後尾。遠くから花園に語りかける。
「…お前がスノーボールΩか」
「そうだ」
「ここで産まれた生物兵器だった訳か」
「察しがいいな、その通りだ。そしてここにいるのは俺の兄弟達!悪いが、もうお前とは何の縁もねぇ。ここで死ね!」

133キャプテン:2020/08/30(日) 10:12:25
施設の外で毒に侵され倒れる名古、彼の指には血で染まった真っ赤な糸が結ばれ、何処かへと伸びていた…

…オットセイ内部。
「おっ…名古の兄貴、もう済んだんすか?!」
花園がスノーボール達の背後に向かって手を振る。彼らが一斉に振り返る。…誰も居なかった。
「…?!テメェ!!」
騙されたことに気付いてスノーボール達が前に向き直ろうとする。花園が彼らに近づき蹴り倒す。密着し過ぎたスノーボール達はドミノ倒しになり階段を転げ落ちた。
「ヤロー!!冷凍ビーム!!」
しかし、攻撃は花園を外れて別のスノーボールに当たり凍りつく。
「何やってんだお前?!冷凍ビーム!!」
何故か攻撃は外れ、次々に同士討ちを繰り返す。
「(体の動きが…おかしい。一体何が起きているんだ?!)」
困惑するスノーボールΩを他所目に花園が不安そうに上を見る。
「(名古さん…大丈夫だろうか。)」

134ノートン:2020/09/01(火) 21:37:33
スノーボールの軍団が、まともに歩けなくなっていた。転んでは立ち上がり、また転ぶ。冷凍ビームもまともな方向に撃てず、お互いにぶつけ合い、何体かは砕け散っていた。

「花園…能力を使ってやがるな!」
「そうだ。”左右反転の相”」

花園の能力”左右反転の相”は、相手の右と左の感覚を逆転させる能力である。左手をあげると右手が上がり、左で歩き出そうとすると右足が動く。
「まともには動けん。自滅しろ」

次の瞬間、砕けた雪だるまが次々と合体していく。一体の巨大な雪だるまとなり、花園の前に立ち塞がった。
「俺の名はキング・スノーボール!ぶっ殺してやる!!」

ー場面は変わり、時は遡る。

100年前にタイムスリップしたハレン。ペプシマン、ペプシウーマン、ヴィヴィとの対話が目的だった。
「シュワァァ、久しいなハレン。何事か?」
「ペプシマン…今の内に謝っておくよ、ゴメン」
「シュワ?」

ハレンはヴィヴィを見る。
「ヴィヴィ、歩けるようになったのか?」
「あぁ。シィって奴によ、治してもらったんだ」
「そうか、丁度いい。俺の話を聞いてくれ」

ハレンは3人に今の現状を説明した。
「リコル・ホリデーを助ける為…ヴィヴィ、未来へ行ってくれ!」
「行きたいのは山々だけどよ…」

ヴィヴィはペプシウーマンを見る。
「無理よ。私の能力知ってるでしょ?過去へは行けても、未来へは行けないわ」
ハレンは両手をウーマンの頭に置き、念じ始めた。
「今の俺の能力は”催眠術”。ウーマンに、俺を”ヴィヴィ”と認識する催眠かける!ヴィヴィ、お前は”ハレン”として、未来へ行くんだ」

135<削除>:<削除>
<削除>

136キャプテン:2020/09/07(月) 19:14:17
「…無茶だ、そんなこと。」
頭をかきながらイライラした様子でヴィヴィが吐き捨てる。
「改変された世界は過去の影響を受けない。」
ハレンがヴィヴィの両肩を掴んで揺さぶる。
「アイツは…セオドアはネットワークの祖先であるお前らにさえ存在を否定された存在…その憎しみに向き合う事ができるのは、ヴィヴィお前だけだ!!」…

…「もう、疲れたよ。」
リコルが抵抗を止め、甲羅に覆われていく。
「何故、抵抗しないエンド。憎くないのですか!!」
ネットワーク男爵がムキになってリコルに言い聞かせる。リコルが涙を浮かべながら笑みを浮かべる。
「世界とか改変とかエンドとか、もう何かに利用されるのは嫌なんだ。俺が居なくなれば、もう何も変わらない。そうだろ?」
その言葉に男爵の表情が険しくなる。そして、怒りに任せて言葉使いが荒れる。
「ふざけるな、テメェの存在はテメェで決めろ!!ショック・ウェーブ・パルサー!!」
男爵の掌に稲妻が走る。高電圧をかけ、甲羅の細胞組織を破壊する。そしてリコルを甲羅の中から引きずり出して投げ捨てる。
「抗え!!あなたに死なれては困る。」

137ノートン:2020/09/08(火) 10:47:06
「お前には抗い、天狗になってもらう必要がある。エンドよ。お前の人生より酷い、私の人生を聞かせよう…」

これから語られるのは、ネットワーク男爵の人生の一端である。

その昔、祖父ヴィヴィ・ネットワークの活躍により、世界の均衡は保たれた。

時が過ぎ、ヴィヴィの息子であるアルベルトとその妻マリンとの間に男の子が生まれる。セオドアの誕生である。

アルベルトとマリンは確かな愛情を我が子に注いでいた。大きな屋敷に自慢の家族。セオドアは幸せな日々を過ごしていた。

しかしセオドア7歳の頃、この幸せな日々は突如終わりを迎える。

ネットワーク家惨殺事件、発生。
ある日の夜。何者かが仕向けた暗殺者により、ヴィヴィを始め、祖母・父・母が次々とセオドアの目の前で殺された。

暗殺者の最後の標的となったセオドア。絶望の最中、彼は能力に目覚める。暗殺者も近寄れない程の強力な電気を発し続けたのだ。

電気による激しい音とフラッシュバック。周りの住人がざわつき始めるのを感じ取り、暗殺者はその場を去る。ある言葉を残して…
「お前は運がいい」
暗殺者の、最初で最後の言葉だった。

身寄りの無くなったセオドアは、孤児院に引き取られるが、事件のトラウマから抜け出せず、人間不信に陥る。周りの同学年と打ち解ける事が出来ず、次第に虐めの対象となっていった。

そして、13歳のある日ー
セオドアの精神を大きく捻じ曲げる事件が起こる。

虐めに耐えきれなくなったセオドアは、意を決し虐めの主犯格である少年を撲殺。初めて人を殺した。殺人行為により彼の中に芽生えた感情は、罪悪感ではなく…快感だった。

現場に駆けつけた教師、虐めに加担した生徒を皆殺しにし、孤児院を抜け出す。

そして、その後ー

138キャプテン:2020/09/12(土) 22:38:48
5年後、早川組本部屋敷。
気絶した組員達の山の上に2人の男が向かい合っていた。セオドア・ネットワーク、当時18歳。バルトゥース・グーナゥベック、当時25歳。
「よくもまあ、やってくれたのう若造。」
屋敷の奥から老人が現れる。ハヤカワ二郎、当時80歳。
「昔、ネットワーク家に暗殺者を差し向けたのはアンタらか?誰に雇われてやったんだ?」
バルトが後ろに下がり二郎が前に出る。
「敵討ちという訳でも無いようじゃな。まあ良い。あの依頼主は確か…。」
聞かされた名前にセオドアが絶句する。そして腹の底から笑いがこみ上げる。そして笑い疲れて俯いた。
「お前さん、仕事を紹介してやろうか?」
こうしてセオドアは二郎の推薦によりブラックボックスに裏口入社する。その後、ネットワーク家が華族だと判明し、男爵の爵位を国より受け取る。
そして月日は流れる。

139ノートン:2020/09/19(土) 21:38:47
ある日、セオドアはオットセイ屋上にある立入禁止区域へと呼び出された。

厳重な扉を開けるセオドア。部屋の中にいたのは、魔女の服装を身に纏い、三角帽子・不気味な杖。見た目はお伽話に出て来る魔女そのものだった。年齢は若く見える。しかし、佇まいや雰囲気から独特のオーラ(圧力)があった。

「総括リーダー…ワールド様。お久しぶりでございます」
「セオドアよ、お前の働きは優秀だな。お前に”課長”の役職と、特別な任務を与えたい」
「ありがとうございます。特別な任務とは?」
「お前は、過去を変えたいと思った事はあるか?」

唐突に問うワールド。
「申し訳ありませんが、何を仰っているのやら…」

その時、ワールドはある男の生首を机にゴンっと置く。
「セオドア、これが誰か分かるか?」
「知りませんな…いや…」
セオドアが感じる違和感。どこか懐かしく、恨めしく、昔の記憶がぼんやり蘇る。
「まさか…」

「思い出したか。お前が孤児院にいたとき、撲殺した少年。こいつは虐めの主犯格だったと聞く」
「確かに面影はあります。だがあれは20年以上昔の話…こいつ、生きていたのか!?」
「違う。私が蘇らせたのだ。歴史を改変させてな。死んだはずのこの男が生きている歴史を作り出した。そして、先程殺したのだ」
「…!?」

ワールドは奥から1人の少年を連れてきた。
「この子の名はエンド。私の細胞で作り出した、我が息子だ」

少年は人間…と呼ぶには何か欠けている。精気を感じない。魂が抜けている、まるで抜け殻。

「私ワールドと、息子エンドの能力が合わされば、歴史を改変する事が出来る。だが見た通りこの子には魂が無い。上手くコントロール出来ないのだ。お前の任務は、この子に魂を注入する事だ」

140キャプテン:2020/09/21(月) 12:57:29
「…魂…一体何のことを…。」
すると空から流星群が降り注ぐ。
「さあ、始めましょう。モニュメントバレーで待っています。」

一瞬意識が飛ぶ。セオドアが気がつくと、いつの間にかワールドとエンドの姿は立入禁止区域から消えていた。その後、モニュメントバレーにて隕石の落下を観測。そしてエンドが発見される。
セオドアはバルト総監に連絡をし、ジェノの所属する消防隊にエンドを回収させた。エンドの魂、精神の発育を促す為に…

…現在、オットセイ内部
「全く、冷や冷やさせないでくださいよ。」
エドモンドが巨大化した拳をホリデーに叩きつけようとしていた。瞬時にホリデーは腕を蛸化して伸ばし、後方の壁に吸盤で貼り付ける。そして腕を縮めて移動し、攻撃を逃れた。
「気持ちが悪い能力ですね。」
床に叩きつけられた拳を元に戻し、眼鏡を直しながらエドモンドが言う。
「あら、お互い様じゃない?」
ホリデーも腕を元に戻しながら言った。

141ノートン:2020/09/26(土) 15:45:21
「1つ、問いたい」
「何よ」
「貴女は何の為に戦うのです?」
「そんなの…決まってるわ」

ホリデーはタコの両腕を伸ばし、通路の天井に張り付く。

「村人とリコルを救う為よ!悪いけどあんたと戦ってる暇ないの!」
天井の排気ダクトの中に侵入するホリデー。軟体の体を生かし、奥へ進んでいく。

「逃しはしない!」
エドモンドは全身を倍加させ、体が徐々に長くなっていく。そのまま腕を排気ダクトの中に突っ込み、ホリデーの足を掴んだ。

「は…離して…嫌ッ!」
ホリデーを排気ダクトから引きずり出し、床に叩き付ける。倒れ込む彼女を、倍加した巨大な拳が襲う。

「貴女は!」
ドゴッと激しく殴る。
「分かって!」
再び、ドゴッと激しく殴る。
「いない!」
更に、ドゴッと激しく殴る。

「村人は!この歴史から!消えた!戻らない!永遠に!」
エドモンドが一言発する度に、巨大な拳を振り下ろす。滅多打ちにされるホリデー。

「はぁ…はぁ…村人に会いたいなら、死んであの世で会うと良いですよ。お嬢さん」

142キャプテン:2020/09/29(火) 21:44:50
ホリデーの意識が遠のき、過去の記憶が蘇る。
倒れ込む村人達の中、ただ1人自分だけが立っていた。悲しみよりも強烈な怒りが吹き出す。
「…絶対に助けてみせる、どんな手段を使ってでも!!」…

…「腕が?!」
エドモンドの拳がホリデーの掌の吸盤に張り付く。吸盤の強力な吸引力により巨大な拳をバキバキにへし折る。拳から血が流れ滑り拳が剥がれた。
「何ですか…その姿は?」

ホリデーの髪がタコの足のようになり、顔に変化は無く、全身に滑りがあり吸盤のあるグロテスクさが混ざった姿だった。

「クラーケ。」
ホリデーが両の掌を床に着ける。吸盤の吸引力が働き、甲羅の床が砕ける。
「(吸盤で真空状態を作り出して…)」
甲羅化した壁や天井、床が真空の吸引力で気圧の変化が生じ凹む。そしてエドモンドを押し潰す。
「クソ…押し返せ、倍加!!」
エドモンドの足が巨大化して迫る壁面を押さえる。
「もう…手段は選ばない。」
ホリデーが冷ややかに言った。

143ノートン:2020/10/03(土) 22:12:30
「ぐぉぉぉぉ…こんなもの…こんな…」
圧倒的な力の差。ホリデーの進化した力は、エドモンドを凌駕していた。

