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自作ロワ外伝-テロリストと戦ってみました-

1テストしたらば名無しさん:2009/08/13(木) 14:45:26 ID:jkTwpMO20
昔妄想スレで出てたネタを更に細かく妄想するスレ

学校に侵入してきたテロリストと戦うというシチュで
SSをリレーしていきます

自作キャラを生徒側とテロリスト側に分けて60人vs60人の
チーム戦を行います(キャラは使いまわしでもok)

どちらかが全滅したらゲーム終了です

616テストしたらば名無しさん:2010/10/04(月) 00:35:33 ID:yB98pjjA0
>>51 
熊さん、すっかり忘れてたw
島で野生化してるんだろうか?w

617テストしたらば名無しさん:2010/10/04(月) 10:48:48 ID:5GQUSyrk0
好きなものと苦手なものの欄を見ているうちに
マイケルのビジュアルがねずみの国のアレになってしまった…

618テストしたらば名無しさん:2010/10/10(日) 21:53:30 ID:Hm1dVeY.0
レンタルしていたサーバのサービス終了につき
リアルタイム更新地図のアドレスを変更いたしました。
新しいアドレスは以下のとおりです。

ttp://www20.atpages.jp/akaihitomi/jisaku2/

619 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/11(月) 09:27:46 ID:QNoaEiw.O
>>618
乙乙です。
サーバー変わったの知らなかったぜ…



投下致しますね

620 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/11(月) 09:29:16 ID:QNoaEiw.O

草が一帯に繁茂する草原。
緑一色に染まった中に佇む男が一人。
その風貌は、金色と赤色という目立つ色に髪を染め、耳には銀のピアスを開けている。
更には目つきは獣の様に鋭く、その姿だけで間違いなく常人なら目を合わせるのを避けるだろう。

「チッ、調子に乗りやがって」

彼の名前は国分寺多聞(男子八番〈こくぶんじ・たもん〉)。古風な名前と反比例し、強者かつ変人揃いの高校の中でも最強と呼び名が高い不良である。
それもそのはず。
彼の父は有名な『鬼の国分寺』と呼ばれる柔道家であるからだ。
それゆえか、父からは嫌という程柔道を教え込まれている。

(まぁその父さんも母さんも、今は何処かの外国だろうが)

ちなみに多聞の母の職業は老古学者である。
といっても有名ではなく、父と息子二人揃ってその事について忘れていたが、高校一年のたまたま出かけたとある外国にて、

『なんかありそうだから私ここ掘るわ』

と旅行そっちのけで掘り始めたところが、なんと白亜紀の恐竜の化石があったのだ。
しかもその恐竜の化石は白亜紀の他の恐竜の生活が詳しく分かる物であり、そのまま発掘への参加を余儀なくされてしまったのだ。

そしてその後は父がとあるヨーロッパ在住のオリンピックに何度も優勝している柔道選手の講師に呼ばれてしまい、多聞は日本で一人暮らしを始めてしまう事になってしまったのだ。

621 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/11(月) 09:30:59 ID:QNoaEiw.O
それでそんな二人の有名な親を持つ多聞だったがある日の事、不良グループの数人が多聞に絡んできてしまったのが彼を大きく変えた。

校舎裏にまで呼びつけられて、文句を言われていた時までは黙っていた。
だが不良グループの一員が、多聞を金属バットで殴ったのが悪かった。

『テメェ…人の体を勝手に傷つけて、入院させたらどうしようと思わねぇのか!』

…結果論で行くと、逆に怒った多聞が不良達を病院送りにしてしまったのだ。
(しかし、多聞も頭部を8針縫う大怪我をしたのだが)
それ以降、彼は一気に校内で恐れられてしまったのだった。

生まれつきの目つきもあってか、なんとなく一般生徒をチラ見しただけで、その生徒が泣いて謝ってきたり、
中にはプリントを落とした生徒を手伝おうと声をかけたら逃げられて、何故か呼ばれた風紀委員と勝負を繰り広げる羽目になったり、
噂を聞いた琴浦という同学年の男とも戦ったりと、勝負を挑むのならば、必ずと言っていい程それを受けた。

だがしかし、多聞は喧嘩は嫌いである。
父から教えてもらった柔道を、いざというとき以外そう簡単に喧嘩に使う事は、父に対して失礼と考えるからだ。
無論、立場を弱い人をいたぶるカツアゲなんてする奴なんてもっと嫌い。
夜に人に迷惑をかけて走り回る暴走族も、嫌っている。

622 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/11(月) 09:31:37 ID:QNoaEiw.O
だからこそ、彼はなるべく人を避ける為に髪をわざと派手に染め、耳のピアスも穴を開けなくて良い様なタイプを付け、外見だけで威嚇出来る様な物にしたのだった。

無論、学業をおろそかにする事なぞ出来ない。
『質実剛健』をモットーとした父に育てられた多聞からしたら、学業は必要不可欠である。
日々売られた喧嘩で消えた授業を、独学での勉強に費やしているおかげか、テストでは毎回半分以上を取り無遅刻無欠席。
ついでに趣味は動物と遊ぶ事と読書という、『そんな不良で大丈夫か』と言われてしまいそうな男である。
だからそんな不良らしからぬ男が、国分寺多聞なのである。

「蝶野…絶対に、お前は許さねェ…絶対に!」

だからこそ、多聞は怒りに燃えていた。
残虐性に溢れ、人の命を弄び、『生徒』を守るべき役目である教師の職業を捨てた蝶野杜夫を、心の底から憎んでいた。

(テメェが俺らがあがく姿を見たいなら、お前の言う通りあがいてやるよ。
でもな、蝶野。そのうちテメェの面を原型留めない程に殴ってやる)

―――だから、覚悟しとけよ。馬鹿ヤロー。
そう思いながら、蝶野の醜く笑う顔を思い浮かべながら、多聞は高々と、夜空へと拳を突き上げた。
反抗の意志を貫くが如く、夜空を突き破るかの様な拳だった。

「…てか、そうやったとはいえここに居ても何も始まんねぇし…動くとすっか」

そう呟いて高らかに上げた拳を静かに下ろし、多聞は派手な赤色と金色の髪を掻きながらも歩みを進めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆

623 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/11(月) 09:32:08 ID:QNoaEiw.O

「だーれもいねぇな…」

と、少し歩いてみた多聞であったが、何故か生憎、周りには誰一人とも居ない。
いや、多聞としても誰かに会った瞬間に殺されるなぞ決意を固めた直後としては、あまりにも腑抜けすぎるのだが。

(ま、流石にそんなアホみてぇな事はねぇだろ…と信じたいが)

そんな風になったら、ギャグ以外の他でもない。
―――もしそれで死んだら、安佐蔵と最強堂から笑われる覚悟しなきゃな。
と一人で勝手に思いつつ、ふと苦笑いが浮かんだ。

「しかし、こうも誰も居ないのもおかしいよな…俺、呪われてるのかなぁ」
「多分そうじゃない?ほら、キミ、案外馬鹿みたいだし…」
「そうだよなぁ…俺、結構頑張ってると思うんだけど」
「ていうかさ、もしかたらそんな風に殺し合いに反抗しようなんて、キミだけなんじゃない」
「そんな事言うなよ…大体周りには俺しか…ふぁ?」

妙に抜けた声を出してしまった。
今確実に自分は誰かと話していた。
気付くのが遅い多聞も多聞だが、目を見開いて、誰なのかを知る為に、後ろを振り向いた。

「やっほー」

624テストしたらば名無しさん:2010/10/11(月) 09:32:36 ID:QNoaEiw.O
そして振り向いた多聞のすぐそばには、髪を纏めてお団子頭にしている問芒操(女子十三番〈といのぎ・みさお〉)の姿があった。
やけに近かったので、多聞は少し仰け反ったが、睨む様にして、突如として自らと会話した操へと問い掛けた。

「問芒…どういうつもりだ?」
「どーゆーつもりだって…尾行?(笑)」
「…わざわざ【かっこわらい】って言うヤツ、初めて見たぞ…」


真剣に聞いた所為でか、操のやけに軽い答えに頭を抱えて突っ込む多聞。
一方の操は、どこからか取り出したかも分からない様な菓子パンを貪る。

「はむはむ…あー、一応言っとくけどさ。殺し合いなんて馬鹿馬鹿しくてやる気ないから。キミは?」
「お前と同じだ。生憎だが、あんなオッサンにどうこうされる訳にはいかねェ…」
「はむはむ…かっこいーじゃん。多聞クン」
「名前、分かってたのか」
「勿論!その目立つ頭してりゃ、誰だってキミって分かるよ」

「っせぇよ」とやや拗ねながらも、多聞は菓子パンを食べおわった問芒の瞳を改めて見る。
純粋な瞳が、こちらに敵意を無しに向けられている。
多聞には分かる。
これまで幾度と喧嘩を受け付ける度に相手に共通していた、人それぞれの『敵意』が。

625テストしたらば名無しさん:2010/10/11(月) 09:33:17 ID:QNoaEiw.O
そして彼が今現在一番憎む蝶野杜夫からは、それが多く感じられた。
ただ、憎悪とも殺意とも読み取れない。
なんとも言いづらい、『敵意』が自分達に向けられていたのだから。

(と、なると…一応問芒には敵意は無いって事にしとっか…)
「問芒、お前これからの予定無いなら、ちょっと付き合わないか?」
「え、別に良いけど…何処に行くの?」
「あ?何処に…って。何処にも行かねぇで行動をだな…」
「ダーメ!それはダメだよ!多聞クン!地図ってものがあるんだからさ」

と、操がまたこれも何処から出したか分からない様に、地図を取り出す。
丁寧に折り畳まれている地図を開くと、問芒は指でなぞりながら自分達の居る場所を探す。

「…えーと…さっき操が来た道を考えると、ここB-7らしいね…
ここから近い施設は多いけど一番良いのは診療所かな。多聞クンはどうかな…?」
「お前すげぇな…地図とか何処で見つけたんだ?」
「最初からディパックの中にあったよ?…もしかして見てないの」
「なっ!?ち、違う!み、見たんだからな!ただ、小さくて気付かなかっただけだ!」

「嘘バレバレじゃん…」と操は心の中で静かにそう思った。
一方の多聞はまだやけにテンパっているが、操としてはどうでもいい。

「とにかく!多聞クンが提案したのが『同行』なら、操は『行動』の提案があるはず!そのまま慌ててるんなら、れっつらごー!」
「や、やめろ!襟を掴むな!くそ、馬鹿力にも程があるだろお前ぇぇぇ!」

◇◆◇◆◇◆◇◆

626テストしたらば名無しさん:2010/10/11(月) 09:33:44 ID:QNoaEiw.O

ごめんね多聞クン。
操、一つだけまだキミに言ってない事があるんだ。
あのね、操ね。
本当はね、人間じゃないんだよ。
色々あって他人に体を改造された、改造人間。
だから、最初は『人間』じゃないから、キミ達普通の『人間』を殺してもいいかなー、って思ったんだ。
クラスメイトでも、正当防衛は成立するかな、なんて考えて。

…だからさ、キミを最初、殺そうとしたんだよ?
操に渡された武器がアイスピックでね。
後ろ姿を見つけた時は、油断した隙に殺そうって思った。
でも、無理だった。
ニーソに隠しておいたそれを出す直前に、キミがじろっと操を見たんだよ?
そしてそれは、操を信じきった目をしてたんだよ。

そこでね…操、戸惑ったんだ。
でも、やっぱりそのアイスピックを取り出そうとした瞬間に、操気付いたの。

―――あぁ、操…まだ人間らしいじゃん。

…だからさ、だからさ多聞クン。
操はキミに助けられたんだよ?
操はキミが見てくれたから、人間らしさを保てたんだよ?
だからね、多聞クン。

操も、君と一緒に行かせてほしいんだ。
だから、それがせめてもの操に出来ること。
だからどうか見ていて。
キミを信じる、操の瞳を。

【B-7 草原/一日目・深夜】
【男子八番:国分寺多聞】
【1:俺(ら) 2:お前(ら) 3:あいつ(ら)、○○(名字呼び捨て)】
[状態]:健康、蝶野に対しての怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本思考: 蝶野杜夫を殴る為に行動する
0:…もう抵抗は諦めた
1:戦闘はなるべくしたくない。
2:よかった、荷物の中身確認してない事バレてない。HAHAHA。
3:…どうせなら診療所で隠れて見るか…
【女子十三番:問芒操】
【1:操(達) 2:君() 3:皆、○○クン(下の名前)】
[状態]:健康
[装備]:アイスピック(ニーソの下に隠したまま)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考: 国分寺多聞とともに行く。
0:一応改造された体だけど、大丈夫かな。
1:診療所だったら薬あるかもしれないしね〜♪
2:…多聞クン、嘘付くの下手すぎ。

627テストしたらば名無しさん:2010/10/11(月) 09:37:18 ID:QNoaEiw.O
下終了。
タイトルは『すれ違い通信、成功?』で。
元ネタは…言わずとも分かりますよねw

【アイスピック】
氷を割る為に使われる器具。
割った氷はカクテル等の飲み物に使われる。
先端が尖っており、場合によれば致命傷を与える事もあり。

628テストしたらば名無しさん:2010/10/11(月) 11:56:06 ID:J08zUGLU0
投下乙です!

