1.株価が「収益還元価格」に等しかったとする。株価はいくらか?
B B
①P(t)=―― ②P(t)=Br ③P(t)=―― ○ ④P(t)=B+r
1+r r
2. この企業が来期(t+1期)以降、配当をこれまでよりも10%増加すると今期(t 期)に発表した。
今期の株価はどうなるか?
① 今期は上昇しないが、来期以降上昇する。
② 今期上昇し、来期さらに上昇する。
③ 今期上昇し、来期以降そのままで推移する。○(期待の影響は今期織り込まれる)
④ 今期上昇するが、来期にはその情報が織り込まれるので来期以降下落し、元に戻る。
問題2
毎年1株あたり10円の配当を支払う企業の株価が500円であったとする。
ただし金利は年利2%である。以下の記述について正しいものを選べ。
① 投資家が合理的であれば、バブルは発生しないので、これが唯一の価格である。
② 投資家が合理的であっても、バブルは発生するので、500円以上の価格がつくことがある。
この場合、価格は安定する。
③ 投資家が合理的であっても、バブルは発生するので、500円以上の価格がつくことがある。
この場合、価格は上昇を続ける。○
④ 投資家が価格の動きをバブルだと認識してもバブルは持続する。○
問題5
日本の金融緩和が外国為替市場へ及ぼす効果について正しいのはどれか。
① 金利平価説に従えば円安となり、購買力平価説に従えば円高となる。
② 金利平価説に従えば円高となり、購買力平価説に従えば円安となる。
③ 金利平価説に従っても購買力平価説に従っても、円安となる. ○
④ 金利平価説に従っても購買力平価説に従っても、円高となる
① 先物為替レートの係数はプラスであり、直物為替レートとの間には正の相関があり、
両者の間には裁定が働いているといえる。
解説として付け加え(裁定が働いているためには、相関関係だけでは不十分。係数にも制約が必要)
② 先物為替レートの係数は1から大きく離れており、両者の間には裁定が働いているとはいえない。
○ 解説として付け加え(裁定が働いているためには、係数はほぼ1に近いはずである)
③ 直物為替レートが先物為替レートに比べて、約8%低いということは、
この1 年間、先物が予測したよりも、平均的に円高であったということになる。
○解説として付け加え(推計式は、直物が先物の約92%であったということをしめしている。)
④ 直物為替レートが先物為替レートに比べて、約8%低いということは、この1 年間、先物が
予測したよりも、平均的に円安であったということになる。
解答
問題1: 1:③ 、2 ③
問題2: ③ ④
問題3: ① ④
問題4: ①
問題5: ③
問題6: ② ③
正解は、各10 点で合計100 点。 合格点60 点以上。
正解が2つの問題は、2つ正解のとき20 点。
正解が1つだけ含まれていても、2つ以上正解を選んだとき0点。
正解が1つの問題は、正解のとき10 点。
正解が含まれていても、2つ以上正解を選んだとき0点。
① 期待値での投資収益は投資1のほうが高いので、
投資2よりも投資1を実施するほうが社会的に望ましい。
② 期待値での投資収益は投資1 のほうが高いので、
投資2よりも投資1を実施するほうが効率的である。○(効率性は期待値の大小で決まる)
③ 投資1を1件実施するときと、100 件実施するときを比較しよう。
件数が増えても1 件あたりの期待収益は変化しないので、
リスク回避的な投資家にとって、何も変わるものはない。
④ 投資1を1件実施するときと、100件実施するときを比較しよう。
件数が増えると、投資案件のリスクは変わらなくても、
投資家の直面するリスクは変わる可能性はある。○(大数の法則が使えるから)
問題2 「リスクに応じた金利」に関する記述のうち、正しいのはどれか?
① 貸し手と借り手の間に情報に非対称性が存在する場合、
リスクに応じた金利を設定することはできない。
② 貸し手と借り手の間に情報に非対称性が存在したとしても、
リスクに応じた金利を設定することは可能な場合はある。○(誘因両立性条件をうまく使えばいい)
③ リスクに応じた金利を設定すれば、金融機関は破綻することはない。
④ リスクに応じた金利を設定しても、不良債権は発生する。
○(回収できない融資は必ず発生する。その損失を補うために、高めの金利を設定する)
① 株式契約においては、投資家への支払いである配当は、一般に収益に依存しない。
② 情報生産の担い手は、債務契約と株式契約では異なっている。
特に、債務契約では、借り手である企業家が、情報開示活動をしていることを前提としている。
③ 債務契約では、貸し手は借り手に対して保守的な経営を求める傾向が強い。
一方、株式契約では、 経営者の積極性を引き出すことができる。○
④ 契約を結ぶのに要するコストは、株式契約に比べて債務契約のほうが高い。
① 預金保険制度を導入すると、銀行は取り次げ騒ぎの心配がなくなり、
経営に専念できるので、銀行経営は強化される。
② 預金が保護されたとしても、取り付け騒ぎがいったん起きると、
預金者はパニック的行動をとるため、その効果は限定的である。
③ 預金保険制度を導入すると、預金者は銀行の経営状態に無関心となるため、
銀行経営者に危険な融資を選好するモラルハザードが生じ、
経営悪化による破綻の危険性はむしろ増大する。○
④ 各国データを使った実証分析によれば,預金保険制度の充実した国ほど金融危機が
生じにくい。
① 各プロジェクトの純現在価値を計算せよ。
② 内部収益率ルールを用いて、2つのプロジェクトのどちらを採用すればよいかを示せ。