壁面で押し潰されるエドモンド。かろうじて生きてはいるが、骨が砕け、指一本動かせる状態ではなかった。

「悪いけど、あんたと遊んでる余裕なんて無いわ。私の記憶から、村のみんなの事が断片的に消えていってる…。このままじゃ、村のみんなの事を忘れちゃうわ!」

歴史の改変により、村人の記憶が徐々に消えていく。焦るホリデーは、一目散にリコルの元へ走る。

一方、花園は巨大化したスノーボールと対峙していた。
「花園!テメェの”左右反転の相”は10分しかもたねぇんだよな!?もう直ぐ時間が経っちまうぜ!」

スノーボールの動きは封じた。だが、叩いても叩いても雪が砕け、また集まり、再生する。合体した事で、常人の腕力ではとても倒せない体へと変貌していた。

「今は動けないが、10分経ったらテメェの首を撥ねる!後2分だ…」
花園は考えていた。あの技を使うしか無い…と。

昔、早川組と並び、恐れられていた組があった。その名も”花園組”
花園家は代々、自分の中に鬼を飼うと言い伝えがあり、鬼を解放した時、彼らは最恐の力を得た。

しかし、組同士の抗争が勃発し、花園組は滅びた。当時幼子だった花園龍雅は早川二郎へ引き取られた。

「俺の中の鬼よ…今こそ目覚めよ。”自我反転の相”」
花園が一瞬気を失う。その後、鬼の形相へ変化し、人格が入れ替わった。

「グヘヘ… 龍雅の中で聞いてたぜ変態野郎…俺の首を撥ねるだと?やれるもんなら…やってみなぁ!!」

144キャプテン:2020/10/07(水) 18:56:39
「いくぜおらああああああ!!」
顔面があり得ないほどシワクチャになった龍雅。全身にスノーボールΩの特大冷凍ビームを浴びるが凍った瞬間に氷は砕けて落ちる。
「何がどうなっていやがる?!」
龍雅がビームに抵抗されながら拳をユックリと打つけた。綿が触れた程度に見えるその拳は、スノーボールΩの巨体を一瞬で消し飛ばした。

『自我反転の相』により龍雅の全身に異常に浮き出る鉄壁の筋肉の筋。そこから生まれる拳打は、かの二郎に匹敵するとされる。

「危なかったぜ。」
その声を聞き、急いで龍雅が振り返ろうとする。すると足場が異常に滑って転んでしまった。
「さっきの体は身代わりにしたぜ。『アイスバーン現象』、氷と雪で摩擦をほぼゼロにした。力を加えれば加える程、あんたは滑って転ぶ。そして…」
霧が辺りに立ち込め視界を奪う。自我反転の相の制限時間、残り3分を切っていた。

145ノートン:2020/10/10(土) 01:20:44
霧+アイスバーン現象により、動く事も出来ない龍雅。その時、何故か大きく息を吸い込み始める。

「あ”っっっ!!!!!!」
地面に向かって凄まじい大声を出す。声が空気砲となり、地面に激突。その衝撃で体が空中に浮いた。

「なんて大声を…コイツ」
「空中なら摩擦も関係ねぇだろうが!二郎さん、あんたの技ぁ、使わせてもらうぜ。拳骨”飛雨”」

空中で放った拳骨が、四方八方に飛び交う。拳骨は霧を吹き飛ばし、露わになったスノーボールの肉体に次々と穴を開けていく。
「い…痛いぃぃぃいい!!!」

雪の体は、再生出来ないほど粉々に砕けていった。
「威力は二郎さん程じゃねぇが…効いただろ」
スノーボールを討ち取った龍雅。安堵しようとした、次の瞬間。

パチパチパチ…。

振り向く龍雅。葉巻を吸い、煙を上げながら拍手をする男がいた。

「強ぇじゃねぇか。”鬼の花園”」
「オズマ!?名古はどうしたぁ!?」
「答えは言わなくても、分かるだろ?」
「野郎!!」

この時既に、”自我反転の相”のリミットは残り30秒を切っていた。

「お前も名古もよぉ…何でこんな事に命かけてんだ?仁義だ何だと古くせぇ…早川二郎?早川組?そんなしがらみ捨てちまえ。ファクトリーファミリーに入れば、命は助けてやるよ」

146キャプテン:2020/10/12(月) 20:49:39
「カネで腐ったかオズマアアアアアァァ!!!」
龍雅が叫びオズマに飛びかかる。すると空間から三匹の獅子の頭部が形成され、前足、腹、後ろ足、尻尾と創造され龍雅に向かって口を開く。
「(攻撃を誘い、脅威を見せつけ動きを止める。そして意表を突く!!)」
しかし、龍雅の怒りは止まらず拳は獅子達の顎を打ち砕いた。そしてオズマに拳を振り放つ瞬間…
「(…まさか?!)」
龍雅は機転を利かせ、拳を床に打ち放つ。床を覆っていた甲羅が割れてオズマに突き刺さった。
「『毒』か…クソ野郎が!!」
苦しむオズマの服から毒の霧が立ち込める。オズマがため息を吐いて懐から『ガラス瓶』を取り出した。
「引き分けにしないか?名古はじきに毒で死ぬ。だがこの解毒薬があれば助かるかもな。後ろに名古が仕掛けた糸が出口に続いている。さあ、どうする?」

オズマは予想外の深傷を負い、獅子達も痛みに悶えている。龍雅も能力が切れ、同時に冷静な判断力を取り戻す。互いに攻め手を失っていた。
「返答は…」

147ノートン:2020/10/17(土) 22:04:52
「舐めるな。お前の”能力進化”くらい知ってる。油断させた所を背後から狙う…初めから俺を見逃す気なんて無いだろ」

フラッシュ・レオパルドが煙となってオズマの周囲を舞い始め、オズマと同化した。
「ご名答だ…”フラッシュ・フュージョン”」

体は徐々に変化していき、右腕は毒々しく紫に変色し、左腕はゴツゴツした岩の腕へと変化。残る上半身はメラメラと燃え盛り、異形の姿へと変貌した。

「俺の誘いに乗ってりゃ、死ぬ事はなかったのになぁ」
「さっさと殺せ。もう俺に力は残っていない」
オズマは岩の左腕を大きく振り上げる。花園の顔面を潰すつもりだった。

絶望的なこの状況下で”それ”は突如現れた。
「君はラッキー?アンラッキー?ラッキー?アンラッキー?…」
ピンクのウサギが花園に話しかける。この生物が、今回の騒動により逃走した生物兵器だと、2人は知らなかった。

「何だぁ?こいつ」
「君の願いを一つだけ叶えてあげる。ただし、僕のこのコイン、表が出たら地獄、裏が出たら天国。君の運命は、このコイン次第さ!」

コインが投げられる。だが、オズマはピンクのウサギを殴り潰した。
「邪魔が入った。続きだ、死ね!」

死の間際、花園はお気に入りの小説を思い出した。
「願い…か。どうせ死ぬなら、あの人と話してみたかった。大ファンなんだ…」

オズマの岩の大腕が振り下ろされる。花園の顔面を直撃…かに見えた。
「…!?」

1人の男が、剣でオズマの腕を止めていた。男の胸には”青空隊 隊長”のバッヂが光っていた。

「何だテメェ、どっから現れた!?」
「そんな…まさか…」
剣に炎波の炎を灯しながら、オズマを突き飛ばし、裏面の出たコインを拾い上げる。

「俺は青空隊隊長、スー・グラウンド。花園龍雅の願いより参上した救世主だ」

148キャプテン:2020/10/19(月) 18:57:55
「…炎波刀(えんはとう)。」
スー・グラウンドと名乗った男性の持つ刀の切っ先から炎が後方へと噴射され加速する。

「速い?!」
そのままオズマの毒の右腕を焼き切った。解毒薬の小瓶が懐から落ち転がり、龍雅がそれを拾う。
「名古とかいうヤツ、大事な仲間なんだろ?早く助けに行ってやれ。」
スーの言葉に感動し、龍雅は涙しながら頷いてその場を彼に任せた。伸びる糸を目印に名古の所へと走る。真っ赤に染まったその糸を…

…「コウ…オツ(甲乙)!!!」
遡上が叫ぶ。セオドアとリコルは甲羅の壁によって完全に閉じ込められた。リコルは未だに魂が抜けたようだった。
「エンド…クソが!!(このままでは共倒れになります!!)」
セオドアがクラウチングスタートの構えをする。両の足から稲光が起こる。そして甲羅に囲まれた外壁を疾走し、遡上を蹴り飛ばす…が、甲羅の鎧でびくともしない。さらに走り出し、足と壁面との摩擦で纏う静電気が大きくなる。そのエネルギーでさらに加速する。

「戦う…意味…生き残る…意味。」
茫然と戦いを眺め、リコルがふと呟いた。

149ノートン:2020/10/24(土) 00:36:06
生物兵器課、エリア13内部にてー。

ターグ博士がリング状の装置を取り出す。
「完成したぞ。これが”ブレイン・インタフェース”だ。これで操れる…ククク」

ターグ博士はペプシマンの頭にブレイン・インタフェースを取り付ける。リングからは無数の触手が伸び、ペプシマンの頭に侵入した。

「うぅ…あ…あ…」

ペプシマンは強化ガラスのポッドからゆっくりと起き上がる。
「おはよう、ペプシマン」
「ターグ…様。おはよう…ござい…ます」
「ククク!いいぞ、完成だ。さぁ、侵入者共を殺しに行くぞ」

巨大な力が、エリア13を後にする。

一方、無数の甲羅に囲まれたリコルとセオドア。
激しく動くセオドアとは対照的に、リコルは静止していた。

「生きる…意味…俺は…殺戮兵器…俺は…」

セオドアの話から、自身の出生の秘密を知った。その影響からか、深く、深く。リコルの精神は奥深くへと沈んでいった。

辺りは何も無い。ただ真っ暗闇の精神世界。リコルはただ1人、佇んでいた。

「俺は世界を壊す為に作られた兵器。俺はこの世界にいない方がいい。死にたい…」
「儂はお前が羨ましい」
「!?…誰だ!?」

リコルの後ろにいたのは、天狗だった。
「儂の名はエンド。破壊と構築を司る者だ」

150キャプテン:2020/10/26(月) 20:52:27
「何を言っているんだ。羨ましい、何を?!貴様のせいでオレは…ボクは…。」
リコルの感情が爆発した。涙が止めどなどなく溢れ出す。エンドがリコルの頭をやさしく撫でた。
「リコル、お主を望んだのは『元の世界』だ。ウポポイの人造実験など改変世界でお主が生まれる理由づけでしかないんじゃ。」
ポカンとするリコル、エンドがリコルの両肩に手を置き向かい合う。
「時間がない。ウィンドウブレイカーの人体分解は、お主自身の人体構成に多大なダメージを与えている。このままでは時期に粒子崩壊が始まり共倒れじゃ。方法は一つ…」…

…リコルの体から赤い粒子が立ち上り続ける。そして粒子が紅天狗の形へと変化する。セオドアが唖然とする。
「エンドとリコルが…分離した。アレは?!」
リコルが頭の中でエンドとの会話を強く思い出す。

『…お主の本心は?』
エンドの言葉にリコルが強く返す。
『この世界を、打ち壊したい!!!』

「さあ、行くぞエンド…グラスホッパー(射手硝子)!!!」
エンドの体にリコルが触れる。紅天狗が赤い粒子に分解され、リコルの手から射ち出された。

151ノートン:2020/10/31(土) 23:59:26
街灯やコンビニの明かりが、深夜の街中を煌々と照らし出す。
緑の派手な髪を靡かせながら、ヴィヴィはオットセイへ向かっていた。
「これが100年後の世界。何つーか…気持ち悪いな。夜が夜じゃねーみたいだ」

自身の筋肉に微量の電気を流し、高速移動を可能にしていた。ビルの屋上から屋上へ移動し、遂にはオットセイ屋上へと辿り着く。

下を覗くと、傷だらけの大男が倒れている男へ何かを飲ませていた。
「名古…これを飲んでくれ。頼む」

屋上からその光景を見るヴィヴィ。
「何だあいつら…敵か!?殺っとくか?くそ!ハレンに味方の情報を聞いとくんだった!」

その時、ヴィヴィは本能である事を直感した。
丁度その時、セオドアが甲羅内を高速で駆け巡っている瞬間だった。
「同族嫌悪ってやつか。分かるぜ、この下にいるのをビンビン感じる。今行くぞ…リコル…セオドア!!」

オットセイ地下では、天狗エンドとの協調を遂げたリコルがいた。
「確かに前から、体がバラバラになりそうな予感はあった。俺を守ってくれるのか…エンド?」
「結果としてそうなるな。ワシとお前は表裏一体。今はワシの力の全てを引き出せはしないだろうが…行くぞ、リコル」

リコルは甲羅の壁に手をかざす。
「グラスホッパー!」
甲羅が徐々に小さく、バラバラに分解され、手をかざした部分に穴が空いた。

「エンド貴様、天狗になるのではなく、内なる天狗を手懐けたというのか…!?」
「お前は後だ、セオドア。まずは逆流、貴様から倒す!!」

152キャプテン:2020/11/02(月) 22:05:46
「コウオツ(甲乙)」
逆流が床に手を置く。床が盛り上がり、丸い甲羅が幾つも現れ弾け飛ぶ。エンドがリコルの盾になる…が、甲羅は壁床を跳ね回り背面から迫っていた。
「マズい!?」
稲光とともにセオドアが甲羅を蹴り、間一髪で軌道を変えた。セオドアの足が赤く腫れ上がる。
「くそ、硬すぎる!!」
リコルが深いため息をついて決心する。セオドアの足に触れると粒子化したエンドがセオドアの両足に纏わり付き、足を赤く染める。
「リコル、何の真似だ?!」
セオドアの言葉を阻む様に更に甲羅が大量に迫る。

バチンッ!!!