ヤンデレフラグキター!!!!!
や、このクラスって病んでるのは多いけど
デレる子はいなさそうだったから、貴重だなと…

629テストしたらば名無しさん:2010/10/21(木) 14:43:04 ID:veYyAhAM0
久しぶりに支援絵。水原とさやかちゃんです。
蘭子を描くつもりで描き始めたのにうまくいかなかったorz

(画像アドレス直リン)
ttp://www17.oekakibbs.com/bbs/srpgbr/data/15.jpg
(絵板)
ttp://www17.oekakibbs.com/bbs/srpgbr/oekakibbs.cgi

630テストしたらば名無しさん:2010/10/21(木) 21:50:49 ID:6XkbzC46O
風紀委員三人衆は見てみたいな。

631テストしたらば名無しさん:2010/10/21(木) 23:12:11 ID:Kjw203rsO
風紀委員共か…
ならば
いすみん→日笠
藍子→矢作
さやかちゃん→佐藤(聡)

というキャストになるのですね。分かります。

632テストしたらば名無しさん:2010/10/21(木) 23:17:41 ID:jpDZoDms0
いいえそれは生徒会です

633テストしたらば名無しさん:2010/10/30(土) 20:59:03 ID:PSP9XxqcO
桐野ラキ、ジョナサン大山、月元夢子


予約

634 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/30(土) 20:59:13 ID:PSP9XxqcO
桐野ラキ、ジョナサン大山、月元夢子


予約

635 ◆CUPf/QTby2:2010/10/30(土) 21:41:58 ID:cP8GQNvY0
丁度良かった。予約から月元を外します。
自己リレーになる箇所は書きたい人に回したいので。

あと、投下はもう少し遅れます。ごめんなさい。

636 ◆Y47IPLbgaw:2010/10/30(土) 22:56:23 ID:PSP9XxqcO
あ、あれ!?
しまったぁ…予約気付かないままだったからなんか、申し訳ない…

637テストしたらば名無しさん:2010/12/04(土) 17:31:26 ID:WfIfnLE.0
テスト

638テストしたらば名無しさん:2010/12/04(土) 17:32:46 ID:WfIfnLE.0
こっちは書けるのに避難所には書けない。
そういう人、他にいますか?(by.したらば管理人)

639テストしたらば名無しさん:2010/12/04(土) 18:04:15 ID:WfIfnLE.0
改めましてこんにちは。したらば避難所管理人です。
自作2専用掲示板の設定を少しだけ変えました。

Proxyを通していないにもかかわらず
Proxy扱いになって書き込めなかった方は
今回の変更で書き込めるようになったと思います。

他に不具合のある方は、お申し出ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

640 ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:25:18 ID:7oHJZWik0
大変お待たせいたしました。
嵐崎、有栖川、不動院、八十島のSSを投下します。

641あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:26:45 ID:7oHJZWik0
一刻も早く、人の気配に触れたかった。
ゲームに乗っていても構わない。殺意を向けられても構わない。
相手が人間ならば、顔見知りならば、クラスメイトならば、
出来ることは自分にもある。けれども、この森は手に負えない。
自然の前では、自分は無力だ。いや、無力だと思ってしまう。

一歩足を踏みしめるたびに、枯れ枝が乾いた音を立てる。
視界が悪い。枝葉が天を覆い隠し、星明りすらも遮ろうとする。
がさり、と近くで音がする。獣か、蛇か、虫けらか風か、
それとも己の踏みしめたものが離れた何かに繋がっていたか。
がさり、と再び音がする。誰もいないはずの場所から、這うような音。

獣だったらどうしよう。毒蛇だったらどうしよう。気持ちの悪い虫だったら。
逃げ足には自信がある。持久力にも自信がある。
しかし、視界が悪すぎる。足場も悪く、障害物にも事欠かない。
恐怖に屈して走り出せば、怪我を負う可能性のほうが高くなる。

 ――大丈夫。落ち着きを失ったら、出来る対処も出来なくなるわ。
 冷静に考えて。さっきの校舎。この島には、少なくとも学校がある。
 つまり、それなりに文明と共存している場所だってこと。だから……。

大丈夫。どうにかなる。そう自分に言い聞かせ、
不動院凛華(ふどういん・りんか/女子十六番)は前進する。
それでも恐怖は忍び寄る。周囲のすべてが不安を生む。
何度も怯え、足を止め、ようやく視界が開けたとき、
凛華はその場にへたり込んだ。

642あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:27:24 ID:7oHJZWik0
そう、たとえそこが、ゴーストタウンであったとしても――
町並みは暗く沈んでいても、その形には人の営みの痕跡がある。
凛華の見知った世界がある。だから凛華は安堵した。
大丈夫、どうにかなる。その言葉にようやく根拠が宿ったような気がして。

ふと視線を感じ、顔を上げると、同じクラスの女生徒が
住宅の外壁に背をもたせかけ、力なくこちらを見やっていた。
有栖川桜(ありすがわ・さくら/女子二番)。負傷しているのだと分かる。
右腕に何かが刺さっており、鮮血が流れ落ちている。
誰かに襲われたのだろうか。それとも返り討ちに遭ったのだろうか。
どちらにせよ、手当てをしなければ。自分には、それが出来るのだから。

凛華は桜に歩み寄る。桜の身体が強張るのが分かる。

「大丈夫。危害を加えるつもりはないわ」

凛華は両手を軽く挙げ、丸腰であることをアピールする。
桜は何も答えない。その強い視線からは、警戒心が見て取れる。

凛華はふと、思い出す。
両親の経営する動物病院、そこに運ばれてきた傷だらけの犬。
人間から虐待を受けた犬の様子に、今の桜はどこか似ている。

 ――誰かに襲われた可能性が高そうね。それも、一方的に。

彼女を休ませなければ、と思った。
怪我の手当ても必要だが、心の休息も不可欠だ。
一歩、また一歩、凛華は桜に歩み寄る。

「有栖川さん、歩ける?」
「……うん」
「近くに診療所があるようだけど……、そこに向かうのはあとね。
 手近な家に入って、そこで応急処置をしましょう」

          □ ■ □

643あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:28:12 ID:7oHJZWik0
誰かが点したその部屋の明かりが、暗いカーテンから漏れている。
黄色がかった淡い光は、そこに獲物が潜伏していることを物語っていた。

なんて迂闊なんだろう、取り締まらなければ、罰を下さなければ。
嵐崎・キャラハン・蘭子(らんざき・−・らんこ/女子二十番)は
唇の端を吊り上げて一歩、また一歩、着実にその住宅との距離を縮める。

 ――そこにいるのは桜なの? 随分と無用心じゃない。
 そんなことしてたらママが怒り出しちゃうわ。ほぉら、こんな風に!

自身の背丈よりもはるかに長い物干し竿の端を両手で握り、
まるで薙刀を振るうように、遠心力を乗せた先端をガラス窓に叩き込む。
その一撃で、ガラスは砕けた。ガタリ、と頭上で何かが動く。
明かりの点った二階の部屋から、慌ただしい物音が聞こえてくる。
獲物が外敵の襲撃に、己の迂闊さに気付いたのだろう。
今更気付いても遅いのに。腹の底から笑いが込み上げる。

とはいえ、侵入経路はいまだ不完全。
ガラスを砕いた窓の枠組みは小さく、無理に潜り抜けようとすれば、
豊かな胸がつかえてしまうに違いない。

644あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:28:51 ID:7oHJZWik0
不意に、中学時代のことを思い出す。
『蘭子ちゃん、胸が大きくて羨ましい』――無邪気な笑顔で
そんなことを言ったクラスの女子を、蘭子は即座に叩きのめした。
お仕置きだ。罰だ。巨乳には巨乳の苦悩があることも知らず、
安易に羨ましいなどと口にするなんて。ママなら激怒するだろう。
だから、教育してあげたのだ。その子のママの代わりに、自分が。

いいことをした、と思っている。ママだって絶対、そうするはずだ。
なのに、思い出すと苛々する。何もかもすべてが気に入らない。
何でもいい、誰でもいい、壊したくて殺したくて仕方がない。

チアガールがバトンを回すように、蘭子は物干し竿を回転させる。
ステンレス製の棒に遠心力を乗せ、次々と窓ガラスに叩きつける。
ガタン、と再び頭上で鳴る。慌ただしい音が二階から聞こえる。
しかし、明かりは点ったまま。足音も物音も、
同じ場所を行き来するだけで、逃亡の気配はうかがえない。

パニックに陥っているのだろう。蘭子は声を上げて笑った。
無駄なのに。逃げられないのに。勝てないのに。生き残れないのに。
あたしがいるのはそこじゃないのに。見当はずれな動きばかり。
無駄なことをして無駄なことを思って無駄に身構えて無駄に抵抗して、
そういうの、ママは大ッ嫌いなのに。知らないなんて重罪、死刑。

大窓を叩き割りながら、蘭子は甲高い笑い声を上げた。

          □ ■ □

645あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:29:54 ID:7oHJZWik0
静寂の彼方から、風に乗って、何かの割れる音が聞こえた。
聞き覚えのある女生徒の笑い声が被さるように遠くで響く。

「くっ、嵐崎の奴……」

桜の双眸が、にわかに力を取り戻す。
暗がりを力なく眺めることしか出来なかった彼女の目が、窓の外に向く。

桜がいるのは、凛華に手を引かれるまま転がり込んだ住宅内の一室。
襲撃者を警戒して、明かりは一度も点していない。
つい今しがたまで、桜の心は無力感に覆われていた。
理不尽極まる蝶野の命令、役立てられない超能力、負傷による激痛、
そして、ろくに言葉を交わしたことのないクラスメイトから受ける手当て。
緊張した。沈黙が心にのしかかる。次第に自己嫌悪が強くなる。

それを破ったのが、蘭子だった。
蘭子の声を耳にした途端、心が活力を取り戻した。

 ――そうだ。弱腰になっちゃダメだ。出来ることを全力でやらなきゃ。

手当てを続ける凛華の指を退けるように、桜は無言で身じろぎする。
凛華が小声で桜を制する。その声は穏やかだが、芯の強さを感じさせる。

「有栖川さん、動かないで」
「嵐崎が暴れてるんだ。止めに行かなきゃ」
「だったらせめて、処置が終わってからにして」
「嵐崎の奴が、誰かを襲ってるんだ。あたしは助けに行きたい」
「気持ちは分かるけど、あと少しだけ我慢して。私も一緒に行くから」
「や、いい、ひとりで行く。あたし、嵐崎のことはよく知ってるから。
 早く止めなきゃ、誰かが殺されるかも知れない。
 怪我なんて気にしてる場合じゃないんだ、だから!」

痛む右腕をもう一方の手で庇いながら、桜は凛華から身を離す。

「有栖川さん、待って」

感情を抑えた凛華の声が、桜の背中に突き刺さる。
けれども桜は振り向かない。月明かりを頼りに暗い廊下を走る。
凛華の足音が追ってくる。踏み出すたびに、振動が傷の奥深くに響く。

 ――諦めちゃダメだ。あたしの体はちゃんと動くんだから。

そう自分に言い聞かせ、廊下を抜けて、再び外へ。

646あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:30:28 ID:7oHJZWik0
……桜は今、凛華に対して苦手意識を抱いていた。
性格が合わないわけではない。むしろ、好感を持てる方ですらある。

元々、桜は女子特有の粘着質なコミュニケーションが苦手だった。
一緒にトイレに行ったりだとか、相手の話に相槌を打ちまくるだとか、
そういう人付き合いの形に馴染めないものを感じていたのだ。
その点、凛華のパーソナリティは中性的で、自分に近いものがある。
もっとも親しい友人が男子生徒、という点も、ふたりの共通点と言えた。
また、生まれつき体が弱く、入院生活を送ることの多かった桜にとって、
負傷した腕を見ても取り乱すことなく手当てを買って出た凛華の姿は、
幼い頃より幾度となく自分を助けてくれた看護師を思わせ、心強い。

しかし、だからこそ桜は引け目を感じる。
対等な友人として接したいのに、どうすればいいのかが分からない。
相手が自分にしてくれたこと、自分の心にもたらしたもの、
それと同じだけのものを、どうすれば相手に返せるのか、
それが分からなくて身動きが出来なくて、息が詰まりそうになる。

そんな桜にとって、蘭子の横暴は渡りに船だった。
今の自分に出来ることがあるとすれば、それは蘭子を止めること。
そうすることで凛華を守り、蘭子に襲われている誰かも守る。

それに、蘭子自身についてもそう。蘭子を危険視してはいるものの、
邪魔だと思っているわけでもなければ、別に殺したいわけでもない。
蘭子のやり方には到底賛同など出来ないし、擁護するつもりもないが、
暴力という形でしか他人とコミュニケーションを取ろうとしない
彼女の姿を見ていると、関わりを持たずにはいられないのだ。

桜にとってそれは、一種の仲間意識だったのかも知れない。

          □ ■ □

647あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:31:11 ID:7oHJZWik0
おっす! オラ八十島秋乃(やそじま・あきの/女子十九番)!
たまたま上がり込んだ民家の一室で、オラ、パソコンを見つけたぞ!
よーし、これでオラの支給品・USBフォルダも大活躍だ!