③ いま、この社長が、内部収益率がより高いことを根拠にプロジェクトBを採用しようとした。この社長の決断の根拠は正しいか。その正否を、理由とともに説明せよ。
2
今、マーケット・ポートフォリオの収益率の標準偏差が0.2であるとする。このとき、下記の問いに答えよ(途中の計算過程も示せ)。
① ベータが1.3となるような、十分に分散化されたポートフォリオの収益率の標準偏差はいくつか。
② ベータが0となるような、十分に分散化されたポートフォリオの収益率の標準偏差はいくつか。
③ 十分に分散化されたポートフォリオの収益率の標準偏差が0.15であるとき、そのベータはいくつか。
※ 十分分散化されたポートフォリオの収益率は、マーケット・ポートフォリオの収益率と
は無相関である。
3
次の①〜⑤の記述について、正しい場合は○、間違っている場合には×をつけて答えよ。また、誤っている×の記述について、その理由を簡単に答えよ。
① 資本資産価格モデル(CAPM)によると、ベータが0の証券の期待収益率は常にゼロとなる。
② 100万円を安全資産(財務省証券)に、200万円をマーケット・ポートフォリオに投資した人のベータは、2である。
③ 投資家は、それ自身の収益がマクロ経済の変化に大いに影響を受ける株式に対してはより高い期待収益率を要求する。
④ 投資家は、それ自身の収益率がより変化する株式に対してはより高い期待収益率を要求する。
⑤ 投資家は、それ自身の収益が株式市場における変動に非常に敏感である株式に対してはより高い期待収益率を要求する。
4
1998年7月における各企業の株式のベータが資本資産価格モデルに基づいて下記のように計算されている。そして、安全資産の収益率が5.5%で、マーケット・ポートフォリオの期待収益率が13.5%であるとき、次の問いに答えよ(途中の計算過程も示せ)。
① コカ・コーラの株式の期待収益率はいくらか。
② 上であげた企業の株式の中で、期待収益率が最も高い企業はどれか。また、その期待収益率はいくらか。
③ 上であげた企業の株式の中で、期待収益率が最も低い企業はどれか。また、その期待収益率はいくらか。
④ マーケット・ポートフォリオの期待収益率には変化がないとして、安全資産の収益率が5.5%から7%となったとき、ゼロックスの株式の期待収益率は上がるか、下がるか。
⑤ マーケット・ポートフォリオの期待収益率には変化がないとして、安全資産の収益率が5.5%から8%となったとき、エクソンの株式の期待収益率は上がるか、下がるか。
5
Modigliani-Millerの命題について、下記の問いに答えよ。
① Modigliani-Millerの第1命題とは何か、説明せよ。
② Modigliani-Millerの第2命題によると、完全な資本市場の下では、借り入れを行っている企業の普通株式の期待収益率は、市場価値で示された負債/株主資本比率に比例して増加するという。この関係が成り立つことを証明せよ。
③ 「Modigliani-Millerの命題では、より多く借りた企業はより高い金利を払わなければならないという事実を無視している」という反論がある。この反論は正しいか。その正否を、理由とともに説明せよ。
企業金融論(寄附講座)(池尾・土居) 60分 持込:電卓のみ
H17秋
1
次の専門用語について、それぞれの内容(定義)を答案用紙2行以内で説明せよ(各5点×6)
① レバレッジド・バイアウト(LBO)
② クレジット・デフォルト・スワップ(Credit Default Swap)
③ ディフィーザンス(Defeasance)
④ デューディリジェンス(Due Diligence)
⑤ インタレスト・カバレッジ・レシオ(Interest Coverage Ratio)
⑥ ノンリコース・ローン(Non-recourse Loan)
2
行使価格が2310円のある会社の株式に対する1年物のヨーロピアン・コールオプションを、1230円で売ったとする。その会社の現在の株価は2730円である。安全資産の利子率は年率5%であるとする。このとき、下記の問いに答えよ。(各10点×2)
① ここで、行使価格をK、安全資産の利子率をr、株価をS、ヨーロピアン・コールオプションの価値をC、ヨーロピアン・プットオプションの価値をPと表すとする。このとき、これらの間で成り立つ関係式を示せ。
② いま、同じ会社の株式に対する同じ行使価格の1年物のヨーロピアン・プットオプションを買うとすれば、その価格はいくらとなるか答えよ(途中の計算過程も示せ)。
3
ある会社が、今後5年間にわたって使用する機械を、いま100億円を現金で払って購入するか、リースするかを検討している。現金で購入すると、機械の減価償却費を、5年後の残存価値なしの定額法で計上できる。他方、リースの場合は、減価償却費はなく、5年間にわたり年間のリース支払料を22億円必要とする。ここでは、金利(割引率)は5%で、法人税率は50%であるとする。このとき、下記の問いに答えよ。(各10点×3)
① 機械を現金で購入した場合、税制の効果を考慮したコストの現在価値はいくらかとなるか答えよ(途中の計算過程も示せ)。
② 機械をリースした場合、税制の効果を考慮した総コストの現在価値はいくらかとなるか答えよ(途中の計算過程も示せ)。
③ この会社にとって、この機械を現金で購入した方がよいか、それともリースした方がよいか、その理由も簡単に示して答えよ。
4
ワラントと転換社債の相違点は何か、主だったものとして4つ挙げ、それぞれについて答案用紙2行以内で説明せよ。(各5点×4)