赤い稲光が一瞬で走り、セオドアの強烈な蹴りが甲羅達を砕き切った。
「足が…勝手に、リコル貴様!?」
赤い粒子が足を強化し、さらに粒子同士が擦り合う事で大量の静電気を生んでいた。
「生き残る為に今はこれしか無い。力を貸せ、セオドア!!!」

153ノートン:2020/11/08(日) 10:34:09
「なるほど。分解の力を応用し、我が輩に付与した訳か」
「分析は後にしろよ!協力しろセオドア!」
「断る。ショックウェーブ・ウォール!」

電気の壁が、逆流とセオドアを遮る。迫る甲羅を押し止めるが、甲羅は徐々に壁にめり込む。さらにセオドアはリコルの両腕を掴み、リコルに電流を流し始めた。
「がぁぁぁ…!?何を…!!??」
「エンドよ。何故かは知らんが、我が輩に特別な”情”があるな?我が輩を攻撃出来ないのだろう。こんな好条件、見逃すはずがない!」

強力な電流で薄れ行く意識の中、リコルはヴィヴィを思い返していた。
「ごめんヴィヴィ…セオドアを何とかしたかったけど…無理…だっ…た…」
「天狗を待ち侘びていた!貰うぞその力。能力分離装置を使ってな!」

その時。ドォン!!ドォン!!と激しい音が地響きと共に近づいて来た。
「何事か!?この揺れ、この轟音!?」

更に、リコルの側の天井が激しく崩れ落ち、上階からヴィヴィが降りてくる。
「やっと地下か。何階建てだこの建物はよぉ」

セオドアは天井に空いた穴を覗き込む。
「まさか!?屋上から…オットセイを破壊しながら降りて来たのか!?」

ヴィヴィはリコルを見つけると、間髪入れずに高速移動。セオドアを押し飛ばし、リコルを救い出す。
「お前ら、あんまり俺の後輩をいじめるなよ」
「ヴィヴィ!?何で!?」
「お前を助ける為に決まってんだろリコル」

孤独に、痛みに耐え抜いてきたリコル。何度も死を考えた。生きる価値も無いと思っていた。
しかし、目の前の男は、時を超え自分を助けにきた。まるで生きろと言わんばかりに。様々な感情が溢れ出し、リコルは涙を流した。

「ううっ…ありがとう…ヴィヴィ…俺…ずっと辛くて…」
「泣くのは後だぜリコル。分担するぞ。お前はあの甲羅野郎だ。俺は…」
ヴィヴィはセオドアを見る。
「俺はこいつを殺る」

154キャプテン:2020/11/10(火) 21:24:44
ヴィヴィがリコルの頭を撫でる。
「甲羅の方は頼んだ、静電気の方は俺がやる。」
リコルが頷き、互いに敵と向き合い立ち向かう。

数分後

「(硬すぎる、分解できない。)」
リコルが甲羅の部屋全体に押し潰される。リコルの分解は甲羅同士の結合生成速度に負けていた。
「(電気が、流れない。)」
ヴィヴィがセオドアの足に押しつぶされる。赤い足は高温を帯び粒子が活発に活動する。
電気抵抗…温度が高くなるほど原子の振動が大きく速くなり電気抵抗は強くなる。

二人は思う。いつだって現実はこんなものだった…今までは…

「グラス…ホッパー」
リコルが苦しみながらも歯を食いしばり、分解した甲羅を無茶苦茶に撃ち放つ。
「ショック…ウェーブパルサー」
ヴィヴィの体が発光し痙攣し煙を上げ焦げる。自身の体全体を電気回路にし、無理矢理に電気を生み出し空気中に漏れ出す。
「「まだ…終わっない!!!」」

155ノートン:2020/11/13(金) 09:01:36
「うおぉぉぉぁああ!!!」
空気中で激しくバチバチと音がする。それらを束ね、セオドアに思い切りぶつけた。

「なんてパワー…!!??」
セオドアは吹き飛び、側面の壁を突き破る。セオドアが放り出された先は”エリア6”。生物兵器同士を戦わせる実験場だった。

「地下にこんな広い部屋があるのか」
ヴィヴィは空いた風穴からエリア6へ侵入。

「ふぅ…その風貌、その技、どういう訳か知らんが本物のようだな、ヴィヴィひいじいちゃん」
「まだおじいちゃんって歳じゃねぇ。ヴィヴィでいい。お前がセオドアだな?」
「そうであーる。エンドがやたら我が輩の事に詳しかったのは貴様の入れ知恵か」
「エンドって誰だ?って言うか、自分の事”我が輩”って言ってんのか?キモいぞ」

セオドアは大声で笑い出した。
「憧れ、そして恨んできた。ネットワークの家系!何故ここにいる!まさか奴を助けに来たのか?」
「仲間がピンチな時に助けるのは当然だぜ。過去だろうが未来だろうが、俺は来る!」

ヴィヴィはセオドアを指差す。
「一応確認しとくぜ。お前、大量殺人鬼なんだってな?」

セオドアはしばし沈黙し、そして語り始める。
「その答えを知るには、ヴィヴィ。まずは我が輩の話を聞いてもらおう。過去にネットワーク家で何があったのかを…」

156キャプテン:2020/11/13(金) 21:40:31
「我が輩の温かな家族の暗殺を早川組に依頼した人物、それは我がお父上本人でアール。」
ヴィヴィが無言でセオドアの話を聞いている。
「世界の改変前のあなたは知らないでアールな。ひいお爺様は世界の改変に気づき家族に対して困惑したのだ。そして誰にも心を開かず、あの幽霊屋敷に引き籠ったのでアール。そして真実を書き記した遺書を我が輩の父上に残して老衰したのでアール。それが…悲劇の始まりでアール。」
セオドアのおかしな喋り方が少し震える。
「父上は我が輩を殺人鬼にしない為に…殺し屋を雇って一家心中を計ったのでアール。故に…アンタのせいなんだよヴィヴィ!!」
喋り方が変わり、責める様になる。
「結局、ひい爺さんはタダの引き篭もりだった。そして俺は生き残り、復讐相手はもう世界改変前のアンタしかいない。」

何かに気づいてヴィヴィが見上げる。話している間に赤い粒子がセオドアの足から伸びて天井に広がる。それは巨大な『赤い雷雲』の様になっていた。

157ノートン:2020/11/14(土) 16:54:33
「話は分かった!未来の俺は引き篭もり続け、さらにお前に辛い思いをさせた…だが」
「…?」
「今の俺はまだ何もしてねぇ!復讐される筋合いはねぇ!!」
「黙れ!貴様の存在自体が罪なのだ!!!」

頭上に広がる、不気味な赤い雷雲。そこから赤い雷がヴィヴィめがけて降り注ぐ。

「ショックウェーブ・パルサー!!!」
ヴィヴィは赤い雷に自身の雷をぶつけ、激しく衝突。過去での幾千の激戦から、ヴィヴィの電力はかなり向上していた。
ヴィヴィの頭上で、雷同士がぶつかり、消滅しを繰り返していた。

「エンドの能力でアップした我が輩の技と互角…だと!?」
「つ…強ぇ。俺のフルパワー電力の技と互角…かよ」

この時、ヴィヴィは気付いていなかった。セオドアが張り巡らせた罠に。

お互いの攻撃が終わり、赤い雷雲が晴れる。
「ゼェ…ゼェ…やっと終わりか」
「その靴」
セオドアはヴィヴィの靴を指差す。
「あぁ!?」
「知っているぞ。貴様は靴を媒体にしなければ、能力を発揮出来ない」

ヴィヴィが頭上の雷に対処している最中、セオドアの微弱な電力は静かに床を張っていた。
セオドアが指をクイっと動かす。床に伝っていた電力がまとまり、ヴィヴィの右側の靴を切り裂いた。

「俺の靴を!?…この野郎…!!」
「靴が無いと能力が使えないとは…弱点を露呈しているようなものだ。次は左の靴を狙う。その後なぶり殺しだ」

158キャプテン:2020/11/17(火) 19:36:12
「積乱雲の中を知っているか?」
セオドアが手を振り放つ。空気中に舞う赤い粒子が巨大な雲状になりヴィヴィを覆い尽くす。中では凄まじい上昇気流と電気。風に飛ばされ、赤い雷に何度も打たれ、左靴も焼かれる。雷がヴィヴィの心臓にまで流れて心拍が止まる。雲が晴れ、ヴィヴィが倒れて意識が遠のく。
「(胸が…心臓をやられたか。靴もない。終わりか。まあ、俺にしてはよくやった方かな。)」
力を失い、床に散らばっていた赤い粒子たちが倒れたヴィヴィの足に吸い寄せられ始めて…

…一方、リコルと逆流。
「ダメだ、硬すぎる。(体ももう分解できない。もし出来たとしても潰されて終わりか)」
リコルの分解が追い付かず、更に密度を増した甲羅に押し潰される。そんな時ふと昔を思い出す。

「リコル」
「何ですか先輩」
「素粒子を知っているか?」
ジェノの言葉にリコルが首を傾げる。
「ふふっ、では教えてやろう。素粒子はその名の通りあらゆる物質を構成する最小の要素だ。原子核の100兆分の1m。さ〜ら〜に、俺たちの体を1秒間に100兆個貫通してるらしい。どうだ、スゲーだろ?」
ジェノが新聞を横目にしながら得意げに喋る。リコルが呆れながら言う。
「あ〜、はい。凄いですね。(…素粒子ねぇ)」

我に帰り、リコルが目を見開く。
「こうなったら、一か八かだ。」

159ノートン:2020/11/21(土) 22:00:03
リコルが神経を集中させる。イメージは素粒子…昔参考資料で見た、細かい粒々が連なるイラストを思い出した。
「つぶのイメージ…つぶのイメージ…」

甲羅がグシャッとリコルがいた場所を押し潰した。
大量の甲羅の塊の横に、リコルは立っていた。

「あれ!?俺さっきまであそこに居たのに…移動している。技が成功してる!!」

技を外したと判断した逆流は、更なる甲羅を生み出し、次々と投げ飛ばす。
しかしリコルは冷静だった。素粒子の力で自身をバラバラに分解しながら、甲羅の嵐を避ける。そのまま逆流の元へ突っ込んだ。

「…!?!?」
リコルは甲羅のアーマーに両手を置く。次の瞬間、アーマーをバラバラに分解・破壊した。そこには、白衣を身に纏った男がいた。その表情は、怒りと疲労で満ちていた。
「その名札、遡上 逆流ってのがあんたの名か。何て顔してるんだよ…」

その時、リコルの背後から声が聞こえる。
「何しているリコル」
「どうした、天狗」
「そいつごと粉々にしてしまえばよかろう。何故アーマーだけ破壊した」
「なぜって…」

人として生まれたリコル。そして、怪物として生まれた天狗。天狗が人に対する道徳心が無い事は至極当然の事だった。リコルと天狗には、価値観の大きなズレがあった。

160キャプテン:2020/11/24(火) 18:49:30
「(殺す…のか?)」
リコル自身、今までの戦いでその一線を越えることは辛うじて無かった。だが今現在、その曖昧な考えに線引きを求められる時がきていた。しかし…。
「…ダメだ。彼を今殺したら能力が解けて、この甲羅で支えられている建物が崩れてしまう。そうなれば僕達は生き埋めだ。」
リコルが逆流を殴り倒し、エンドから視線を逸らす。体のいい理屈を並べてはいるが、リコルの戦いへの曖昧さをエンドに見透かされている気がした。リコルが逆流の方を見る。
「?!」
逆流が起き上がりリコルの方へと近づいてきた。そして間近まで迫り…
「すっっっきりした!!!あと5分寝かせて。」
逆流がそう言うとリコルにもたれ掛かり眠ってしまった。リコルがため息を吐く。
「感情と能力の暴走が、おさまったのか。(ふぅ、これで良かったんだ…これで。)」

161ノートン:2020/11/25(水) 21:36:48
エリア6にてー。
ヴィヴィが起き上がる。怪我も治り、靴も直っていた。
「え?何がどうなってる!?」

セオドアがその様子を観察する。自身から赤の粒子が消えていくのも同時に確認した。
「なるほど…エンドの能力が我が輩からあの男へ移ったのか。そして奴を再構築した。そのままエンドの付与の能力は消滅したようだな」

ヴィヴィは屈伸運動を始めた。
「何かよく分かんねぇけど、ヤバいんじゃねぇの?お前。赤いブースターが無いんじゃ、電力は俺のが上だ」
「あんなガキの能力なんぞ借りなくても、貴様程度ならどうとでもなる」

セオドアは懐から1本の注射器を取り出した。
「我が輩は生物兵器の専門家。”生物兵器課らしい”戦い方をしてやろう」
セオドアは自分の腕に注入。体が徐々に大きくなっていき、体色は青色に変化。体からは電気がほど走り始めた。
「…なんだこいつの変化は!?」
「さぁ、第二ラウンドの始まりであーる」

一方、リコルはヴィヴィの助けに入ろうとする。その時。
「ウガンヌの女神…”右手の贖罪”」
「!?」
リコルの全身が鉛の様に重くなる

「あら、物理攻撃は無効化出来ても、間接的な攻撃は効く様ね」
「ウポポイ!?くそ…次から次へと!!一緒にいるババァはどうした!?」
「たけたけの事ね?彼女なら緊急ブザーが鳴ったと同時に、一目散に逃げていったわ。保守的なのね」