まずは部屋の電気を点けて、パソコンを起動……っと。
どんなデータが入ってんのか、オラもうわくわく。
その時、庭先ですんげー音がした。誰かがオラに戦いを挑んできたんだ。
……げげっ! その声は、嵐崎・キャラハン・蘭子!
こりゃ、すげぇ虐殺になりそうだぞ。



   次回、自作キャラでバトロワ2nd

   『八十島秋乃、最大の危機!』

   絶対見てくれよな!



 ――って、ちっがああああああああああああう!
 そんなこと考えてる場合じゃない! しっかりしろ、私の頭!

脳内番組の次回予告に登場するキャラクターの声を振り払い、
秋乃は意識を聴覚に向ける。

648あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:31:58 ID:7oHJZWik0
階下で床板が軋んでいるのが分かる。
襲撃者の足音がこちらに近付いてくるのが分かる。
ドスッと鈍い音がする。鈍器のようなものが壁に叩きつけられる音だ。
そして、蘭子の笑い声。破壊活動を満喫しながら、ゆっくりと、
しかし確実に、蘭子はこの部屋との距離を縮めていく。

逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ――
みんな! オラに元気を分けてくれ!
脳裏ではついに本編が始まる。しかもクロスオーバー企画の特別編。
秋乃はシンクロ率120%で狭い室内を動き回る。
部屋中の家具を入り口付近に集め、バリケードを築いて襲撃者に備える。

おいおい、逃げちゃダメだ×3にシンクロしてる場合じゃないだろ、
ATフィールドを張ってる暇があるなら逃げろよ、ベランダから。
そんなツッコミを入れる者など、室内はおろか脳内にすらいない。

折り重なった家具の向こうから、階段を踏みしめる足音が聞こえる。
蘭子の笑い声が防壁を抜けて、こちらに近付いてくるのが分かる。
もっともっと、もっともっともっともっと守りを固めなければ、隠れなければ。
秋乃は窓辺に走り寄り、カーテンをさらに固く閉ざしてうずくまる。

ドン、と全身に衝撃が走る。一体何が起きたのだろう。
事態を把握出来ず、目を白黒させる秋乃の体に再び、ドン。
中でも特に、窓辺に接している部分に衝撃を感じる。
秋乃は気付く。ガラス戸が振動している。ガラスに何かが当たっている。
いや、違う。ベランダに誰かがいて、ガラスを外から叩いているのだ。

649あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:32:41 ID:7oHJZWik0
「あっははははははは、見ぃつけた!」

扉一枚隔てただけの場所で、蘭子が無邪気に笑っている。
バリケードの向こうで、ドアノブががちゃがちゃと音を立てる。
心臓が早鐘を打ち、口の中がからからに乾く。鍵はかけた。でも――

生木を引き裂くような音を立て、衝撃が木製のドアを揺るがす。
蘭子が扉を蹴っている。笑いながら、罵りながら、何度も何度も蹴りつける。
その余波で、机の上に乗せた椅子が滑り落ちて床を揺るがす。
ドアは破られてなどいないのに、バリケードが先に崩れていく。

ドン、と背後でガラスが揺れる。誰かが再び戸を叩く。
恐怖で身体が動かない。声を出すことすらままならない。
二人の襲撃者に挟まれているのに、逃げ場がどこにも見つからない。
蘭子を阻む木製のドア、その上部に設けられた採光用の小さな窓、
そこに嵌った曇りガラスが、乾いた音を立てて砕け散る。
代わりに現れたのは見覚えのある赤毛、続いて蘭子の大きな目。
淡い色の瞳がきょろきょろと回り、秋乃を捉えて動きを止める。

「なぁんだ、桜じゃないんだ。ぶぅー、つまんないのー」

助かった。秋乃の胸に光が灯る。事情はまったく読めないが、
少なくとも自分は蘭子のターゲットからは外れていたらしい。
芽生えた希望に応えるように、蘭子が可愛らしくクスクスと笑う。

650あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:33:31 ID:7oHJZWik0
「そこで待っててね、秋乃。今行くから。すぐに終わらせてあげるから」

再びドアが衝撃に震える。積み上げられた家具が余波で軋む。
背後で誰かがガラス戸を叩く。何度も何度も何度も叩く。
もうダメだ、私は死ぬんだ、同じクラスの生徒に殺されるんだ、
やりたいこともいっぱいあるのに、会いたい人もいっぱいいるのに、
もう叶わないんだ、蝶野先生はどうしてこんなことをするの、
生徒の未来を犠牲にしてでもしなきゃいけないことって何なの、
先生はそんなに麓山さんのことが――その時だった。

「嵐崎! あたしと勝負しろ!」

離れた場所で、下の方で、有栖川桜の声がした。
蘭子の視線が自分から外れる。しかし、立ち去るには至らない。

「嵐崎! そこにいるんだろ! あたしと勝負しろ!」

蘭子はその場から動かない。背後で誰かがガラス戸を叩く。
まるで焦りを帯び始めたように、音は大きく、激しくなる。

「あたしと勝負出来ないのか? おまえ、ホントは怖いんだろ!」

舐めやがって。蘭子が憎々しげに吐き捨てた。
しかしその場からは動かない。桜の挑発はさらに続く。

「あたし、知ってるぞ。おまえがホントはすごい臆病者だってこと。
 臆病だからそうやって、すぐに暴力を振るって暴れて、
 必死になって自分を強く見せようとするんだ。違うか?」
「……桜、てめぇ……」

廊下で鈍い音が上がる。蘭子が怒りに任せて壁を蹴ったのだ。
そう、壁を。この部屋に通じるドアではなく、廊下の壁を。
それは彼女の殺意が秋乃から外れたことを意味していた。

「……ブッ殺してやる!」

蘭子の足音が遠ざかる。勢いよく階段を駆け下りるのが分かる。
ガラス戸を隔てたすぐそばから、見知った女生徒の声がする。

「お願い、ここを開けて! 私は不動院よ、あなたを助けに来たの!」

          □ ■ □

651あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:34:11 ID:7oHJZWik0
時は遡る――

桜が凛華に追いつかれるのは時間の問題だった。
運動部所属とはいえ幼い頃から病気がちで、怪我を負った身である桜と、
陸上部所属で長距離走を得意とする無傷の凛華。
ふたりのスタミナは、比較するまでもなかった。

とはいえ、凛華は桜を無理に連れ戻そうとはしなかった。
凛華もまた、蘭子とその相手のことが気がかりだったのかも知れない。
放心している桜に事情も聞かず、手当てを買って出たくらいだ、
死傷者が出かねない状況を見過ごすことなど出来ないのだろう。

簡易的な止血処置を行ないながら、蘭子の声に向かって歩く。
目指すべき場所はすぐに分かった。笑い声の聞こえる方角を見ると、
二階の一室に明かりの点った家があるのが遠目でも確認出来た。

近付くと、窓辺で人影が動いた。
その背格好は女子のように見えるが、誰なのかまでは判らない。
何をしているのだろう。蘭子の声と彼女の立てる物音は、一階から聞こえる。
ガラス戸を開けてベランダに出れば、塀を伝って逃げ出せるのに、
人影は右往左往するばかりで部屋から逃げ出そうとはしない。

 ――右腕がこんな状態じゃなかったら……。

桜は無言で歯噛みする。
彼女の右手は今、使い物にならない状態だった。
物を握ることはおろか、指一本動かそうとしただけで、
耐えがたい激痛に見舞われる。凛華の見立てによれば、
骨にヒビが入っているかも知れないとのことだった。

652あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:34:46 ID:7oHJZWik0
桜は塀を、ベランダを見上げる。
体操部所属の彼女の運動能力でなら、簡単に辿り着ける場所だ。
しかし、それは腕に怪我をしていなければ、の話だった。
ベランダを睨みつける桜に、凛華が小声で話しかける。

「有栖川さん、ここで待ってて」
「何するつもりなんだ……」
「ベランダから助け出すわ。嵐崎さんが来る前に」
「そういうことなら、あたしも手伝う」
「いいの。私ひとりで大丈夫。有栖川さんはここにいて」

言い終わるや否や、凛華は塀に手をかけて、頭上より高く跳ね上がった。
猫のようにしなやかな身のこなしで、塀からベランダへと飛び移る。
凛華がガラス戸をノックすると、人影の全身がビクッと跳ねた。
しかし、それ以上は動かない。人影はカーテンを開けようとしない。
蘭子の声が移動する。階段を踏みしめる足音が聞こえる。
凛華はノックを繰り返す。けれども人影はカーテンを開けない。
蘭子に聞かれることを警戒してか、凛華は言葉を発しようとしない。

 ――クソッ、あたしに出来ることは何もないのか……?
 超能力も運動能力も役に立たない、しかも声も出せないとなると――

そこまで考えて、ひらめいた。
声を出せば、蘭子に気付かれる。
ならば、この状況を逆手に取ればいいのだ。

凛華に察知されぬよう、忍び足で玄関方面に回り込む。
扉を開けると、吹き抜けの玄関の向こうに螺旋階段が見えた。
この上に、蘭子がいる。何かを蹴りつける音と蘭子の笑い声が聞こえる。
姿の見えない宿敵に向かって桜は叫んだ。

「嵐崎! あたしと勝負しろ!」

          □ ■ □

653あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:35:20 ID:7oHJZWik0
「鍵がかかっているわ……」

玄関扉の取っ手から、凛華はそっと手を離す。
この家の中に、桜と蘭子がいる。助けに行かなければ、と思う。
「あたし、嵐崎のことはよく知ってるから」と桜は先ほど言っていたが、
あれほど挑発したあとだ、今の蘭子の凶暴性は
桜の手に負えないレベルまで達しているだろう。

現に、聞こえてくるのは蘭子の笑い声と、そして桜の悲鳴ばかり。
一刻も早く助けなければ。凛華は振り返り、秋乃に問う。

「八十島さんの支給品は?」
「あ、ああ、私……私、私は……」

秋乃は声を震わせながら、デイパックの中を覗き込む。
やがて、弾かれたように顔を上げ、隣家の二階を指差した。
さっきまで彼女のいた部屋だ。今も明かりが点いたままになっている。
あの部屋に支給品を置いてきてしまった、と言いたいのだろう。
秋乃は今にも泣き出しそうな顔で、縋るような目でこちらを見ている。
彼女の精神はまだ、恐慌状態から抜け出していないようだ。

 ――仕方ないわ。怖い思いをしたばかりだもの。

安全な場所で休息させたいと思う。しかし、ひとりにはさせられない。
秋乃の神経は今、きわめて過敏な状態にある。
つまり、何の害にもならないような些細な物事に過剰反応し、
誤った行動を取りかねない、ということだ。
なら、多少の危険が伴っても、目の届く場所に置いておく方がいい。

視線を落とすと、秋乃の膝がかすかに震えているのが見えた。
履いている靴は、軽い運動に適した歩き易そうなものだ。
ベランダから脱出したとき、秋乃は裸足のままだったが、
動けない彼女の代わりに凛華が玄関まで靴を取りに行ったのだった。

「……他の入り口を探すしかないわね。
 八十島さん、ゆっくりでいいから私について来て」

          □ ■ □

654あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:35:57 ID:7oHJZWik0
……あたしは無力だ。
超能力も運動神経も料理の腕も、今はまったく使い物にならない。
特別な能力があっても、人とは違うことが出来ても、
こんなときに役立てられなきゃ意味がないのに。

この首輪を嵌められたときも、抵抗ひとつ出来なかった。
鉄の塊で命を脅かす蝶野に対して、文句ひとつ言えないまま、
今、蘭子に殺されようとしている。

でも、なんだろう。何かを忘れているような気がする。
何か、とても重要なことを。何か、とても恐ろしいことを。
でも、それが何なのかが分からない――

…………
……

655あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:36:36 ID:7oHJZWik0
自分の名を呼ぶ凛華の声、ベランダの向こうから聞こえる声が、
桜にはまるで別世界の物音のように感じられた。

体が動かない。蘭子にのしかかられ、身動きを封じられてしまった。
抵抗はした。持ち前の柔軟性を利用して、関節技から何度も逃れた。
しかし、怪我を負った腕を狙われては、どうすることも出来なかった。
激痛のあまり声も出せず、ただ身悶えているうちに、こうして自由を奪われた。

「ふぅん、これが桜の支給品……」

ぼんやりと狭くなった視界の片隅で、上機嫌な蘭子が
デイパックの中からペンのようなものを取り出したのが見えた。
彼女が漁っていたデイパックは、桜から奪い取ったものだ。
彼女は既に勝者の顔で桜の所持品を貪っていた。