不敵な笑みを浮かべならが、リコルに近づく。
「さぁ、第二ラウンドの開始よ」

162キャプテン:2020/11/26(木) 17:46:08
ウポポイの腕から血が滴る。それに合わせてリコルの体も徐々に重くなっていく。
「(能力は発動したわ。後は距離さえ取ればエンドは潰れてジエンドよ。)」
しかしリコル、あぐらをかいて動かない。
「…?!何してるのよ。早く攻撃しなさいな。それともこっちが出血多量で死ぬと思ってるの?甘いわね。この戦闘の前に輸血は済ませたわ。貴方が潰れる方が先よ。」
「いいよ、そっちこそ早く逃げた方がいいよ。」
リコルの発言と余裕にウポポイが焦りを隠せないでいる。それを見てリコルが不敵に笑う。
「(焦ってるな。頭はいいみたいだけど戦闘に対しては隙があるみたいだ。これは火消しの戦いなんだ。焦った方が焼かれるね。)」
ウポポイの見えないところで、リコルの放ったエンドの赤い粒子が静かに蠢いていた。

163ノートン:2020/11/27(金) 12:37:10
「うう…あり得ないあり得ない…愚直、短気、単細胞。あなたには直線的なイメージがあったけれど、策略家な部分もあったのね…」
ウポポイは話し終えると、自身の爪をベリベリ剥がし始めた。

「イカれてんのか!?」
「痛い痛い…ウガンヌの女神”左手の断罪”」

剥いだ爪をウガンヌに食べさせるウポポイ。ウガンヌは奇声を発し始めた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!」

ウガンヌが叫び終えた後、静けさが戻る。
「(な…何をしたんだ奴は…俺の体に変化はないが…)」
「ねぇ、エンド。あなた素直に私に拘束された方がいいわよ?」
「ふざけんな。だまれ」
「一応教えといてあげる。ここに厄介者が近づいてるわ。私なんかよりずーっと厄介者。あなた、死ぬわよ?」

自身に何が起きているのか?注意深く意識しながら、リコルはウポポイの会話に答える。

「いい加減にしろよ…次から次へと、何人来るんだよ」
「さぁね?あなたには人を寄せ付ける、それだけ凄い力が備わってるのよ」
「へぇ…そうかよ」
「死にたくないでしょ?痛い思いしたくないでしょ?」
「…そう…だな…」
「私で、終わりにしたいでしょ?」
「うん…」

リコルの視線は、遠くをボーッと見ていた。思考回路が停止しかけていた。

「私の”左手の断罪”は相手の思考回路を停止させる。そういう能力なの。お休みなさい、エンド」

164キャプテン:2020/11/28(土) 23:10:21
思考が途絶し、体も更に重く感じるリコル。そして遂に耐えきれずに倒れ込む。すると座っていた床の背後に穴を見つける。
「穴…まさか?!」
ウポポイが体を動かそうとする。
「(体が…動かない?!)」
ウポポイの背後にも穴があり、そこからエンドの粒子が伝い体に付着していた。
「(思考が途絶する前に全ての仕掛けを…私の能力『贖罪の右手』はエンドの粒子にも影響を与えていたのか。私の体が今、動かないのは私自身の能力のせい?!)ふん、動きを封じたからって、なんだって…?!」
今度はウポポイが床に倒れ込む。
「違う…この感じは、本当に体が重くなっている。エンドの赤い粒子が重しになって?!」
ウポポイが体に付着する粒子の重さに押し潰され始めた。

165ノートン:2020/11/30(月) 23:51:30
「お…重い…。エンド…」
ウポポイがリコルを見つめる。完全に思考停止したリコルも同様に、徐々に押し潰されていった。
「このままでは共倒れだわ…。能力を解除するしかない…。だけど、解除したらエンドに倒されるわ…」

ウポポイは自身の能力に潰されながらも策を考えていた。
「め…目の前にエンドがいるのよ…私の可愛いモルモット…このままじゃ…終わらせないわよ!!」

一方、オットセイ外。逆流がダウンしたことにより、甲羅のバリケードは徐々に解けていき、オットセイの外観が露わになった。

「中で何が起きてるんだ?」
疑問を感じながらも、花園は瀕死の名古を担ぎ病院へ向かう。
「すぐ病院に連れて行ってやる。堪えろよ、名古」
「すまねぇ花園…。完全にお荷物になっちまった」
「気にするな。(スーさん、後は頼みます)」

オットセイ内部。異世界より召喚されたスーはオズマと対峙していた。
オズマは切断された腕を拾い上げ、くっ付ける。たちまち傷口が塞がっていった。

「なるほど、不死身の体か」
「不死身じゃねぇよ。死ぬときは死ぬ。どうだ、安心したかい?」
「別に。昔、不死身の神様を倒したこともあってな。”怪物退治”は俺の専門なんだよ」

166キャプテン:2020/12/02(水) 20:38:25
『かつて白の剣、灰色の剣、黒の剣を継承してきた者がいた。神の生贄にされた彼は、かつての戦友の命の星を受け継ぎ蘇る。そして黒の剣で神を封じた。これはただのお伽話…のはずだった。』

「あなた、もしかしてあのお伽話『宿星物語』第一章の主人公。スー・グラウンドですか?」
オズマの言葉にスーが溜息と共に頭を抱える。
「(…成る程、お伽話に“された”か。『世界の改変』の影響で俺の居た世界は…悲しいな。やはり“あの神”の仕業か)奇しくも俺は、この世界の真実を知ってしまった訳か。」
「何を言っているんですか?まあもし本当にスー・グラウンドなら、これ以上のお相手はおりませんね。」
オズマが獅子のように吠え、上半身の炎がスーを覆い尽くす。スーの炎波刀から火が消える。
「(この狭い空間では燃やせる空気は取り合いだ。そして…)」
スーの首をオズマの左腕が掴む。岩の左腕の密度が増していき、首をさらに締め上げていく。
「岩と炎は燃やす事も、切る事も敵わない。」

167ノートン:2020/12/05(土) 22:03:41
オズマがスーの首を締め上げる。スーは抵抗せず、腕をだらんと下に下げ、瀕死の表情を見せた。
「あっけなかったな」

オズマが勝利を確信し、気持ちに緩みが生じる。その一瞬ー。スーは炎波刀を振るう。狙いは能力変化が起きていない下半身。オズマの両足を切り裂いた。

あまりの一瞬の出来事。オズマの足から血が吹き出し、岩の左腕が緩む。スーは拘束から抜け出し、そのまま3歩大きく下がる。

辺りの酸素を集め、炎波に炎を灯す。そのまま猛スピードでオズマの炎の上半身を大きく切り裂いた。

「う…痛ぇ…足を狙いやがったな…チクショウ!!」

オズマの足の傷は元には戻らず。だが、炎の上半身は切り裂いても元に戻るだけだった。
「なるほど、弱点は能力変化の影響がない下半身か」
「何て速さだ…油断も隙もあったもんじゃねぇ」
「教えてやる、絞め殺すなら素早くやれ。楽しみながら殺すのは、時代遅れだ」
「…空想の人間が、時代を語ってんじゃねぇ!!」

その時、オズマはある異変に気付く。右の毒腕、左の岩腕はそのままだが、上半身の炎が消えていたのだ。
「な…何だこりゃ!?」
「俺の炎波刀は”能力を焼く”刀。この世界でも通用したようだな」
「(さっき切り裂かれた炎の部分。ここだけ能力が消えちまったのか)」

スーがトドメに入ろうとする、次の瞬間。スーの体が重くなっている事に気付く。
「…!?」
「やっと効いてきたか。”神経毒”を空気中に散布していた。もう直ぐ動けなくなるぜ、お前」
「なるほど…一筋縄ではいかないな」

168キャプテン:2020/12/08(火) 22:27:29
スーがなんとか刀を投げ飛ばすが、オズマの上を逸れる。
「残念、ハズレですね。」
オズマが炎で左腕の岩内部の空気を燃焼し石礫を撃ち放つ。それがスーの体に撃ち込まれ膝から崩れ落ちる。
「急所を外しましたか、やはり命中率が低い。」
スーの投げた刀は壁に突き刺さりヒビが入る。そこから空気が勢いよく入り込む。先の炎で充満した一酸化炭素ガスに酸素が急速に取り込まれ…
「悪いが、潜った修羅場が違うんだよ!!!」

そして爆発、そばに居たオズマは吹き飛ばされた。

169ノートン:2020/12/13(日) 22:10:24
激しい爆発。建物全体は揺れ、爆炎が立ち込める。
吹き飛ばされたオズマは、自身の岩の能力で全身を纏い、何とかガードした。

しかし、足の切り傷からの出血も多く、瀕死の状態に陥っていた。
「敵わなかったか…クソが」

煙をかき分けながら、スーはオズマの元へ辿り着く。全身にほぼ回った神経毒。まるで老人のように、剣を杖の代わりにして進んでいた。

「持ってるだろ、解毒剤」
「…持って行け。強かったぜ…お前」

スーは残った力を振り絞り、解毒剤を飲み干す。体が動くようになると、炎波刀に炎を灯し、オズマへ切先を向ける。
「トドメか…一思いにやってくれ…苦しみながら死ぬのは…ゴメンだ」
「…勘違いするな」

スーは切り裂いたオズマの足に炎を当て、止血する。
「ぐあぁぁぁぁあああ!!!」
「我慢しろ!!」

止血が終わる。オズマは痛みで気絶した。
「重いな!ったく…。治療出来る所までは連れてってやる!後で色々聞かせろよ…この時代の事をな」

オズマを担ぐスー。
「俺は帰りたいんだ、俺の世界へ。お前を倒せば帰れると思ったが、どうやらそんな単純な話しじゃないらしい。どうやったら帰れる?何をすれば…?」

170キャプテン:2020/12/15(火) 21:16:01
「アンタの世界?『宿星物語』は創作の世界だろ?アレンジ作品も多いし映画化も。」
オズマが指摘し、スーがそれに返す。
「(急に馴れ馴れしくなったな、コイツ)存在する世界だ。確かあの女神のせいで俺の世界は…」
「女神?」
オズマが問いかける。
「ああ、確か『ワールド』って名前の…。」

二人の様子を影でうかがう一匹のウサギ…

…エンドの粒子の重さがウポポイの能力により遅延しながらも、徐々にウポポイを押し潰す。
「これ…異常は…『右手の贖罪』を解除!!『左手の断罪』を継続!!」
体の遅延が解ける。ウポポイが懐から医療メスを取り出す。そして重さに耐えながら意識の無いリコルに飛びかかろうとした時…足場が崩れてウポポイは落ちていった。

「…落とし穴、エンドの粒子で作っておいた。古典的だがこういう時は強いな。」
目覚めてから穴を覗くリコル。ウポポイは頭を打って脳震盪を起こしたのか、下で倒れて意識を失っているようだった。

171ノートン:2020/12/16(水) 12:30:08
エリア6。セオドアは、異形の姿へと変貌していた。

「この注射は我が輩専用のステロイドであーる。力を何倍にも高める。例えば…」
セオドアは右の壁に向かって、腕を振り下ろす。火花を散らしながら、とてつもない威力の電気がセオドアから放出され、壁に大穴を開けた。

「…さっきの赤い状態より、遥かに強ぇな」
「当然だ。貴様程度の電力、ゆうに超えている。死ぬがいい罪人よ」
「俺が罪だってんならよぉ。俺の仲間リコルを傷付け、多くの命を奪ったお前も罪を犯してんだよ!!」

ヴィヴィの高速移動。瞬時にセオドアの背後へ移動する。
「電力がいくら上がろうが、防御出来ないんじゃ意味無ぇ!!」

ヴィヴィは全電力をセオドアへぶつける。技は確かに直撃した。しかし…。
「馬鹿な…無傷だと!?」
「その程度では、我輩には及ばぬぞ!!」

動揺するヴィヴィの腹部へ、バチバチと電気を纏ったアッパーが直撃。ドウン!!!と爆発音を撒き散らしながら、ヴィヴィは吹き飛び天井へめり込む。

「ぐぉぉぉぉ…」
天井から落下し、倒れ込むヴィヴィ。

「何が仲間だ。貴様、先程”仲間がピンチの時には助けに来る”とぬかしたな。ならば我が輩がピンチの時、何故助けに来なかった!家族だろう!!!」

セオドアが怒りながら、ヴィヴィに近付く。絶望的かに見えたこの状況。その時、ヴィヴィはゆっくり立ち上がった。

「…!!??」

ヴィヴィの髪の色が、緑から白色へ変化。
頭には2本のツノが生える。更に、背中からは3つの太鼓が円状に出現する。

「貴様…何だその姿は!?」
「ショックウェーブ・パルサーの能力進化。その名も”雷神”」

172キャプテン:2020/12/17(木) 19:02:21
…リコルが逆流とウポポイを拘束し、シェルターを出て扉を閉める。
「さてと、早くヴィヴィさんに加勢しないと。」
消滅してはいるが先程まであった甲羅の重さで建物全体が倒壊し始めていた。そこへ見た事のない二人組を見つけリコルは掌で赤い粒子を構えた。

「嘘…だろ…〇〇〇〇じゃねぇか?!ほら覚えてるか?スーだよスー・グラウンド!!」
二人組のうち1人のオジさんが、呆気に取られているリコルの両肩を強く叩く。
「大きくなったなぁ。何年ぶりだ?お前もこちらの世界に来ていたのか〇〇〇〇?」
名前が…うまく聞き取れない。リコルの頭の中で記憶が浮かび上がろうとしては“何かの力”に押さえつけられて沈みグチャグチャに組み替えられる。
「誰…だ…頭が…痛い…やめてくれ!!!」
突如、建物が揺れリコルの足元が崩れる。
「スー、ここはもう保たないぞ?!」
一緒に居たオズマが叫ぶ。
「〇〇〇〇?!」
スーが咄嗟に手を伸ばしリコルもそれに手を伸ばす。しかし手と手はすれ違い、リコルの姿は奈落の暗闇へと消えていった。