「あたし、こんなの初めて見た。ねぇ桜、これは何?」
「説明書、入ってる……」
「あたし、そういうの読みたくない。桜が説明しなさいよ」
「……ガラスを切る道具……」
「これが? 刃なんてついてないじゃない」
「刃で切るんじゃない……。表面に傷を付けて、割れやすくする……」
「面倒だわ。ガラスを割りたいなら、殴ればいいのよ」

パンがないならケーキを食べればいいじゃない、
とでも言いたげな蘭子の様子に、桜は思わず失笑しそうになる。

656あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:37:28 ID:7oHJZWik0
桜への支給品は、破壊のための道具ではない。創造のための道具だ。
ガラスや鏡を任意の形にカットすること。そのために用いる道具だった。
とはいえ、単体では使い物にならない。液体油が必要なのだそうだ。
しかし、先ほど入った住宅には、植物油の一本もなかった。
たとえ創造のための道具でも、このような場に持ち込まれては、
そして蘭子の手に落ちては、凶器にしかなり得ないだろう。

けれども蘭子はさしたる興味も示さずに、
鉄のペン軸を思わせるそれをデイパックの中に戻した。

「ってゆーか、蝶野もセンスない。ケータイくらい持たせればいいのに」
「……外部に連絡、されたくないんだろ……」
「小心者。誰かが来る前に決着つけるもん」
「……おまえ、何怒ってんだよ……」
「だって……」

蘭子がクスクスと笑い出す。唇の両端が釣り上がる。
掘りが深く、それでいて幼い顔立ちが、みるみる悪意に歪んでいく。

「ケータイがあれば、桜の姿を荻矢に見せてあげられるもん」
「……おい、なんでアイツの名前が出てくるんだよ……」
「だって荻矢、桜のことが好きなんだもん」
「そんなわけ、ないだろ……」

悪質な冗談の類いにしか思えない。しかし、言葉に力が入らない。
鹿狩瀬荻矢とは友達同士、彼が自分を異性として見ているなんて有り得ない。
一体こんな自分のどこがいいのか。付き合いは悪いし、女らしくもないし、
大体、可愛い子ならクラスにいくらでもいるのに。有り得ない。絶対ない。
それに、蘭子よりも自分の方が、鹿狩瀬については知っている。
だから「そんなわけない」と言い切れる。蘭子の話は間違っている。
そう思っているはずなのに、胸の鼓動が激しくなる。

657あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:38:03 ID:7oHJZWik0
「桜、知らなかったんだ。いつも一緒にいたのに、気付かなかったんだ。
 荻矢って、桜の前では態度が全然違うのに。
 あんなにあからさまなのに、桜は何も気付かなかったんだ」

蘭子の無邪気な笑い声が、桜の胸に突き刺さる。
そんなわけない、と言いたかった。
おまえに鹿狩瀬の何が分かるんだ、と言いたかった。
しかし言えない、彼について知らなかったのは自分の方だと思えてならない。

……鹿狩瀬には、不可解な一面があった。
たまに、言動が一致しなくなる。わけのわからないことで不機嫌になる。
どうして鹿狩瀬がそうなのか、桜にはどうしても分からなかった。
でも、蘭子の言葉が真実だと仮定すると、不可解な言動の謎が解ける。
乾いた大地に水がしみ込んでいくように、納得が桜に浸透する。

 ――そうか、鹿狩瀬はあたしのことを……。
 え、でも待て、待って、そうだとしたらあたしって相当無神経じゃないか!
 あたし、鹿狩瀬の内心を知らずに、そういうのはおかしいとか言いまくってた。
 鹿狩瀬が不機嫌になる理由も知らずに。なんでおまえはそうなんだ、とか。
 どうしよう。あたし、相当嫌なやつだ。鹿狩瀬に嫌な思いをさせてたんだ。
 あたし、どうしよう。どんな顔をして鹿狩瀬に会えばいいんだ……。
 鹿狩瀬になんて言って謝ればいいんだ……。っていうかこれって、え、あ、
 あたし、鹿狩瀬と付き合うことになるの? どどどどどうしよう……。

蘭子がまた、笑っている。楽しそうに笑っている。
人の苦悩がそんなにおかしいのか、と普段の桜なら抗議するだろう。
しかし今の彼女には、黙って暗がりに視線を落とすことしか出来ない。

「あはは、その顔。ケータイがないのがホント残念。
 テレビ電話で荻矢に見せてみたいのに。
 動画に撮って、時間差で送りつけるっていうのも面白そう。
 でも、もっと楽しそうなのは、やっぱり――」

658あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:38:37 ID:7oHJZWik0
蘭子は少しだけ腰を浮かせ、桜のスカートをたくし上げた。
そのまま下着に手をかけると、一気に膝までずり下ろす。
下半身に流れ込む外気の冷たさが、桜の意識を現実に戻した。

「な……、何考えてんだ、この変態!」
「だってパンツが邪魔なんだもん。パンツが邪魔で入れられないんだもん」
「……は?」
「物干し竿。桜のアソコに入れるの。奥の奥の奥まで刺し込むの」
「アホか! 入るわけないだろ変態!」
「入るよ。死んじゃうけどね」

再び蘭子の体重が桜の身体を圧迫する。動けない。
右手はまったく使い物にならず、左手はそんな利き腕を庇うのに精一杯。
蘭子は大ぶりの物干し竿を片手で自在に操っている。
金属製の竿の先端を覆うプラスチックのキャップが陰部に触れる。

「このまま串刺しにして殺してあげる」
「や、やめろ!」
「ケータイがないのがホントに残念。荻矢に見せてあげたいのに。
 大好きな桜の処女喪失から死まで、みんな見せてあげたいのに。
 荻矢、どんな顔するかな。大好きな桜をあたしに取られて。あはは」
「おまえ、頭おかしいだろ!」
「あはは、桜はママにならなくていいのに、どうしてそんなに怒ってるの?
 桜はママにならなくていいのに。子宮をぶち抜いて殺してあげるのに」
「嫌だ、やめ、やめて……」

659あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:39:08 ID:7oHJZWik0
狂ってる。殺される。桜はとっさに左手を伸ばす。
手が届けば、物干し竿に指が触れさえすれば、超能力を発動出来る。
超能力で操った不安定な磁力を金属にぶつけ、発熱させることが出来る。
そうすれば、蘭子は熱さに耐えかねて、ステンレスの凶器を手放すだろう。
だが、届かない。上半身を押さえつけられていて。蘭子の体が邪魔をして。

「暴れないで! 入らないじゃない!」

蘭子は桜の胴に肘鉄を打ち込み、竿の先端を強引にねじ込もうとする。
けれども挿入には至らない。蘭子には正確な場所が分からないのだろう。
あらぬ方向に力がかかり、不自然な痛みに桜は思わず悲鳴を上げる。
純潔こそ保たれてはいるものの、蘭子の横暴は、先を丸めた棒で
神経の寄り集まった皮膚に穴を開けようとしているも同然だった。
痛みから逃れたい一心で、桜は本能的に手を動かす。

 ――金属が……、何か、金属さえあれば……。

自分に覆い被さる蘭子の視線が、顔と下腹部を往復している。
幼く形の良いその口元が、再び歪み、釣り上がる。
クソ、あたしが痛い思いをするのがそんなに楽しいのかよ。
悔しくて腹立たしくて仕方がない。あたしはこんなやつに殺されるのか。
嫌だ。絶対に嫌だ。まだ鹿狩瀬に謝っていないのに。桜はあがいた。
しかし、いくら手を伸ばしても、何ひとつとして掴めない。

喜びに歪んでいく蘭子の口元が忌々しい。
数センチ下には、黒い首輪が見えるのに。この差は一体何なんだ。
自分と同じ、鉄の首輪で、蝶野に命を握られている者同士なのに――

660あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:39:48 ID:7oHJZWik0
 ――鉄の、首輪……?

そうだ! 考えるよりも先に手が動く。見えない力を操りながら。
指先が蘭子の首輪に触れる。冷たい鉄に高熱を与える。
これで助かる。助かるはずだ。だが、蘭子の表情は変わらない。
笑いながら桜を見下ろし続ける。どうして? まさか、この首輪には通じない?
胸の奥底に冷たい何かがゆっくりと浸透していく。それは絶望だった。
もうダメだ。桜の気力が萎えていく。あたしは、本当に、無力なんだ。
心の底からそう思いそうになったとき、蘭子の身体がのけぞった。

「ああッ、熱い! 熱い、なんなのこれ!」

蘭子が床を転げ回る。悲鳴を上げ、罵声を吐き、両手で首をかきむしる。
髪や肌や肉の焦げる不快な匂いが桜の鼻腔にうっすらと絡みついてくる。
どうしよう。桜は恐怖に凍りつく。どうしよう。蘭子から視線を外せない。
どうしようどうしよう。何も考えられない。どうしようどうしようどうしよう。
今しがた自分が殺されそうになったことすら、遠い昔の出来事のようだ。
これまでにないスピードで心臓が早鐘を打っているのが分かる。
自分の血液が全身を流れる砂嵐のような音まで聞こえる。

蘭子がゆっくりと起き上がる。耳障りな悲鳴を上げながら。
己の頭を乱暴に揺さぶり、ぐるぐると回転させながら。
蘭子は足をもつれさせながら部屋の中を行き来する。
熱を打ち消そうとするかのように、頭を、体を、何度も壁に叩きつける。
淡い色の大きな目が、乱れた赤毛の合い間で光る。その目が再び桜を見た。

661あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:40:26 ID:7oHJZWik0
「くぅ、桜……、こんな首輪、ブッ壊してやる!」

蘭子は両手で首輪を掴み、力任せに引っ張った。
肉の焼ける音がする。甲高い電子音が鳴り響く。死の予兆が鼻腔にまとわりつく。
蘭子がガラス戸を突き破り、ベランダの柵に背を打ち付ける。
それでも彼女は両手を首輪から離さない。電子音がひときわ高く響く。

「ママ! ママ、あたしの首輪を外して、ママ!」

その刹那、蘭子の首輪が爆発し、ちぎれた血肉が宙に舞った。
鎖骨から上を失った体が何度か跳ね上がり、崩れ落ちる。
まるで壊れたポンプのように、鮮血をあたりに噴き出しながら。

桜は動けない、声も出せない。
恐怖に凍りついたまま、死体から目を反らせない。

この“殺人”を法で裁くことは、困難を極めるに違いない。
脅迫されて殺し合いを強いられるという特殊な状況下での、正当防衛。
加えて、超能力という非科学的な手段。
超能力で磁場を操って首輪を発熱させ、首輪内の基盤や配線を壊し、
爆発に至らしめたことを立証するなど、まず不可能だろう。

だから、法的には『白』だ。
桜が蘭子を殺したという証拠は存在しない。

しかし、激しく脈打つ心臓の鼓動が、何よりも雄弁に語っている。
一人の人間を、その未来を、この世から消した事実の重さを。
その重みに、自分が恐怖していることを。
たとえ法が見逃しても、自分の中から罪が消えることはないのだと、
耳を聾さんばかりに早鐘を打ち続ける自身の脈動が告げていた。


【女子二十番:嵐崎・キャラハン・蘭子 死亡】
【残り30人】

          □ ■ □

662あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:41:07 ID:7oHJZWik0
血の雨が降っている。二階のベランダから、蘭子の血が地に滴り落ちる。
付近の植え込みには、血肉や歯、そして赤毛が絡まっている。
さかさまになって鎮座する顔、口から下を失った蘭子の頭部だ。
見開かれた淡い色の瞳は、虚空を見据えたまま微動だにしない。

凛華はTシャツの上に羽織っていた薄手のカーディガンを脱ぐ。
遊びを我慢して家業を手伝い、欲しいものを我慢して小遣いを貯め、
ようやく買った憧れのアパレルブランド物、お気に入りの一着だった。
しかし、惜しんでなどいられない。凛華はその場に身を屈め、
熱を失った蘭子の首輪をカーディガンで包み込む。
破損した鉄の輪には人間の肉片が付着しているが、さほど気にならなかった。

……不動院凛華は猟奇的なものを好む類いの人間ではない。
クラスメイトだった蘭子の凶行や死にはショックを受けているし、
生徒に殺し合いを強いる蝶野に対しては憤ってもいる。
ただ、彼女はグロテスクなものに対する耐性が人より少しだけ強かった。

それは、両親の経営する動物病院の手伝いをすることで得たものだった。
怪我を負い、病を患う動物の姿を通じて凛華は知った。
生命とは決して美しいものだけで成り立っているわけではない。
表皮に覆われているグロテスクなものすべてが
あるべき形で機能して初めて、健康でいられる。普通でいられる。
そして、表皮の向こう側と真正面から向き合う人々のお陰で
自分たちは快適に、そして便利に生きられるのだ、と。

だから、今は、それを知っている自分が皆のために動かなければ。
それが、ひとりでも多くの級友と共に生還することに繋がるのだから。
そう信じているからこそ、首輪の回収にも迷いはなかった。

凛華は桜や秋乃のもとへ戻るべく、リビングのガラス戸を開ける。

663あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:41:43 ID:7oHJZWik0
鍵を破ったのは、彼女自身だった。
内鍵付近のガラスを庭石で砕き、そこから手を入れて開錠した。
空き巣がよく使う手口、テレビの防犯番組で知った方法。
誰のものかも知らない家に、凛華は土足で上がり込む。
いつ何時、どのような場所から外に出る羽目になるかも分からないから
靴は体から離さない。桜や秋乃にもそうさせている。

凛華は彼女たちの待つ洋間のドアを開ける。
しかし、そこにいたのは桜のみ。秋乃の姿は見当たらない。

 ――八十島さん、トイレかしら……?