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175ノートン:2020/12/24(木) 22:16:54
オットセイ地下の更に下へ落下するリコル。
瀕死のオズマを担いだままでは、思うように動けないスーは、あと一歩の所でリコルを掴み損ねた。

「ちくしょう!!おいテメェ!下に何がある!?」
「知るか…俺はこの組織の…人間じゃねぇ…」
「何だと!?じゃあ誰に治療してもらえばいいか分からねぇじゃねぇか!」

スーとオズマが話している背後に”奴ら”はいた。スーは殺気を感じ取り、振り向く。

「何だよお前ら」
「クックック…侵入者発見だ。やってしまえ、ペプシマン」

一方、エリア6。雷神と化したヴィヴィを見て、セオドアが動揺する。

「何だその姿は…!?どの資料にも、文献にも!載っていなかった!!貴様、わざと後世に残さないよう隠したな!?」
「そっちの時間軸の俺が何考えてたかなんて知らねーよ。別に隠す気もねぇ」
「そうか…その力で、我が輩と殺し合いを続けるというわけだな」
「ちげーよ、セオドア」

ヴィヴィはセオドアの胸の辺りを指差す。

「俺には見えるんだ。醜い怪物になってしまったお前の内側…心の奥底にいる幼く、弱々しいお前が『助けて』って叫んでる姿がな」
「何が言いたい!意味が分からんぞ!!」
「じゃあ、ハッキリ言ってやるぜ、セオドア。俺はお前を救いたいって思っちまってる」

混乱するセオドア。

「わ…分からぬ分からぬ…分からぬぞ!!」
「お前を助けるって言ってんだよ!セオドア!!」

176キャプテン:2020/12/27(日) 22:04:43
「雷神…壱ノ太鼓。」ドン!!!
ヴィヴィが太鼓の一つを叩くと、その中から小太鼓が八つ飛び出して落ちる。
トントントントントントントントン!!!
小太鼓たちが音をたてながら回転し、電気を発して回転する。そしてセオドアの周りを取り囲んで走る。
「どこへ行った?!」
セオドアは小太鼓に気を取られ、ヴィヴィを見失う。小太鼓の一つから見覚えのある人型の稲妻が現れる。
「ヴィヴィ?!」
セオドアに打つかり強烈な電流が体を走り去り、別の小太鼓の中へと消える。それを繰り返しでセオドアが受ける。
「(速い?!クソが?!)…その複数の小太鼓はモーターの役割でアールのでアルな?」
セオドアがイライラを抑え込み、空気を深く吸い込むと思い切り叫ぶ。ヴィヴィの電気化した体が打つかると同時にセオドアの体が高電圧になる。小太鼓に負荷がかかり煙を上げて幾つか破裂した。
「小太鼓がショートした。化け物か?!」

177ノートン:2020/12/29(火) 17:02:56
破裂しショートした反動で、お互い吹き飛ぶ。ヴィヴィは再び太鼓間を移動しようとする。
その一瞬の隙。セオドアは雷の槍を生成。黒い稲妻の槍だった。
「ショックウェーブパルサー”雷槍(らいそう)”」

怪物と化したセオドア。その剛腕から放たれた雷槍は、ヴィヴィの右肩を猛スピードで貫いた。
「…ぐあぁぁぁぁ!!!」
「心臓を狙ったが間一髪でかわしたか…何という反射神経!」

セオドアが再び雷槍を作り始める。その時ヴィヴィは…。
「待てセオドア!これで…お前はこれで良いのか!?俺を殺して、その先に何がある!」
「だ…黙れ!これまで我が輩が歩んできた人生、殺めてきた命…それらを不意にしてまで、今更自分を曲げるつもりは無い!」
「変えちまえば良い」
「何だと!?」
「歴史の改変、お前達がしようとしている事らしいな。それで、お前が殺した人達を生き返らせればいい」
「…!!?」
「その後は、俺の時代で一緒に暮らそうぜ。俺たち家族なんだからよ!」

突然のヴィヴィの提案。セオドアは完全に静止した。沈黙が続き、その時間2分。

長い沈黙の後、セオドアは口を開く。
「ケジメを付けたい」

セオドアは雷槍を大量に精製。その数100本。
「我が最大奥義”百騎雷槍”。貴様が提案した道は、薔薇の道。この技を受け切る事が出来れば、我が輩は貴様を認めよう。だが、これで死ぬようなら貴様はその程度。幻想だったと諦めよう」

「めんどくせぇ野郎だな。素直に認めちまえよ…いいぜ、やってやるよ。来い、お前のフルパワー!!」

178キャプテン:2020/12/30(水) 23:00:05
俺が子どもの頃、引きこもっていたじいちゃんが言っていた。
「突如できた家族。人との関わりを避け続けたワシには愛し方も分からん。ワシにお主らは助けられん。じゃが、昔のワシであったなら。そう…あの変わってしまう前の…」

意識を現在に戻すセオドア。怪物のような体が発光する。両の掌の間で雷が走り、収束していく。
「(この変異した体で発生させられる有りったけの生体電気でアール。それをマイナスに振り分ける。)」
右掌に収束した雷をヴィヴィに向かって構える。
「(貴様の体のプラス電位に反応させ、打つける)コレが、俺の苦しみ…でアール。」
そして振り放つ。
「百騎雷槍」

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180ノートン:2021/01/03(日) 21:57:25
「弐の太鼓」
ヴィヴィは3つの太鼓の一つをドンと叩く。高圧電流が一気に流れ、体内を循環。高熱が発生し、徐々に体色が赤く変化した。

一方100本の雷槍は、猛スピードでヴィヴィに突っ込む。
雷槍がヴィヴィに触れる!…同時に、激しい音を立てて蒸発していく。次々と雷槍はヴィヴィを攻撃するが、そのほぼ全てを蒸発させていった。
「我が輩の雷槍が熱で蒸発しているのか!?」

100の内2〜3本は、蒸発が間に合わずにヴィヴィを貫いた。致命傷となる部分は避けたが…。

「数が多過ぎる…クソが!」
両太腿・右肩・左腕に風穴が空いた。

セオドアは薬の効果が切れ、肉体が通常の状態に戻っていた。その副作用から、全身が痺れまともに動けないようだった。

「耐えたぞ…コンチクショウ!!」
「さすがであーるヴィヴィ。認めよう、貴様を!」
「おう。宜しくな、セオドア!いてて…」
ボロボロの2人は、グッと熱い握手を交わした。

その頃、地下に落下したリコル。
「痛ぇ…クソ、床が抜けて落ちたのか俺は」
辺りを見渡す。誰かの研究部屋のようだった。脱出経路を詮索する道中、奇妙なファイルを見付ける。
「何だこれ…ファイルの表示にペプシマンの写真が貼ってあるぞ」
リコルはページをパラパラとめくる。

「異星人(個体名ペプシマン)発見、バイシ細胞発見…細胞摘出…細胞移植実験…被験体の確保…」
さらにリコルは、本にターグ・ステインの名を見つけた。

181キャプテン:2021/01/05(火) 21:52:44
その時、天井を突き破り落下する銀色の人型の塊。それが立ち上がりリコルと相対する。
「ペプシマン、無事だったんです…か…?!」
頭を抱えヨタヨタと近づいてくるペプシマン、その頭には奇妙な金属性の輪っかがついていた。
「ペプ…シマン?」
ペプシマンの足元に巨大な気泡が湧き立つ。それが破裂を繰り返し、衝撃に乗ってペプシマンがリコルに向かって加速する。
「エンド!!」
咄嗟にリコルは体から赤粒子を発現し、固めてエンドを召喚する。そしてペプシマンの突進を受け止めた。
「…シュワー」
エンドの体がブクブクに膨らんでいき、破裂して散り散りの赤い粒子になる。
「(炭酸能力でエンドの体を内側から?!)どうしちまったんですかペプシマン?!」

182ノートン:2021/01/08(金) 21:16:53
「いい加減にしろ!ペプシマン!!」
その時、天狗がリコルに語りかける。
「リコルよ。お前の力があれば簡単だ」
「何かいい案でもあるか、天狗!?」
「殺してしまえばよかろう」

天狗の言葉に、リコルは怒り始める。
「またそれか!てめぇ、俺の中にいたならペプシマンがどれだけ大切な存在か知ってんだろ!!テメェには人の心が無いのかよ!?」
「ある訳なかろう。儂は…人では無いのだから」

その頃、ホリデーは廊下を走る。
エリア6に近づいた頃、倒れている2人の男を発見。念の為、身元を確認した。
「バッチがあるわね。青空隊…隊長?もう1人は…柄の悪そうな男ね。重症だけど、多分敵ね…無視よ」

先へ進むと、目の前には巨大な穴、右手には破壊されたエリア6の壁。その中には…。

「ヴィヴィ!?何であんたここにいるの!?…酷い怪我…血だらけじゃない!」
「ホリデー!良かった、無事だったか…。見ろホリデー、俺は引き篭もりを辞めたぞ!見直せ俺を!」
「今はどうでもいいわよ、そんな事」

ホリデーはヴィヴィの側に駆け寄る。すぐさま、セオドアに気付く。
「ネットワーク男爵!?こいつにやられたのね…下がってヴィヴィ!私がこいつの息の根を止めるわ」
「ま…待てホリデー!セオドアはもう敵じゃない!」
「何言ってんの!?あんた、こいつの正体知らないでしょ!?」

セオドアは動かない体を無理矢理動かし、土下座をした。
「ホリデー・キャトネイル…すまなかった。罪は…これから償う」
「ふざけんじゃないわよ!リコルには散々酷い事して、私の村人まで消して…どう償うのよ!!」

セオドアは懺悔の目でホリデーを見る。
「お前の村人を復活させる事は出来る。エンドとワールド様…いや、ワールドの力を使えば」

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184キャプテン:2021/01/10(日) 17:21:39
「世界を自分たちのいいように作り変える。まるで悪の親玉だな。」
言葉の発信源に、三人が一斉に身構える。先程まで倒れていた青空隊隊長。そしてもう一人、柄の悪そうな男性を背負って歩いて来ていた。
「敵か、ふざけたことを言うな?!」
ホリデーが叫ぶ。彼が話を続ける。
「ワールド…エンド、俺の居た世界は奴らに破壊された。『世界の改変』がどんなモノであれ、ろくな結果にはならない。」
「嘘を言うな?!ならどうしろと言うのでアルか?」
セオドアの訴えに彼は答える。
「受け止めて…乗り越えるしか無いんだ。」
そして彼は思い出にふけるように自身の掌を眺める。すると今度はヴィヴィが口を開いた。
「誰かは知らんが…例え悪魔の取引でも、今の俺たちはそれにすがるしかないんだ。何を犠牲にしても…」
三人が険しい顔で彼に敵意を向ける。彼が三人に向き直る。
「スーだ、スー・グラウンド。」
そう彼は名乗った、そして続ける。
「後で『ごめんなさい』なんて言うなよ。」
するとスーと名乗った男はどこかへ行ってしまった。残された三人が呆然とする。
「何だったんだアイツ?」

185ノートン:2021/01/11(月) 00:19:56
スーが立ち去った後。地下から地響きが響き渡る。
「何だ!?」
「この部屋のすぐ外、ぽっかり穴が空いてたわ」
「外…リコルか!?何があったか知らねぇが、助けに行かないと…」
ヴィヴィは立ち上がろうとするが、受けたダメージが多く体が動かなかった。
「無理しないでヴィヴィ、私が行くわ。それとネットワーク男爵。後でじっくり話聞かせてもらうから!」

その頃、地下研究所。狭い室内で、ペプシマンはリコルに猛威を奮っていた。
「とにかく、ペプシマンの攻撃を避けるしか無い…考えろ…何か打開策は…いや、ちょっと待て!?」
リコルはペプシマンの頭に不気味な装置が付いている事に気付く。
「あれは何だ!?、」

その時、隠し階段からターグ博士が降りて来た。
「聞いていたよ、エンド。『俺にとって大切な存在』か…。同じ共感者がいて嬉しいよ」
「お前…ターグ!!ペプシマンに何をした!!」
「何を?ククク…」

ターグ博士はペプシマンに近付く。
「ここの研究者はどいつもこいつも”エンド””エンド”。皆お前にばかり関心がいっていた。だが私は違う。私はペプシマンを一目見た時からこいつの虜になった。徹底的に調べ上げたいと思った」

狂気に満ちたターグ。だが、リコルは話半分だった。
「天狗もターグもろくな回答をしないな…活路は己で切り開くまでだ!!あの頭のリングは一体…?」

186キャプテン:2021/01/12(火) 20:45:03
「エンド!!」
リコルが叫ぶ。分散したエンドの粒子が集まり体を再構築し始めるが…
「シュワー。」
ペプシマンが手を叩く。赤い粒子から気泡が溢れて破裂する。粒子は再び弾け飛んだ。
「(まずい、エンドの粒子に炭酸液がこびり付いて天狗化できない?!)…だったら!!」
リコルがペプシマンのそばへ駆け出す。
「(粒子崩壊で俺の体はもう分解できない。ペプシマンの頭のリング、あれにさえ触れて分解できればおそらく!!)」
「クククッ、バイシ細胞持ち相手に接近戦とは。人体構造上、勝てはしないよ。」
ターグが不敵に笑う。リコルが床に触れる。
「だろうな…(グラスホッパー!!)」
床の一部が分解して大量の塵となり、辺りを埋め尽くした。ターグが叫ぶ。
「ゴホッゲホッ、目眩しか?!」

187ノートン:2021/01/13(水) 21:24:55
その時、ホリデーが穴から飛び込んで来る。
「リコル!!何よこれ…何も見えないじゃない」
「ホリデーか!?今は危ない、来るんじゃねぇ!」

ホリデーの声を聞いたターグ博士。この状況を打開する妙案を思い付く。
「(丁度いい隙が作れるな…)ホリデー!私だ、ターグだ。ずっとお前に話したかった事がある」
「ターグ!?何でお前が…煙でよく見えないわ」
「お前の村人の実験を担当したのは私だ」
「な…何を言ってるのよ」
「村人には私の実験、いや…人類の大きな進歩に貢献したのだ。その全貌を聞かせよう」

ターグ博士は懐から小さなカプセルを取り出す。
「この薬はペプシマンから取り出した”バイシ細胞”を固形化したものだ。バイシ細胞は未知の力と破壊力に溢れている。私は奴の経営するモーテルへ通い、細胞を入手した。

その後ペプシマンの量産計画に取り掛かった。人間へバイシ細胞を注入し、複製を始めた。だが調整が困難を極めた。バイシ細胞が足りなければ変化は無く、逆に多く注入すれば、細胞が壊れ、人間は徐々に透過し消え去ったのだ。

人間に適したバイシ細胞量を調べるには、大量の被験体が必要だった。そこで私はワールド様に提案した。ある村の住人を実験サンプルとして提供頂けないだろうか?と。

お前の村の住人に、順番に細胞を注入していった。量が足りなければ量を増やし、消滅するまで注入する。人間に適したバイシ細胞量を調べるためだ。

消滅しては調整、消滅しては調整…私は実験を続けた。そして最後の村人87人目の被験体で遂に完成した!適正量0.32gm。喜びに打ち震えたよ」
「そんな…村のみんなは…歴史の確変で消えたって…」
「違う違う…ククク。私が皆殺しにしたのだ」

聞くに耐えない話。ホリデーは崩れ落ち、涙を流し始めた。

188キャプテン:2021/01/17(日) 20:51:18
…私はきっと、叶わぬ夢を見ていたんだ。また家族や皆と焚き火を囲んで、赤い大地のあの星空の下で笑いあえると…

ホリデーの髪が蛸の足の様に、体に海洋類の様な滑りが現れ体表には吸盤の斑点模様が現れる。そして吸盤から無数の真っ黒な泡が放たれる。泡がペプシマンの体に触れると破裂し吸引し体を引き千切ろうとする。
「…吸盤の…吸引力で粘性の体液気泡内に真空を作ったのか?!しかしあの体表は一体?」
ターグ博士が狼狽する、リコルが叫ぶ。
「ホリデーやめろ!!(クソッ、我を忘れてる?!)」
「クギュアアアアアア!!!」「シュワアアアアアア!!!」
ペプシマンの放つ炭酸泡とホリデーの放つ真空泡がぶつかり合い破裂する。強烈な衝撃波が2人の周りを吹き飛ばす。

189ノートン:2021/01/20(水) 21:40:23
「ホリデー、いつの間にあんな力を…天井にぶつかる!?」
頭上に吹き飛ばされたリコルは、天井を分解。たどり着いた先はエリア6だった。
「リコルか!?無事か!」
「ヴィヴィ!それにセオドア…どういう状況だ!?」

リコルが2人に気を取られた、その一瞬。背後に突如現れたペプシマン。リコルに全力で殴りかかった。
「し…しまっ…」
パンチが直撃しようとした、次の瞬間。雷の壁がリコルを覆う。ペプシマンの拳は雷を思い切り殴るが、リコルには届かなかった。
「危なかった…助かった、ヴィヴィ!」
「俺じゃねぇ」

ヴィヴィはクイっとセオドアを指差す。
「セオドアが俺を…!?」
「都合の良い話かもしれないが…我が輩はお前側につく。お前を守らせてくれ、″リコル″」
「セオドア…」

一方、ガレキからホリデーが飛び出した。死に直面した影響で、若干冷静さを取り戻していた。
「フゥー…フゥー…ターグのクズは生き埋めのようね…ざまぁみろ…」

4人がペプシマンを取り囲む。ヴィヴィがボロボロの体に鞭打ち、立ち上がる。
「おいペプシマン!どうしちまった!?仲間攻撃しやがって…」
「駄目なんだヴィヴィ…俺たちの声は届かない。頭の妙な装置で操られてる!」

ヴィヴィは頭の装置を見る。
「チッ…お前ら、今から言う事は他言無用だ!ペプシマンは一定以上のダメージを負うと、体が″ペプシ缶″に変化する!ペプシ缶に出来れば、頭のアレは何とかなるかもしれんぞ」

190キャプテン:2021/01/23(土) 23:28:06
「リコル、ホリデー!!すまないがお前ら頼りだ。俺たちはさっきの戦いでかなり消耗している。援護はする。」
ヴィヴィの言葉にリコルがため息をつく。
「全く、駆けつけて来てくれてコレか。」

ペプシマンが大量の炭酸泡を放つ。リコルが手をかざして触れ、それを次々に分解する。その間にホリデーが巨大な真空泡をこしらえ、ペプシマンを閉じ込め吸引力で圧縮して押し潰していく。
「コレで…少しは…。」
しかし、滑液の膜が剥がされ中からペプシマンが現れる。
「相変わらずの馬鹿力だなぁペプシマンは。」

191ノートン:2021/01/25(月) 21:20:35
場所は変わり、オットセイ入り口。スーとオズマの前にリムジンが止まり、後部座席から顔を出す男。小柄で太っていた。
「バッカス!何者だお前。担いでるソレ、俺様の弟なんだが?」
「バッカス?ま、まぁ…身内が見付かって良かった。傷が深い。手当てしてやってくれ」

スーはオズマを引き渡す。
「どうやら敵って訳じゃなさそうだな。乗りな!テメェも傷だらけだ…治療してやる!」

リムジンは発車する。同乗していたシィが早速オズマを治療していた。
「俺様の名はドン・ファクトリー。ファミリーのボスをやってる。お前は?」
「俺はスー・グラウンド。異世界からやってきた」
「ハッ、電波野郎か!イカれてやがる」

すると、オズマが目を覚ます。
「あ…兄貴。来てくれたのか?」
「テメェがヘマしたせいで、ブラックボックスとの契約が台無しじゃねぇか!大金がパァだ!!」
「現場で命張ってんだ…少しは労をねぎらえ!このクソデブ!!」
「バッカス!まぁいい。次の仕事が決まった…今回よりデケェ取引相手だ。挽回のチャンス到来だ!」
リムジンは彼らのアジトへ向かっていった。

一方、100年前。ハレンは両腕をウーマンに向け、催眠をかけ続けていた。ハレンをヴィヴィと錯覚しているウーマンは、キッチンで料理を続けていた。
「ヴィヴィ、あなた確かチキンステーキが好みだったわよね?」
「あ…あぁ、そうだな。美味そうなの頼むよ」

長時間の能力使用の反動で、鼻や耳からは血が滴り落ちていた。
「(意識がなくなりそうだ…もう限界だ。早く…早く戻って来い…ヴィヴィ!)」

192キャプテン:2021/01/29(金) 22:16:48
そして現在。
ヴィヴィが腕時計を確認する。
「のんびりし過ぎたか。」
突然ペプシマンが大きく口を開き空気を勢いよく吸い込む。体の内側から破裂音が響く。

炭酸液は水と炭酸ガス(二酸化炭素)に圧力を加える事で作り出される。現在ペプシマンの体内では酸素を急速な呼吸により大量の二酸化炭素に変換し、体内の水分とで高圧力を加えて高濃度の炭酸水が生み出され循環し始める。

「まさか、あれは?!全員逃げ…」
ヴィヴィの言葉が途切れる。ペプシマンの体から破裂音が4回連続で鳴り響いた瞬間、リコル達4人はいつの間にか吹っ飛んでいた。ペプシマンの位置が瞬時に移動し、構えて突き出した拳からは蒸気が上っていた。

193ノートン:2021/02/04(木) 21:10:26
ペプシマンの異次元のパワー+爆破。このパンチを受ければ、人の原型すら無くなる事は容易に想像出来た。ペプシマンが捉えていたのは、リコル。

「死ぬ…」
殴りかかる寸前、ホリデーの吸盤がリコルを引き寄せる。ペプシマンの拳は床を思い切り殴り、爆発音と共に、バカっと床が割れた。

大技の後に生じる一瞬の隙を、ヴィヴィは見逃さなかった。

「セオドア!!」
ヴィヴィが叫ぶ。ヴィヴィとセオドアが2人がかりで強力な”電気の箱”を作り出し、ペプシマンを閉じ込めた。

「リコル、攻撃だ!!」
ヴィヴィの指示を受け、リコルはペプシマンの頭上に巨大な鉄の塊を構築。ペプシマンを押し潰した。

「ホリデー、捕まえろ!!」
鉄の塊を振り払うペプシマンの手足を、強力な触手で締め上げ拘束。

「リコル、セオドア!!チャンスだ!!」
セオドアは右手に電気を纏わせ、ペプシマンの顔面を殴る。リコルは自身の腕をダイヤモンドへ再構築し、ペプシマンの腹部をぶん殴った。

「ぐぉぉ…!!」
膝をつくペプシマン

「畳み掛けるぞ!!」
ヴィヴィの的確な指示の元、3人は連携して攻撃を続けた。長きに渡る戦いや経験が備わったヴィヴィだからこそ成せる所業だった。

「いける…ヴィヴィがいれば、ペプシマンを倒せるぞ!」

194キャプテン:2021/02/09(火) 20:43:08
ペプシマンが手を叩いた瞬間、4人の体内で何かが弾ける音がして倒れた。
「まさ…か?!体内に…タン…サンを…グハッ」

空気中に離散された炭酸水。呼吸により体内に入ったのは極少量のみだったが、その威力はペプシマンのバイシ細胞の体内での反応とは訳が違った。

血を吐き腹を抱え倒れる仲間たち。しかし、1人だけが立ったままだった。
「ハァ、ハァ、クラーケ…舐めんじゃないよ!!」
するとホリデーがペプシマンにタコ殴りにされる。能力による軟性の体表が衝撃を緩和するが、炭酸との連鎖打撃には耐えきれない。徐々に体を地面に打ち付けられる。ホリデーが苦しみながらも泣き、そして訴え叫ぶ。
「アンタら…グフッ…ペプシマンに仲間を…殺させていいの!!…立て…グハッ…立て…ウグッ…タテエエエエエエエ!!!!」
倒れる3人の体が、微かに動いた。

195ノートン:2021/02/13(土) 17:53:42
ボロボロの体を奮い立たせ、リコルが立ち上がる。
「はぁ…はぁ…ヴィヴィ、頼みがある。立ってるので精一杯なんだ…俺を…動ける体にしてくれ…」
ヴィヴィは倒れ込んだまま、顔をリコルへ向ける。
「…死ぬ気か?」
「違う…覚悟を決めたんだ」

リコルの瞳に宿る強い意志を、ヴィヴィは信じた。
「体に電流を流す。ビリッとするが、我慢しろよ」

リコルの体に電流が流れ、筋肉が再び動き出す。リコルはペプシマンの元へ走る。その最中、昔を思い出すー。
一年前、ペプシマンの元で修行をするリコル。ペプシマンとの組手の最中だった。

「リコル、君は優しすぎるな」
唐突に、ペプシマンは話し出した。
「動きを見ていれば分かる。私を傷付けないよう遠慮しているな?」
「…してないよそんな事」
「無意識でやっているのさ。だが、君の優しさには頭が下がるよ」
「えっ?」
「こんな言い方失礼だが、君の境遇だと、自暴自棄になって自殺したり、悪に走ったり、間違った生き方を選ぶ場合が大半だろう。だが君は違う。優しさや思いやりに溢れてる。尊敬に値するぞ!はっはっは!」
「やめろよ!恥ずかしい…」

そんなやりとりを思い出しながら、目の前でホリデーを滅多撃ちにするペプシマンを見る。

「違うんだペプシマン。あんたが俺の心を救ってくれた。俺の生き方を変えてくれた。そんな恩人を…殺人者なんかにはさせない!!」

196キャプテン:2021/02/15(月) 21:08:06
リコルがヨタヨタとペプシマンへ向かう。

「全く、世話がやけるわね。」
「吾輩達を…」
「…舐めんじゃ…ねぇぞ。」
ホリデーがペプシマンの体に吸盤でくっ付き引っ張る。セオドアとヴィヴィが床に滴る炭酸液に触れ電気を流す。液を通して電気がペプシマンへと伝わり体をわずかに硬直させた。
「シュワ…」
ペプシマンの動きがわずかに止まる。リコルが必死にペプシマンに手を伸ばす。
「みんな(ペプシマン)…すまない(ゴメンなさい)。グラスホッパー!!」
リコルが瞼を閉じた瞬間、ペプシマンの体内で高濃度の炭酸液が急速に分解され破裂音が炸裂した。

197ノートン:2021/02/19(金) 20:35:44
爆音が鳴り止むと、ペプシマンの全身から煙が上がり、そのまま倒れた。更にペプシマンの体が徐々にドロドロの液体に変化。その色はまさにペプシコーラだった。
「ヴィヴィ!ペプシマンが…!!」
「良いから黙って見てろ。成功したんだ。俺達は、ペプシマンに限界までダメージを与えた!!」

ペプシコーラは徐々に収束し、350mlのペプシ缶へと変化した。後にはペプシ缶と、頭に付いていたリングが残った。
「リコル。その缶、大事に持っとけよ。その缶が潰れたらペプシマンは死んじまうぞ」
「マジかよ…分かった」