確認しようと思ったが、尋ねても答えはないだろうと考え直す。
桜の様子は、凛華が出て行く前と比べて何も変わっていなかった。
ソファの上で膝を丸め、虚ろに宙を眺めている。
短くカットした黒髪は乱れ、肩を包むタオルケットは今にも滑り落ちそうだ。

しかしそれも自然な反応だと凛華は思う。
蘭子の死んだ部屋に踏み込んだとき、桜の下半身は裸だった。
デリケートな問題なので詮索は避けたが、その場の状況から、
蘭子の仕業であることは明白だった。
変態、やめろなどと蘭子を罵る桜の声は、外にいた自分たちも聞いている。
その上、蘭子のデイパックから見つかった個別支給品の矢は、
桜の腕に刺さっていたものとまったく同じだった。

つまり桜にしてみれば、自分を傷つけ、生命と貞操を脅かした相手が
不可解かつショッキングな形でこの世から消えた、ということになる。
自分を極限まで追い込んだ相手を一撃で粉砕する理不尽な力が存在し、
しかもその殺人装置は自分の首にも密着していて、いつ発動するか分からない。
助かって良かった、の一言で簡単に片付く話ではないだろう。

664あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:42:24 ID:7oHJZWik0
桜には、休息が必要だ。とはいえ、生き延びなければ、
ここから生還しなければ、その休息も無意味になる。
だから、無理をしてでも前を、上を向かなければならない。
聞いていないかも知れない、と思いつつ、凛華は事務的に報告する。

「嵐崎さんの首輪は回収したわ」

桜の瞳がわずかに揺れた。
自分の言葉に桜が反応した、という事実に、
凛華はかすかな希望を見出す。

「……ベランダの様子は下からも見えたわ。
 嵐崎さん、力ずくで首輪を外そうとしていた。爆発の原因は多分それね。
 蝶野先生は何も言っていなかったけれど、この首輪、
 無理に外そうとすれば爆発する仕組みになっているのだと思う」
「……あ……」

桜がか細い声を出した。普段とは別人のような、弱々しい声だった。
桜はゆっくりと顔を上げ、虚ろな視線を凛華に向ける。
唇が震えた。何か伝えたいことがあるのだろうか。凛華は待つ。
乾いた唇がゆっくりと開く。しかし、そこから漏れるのは空気のみ。
桜は凛華から視線を外し、また、宙に視線を彷徨わせる。

665あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:43:06 ID:7oHJZWik0
 ――仕方ないわ。今は私が希望を作るしかない……。

そう自分に言い聞かせ、凛華は先ほどの続きを話す。

「……強引に外そうとすれば、爆発する。
 それってつまり、首輪を外すには所定の手順が必要ってことよね。
 逆に言うと、その手順が分かれば私たちの首輪も外せる……。
 宗一が……あ、穂積君のことだけど、分かるわよね?
 穂積君は機械に詳しいの。自分でゲーム機を修理したりしてたわ。
 だから、穂積君と合流すれば、首輪もどうにか出来ると思うの」

桜が再びこちらを見た。良かった、私は希望を生み出せた。
強張っていた自分の表情が穏やかになっていくのが分かる。
胸に灯った希望を桜にも伝えたくて、凛華はそっと微笑んだ。

「もう大丈夫よ、有栖川さん」

桜は唇をわななかせ、頭をかすかに横に振った。
凛華には分からない。何を訴えたいのだろう。何を否定したいのだろう。
桜は何故、こんなにも辛そうな、悲しそうな顔をするのだろう。

彼女は言葉を発する代わりに涙を一筋、静かに流した。

666あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:43:41 ID:7oHJZWik0
【B-4 住宅内/一日目・黎明】

【女子二番:有栖川桜〈ありすがわ・さくら〉】
【1:あたし(達) 2:お前(ら) 3:お前(ら)、名字、下の名前呼び捨て(ら)】
[状態]:右腕を負傷(外傷、静脈損傷、骨に軽いヒビ:止血処置のみ)、
    全身に打ち身・擦り傷(軽度)、ショック、精神的疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、オイルカッター、オイル注入用のスポイト
[思考・状況]
基本思考:どうしよう…あたし…
0:蘭子を殺したことは墓まで持って行かなきゃ…
1:鹿狩瀬に謝りたい…
2:どんな顔で鹿狩瀬に会えばいいんだ…
3:多聞、春日、神楽(警戒対象)にも、あたしは…?
[備考欄]
※激痛のため、右腕の自由が利きません。
※骨にひびが入っているため、腕が腫れています。
※超能力で発熱させるには、対象に直接触れる必要があります。


【女子十六番:不動院凛華(ふどういん・りんか)】
【1:私(達) 2:あなた(達)、名字+さんor君 3:皆、名字+さんor君(達)】
[状態]:健康、グロ耐性(強)
[装備]:軍用クロスボウ
[道具]:基本支給品、骨洞芙蘭のカツラ
    嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪(破損、爆発済み)
    クロスボウ専用の矢(10/12)
[思考・状況]
基本思考:一人でも多くのクラスメイトと共に生還する。
0:有栖川桜をしばらく休ませる。
1:桜が落ち着いたら二人でB-6の診療所に向かう。
2:嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪を調べる。
3:宗一がいれば、首輪の構造も分かるのに…
4:隣家の二階の電気、消した方が良さそうね…
5:八十島さん…トイレにしては長いわね。
[備考欄]
※有栖川桜に超能力があることは知りません。
※蘭子の首輪の爆発は、無理に外そうとしたことが原因だと考えています。
※クロスボウは、威嚇(自衛)の目的で所持しています。
※幼馴染の穂積宗一のことは下の名前で呼びます。

667あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:44:15 ID:7oHJZWik0
[共通備考]
※隣の住宅の二階の一室にUSBフォルダが放置されています。
 また、その部屋の明かりは点けっぱなしになっています。
 ただし、部屋の扉は施錠されており、
 家具によってバリケードが築かれているので、
 ベランダからでないと侵入は困難です。


【支給品紹介】

●オイルカッター

任意の形状にガラスをカットするための工具。オイルを注入して使う。
大きさはボールペンサイズ、金属製で重みがある。
作中で蘭子が「刃なんてついてないじゃない」と言っていたが、
実際には回転式の小さな刃(数ミリ程度)がついている。

ガラスは表面に傷を付けると、わずかな衝撃で簡単に割れる。
その性質を利用した工具だが、無論、シンプルな形状のほうがカットしやすい。


●骨洞芙蘭のカツラ

女子高生テロリスト・骨洞芙蘭が通学時に着用しているカツラ。
髪型は、黒髪ボブカット。髪質は、癖のないストレート。
特殊な効果や仕掛け等があるか否かは不明です。



          □ ■ □

668あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:44:46 ID:7oHJZWik0
自分の立てる足音が、やけに大きく感じられる。
闇夜に響く柔らかな靴音が不安を掻き立て、孤独をあおる。
走っても走っても、その音を振り払うことは出来ない。
走れば走るほど、その音は自分を追い詰める。
それでも走らずにはいられない。理屈ではない。怖いのだ。

ガラス戸を突き破ってベランダに転げ出た蘭子の頭が吹き飛ぶのを見た。
首輪が突然爆発したのだ。誰も、スイッチなど押していないのに。
それどころか、蘭子はずっと、蝶野の命令に従っていたのに。

何故だろう。何が起きたのだろう。怖くて怖くて仕方がない。
ある日突然何の理由もなく爆発するような制御不能の危険物が
自分の首に巻きついている。嫌だ。怖い。誰か助けて!
そう叫びたいが、それは言えない。助けてくれる人すら怖い。

どうして凛華は平気でいられるんだろう。
どうして凛華はあんなグロテスクな死体の近くに行けるんだろう。
顔色ひとつ変えず、当たり前のように行動出来るなんて。
もしかして凛華は人の死に、無残な死に慣れているのだろうか。
もしかして凛華は既に人を殺しているのだろうか。
あんなに冷静でいられるなんて、凛華には殺人鬼の素質が――

 ――違う! なんてこと考えるの。しっかりしろ、私の頭!
 凛華は私を助けてくれたのに。殺人鬼のはずなんて、ない……。

頭では、そう思える。けれども恐怖が心を覆う。
首輪が怖い。凛華が怖い。蝶野先生が分からない。
先生は大人で物知りで正しい人だと思っていたのに、どうして!

明かりの消えた見知らぬ町を秋乃はひとり、疾走する。
とにかく遠くに行きたかった。何もかもすべてを捨て去りたかった。
息が苦しい。肺が冷たい。それでも秋乃は走り続ける。
身体の痛みがこの恐怖を塗り潰してくれることを期待して。

669あたしが殺した ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:45:29 ID:7oHJZWik0
【B-5 住宅街/一日目・黎明】

【女子十九番:八十島秋乃〈やそじま・あきの〉】
【1:私(達) 2:下の名前呼び捨て(達) 3:皆(皆)】
[状態]:恐怖、不安、混乱、精神的疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの撃破。
0:蘭子の首輪が突然爆発したことを誰かに伝えたい。
1:この恐怖を誰かに分かってほしい。
2:不動院凛華に対する恐怖。
3:蝶野先生…どうして…
4:ここから逃げたい…
[備考欄]
※麗山への復讐を蝶野がしたいと考えています。

670 ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:49:34 ID:7oHJZWik0
投下は以上で終了です。
大変遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

原作小説はホラー系の文芸賞に投稿された作品なので、
今回のSSはホラーものを少しだけ意識して書きました。
次回はまた違った毛色の作品にしたいと思っています。

671 ◆CUPf/QTby2:2010/12/08(水) 16:50:08 ID:7oHJZWik0
三木清葉、上原鞠愛、砂野夕璃菜で予約します。

672テストしたらば名無しさん:2010/12/08(水) 21:18:19 ID:I3oi94agO
投下乙です。
遂に…ようやく女子が死んだ…
神楽達もこれで報われるだろう…

凛華…穂積死んでるんだよ…
放送聞いた時に、凛華とついでに周斗もどうなってしまうのか…

あきのーんっ!
落ち着け漫画脳!
あっちには不良とお団子がーっ!



そして桜…(´・ω・`)
気の毒にな…
鹿狩瀬も死んでるし…
あーあ…

673テストしたらば名無しさん:2010/12/08(水) 21:54:52 ID:lYpGAcPo0
投下乙!
マーダーは退場したけれど、残された面子の精神状態が凄く危うい……
天草と水原が同じ風紀委員の嵐崎の死をどう捉えるのかも気になりますな。

674 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:12:03 ID:yROZOFZo0
予約パートのSSを投下します。

675Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:12:41 ID:yROZOFZo0
本が好き。人と接するよりもずっと、僕は本を読むのが好き。
でも、「人が本を読むのは、自分の知らないことを知りたいからだよね」
って言われたときは、「え?」って思った。知らなかったんだ。
そういう解釈の方が、一般的で普遍的なんだってことを。

僕が読書を好むのは、そこに自分がいるからなんだ。

幼い頃からずっと、僕には違和感があった。疎外感があった。
その原因の根底にあるのは、僕自身のセクシャリティなんだと思う。

僕は、生物学的には、両性具有ってことになっている。
僕の体は男性と女性、両方の機能を備えているから。
でも、容姿自体は女の子っぽい。黙っていれば、まず女子だと思われる。
そのくせ、頭の中は男子っぽい。僕は女の子に興味があるんだ。

自分は“みんな”と違う、“普通”じゃない、どこかおかしい――
幼い頃から、僕にはそんな自覚があった。そして、誰かと仲良くなれば、
相手もいずれ僕のそういう部分に気付くんだってことを学んだんだ。

だから僕は、人とのかかわりを避けている。
女の子に対する興味はあるけど、付き合いたいとは思わない。
だって怖いもん。僕の『おかしな部分』を知られるのが。
好きになった子が、仲良くなった子が、“普通”じゃない僕の姿を知って、
嫌な顔をしたり、去っていったりするのが。
そんなことを恐れながら人と付き合うのは疲れる。僕はひとりの方が楽なんだ。

676Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:13:20 ID:yROZOFZo0
本を読んでいると、孤独感が紛れて安心する。
大衆小説、ラノベ、純文学、ノンフィクション、学術書――みんな好き。
だって、そこには僕がいるから。僕の心が書かれているから。
僕の思い、僕の感情、僕の悩み、僕の孤独、それらはとてもありふれたもので、
昔からずっと、様々な国の人が抱えていたものなんだって実感出来るから。

だから、僕は本が大好き。大人になったら、本を書きたい。
恋人は要らない、子孫も要らない、“普通の幸せ”は望まない、
その代わり、自分の書いた本を後の世に残したい。