一方、ボロボロのホリデーはセオドアの元へ向かう。
「ありがと…手伝ってくれて。私の村人の事は許せないけど…真の犯人はもう瓦礫の下よ。もう、あなたに強く当たるつもりは無いわ」
「いいのであーる。お前の村人を復活させる手伝い、我が輩にもさせて欲しいのであーる」

2人は握手を交わす。ヴィヴィはその光景を見て、微笑ましい表情をする、その時だった。
「うぅ…!!??」
「どうした、ヴィヴィ!?」
「分からない…何かに引っ張られる感じだ…気持ち悪い…うぅ…うあぁぁぁぁ!!??」

ヴィヴィの後ろに突如現れたブラックホール。吸い込まれたヴィヴィと引き換えに現れたのは、顔中血まみれで今にも倒れそうなハレンだった。
「こいつは、早川組の組長か!?何がどうなってる!!」

その時ー。1人の魔女が、オットセイ屋上に降り立った。

198キャプテン:2021/02/22(月) 21:14:45
施設オットセイ倒壊中内部。
突如現れたハレンが『ヴィヴィ未来行きの事の次第』を早口で捲し立てながら、黒い空間内のヴィヴィのスネ辺りを執拗に蹴りまくる。
「痛い…わかった、待たせて済まなかった。」
ヴィヴィが背を向けると、セオドアが口を開く。
「その、アンタを許す…である。」
その言葉にヴィヴィの口元が少しだけ笑った様に見えた。そして黒い空間が閉じた。

倒壊が本格化するオットセイ施設。慌てて全員が外へと駆け出す中、リコルが後ろを振り返る。
「ピンクの…ウサギ(どこかで見た様な?)」
不意にその姿は消えていた。まるで雪の様に白い世界と、夕焼けの様に赤い世界が混ざり合った様な…そんな桃色の兎だった。リコルが頭を振り払い、皆を追う。

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200ノートン:2021/02/23(火) 22:21:50
外へ脱出した4人。崩壊するオットセイを皆が眺める。
「これが、我が輩の退職届であーる」
「退職届が職場の破壊って…笑っちゃうわね」

リコルはハレンと話していた。
「お前がリコルか。初めましてだな」
「あぁ…初めまして。俺はキャプティやノートンが公園で貼り付けになって、そこから先の情報を知らないんだ。2人は無事か!?」
「今入院してるが無事さ。彼らと和解もしたし、安心してくれ」
「それなら良かった…」

安堵な表情を見せるリコル。ハレンもリコルに問う。
「リコル。お前を助けに、2人のヤクザが向かったんだが…知らないか?」
「知らないよ」
「そうか…あいつらの事だ。上手く立ち回っていると信じよう。さっき話を聞いたが…そのペプシ缶、絶対に潰さないようにしろよ。俺の友達なんだ」
「分かってる、ヴィヴィにも言われたからさ」

その時だった。背後からの不気味な気配。全員が一斉に後ろを振り向く。そこには、1人の魔女が立っていた。

「だ…誰よ、あの女…」
ホリデーはすぐさま、セオドアの異変に気づいた。セオドアからは先程までの余裕が消え、少し体が震えているようだった。魔女が、口を開く。

「男爵。何故そいつらと行動を共にしておるのだ?」
「ワールド…様。何故ここに…」

一方、リコルはワールドを凝視する。全ての元凶であり、全ての目的となる人物が、目の前にいた。
「ワールド…俺を作り出し、全てを狂わせた魔女!!」

201キャプテン:2021/02/26(金) 22:44:19
「己の産まれを呪うか〇〇〇〇?…いやリコル。それとも己の終わり…エンドを呪うか?」
魔女、ワールドの発言。リコルの頭に激痛が走りうずくまる。過去の流星群の記憶が今までに無いくらい強くフラッシュバックする。夜空を覆い尽くす光の線を。

「あの魔女をリコルに近づけるな?!世界が崩壊し改変されるぞ?!」
ハレンが叫ぶ。その言葉の意味を理解できず、しかしイヤな感じだけがその場の空気に残る。
「崩…壊…何、言ってるのよ?」
「ならば…”世界の改変“とは?」
「…分かるだろ?」
ハレンの辛い一言にホリデーとセオドアが打ちひしがれる。だがリコルの苦しむ表情を見て、2人は険しい顔を上げる。そしてワールドに向き直る。
「全く…希望にすがってた自分が嫌になるわ。それに、絶望に打ちひしがれる暇もないんだから。」

202ノートン:2021/02/28(日) 22:13:23
頭を抱えるリコル。次々と脳内に流れ込んでくる記憶。
激痛に耐えながらも、リコルは1つずつ記憶を紐解いていく。

1番古い記憶。それは、リコルが奇妙な隊服を身に纏っている姿だった。胸には《青空隊》のバッヂが付いていた。

自身の手で握った剣からは、血が滴り落ちる。見知らぬ男がリコルの胸ぐら掴み、叫ぶ。
「何故殺した!!仲間殺しは大罪だ…自分が何をしたのか分かっているのか!!」
男の胸には″青空隊 隊長″のバッヂが付いていた。

そこから記憶は少し飛ぶ。雨が降り止まぬ森の中、ワールドがリコルに問いかける。
「全てを元に戻したくはないか?私が与えよう、お前が罪を起かす前の世界を…。ただし、私の所有物となるのだ。お前は、エンドの器となるのだ」
「この身を…貴女に捧げます」

さらに記憶は進む。ワールドがぶつぶつと呟く。
「時空を超えた歪みか、それともエンドを体内に取り込んだ副作用か…?○○○○から記憶と感情が消えておる。先程試したが、これでは不完全な改変しかつかえぬ…どうにかせねば…」

断片的な記憶は、ついにあの事件の現場へと辿り着く。
ホリデーが住む村。入り口に、ワールドとターグ博士、感情を失ったリコルの3人が佇む。
「この村を襲う理由は2つ。1つはターグ、貴様のバイシ細胞の実験台の確保。もう1つは○○○○の″感情″の再生。○○○○を破壊した村に放置させ、民間の中で感情を取り戻させる。これは、生物兵器課の連中のアイディアだ」

203キャプテン:2021/03/02(火) 18:38:08
更に意識はモニュメントバレーへと落ちていく。
魔女が夜空を埋め尽くす無数の光の筋に向かって何か“棒状のモノ”を突き出す。その姿が曖昧な記憶にぼやけていき、やがて“見覚えのある顔”へと姿が明確に変わる。

嘘だ、嫌だ、ありえない…だって”その顔“は?!

…3人の背後、横たわり気絶しているリコル。
ワールドの姿が黒く巨大な真空の球体状空間に埋もれる。その真空空間が弾け、周りの大気、瓦礫を吸い尽くし押し潰す。
「クラーケ…ディーププール(深き水溜まり)」
全身蛸化したホリデーが息も絶え絶えになる。だが瓦礫がボトボトと落ち、中からは…。
「そんなの…嘘よ。倒れろ、倒れなさいよ?!」
ブロンドの髪をなびかせながら、その美しい魔女は無傷の姿で不敵に微笑んだ。

204ノートン:2021/03/06(土) 22:24:02
激動の最中ー。ハレンは注意深くワールドを観察していた。ワールドの周囲の空間が、僅かにグネグネと歪んでいるのが見えた。
「おい、ワールド…だったか?お前、どんな能力なんだ?教えてくれよ」
「誰だ貴様は?貴様に教える筋合いなどないわ」
「当ててやろうか?自分の周りの空間をねじ曲げる能力だ。違うか?」
「…ほう?」

ワールドはハレンを興味深く見る。
「たった数分の私の行動で、その答えに行き着くとは…。大した観察力だ。どうせ死ぬ、教えてやろう。私の能力は″グッドナイト″。空間をねじ曲げる能力だが、それは自身の周囲に限らず。時間軸や宇宙規模まで及ぶ」
「…はぁ?何言っている。そんな滅茶苦茶な能力あるはずが無い」

「そうだな。1つ面白い話をしてやろう。そもそも貴様達が当たり前のように使う能力。どこが起源か知っておるのか?」
「知らねーよ」
「1000年前の話だ。貴様達が暮らすこの地球。ここには初め、能力者なぞ存在しなかった。そして私が住んでいた惑星タラテクト。この星は能力者の住む星だった。貴様達が月と呼ぶ星だ」
「月だと…!?(ペプシマンの故郷だって話は真実でだったのか!?)」
「月には色んな能力者がいてな。その中でも特に異質な″怪物″と恐れられた生き物がいる。名をエンド。分解と構築を司る天狗だ」

205キャプテン:2021/03/09(火) 20:42:30
「そのエンドと私が接触すれば世界の改変が…」
「…だがエンドはアンタを拒んだ。だからリコルの体に封じ込めたんだろ?逃さない為に。」
ワールドの話にハレンが割って入る。
「だが誤算があった。遺伝子・精神レベルで融合したリコルとエンドは魂が崩壊し、アンタは完全な改変が起こせなくなった。その結果がこの不完全世界って訳だ。」
「貴様、あの二郎の…。」
「ウチの早川組は、裏でその不完全改変を利用し組の復活を実現した。だがこちらも誤算があった。リコルの体がエンドに耐えれず粒子崩壊し分離し始めたんだ。」
「私にとっては好都合だった。このままエンドとその子の分離が進めば後は…?!」
その時、ワールドの視界がぼやけ、リコルとホリデーの姿がいつの間にか消えた。

「催眠術だよ。(まあ、勝ち目も無さそうだしな。義理人情や人助けも、たまには悪くないか。)」

206ノートン:2021/03/12(金) 21:41:05
「催眠術か。面白い」
グッドナイトを発動。ワールドの周囲がグネグネと歪み始め、次第にリコルやホリデーの姿が現れる。
「幻覚も歪みの前ではひれ伏すのみじゃのう」
「逃げる時間すら与えてくれない…か」

倒れていたリコルがヨロヨロと起き上がる。
「能力の起源…まさかお前って話かよ!?」
「その通りだ器よ。この地球の歴史を歪め、改変し、能力者を生み出したのは私だ」
「何が目的だテメェ」
「そうか、記憶がないのだったな。私はお前に一度話しておる。まだ宿星が存在する世界でな」

再び頭痛がリコルを襲う。
「前置きはいらない!さっさと話せよ」
「惑星タラテクト…あの憎き星タラテクト…あの星を破壊する。それはお前の念願でもあったはずだ、器」
「…何?」
「私とエンドが1つとなり、完全な生命体となれば、間違いなくタラテクトは破壊出来る。その為に協力すると言ったのは、貴様だろう器よ?」

リコルとワールドの会話にハレンが割って入る。
「俺はこの生活が気に入ってるんだ。もうこれ以上、お前の意味不明な私欲の為に、この世界に干渉して来るなよ」
「フフ…面白い事を言う男よ。ならばどうする?」

ハレンの体が光輝き始める。
「お前のグッドナイト、貰ってやるよ。チェーーーンジ!!!!」

207キャプテン:2021/03/15(月) 21:20:21
「デカイッ?!冗談…だろ。」
膨大な能力エネルギーがハレンの体に入る。能力の暴走で歪んだ空間がハレン現本体をグニャグニャに捻じ曲げ、痛みに叫び出す。
「ハレンが死んじゃう。早く能力を返して!!」
「ダメ…だ?!今…しか…奴を倒せ!!」
ハレンが苦しみながらも能力グッドナイトを使用不可でも数秒間、奪えている事実に苦悶するリコル、ホリデー、セオドア。決意を固め、ワールドに飛びかかる。
「やれやれね、催眠術…爆ぜろ。」
ワールドが手をかざすと3人の体がバラバラに爆ぜた…という一瞬の光景に3人がのたうち回る。
「(体は無事、痛みは…本物だ。ハレンの催眠術を即座に使いこなし、力も段違いでアール!!)」

すると今度は大地が揺れ始めた。
「崩壊か…そろそろ能力を返しなさい。お前では“この世界”を支えきれん。」

208ノートン:2021/03/18(木) 21:23:31
ヴィヴィを現世へ送る為、死力を尽くしたハレン。もう既に”グッドナイト”を留めておく体力は残っていなかった。ハレンの体が光輝き、ワールドと繋がる。グッドナイトはワールドの元へと還ってしまった。

「クソ…何て能力だ…」
「もう気は済んだか?茶番は飽きた。消えるが良い!」

グッドナイト発動。ハレンの足元がグニャグニャと曲がり始め、それは次第に全身に広がっていく。
さらに、まるで雑巾を絞るようにグルグル巻きになっていった。
「やめろワールド!!」
「焦るな器よ。殺しはせん、飛ばすだけだ。この地球の何処へ飛ぶかは…知らぬがな」

その時、雷槍が猛スピードでワールドの腹部を貫いた。
「!?」
「その能力を我が輩に渡すのであーる!!」
「…それが貴様の答えか。男爵」

ワールドの体を貫いた…と思われた雷槍。しかし、肉体を貫く寸前。空間がねじ曲がっており、雷槍はワールドをすり抜けていた。
「そんな…馬鹿な…」
「残念だ男爵。だが、今までの働きには敬意を払おうじゃないか。そこの男と同様に、殺さずに消し飛ばしてやろう」

ハレンと同じく、セオドアの体がぐねぐねとうねり始めた。
「うわあぁぁぁあああ!!??」
ぐるぐる巻になった体は次第に細くなっていき、その場から消滅。2人は姿を消した。