それが僕、三木清葉(みき・きよは/男子十九番)の夢だった。

…………
……

G−2エリア/モーテル客室内、午前1時――

しん、という音が聞こえるほど、辺りは静まり返っている。
つい数時間前にクラスメイトふたりが無残な死を遂げたばかりだなんて、
そして今はこの島で殺し合いが行なわれているなんて、嘘のようだ。

馴染みのないモーテルの内装が、ますますそう錯覚させる。
自分は今、ひとりで見知らぬ土地を訪れているだけで、
自宅に戻ればまた、いつもどおりの学校生活が始まるのではないか。
最強堂も安佐蔵も、何事もなかったようにそこにいるのではないか。
そんな空想をつい、信じてしまいそうになる。

けれども首に嵌った異物が彼に、清葉に現実を思い出させる。
最強堂を殺した爆薬入りのあの首輪が、自分の首を圧迫しているのが分かる。
空気の玉が詰まっているような違和感を喉の奥に感じるのは、
物理的な刺激のせいか、それとも恐怖による緊張のためか。

677Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:13:55 ID:yROZOFZo0
明かりの消えた客室で、清葉は執筆に没頭する。
壊すことの出来ない現実に背を向け、自らの世界を創造する。
彼は、小説を書いていた。基本支給品の筆記具で。客室備え付けのメモ用紙に。

優勝出来るとは思わない。心身ともにヘタレだと自認しているから。
生還出来るとは思わない。誰かと協力し合えるほど器用ではないから。

だから自分はここで死ぬ。清葉はそんな運命を受け入れていた。
とはいえ、何もせず黙ってそのときを待っていられるほど無気力ではない。
そもそも、そこまで自分を安く見積もっているわけでもない。
“普通”ではない自分の中にも普遍性が存在することを、彼は読書を通じて学んだ。

大人になったら本を、後世に残る作品を書きたいと思っていた。
その夢はもう叶わない。そんな時間は、自分にはないから。
それでも最期の瞬間まで夢に、好きなものに寄り添っていたかった。
ゆえに、清葉は自分自身ではなく作品をこの世に遺すことを選んだ。

そうして、執筆開始から一時間が経った。
どうにもならない現実と、現実逃避ツールの一切を排した密閉空間。
逃げ場は自分の中にしかない。けれども自分の中になら、思う存分逃げ込める。
それは物書きにとって理想的な環境で、執筆は思いのほかはかどった。
しかし、一点だけ問題があり――

678Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:14:30 ID:yROZOFZo0
 ――ううぅ……、なんかムラムラしてきた。

彼が執筆していたのは、エロ小説だった。

 ――ううっ、なんでこんな内容になっちゃったんだろう……。
 僕は私小説を書きたかったのに。私小説を書いていたはずなのに。
 クラスのみんなの思い出を、小説として遺したかっただけなのに……。
 なんでこんな、えっちな妄想が一人歩きしちゃってるんだろう……。

そう、彼の脳内と作中では、クラスの女子が痴態を繰り広げていた。
日頃のガン見……もとい、細やかな観察が幸いし、その筆致は冴え渡る一方。
ちなみに男子は登場しない。男優さんには感情移入出来ないクチだから。

結果として、清葉の作品は、百合とレズの宝庫となった。
どこを見ても女子、女体だらけというのがお得感満載で素晴らしい。
素晴らしすぎて妄想が加速してそれを追うのに夢中になって、
手を動かすのが面倒になってきた。というか、手を動かすエネルギーは
執筆よりも快感を得るために使いたい、という域にまで達している。

 ――少しくらい、いいよね。誰も見てないんだし……。

筆記具をテーブルに置く音が、やけに大きく感じられた。

          □ ■ □

679Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:15:13 ID:yROZOFZo0
「あはははは、碧衣ちゃんのために害虫駆除! 今日の私は絶好調!」

突き抜けるような笑い声がコックピット内の空気を震わせる。
砂野夕璃菜(さの・ゆりな/女子十番)は韋駄天の操縦席で
楽しげに笑い、ツインテールの長い髪を揺らす。

……さっきはびっくりした。
韋駄天のカメラを壊し、転倒させる者が現れるなんて。
泣き虫のサフィロ・シャリーノ(女子十一番)がそんな真似をするなんて。
思わず措置入院レベルの発作を起こしそうになった。

 ――うん。でも私、頑張った。精神力で発作を抑え込んだもんねー。
 基地外バレなんてしたら、また碧衣ちゃんのそばから離されちゃうもん。
 私、碧衣ちゃんを守らなきゃ。碧衣ちゃんのためにいいことしなきゃ。
 いいこと。いいこと。明るく楽しく人間ゴッコ。ニコニコ笑顔で害虫駆除。

ぐふふふふ。夕璃菜はくぐもった笑い声を漏らす。

もう大丈夫。笑顔を取り戻した今なら分かる。
サフィロは己の意思で韋駄天に戦いを挑んできた。
あの動き。彼女は身を守りたいのではない。韋駄天を破壊したいのだ。
ならば、追ってくるだろう。徒歩で。生身の肉体で。
移動速度に圧倒的な差があるにもかかわらず、この機械を。

それは、サフィロの体力が消耗していくことを意味していた。
疲労が蓄積すれば、運動能力が低下する。判断力だって、鈍る。
そうなれば、先程のような身のこなしも難しくなるだろう。
たとえサフィロが強力な武器を手にしたとしても、
使いこなせなければ意味がないのだ。

680Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:15:50 ID:yROZOFZo0
「きしししし! こっこまでおーいでー、早く早くぅ!」

F−2〜3エリアへと向かう機体の中で、夕璃菜は閉鎖病棟を思い出す。
やたらと蚊の多い場所だった。蚊の羽音が鬱陶しくて仕方なかった。
しかしあるとき発見した。蚊は血を吸うとその重みで動きが鈍る。
だから夕璃菜は己自身の血を吸わせた。確実に叩き潰すために。
てのひらに広がった赤い血と虫けらの死骸を眺めながら、優越感に浸るために。

人間様の血で腹を満たそうとする身の程知らずな虫けらに
極上のディナーを笑顔で振舞ってやるのは、未来の勝者の余裕ゆえだ。
生きる糧を存分に与えて満足させたところを、一撃で潰す。たまらない。

またあの快感を味わいたい。あの爽快感を満喫したい。
害虫駆除。害虫駆除。その言葉を夕璃菜は何度も胸の中で転がした。
お気に入りの飴玉を大切に味わう子供のように。

          □ ■ □

681Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:16:34 ID:yROZOFZo0
バスルームでことを済ませようと思ったのは、その痕跡を残したくなかったから。

もし、自分の死体の近くに使用済みのティッシュが落ちていたら。
そしてそのティッシュが鑑識に回され、DNA鑑定なんてされた日には。
死体のすぐそばには、直筆の自作エロ小説まであるというのに――
その想像力は、清葉を賢者に転職させた。ただし、ほんの数十秒間だけ。

脱衣所で衣服を脱ぎ捨てると、おのずと意識が首輪に向く。
身体を洗うときですら、首輪を外すことは許されない。
それは、自分が人間扱いされていないことを意味していた。
自分の所有権が自分にないことを意味していた。
そのことを意識した途端、清葉は賢者に戻れなくなった。

被虐的な悦びが全身の神経をざわめかせ、いてもたってもいられなくする。
彼の性欲は暴走し、この首輪を自分につけさせたのが
50代のキモいおっさんだという事実を徹底的に破壊し始めた。
まず、脳裏で蝶野が性転換した。そして25歳ほど若返った。
名前も変わった。蝶子先生。28歳の女教師。当然、整形済みだ。

 ――ああ、僕は蝶子先生にお仕置きされちゃうんだ……。
 蝶子先生が麓山さんたちにえっちなイジメを受けてるのを見――

キィ、と背後で音がした。金属のこすれ合うような音。
音は、脱衣所と寝室を区切る薄いドアの向こうから聞こえた。
なんだろう。清葉はバスルームに向かう足を止め、耳を澄ませた。
ギィ、と軋むような音がした。さっきよりもずっと大きな音だ。
一体何の音なのか、今度ははっきりと分かった。清葉の血が凍りつく。

 ――ああ、誰か来た。ドアの鍵が開いてたんだ……。
 どうしよう、僕、気付かなかった。ちゃんと確認してなかった……。
 殺されるんだ、僕……。まだ小説が完成してもいないのに……。
 あんなエロ小説だけど、僕の人生が沢山詰まってるのに……。

682Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:17:07 ID:yROZOFZo0
侵入者の足音が聞こえてくる。
体重と筋力を感じさせない歩き方。そして少し疲れているような。
ベッドのスプリングが軋むのが分かる。足音の主が倒れ込んだようだ。
ふぅ、と侵入者が溜め息をついた。憂鬱と安堵がない混ぜになったような。
わずかに漏れた声と息遣いから、相手が女子の誰かだと気付く。

薄い扉一枚隔てた場所に、無防備な格好の女の子がいる。
どうせ死ぬんだ、少しくらい楽しんだっていいじゃないか。
嫌われたって関係ない、どうせお互いすぐに死ぬんだ。
そんな黒い考えが脳裏でむくりと身を起こす。けれども清葉は動けない。
今の自分は全裸だ。こんな姿を見られるのは恥ずかしい。
なんで全裸なの、と疑問に思われるなんて嫌だ、耐えられない。

衣服を身に着けたい。しかし身体を動かせば、物音を立てれば気付かれる。
清葉には、硬直したまま息を殺して自身の心音を数えることしか出来ない。
どれほどの時が流れただろう。ドアの向こうで女子生徒が動いた。
ゆっくりと身を起こし、ベッドから降りる。そして、足音が数回。

 ――あれ? 立ち止まったまま動かなくなった……?

何をしているんだろう。その疑問に答えるように、ぱらり、と紙の音がした。
女子生徒が紙を触っている。乾いた音を立てる薄手の紙を、何枚も何枚も。
そこに何が記されているのか、清葉は既に知っている。
そこに記された詳細を、清葉は誰よりも知っている。

 ――読まれてるんだ……、僕の書いたエロ小説が……。
 僕のエロ妄想が、クラスの女子に、見られてるんだ……。

その瞬間、恐怖に抑え込まれていた性欲が本格的に活動を再開した。

          □ ■ □

683Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:17:53 ID:yROZOFZo0
「さぁーて。どこに隠れたのかなー?」

F−2エリアの森林に、夕璃菜は韋駄天で分け入った。
この辺りに人がいるのは知っている。しかし、見通しが悪すぎる。
韋駄天の暗視装置をもってしても、遮蔽物が多すぎて手に負えない。

「サーモグラフィ映像みたいなのが出てくるモードはないのかなー?
 物陰に隠れてても体温で見つけ出せるやつ。えっと……、これかな?」

それらしいボタンを押すと、視界の上にレーダーのような映像が現れた。
お目当てのサーマルビジョンモードではないが、これはこれで興味を惹かれる。
映像は半透明で、視界を完全に遮断するわけではない。
見ると、F−2エリアに三つ、F−3エリアに三つの光点が確認出来た。
F−2エリアの内ひとつは、韋駄天の現在地を思わせる特殊な記号と重なっている。

「これって……」

夕璃菜は自身の喉元にそっと指を近づけた。

684Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:18:35 ID:yROZOFZo0
 ――もしかして、首輪の場所を示してるの?

付近のエリアを確認すると、G−2にも二つの光点が見える。

「イヒヒヒヒ! こっちに向かって、だぁい正解。
 一気に7匹も駆除するチャーンス!
 よーし、碧衣ちゃんのために頑張るぞー!」

夕璃菜は悪魔じみた声で笑いながら該当エリアの施設を確認する。
楽勝楽勝、今日の私は絶好調。そう呟こうとしたその瞬間――

 ――え……、G−2エリアのここ、モーテルの中!?

血の気が引く。もしも、ここにいるのが碧衣ちゃんだったら。
碧衣ちゃんは、誰かとふたりきりで、密室内にいるってことになる!

碧衣ちゃんが危ない。殺されそうになっているかも知れない。
乱暴されそうになっているかも知れない。助けを求めているかも知れない。
監禁されているかも知れない。騙されているかも知れない。
一刻も早く助け出さなきゃ。碧衣ちゃんは私が守るんだ。絶対絶対守るんだ。
大好きな碧衣ちゃんにだけは、『あんな思い』はさせたくない――

夕璃菜は進行方向を急遽G−2エリアへと変更した。

          □ ■ □

685Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:19:30 ID:yROZOFZo0
上原鞠愛(うえはら・まりあ/女子三番)のトラウマ読書体験。
それは、母親の著書をうっかり読んでしまったことに尽きる。

鞠愛の母は小説家で、純文学作品を細々と発表している。
母のことは好きではない。気難しくて、ヒステリックで気分屋で。
だからそんな母の著作にも、鞠愛は興味を抱かなかった。

なのに何故、手を出してしまったのか。
それはもう、中二病を患ったから、としか言いようがなかった。
忘れもしない中学二年生の夏、鞠愛は母への反逆を企てた。
母の著作の悪口を、もっともらしい言い回しと丁寧な言葉で書き連ね、
夏休みの宿題の読書感想文として提出してやろうと考えたのだった。

しかし、読み終わる前に後悔した。
見開き二ページ、改行なしで埋め尽くされた文字、文字、文字文字文字文字。
主人公は苦悩していた。己の内面や生、そして性について独白しながら。
生きるのが辛い、その一言で済むようなことを、言葉を尽くして延々と語る。
まるで自傷行為のように、辛辣な自己ツッコミを繰り返しながら。

衝撃を受けた。お母さんの中に、こんな考え方が存在していたなんて。
お母さんが、こんなネガティブな文章を世間に垂れ流していたなんて。
親の裸や排泄現場を直視してしまったかのような気持ちの悪さが胸に残る。
それに、世の中にはわざわざお金を払ってまでして、
こういうものを読む人がいる、という事実もショッキングだった。

感想文は書けなかった。作品について語ろうとすれば、そう、
たとえそれが悪口の類いでも、自分の秘密を暴露してしまうような気がして。
心の奥に秘めておきたいこと、他人には決して知られたくないこと、
それらを白日の下に晒してしまうような気がして。

しかし今は違う。援交が、変態M男が、鞠愛に衝撃を克服させた。
世の中には、排泄物を『黄金』『聖水』などと呼び、有難がっている輩がいる。
理解も共感も出来ない価値観だが、彼らにとってはそれが真実なのだろう。
似たようなものだ、母の小説も、その読者も。そう思うと、気が楽になった。

686Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:20:03 ID:yROZOFZo0
……そんな上原鞠愛の前に、新たな衝撃作が現れた。

「僕だって、こんな下品な小説は書きたくなかったんだ……」

清葉は力なく揺れる視線をリノリウムの床に彷徨わせる。
脱ぎ捨てた服の上で身を屈め、細い腕で胸元や腰の辺りを覆い隠しながら。
清葉の声は震えていた。鞠愛の顔など見ようともしない。怯えているのだろうか。
いや、違う。吐息に混じった熱いものを、鞠愛は既に察知していた。
しかし、気付かないフリをした。そこに触れるのはまだ早い。
駄犬を眺めるような心持ちで白い裸体を見下ろしながら、鞠愛は清葉に確認する。

「そう……、つまり、蝶野に無理矢理書かされたというわけなのね?」
「最後まで書き上げたら、特別に命を助けてやるって言われて……。
 ごめんね、上原さん……こんなの読ませちゃって……」
「確かに、蝶野が考えそうなことだわ。教え子をモーテルに監禁して、
 自分の要望通りのエロ小説を書かせるなんて……」
「上原さん……、ありがとう、分かってくれて……」

そんな嘘でこの私が騙されるとでも思っているのかしら。
自分の目つきが冷ややかになっていくのが分かる。
清葉が嘘をついていることは明白だった。パーツごとの表情がまるで違う。
縋るような目をしていながら、口元には悪意や歓喜がにじんでいる。
隠し切れない内面の歪みが油断した拍子に漏れ出てしまった、というところか。
しかし、そこにはまだ触れない。触れるのは、外堀を埋めてからだ。

687Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:20:42 ID:yROZOFZo0
「感謝の気持ちがあるのなら、私の質問に答えてくれるかしら?」
「えっ……?」

清葉は顔を上げ、こちらを見た。予想外の反応に戸惑っているのだろうか。
新たな嘘に相手が逃げ込んでしまう前に、鞠愛は彼を誘導する。

「おまえはこんな下品でいやらしい話なんて書きたくなかったのよね?」
「あ、当たり前だよ! みんなにも失礼だもん、こんな内容!」
「そう。そんな風に思いながら執筆するのは、さぞかし辛かったでしょうね」
「う、うん……、うん!」
「脅迫されて、心にもないことを無理矢理書かされて。酷い話だわ」
「ありがとう。ここに入って来たのが上原さんで良かった……」

清葉の油断を、慢心を、そして被虐願望を、鞠愛は決して見逃さなかった。
いたわるように静かにそっと、清葉の方へと手を伸ばす。
そして、股間の辺りを覆い隠す細く白い腕に優しく触れ、
次の瞬間、おもむろにその手をひねり上げた。

「あうぅ! やぁッ、放して!」
「あら、おかしいわね?」
「やぁっ、見ないで……、見ちゃヤダぁ!」
「おまえのコレ、どうしてこんなことになっているのかしら?」
「違うもん! なんにもなってないもん!」

この期に及んで嘘にすがる清葉の姿が滑稽でならない。
見ているだけで、凶暴な悪戯心が胸の中に充満していく。

688Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:21:32 ID:yROZOFZo0
「そう……、私の目がおかしいと言いたいのね?
 なら、今からふたりで外に出て、おまえのコレを誰かに見てもらうわ」
「やぁ、そんな変態みたいなこと、僕……」
「……さっき、この近くで桐野きららに会ったの。
 彼女におまえのコレを見せたら、どんな顔をするかしらね?」
「そんなのやだ……、僕、恥ずかしい……」

清葉の声は消え入りそうだったが、現在問題になっている箇所は
まったく恥ずかしがってなどいなかった。

「仕方ないでしょ? だって、私とおまえの言い分がまったく逆なんだもの。
 どちらの言い分が正しいか、第三者の意見を聞いて判断するしかないわ」
「意地悪、言わないで……」
「意地悪だなんて、人聞きが悪いわ。私はただ、納得したいだけなの」
「そんなこと言われても、僕……」

「おまえは蝶野に脅迫されて、書きたくもないエロ小説を書いたのよね?
 女子のみんなに失礼だと思いながら。私に対してだってそう、
 下品でいやらしい妄想を読ませて申し訳ないと思っているのよね?」
「うぅ……、うん……」
「なら、どうしておまえのコレはこんな状態になっているのかしら?
 おかしいじゃない。きちんと説明してほしいわ」
「説明なんて無理だよ……勝手になっちゃうんだもん……」

689Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:22:25 ID:yROZOFZo0
「あら、この状態がおかしいってことは認めるのね?」
「ううぅ……」
「良かったわ。私の目がおかしいわけでもなければ、
 おまえにとってはこれが普通、ってわけでもなくて……。
 人に見てもらうなんてさっきは言ったけれど、失礼だったかも、って、
 私も気になっていたの。内心では」
「え……?」
「だって、おまえのコレは、いつもこういう状態なのかも知れないでしょ?
 おまえにとってはこういう、いやらしくてはしたない状態が“普通”だから、
 『なんにもなってない』なんて怒り出したのかも知れないじゃない」
「僕……そんな変態じゃないもん……」

清葉は熱に浮かされたような瞳で視線を宙に彷徨わせている。
鞠愛は足を片方だけ上げた。大きなリボンのついた黒いハイヒールに包まれた足。
踏んでやろうと思ったのだ。嘘をついた証拠を。清葉が嫌がって抵抗すれば、
「嫌なことをされるのが好きだから、こんなになってるんじゃないのかしら?」と
なじってやろうと思いながら。

そのとき、ピシリ、と壁が鳴った。気のせいかと思ったらまた、ピシリ。
鞠愛は一旦足を下ろし、視線をぐるりと廻らせて周囲の様子をうかがった。
目に見える異変はない。けれども家鳴りのような異音は頻度を増す一方。
どうやら、モーテル全体が小さく軋んでいるようだ。

「……地震かしら?」
「あ……」

清葉の瞳が焦点を結ぶ。中性的なその顔が、純然たる恐怖に凍りつく。
壁の向こうから轟音が聞こえる。大地が、木々が、大気が震えているのが分かる。
しかし地震ではない。人工的な、機械的な音が、そこに混濁しているから。

「上原さん、この音って……分校で聞いた……」
「まさか……、神楽雅光!?」

          □ ■ □

690Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:23:03 ID:yROZOFZo0
木々の向こうに、明かりの消えたモーテルが見える。
建物はおろか看板すらも夜の闇に呑まれていて、
施設自体が既に死んでいるかのように見える。
だが、まだ死んではいない。死すべき者どもを匿っているのだ。

今すぐミサイルで粉砕したい。今すぐマシンガンで蜂の巣にしたい。
人間の形をしたクソ虫が、今この瞬間にも目の前の建物内で
碧衣ちゃんに危害を加えているのかと思っただけで、
地球ごと叩き壊したくなるような激しい怒りに脳が四散しそうになる。

しかし、激情の赴くままに攻撃をおこなえば、従妹を巻き添えにしかねない。
もしも碧衣ちゃんが、倒壊した建物の下敷きになってしまったら。
もしも碧衣ちゃんに、流れ弾が当たってしまったら。
脳裏をかすめる不吉なビジョンが、夕璃菜の指を鈍らせる。

眼下にモーテルの屋根が近付く。
宿泊棟は平屋建てで細長く、屋根の傾斜はゆるやかだ。

中の様子を知りたい。人の場所だけでいいから。夕璃菜は屋根を睨みつける。
韋駄天は軍事兵器だ、サーマルビジョン機能だって搭載しているだろう。
このような状況に単独で対処することくらい、想定済みだろうから。
だから、目の前のキーを操作すれば、内部の様子を把握出来る――

691Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:23:39 ID:yROZOFZo0
けれども夕璃菜は手を伸ばさない。もしも自分の押したキーが、
サーマルビジョン起動用のものではなかったとしら。
韋駄天が動かなくなるかも知れない。隠し武器が起動して、
目の前の建物を焼き尽くしてしまうかも知れない。
碧衣ちゃんを傷つけるリスクは、絶対に回避しなければ。
今日の自分はツイている。それは確かだ。でも、今は運には頼れない。

「私が守るんだ。碧衣ちゃんは、私が絶対に……」

夕璃菜は韋駄天を操作して、モーテルの屋根にアームをかける。
そのまま上向きに動かすと、バリバリと音を立てて屋根が剥がれ始めた。
まるでお菓子の紙箱のように、まるでおもちゃの家のように。
舞い上がる木屑と土埃が、離島の闇夜に白さを添える。

やがて、屋根はすべて剥ぎ取られ、ドールハウスのような光景が現れた。
何枚もの板で仕切られた箱の中を見回すと、人影が二つ、目に留まる。
黒と白。黒いドレスをまとった少女と、白い素肌をさらした少年。

碧衣ちゃんじゃない。夕璃菜は安堵のあまり、笑った。

692Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:24:15 ID:yROZOFZo0
「なぁんだ。お人形さんかぁ。あー、びっくりした!」

胸の中がむずむずする。お人形さんで遊びたい。
手足をもいだり、首を外してすげ替えたり、どこまで足が開くか試したり。
お人形さんは何をしても泣いたりしないし、何度でも遊べるから大好き。
でも、この男の子のお人形さんはちょっと変だから、遊ぶ前に修正しなきゃ。
綺麗なお人形さんに『こういうモノ』が付いてるなんて、おかしすぎるから。
股間の汚物は、ちゃんともぎ取らなきゃね。うふ。きゅふふふふ。

 ――でも、遊ぶのは後。

穏やかだった自分の目元に力がみなぎっていくのが分かる。
碧衣ちゃんを保護するまで、遊びはみんなガマンガマン!
夕璃菜はマシンガンと一体になったアームを黒いドレスの少女に向けた。

          □ ■ □

693Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:25:23 ID:yROZOFZo0
自分の全機能が停止するまで、あとどれくらいかかるのだろう。
痛みを感じる間もなく死ねるのだろうか。恐怖で身体が竦んでいるのに。
ほんの一秒が、過ぎ去ることのない永劫の時のように感じられるのに。

最期の瞬間に苦しまずに済むことだけが、望みだった。
でも、その望みは叶いそうにない。
既に、精神的苦痛を感じてしまっているのだから。
幾つもの銃口を前に立ち尽くすことしか出来ない鞠愛の視界の隅で、
出し抜けに、何かが動いた。

「やめろ神楽! 女子を殺すな!」

清葉の叫び声がして、白く小さな固形物が
放物線を描きながらコックピットの方に飛んでいった。
全裸の彼が、手の届く場所にあるものをとっさに投げたのだ、
恐らくは、洗面台に置いてあった固形石鹸か何かだろう。

そんなことをしても無駄なのに。本当に、どうしようもない馬鹿なのね。
笑いたかった。抵抗の手段もおかしければ、「女子を殺すな」なんて文句も変。
いくら頑張っても、隠し切れない変態臭がにじみ出てるじゃない。馬鹿ね。
なのに笑えない、罵れない、胸の奥底から這い登る敗北感がまとわりつく。
今の自分は、この変態にすら劣っている。そんなことでいいのだろうか。

694Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:25:57 ID:yROZOFZo0
 ――私にだって、戦車に石を投げる勇気くらいあるわ!