209キャプテン:2021/03/22(月) 22:15:00
ホリデーの姿が疲労に耐え切れず、蛸化から元の人の姿へと戻る。
「…限界…か、クソが。」
「口が悪いわねお嬢さん、礼節を覚えなさい。」
ホリデーに手をかざすワールド。だが…
真っ赤な射線が撃ち放たれる。だが歪んだ景色の壁に阻まれる。更に赤い粒子の群れがワールドを取り囲み…
「(エンドの粒子を放ったか。)」
「死ねまでブチ抜き続けろ!!射手硝子!!」
一斉に一点を目指して集中線の様に粒子が放たれる。粒子同士が引っ張り合い、∞を描く様に放たれ続ける。ワールドが空間の歪みを狭間に加え、粒子を弾き続ける。
「消耗戦か、無茶を考えるわねリコル。」

210ノートン:2021/03/27(土) 15:49:18
消耗戦を続ける中、ワールドは話し始める。
「エンドよ。そこにいるのだろう、出てくるのだ」
ズズズ…と、リコルの背後に出現するエンド。

「何故器に加担する?この能力はエンド、貴様の力だ。私に協力するのではなかったのか?」
「協力…か。確かに儂はタラテクトの住民に迫害を受けた。人間も、儂にとっては何の価値も無い。死のうが興味も無い」
「そうだろう。お前が力を貸すべきは器では無い。この私だ。早く私の元へ還ってこい」
「…」

エンドはリコルを見る。
「儂には宿主が必要じゃ。宿主となった人間の成れの果ては、お前も知っているだろうワールド。壊れるのだ。破壊と構築の力は、いずれ宿主の精神をも破壊する。何人も何人も…儂は人間を壊し続けた」
「何を今更…。知っておるわ。お前の強大すぎる力を維持出来る人間など誰もおらぬわ!!」
「そうだ。宿主となる人間は、儂を畏怖し、頭を垂れ、命を乞う…。結局はタラテクトの住民と何も変わらぬ」

エンドはリコルの肩にポンと手を置く。
「じゃがリコルは、儂を恐れてはおらぬ。それどころか、儂に説教を垂れおった。いい加減にしろとな。儂はこいつの事が気に入ったのじゃ」
「何だと!?」
「儂はリコルの行く末を見届けると決めた。この坊主を殺させはせんぞ」
「この裏切り者の老ぼれが…たかが器の肩を持ちおって」
「おい」

リコルが突如叫ぶ。ワールドが驚いた表情でリコルを見る。
「さっきからテメェ、器器って。俺の名前はリコルだ。覚えとけクソババァ!」

211キャプテン:2021/03/30(火) 22:49:12
…ハァッ。
ワールドの周囲、空間断裂壁が景色を歪ませ湾曲し凹み、圧縮されていく。湾曲が止まり…そして弾ける。
「…グッナィ。」

「リ…コル?」
コレは、映画か?リコルの体の左半分が消えていた。血や肉は見当たらず、散り散りになった赤色と肌色の粒子が浮遊する。
倒れるリコルをホリデーが抱える。ブロンドの髪を手でかき上げる妖艶な魔女をホリデーが睨む。
「(私を守る為に)…世界を変えて、大事な人たちを消して…それがアンタの望み?ワールド?!」
「私の望みだと?…ふざけるな、貴様ら人間の小っぽけな命など(人の…命なんて)」

ワールドが顔を伏せ、リコルに触れる為に手を伸ばす。腕に抱くホリデーがなす術なく萎縮し咄嗟に目を瞑る。
「さあ、世界を創ろう(これで…やっと)」

212ノートン:2021/04/03(土) 09:09:39
何も無い空間。その中央に、リコルは座っていた。
目の前には、エンドがぼんやりと姿を表す。対面して座っていた。
「そうか…前も来たな。ここは俺の精神世界だったか?」
「そうじゃな。だが以前とは状況が異なるが」

エンドはリコルの体を指差す。体の半分が無くなっている事に気付いた。
「死んだんだな…俺…。まぁ、それなりに良い人生だったよ。仲間にも恵まれて、お前にも会えたしな」

突然エンドは立ち上がり、リコルに背を向ける。
「どうしたんだよ?」
「儂はお前から出る。別れの時じゃ。」
「何言ってんだ?」

するとリコルの半身は徐々に再生して行き、傷の無い元の体に戻った。
「!?」
「儂が宿主となった事で、お前の記憶やお前本来の能力…色んな物に蓋をしておった。儂が出れば、それらは全て元に戻る。過去の辛い記憶も蘇るじゃろう」
「何だよそれ…何で俺から出て行く?」

エンドはそれ以上何も言わずに、そのまま遠くへ去って行った。
「おいエンド!待てよ!待ってくれ!!」

そして現実世界。消えた半身が元に戻ったリコル。しかし意識は無く…。リコルの目の前には、赤き天狗が立っていた。

213キャプテン:2021/04/05(月) 21:42:44
意識の無いリコル。
突如、現れたエンド。

チャリンッ…
ワールドが動きを止め、その金属音に振り返る。ピンクのウサギ、地面にはコインが転がり…そして止まった。そしてウサギが喋り出す。
「ざ〜んね〜ん、裏です。彼に不幸が訪れる。」
「コイツが、なぜ”この世界“に居る?!」
ワールドがハッと向き直る。エンドの体が赤い粒子となり離れ、散り散りになって消えて行く。
「リコル、少しは健康に気をつけるんじゃよ。」
「エンド、貴様わざと不幸を引いて…」
ワールドが発言しきる前にその姿は消えていた。…顔を伏せ肩が震える。突如景色が歪み、それがピンクのウサギに打つかり血飛沫と共に吹っ飛ばした。
「天狗に化かされた…か…卑怯者が!!!」
残されたワールドの怒号が空虚に響いた。

214ノートン:2021/04/08(木) 21:40:26
姿を消したエンド。だが、ワールドは諦めていなかった。
「逃がさん…逃がさんぞ。どこまでも追いかけてやる。貴様が粒子になろうと、必ず見付けだす!!」

ワールドの周囲の空間がグネグネとうねり始める。

「ちょっと…どこ行く気よ?」
ワールドを静止させたのは、気絶したリコルを抱き抱えたホリデーだった。

「まだおったのか小娘。消えろ。貴様らにもう用はないわ!!」
「うるさい!!私の村人を…返してよ!!!」

圧倒的実力差を前に、ただ涙を流し訴える事しか出来ないホリデー。その体は小刻みに震えていた。
「村人…あぁ、ターグの実験体か。ふふふ…面白い」

ワールドはホリデーの元に近づき、耳元で話し始めた。
「〇〇〇〇…」
「何言ってるの!?出来るわけないでしょ!?」
「やれば村人を復活させてやる。それだけだ」
「そ…そんな」

ワールドはホリデーに何を語ったのか?この一連の言動は、のちに大事件へと繋がるのだった。

215キャプテン:2021/04/12(月) 21:01:46
ワールドが背後、遠くを指す様な目を向ける。
「…また、会おうリコル。」
その姿と景色が歪み、そしてリコル、ホリデーの目の前から姿を消した。

ビ…ビビ…ジジジザザザ…
妙な電子音が街の方へと走る。それが人混み、白髪の杖つきの老婆へと届いた。老婆が通信機を取り出す。
「こーちーら、フェイクス・ノイズンじゃーよ。ワールドに監視がバレたみたいじゃよ。すまんねーボスよ。」

「…バッカス(バカとカス)」
暗い部屋、深いソファーに深々と座る太った男性が通信機を切った。
「これで…リコルは世界中から命を狙われる事になる。」

216ノートン:2021/04/17(土) 15:59:35
ワールドの脅威は去った。同時にエンドも粒子となり消え去った。

意識を失うリコルを担ぎ、病院へと向かうホリデー。そして、誰もいなくなったオットセイ。見るも無惨に建物は崩れ、土埃が舞っていた。

誰もいなくなった…?

ボゴッ!!と激しい音がする。複数のガレキが勢いよく宙を舞う。中から出てきたのは。真っ黒のペプシマン…?その容姿はペプシマンの様なコミカルさは無く、まるでマーベル映画”ヴェノム”の様に、より凶悪なエイリアンの風貌だった。

「ククク…私はなれた。最強の兵器に!!」
この世のものとは言えない声で話す怪物。姿が徐々に人間の姿に戻る。その正体は、ターグ博士だった。

「崩れる直前に飲んだバイシカプセル。ククク…最高の気分だ。リコル…ホリデー…私を苦しめた罪は万死に値する。必ずこの手で殺してやる!!」

数日後…。

ノートンとキャプティの病室に、包帯でグルグル巻きの花園が訪れた。
「また君か、花園君。サインはもう渡したろ?」
ノートンが呆れ顔で話す。
「君らの組長は今消息不明なんだろ?良いのか?こんな所で油を売ってて」
「問題無いっす、信じてますんで。今度はこっちにサインを」
差し出されたスーのフィギュアにサインを書く。

「このスーが現実世界に現れたなんて…正直信じられない。なぁキャプティ?」
「そうだね。本当にいるなら是非会ってみたいね」

217キャプテン:2021/04/19(月) 18:27:19
…「依頼された?!正体不明の原作者に?!」
花園が二人の話に驚愕する。
「あの時は何も知らなかったんだ。消失した宿星世界の物語、それを世に広める理由。多分…ワールドの邪魔をするため。」
ノートンが腕組みで答える。
「実在したスー・グラウンド以外に、消えた世界の情報を知る者…原作者はおそらく、元宿星世界の住人…?!」
キャプティが得意げだった話を切って半開きの扉を思いっきり開く。

…二ャウォンッ。
「猫ちゃ〜ん?!」
キャプティが怪我の痛みそっちのけで現れた黒茶色の猫を撫でまくる。猫もゴロゴロと鳴いてそれに応える。花園の尊敬の眼差しが次第にぎこちなくなる。
「(キャプティさん…気持ち悪いです。)」

218ノートン:2021/04/21(水) 21:26:19
ここは、とあるバーの地下。集まったのは”ファクトリーファミリー”の全メンバー。

「バッカス!急な招集だったが、よく集まった!」

ファミリーの頭 ドン・ファクトリー。
ドンの弟    オズマ・ファクトリー。
潜入諜報暗殺員 フェイクス・ノイズン。
伝説の殺し屋  武蔵。
元早川組    西 詩謝(シイ シシェイ)。

たった5人の少数精鋭。そして…。
「新しいメンバーを紹介する!異世界から来たイカれ野郎、スー・グラウンドだ!」

ドンの横にスーがいた。
「何て紹介の仕方だ…舐めてんのか?」
「まぁ怒るなスー、目的は一緒だろうが」

ドンは机の上に、リコルの写真を叩き付けた。
「このガキを捕らえる!」
「〇〇…いや、この世界での名はリコルか。こいつは俺の大切な仲間を殺した。俺は元の世界に帰る前に、リコルと決着を付ける」
「復讐が…バッカス!良いだろう、どんな手段を使っても捕らえるぞ」

ドンの言葉に、スーが反応する。
「どんな手段でも?よく聞けドン。俺は青空隊だ。人々の笑顔を守り、澄み渡った青空のような世界を作るのが俺の信念だ。罪も無い一般人に危害を加えるようなら、このファミリーは俺の手で消す…覚えとけ!」

219キャプテン:2021/04/25(日) 12:55:36
森に囲まれた廃墟。
その中に立たずむ一人の青年。胸に手を当てると鈍く光る。しかし、すぐに頭を抱えて苦しみ出す。
「…リコル?!」
女の子が駆け寄ってくる。
「ホリデー、やっぱりダメだ。体内の宿星の力を使おうとすると、多分何か解らない、忘れていたい“嫌な記憶”が邪魔して激しく頭痛がするみたいだ。」
「…そう、一種のトラウマね。防衛反応で脳が記憶を能力と共に封じ込めてしまっているんだわ。『宿星物語』で神を宿していたスー・グラウンドのようにはうまくいかないわね。怪我はもう大丈夫でも、追手からはしばらく隠れているしかなさそうね。」
座り込むリコル。
「(最初は過去の無さに絶望して、今度は過去の存在に絶望する。本当に哀れだな…俺って。)」

220ノートン:2021/04/28(水) 21:35:19
「大丈夫か?リコル」
森の奥からジェノが現れる。その姿は、バルトから受けた傷で包帯だらけだった。

「大丈夫か?はこっちのセリフだよジェノ。まるでミイラだ」
「ドーヂさんのおかげでこの程度で済んだんだ」

ジェノの後ろから、ドーヂが現れる。タバコをフーっと吹かしていた。
「そうだジェノ。お前を監獄から出してやったのは俺なんだからな」
「えぇ、感謝してますドーヂさん。これから刑事としてお世話になります」

リコルが驚いた表情を見せる。
「えっ!?ジェノが刑事!?消防隊辞めるのか!?」
「もうあそこには戻れないさ。バルトは俺とドーヂさんで止める」

更に森からキャプティとノートンが現れる。キャプティはガラスで厳重に固められたペプシ缶を持っていた。
「ゴメン2人とも。呼び出しちゃって」
「良いんだリコル。小説の連載もネタ切れで止まってるし、実在するスーに会えるなら、いい取材が出来るかもしれないしな」
キャプティはメモの準備をぬかりなくしていた。

座るリコルの前に並ぶ、ホリデー・ジェノ・ドーヂ・キャプティ・ノートン。5人を前に、リコルは静かに語り出す。

「トラウマはここで乗り越える。聞いてくれ、俺の過去を…。俺の本当の名前は”リコイル”」

そして、隠されたリコルの過去が明かされる。

221ノートン:2021/04/28(水) 21:39:18
リコリスク 第一部 



キャプテン、ノートン著

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