韋駄天のアームが少しだけ動く。清葉に狙いを変更すべく。
鞠愛は床を蹴った。動き出したアームの横に回り込み、鞭を振り上げる。
金属の豪腕にラバーが巻きつく。異物を振り払おうと韋駄天が動く。
鞠愛はグリップを両手で握る。両足が床から浮き上がる。
アームにぶら下がる格好になった鞠愛を、韋駄天が壁に叩きつける。

 ――腕力が強ければ主導権を握れる、ってわけじゃないのよ、神楽。

その勢いを利用して、膝のクッションを利用して、ジャンプするように壁を蹴る。
鞠愛はグリップを握ったまま、宙に舞い上がり円を描く。
アームの周囲を回転し、半ばしがみつく格好で金属の腕に着地する。
この場所なら、いくら韋駄天といえど攻撃は出来ないだろう。
鞭はしっかりと巻きついていて、グリップはまるでレバーハンドルのようだ。
鞠愛はアームにまたがった。無敵の戦車が襲ってくるのなら、
その力を利用するだけのことだ。自身の優勝のために。

「神楽、聞きなさい!」

鞠愛は首を動かし、コックピットがあるはずの場所を見上げた。
自分には、交渉材料がある。たとえば、板倉竜斗の存在。
蝶野と共謀関係にある神楽は、板倉について何か知っているだろうか。
知っているのなら、蝶野と渡り合う上で有利になるような情報を
聞き出せるかも知れない。知らないのなら、それはそれで構わない。
彼は何も知らない、という事実もまた、貴重な情報だ。

だから、板倉について探りを入れてみよう。
そう思い、口を開こうとしたとき――

695Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:26:27 ID:yROZOFZo0
「あぁッ!」

唐突にアームが傾いた。滑り落ちないよう、鞠愛は太ももに力を込める。
韋駄天は乱暴に腕を動かし、邪魔者を振るい落とそうとする。
鞠愛はグリップを握り締め、歯を食いしばって揺れに耐えた。
太ももの筋肉が引きつるように痛い。素肌がじっとりと汗ばんでいく。

 ――神楽……、ふざけた真似を!

揺れはやがて収まったが、鞠愛は口を開かなかった。
恐怖に屈したわけではない。腹の中では、怒りの炎が燃えている。
神楽を殺してやりたいと思った。しかし、今はまだその時ではない。
殺すのは、韋駄天の利用価値がなくなってから。邪魔者を駆逐してからだ。

鞠愛は考えを巡らせる。
自分と口を利こうとしない神楽を、どのようにして従わせるか。
装甲に覆われた無敵の神楽雅光の、心の隙をどう引き出すか。

696Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:27:01 ID:yROZOFZo0
【G-2 モーテル付近/一日目・黎明】

【女子三番:上原鞠愛】
【1:私(たち) 2:おまえ(たち) 3:彼・彼女(ら)】
 [状態]:健康、韋駄天の左アームに騎乗中
 [装備]:鋲付きの一本鞭(ラバー製)、黒のゴスロリ服
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  基本思考:ゲームに優勝する。
  0:韋駄天を利用して参加者を駆逐。
  1:韋駄天に利用価値がなくなれば、神楽雅光を殺す。
  2:桐野きららに対する違和感と苛立ち。
  3:板倉竜斗に対する疑問。何故彼がここに?
 [備考欄]
  ※桐野きららがレプリカントであることを知りません。
  ※基本支給品一式とデイパックを紛失しました(G-2のモーテル跡に放置)
  ※韋駄天の左アームに鞭を巻きつけ、騎乗しています。


【女子十番:砂野夕璃菜】
[状態]:健康、高騰感
[装備]:グランドレプリカント"凡庸人型戦車"『韋駄天』GR-02
    ライトマシンガンアーム(160/200)
    レフトマシンガンアーム(200/200)
    対空地ミサイルランチャー(5/6)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
 基本思考:砂野碧衣の安全の為に彼女以外は誰であろうと見つけ次第全員殺害する
 0:人が居そうな場所へ向かう(次の目的地はF-2〜F-3辺り)
 1:碧衣ちゃんは全力で保護!
 2:サーモグラフィみたいな画面、どうやって出すのかな?
 3:このお人形さん、どうしよっかなー?
[備考欄]
※マニュアルを読んでないので操作に慣れてません
※ヘッドセットをつけてないので韋駄天の音声出力用スピーカーは機能しません
※コックピットが完全に封鎖してあるのでハッチを開けないと外から中の人が分かりません
※ホバー機動により通常の参加者より多くの距離を移動できます
※右側のカメラが壊れました。視界は確保されてますが右側に死角ができてます。
※上原鞠愛が左アームに鞭を巻きつけ、騎乗しています。
 韋駄天の動作には何ら支障はありません。

[共通備考]
※G-2のモーテルの屋根がすべて剥がされました。倒壊の危険があります。



          □ ■ □

697Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:27:37 ID:yROZOFZo0
靴底が、未舗装の坂道を絶え間なく蹴る。
安全を確保した鞠愛の姿が、スタートの合図となったのか、
良かった、そう思った途端、清葉は全力で駆け出していた。
かろうじて靴こそ確保したものの、その身はいまだ全裸のまま。
デイパックも支給品も筆記具も、命よりも大切な生原稿すらも、
倒壊寸前のモーテルに置いてきてしまった。

自分は何処に行きたいのか。それ以前に、何をしたいのか。
それすらも分からないまま、清葉はただ、韋駄天との距離を開くべく走る。

湿り気を帯びた夜の空気が、むき出しの素肌にまとわりつく。
嵐の前の空気のような破滅的な高揚感が、全身の神経をざわめかせる。

ああ。僕は今、全裸で外にいるんだ。誰かに見られたらどうしよう。
裸なのに、首輪なんて付けて。動き易いように、靴はしっかり履いていて。
まるで、逃げる準備をきちんと整えた上で露出しに行くみたいじゃないか。
どう見ても、変質者だよ。誰かに見られたら、なんて言い訳すればいいんだ。
折角、今まで我慢してきたのに。気になる子がいても話しかけたりしないで
“みんな”と違う自分、“普通”じゃない自分を知られないように
ひとりで大人しく生きていたのに、全部無駄になっちゃうじゃないか!

 ――無駄になれば、いいじゃないか。

もうひとりの自分が、心の片隅でせせら笑う。

 ――そんなものを必死で守ってきた結果が、これなんだ。
 変態バレして蔑まれる方が、ずっと楽に生きられるさ。

その思いを肯定するように、そして追い討ちをかけるように、
脳裏に焼きついた鞠愛の冷笑がいっそう鮮やかに高画質になる。

698Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:28:16 ID:yROZOFZo0
自分に向けられた、侮蔑の目。嬉しかった。
恥ずべきものとして切り捨て、葬り去ろうとした自分自身を彼女は直視してくれた。
彼女の意識下に入ることで、自分が否定した自分自身はその存在を認知された。
それに、あの表情。彼女は蔑んでこそいたものの、嫌悪してなどいなかった。
むしろ、相手を辱めることを楽しんですらいるようだった。

……清葉は出会う前からずっと、上原鞠愛を知っていた。
彼女の母親・美結子の作品を愛読していたのだ。
作家・上原美結子に娘がいることは、著書を読めば察しがついた。
娘の名はネットで知った。一家が同市内に住んでいることも、同様にネットで。

上原美結子の著作の中に、出産を題材にした短編がある。
ごく普通の現代女性が、ありふれた熱愛の末に出産するという内容。
恋人とは相思相愛、彼は出産に協力的で、子供の誕生を心から喜ぶ。

しかしそれは、静かな絶望を描いた作品だった。
母親との間に確執を抱え、母親を憎みながら生きてきた主人公は、
この世に生まれ出たばかりの無垢な我が子に涙する。
この子もいずれ私を憎むようになるのだろう、と。

両親に望まれ、愛と祝福の中で生を享けた者であっても、
己自身や己を存在せしめるものを否定することからは逃れられない。
主人公の、そして作者の静かな絶望は、変わり者の清葉を勇気付けた。
ゆえに、三木清葉にとって、上原鞠愛は特別だった。
娘・鞠愛の存在なしに、件の作品が生まれることはなかっただろう。
変わり者の清葉を勇気付けたのは、鞠愛の存在そのものだった。

699Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:28:58 ID:yROZOFZo0
だからこそ、嬉しかった。鞠愛に見られて。鞠愛に蔑まれて。
嗜虐行為に依存している鞠愛に少しでも楽しんでもらえて。
そう、依存。彼女はまるで逃げ込むように、嗜虐行為を楽しんでいた。
清葉のエロ小説を読んだとき、彼女には他に言うべきことがあったはずなのに。
彼女の母親の名前と職業、彼女が学校では決して語ろうとしなかったことを、
作中に明記していたのに。彼女は何も言わなかった。

 ――僕は、上原さんの逃げ場になれたのかな。
 それとも、その逆でしかなかったのかな……。よく分かんない。

韋駄天の駆動音に追い立てられ、清葉はただ走り続ける。
死ぬ前に、上原鞠愛のことを、彼女と接することで生じた自分自身の心の揺れを、
どこかに書き遺しておきたかった。その思いを認識した瞬間、清葉は気付く。
ああそうか、だから僕は走っているんだ。だから、まだ、死ねないんだ。
しかし今の自分には、執筆に専念出来る場所はおろか、筆記用具すらないときた。

 ――蝶子先生……小説が書きたいです……。

蝶子先生(28歳/女教師/脳内在住)は眼鏡の位置を指で整えながら答えた。

『諦めたらそこで黒歴史化決定ですよ?』

700Slaves and Masters ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:29:29 ID:yROZOFZo0
【G-3 坂道/一日目・黎明】

【男子十九番:三木清葉】
【1:僕(たち) 2:苗字+君orさん(たち) 3:みんな】
 [状態]:健康、全裸+靴
 [装備]:裸体
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  基本思考:蝶子先生…小説が書きたいです…
  0:韋駄天から逃げる。
  1:誰かに見られたらどうしよう…(ハァハァ
  2:筆記用具と執筆場所を確保する。
  3:上原さんに踏まれたい…(ハァハァ
 [備考欄]
  ※支給品一式とデイパックを紛失しました(G-2のモーテル跡に放置)

701 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 08:34:00 ID:yROZOFZo0
SSの投下は以上です。
タイトルはディープパープルのアルバム名から拝借しました。



次の予約ですが、

霧島無色、国分寺多聞、渡世朝秋、問芒操、八十島秋乃

上記5名で予約します。
投下は来年になるかもしれません。

702 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 10:42:21 ID:yROZOFZo0
前回投下したSS「あたしが殺した」の不動院凛華の状態表を以下のように修正します。
修正箇所はクロスボウの矢の本数に関する箇所です。



【女子十六番:不動院凛華(ふどういん・りんか)】
【1:私(達) 2:あなた(達)、名字+さんor君 3:皆、名字+さんor君(達)】
[状態]:健康、グロ耐性(強)
[装備]:軍用クロスボウ
[道具]:基本支給品、骨洞芙蘭のカツラ
    嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪(破損、爆発済み)
    クロスボウ専用の矢(10or11/12)
[思考・状況]
基本思考:一人でも多くのクラスメイトと共に生還する。
0:有栖川桜をしばらく休ませる。
1:桜が落ち着いたら二人でB-6の診療所に向かう。
2:嵐崎・キャラハン・蘭子の首輪を調べる。
3:宗一がいれば、首輪の構造も分かるのに…
4:隣家の二階の電気、消した方が良さそうね…
5:八十島さん…トイレにしては長いわね。
[備考欄]
※有栖川桜に超能力があることは知りません。
※蘭子の首輪の爆発は、無理に外そうとしたことが原因だと考えています。
※クロスボウは、威嚇(自衛)の目的で所持しています。
※幼馴染の穂積宗一のことは下の名前で呼びます。
※有栖川桜の腕に刺さっていたクロスボウの矢を所持しているか否かは
 後続の書き手の方にお任せします。

703 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 11:12:15 ID:yROZOFZo0
ああ、読み直してみたらミスが多いな…
複数形にしちゃいけない箇所を複数形にしてたり。
wiki収録版ではそういうミスを直しています。
そちらを読んでいただければ幸いです。

ttp://www39.atwiki.jp/jisakurowa2nd/pages/112.html

704 ◆CUPf/QTby2:2010/12/15(水) 19:01:25 ID:yROZOFZo0
申し訳ありません。
予約内容を以下のように変更いたします。

桐原千里、仁木天、高森乙子(フラグメント.N)、水原維澄、刃庭魯依、帝泉瑞乃

上記6人で予約します。

705全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:50:03 ID:.M8WR.7o0
リョナ厨殺しは生きていた!! 非情なる首輪を外し愛玩人形が甦った!!!
レプリカント!! 桐野きららだァ――――!!!

人造人間はすでに両親が開発している!!
プログラムマネージャー仁木天だァ――――!!!

組み付かれしだい魅了しまくってやる!!
無力な一般人代表 天草紗耶香だァッ!!!

素手の殴り合いなら俺の感覚操作がものを言う!!
素手に見えるか 改造人間 霧島無色!!!

真のヤンデレを知らしめたい!! お団子サイボーグ 問芒操だァ!!!

柔道は3階級制覇だがケンカなら全階級オレのものだ!!
近所の不良 国分寺多聞だ!!!

グロ耐性は完璧だ!! 長距離ランナー 不動院凛華!!!!

全アニメ作品の次回予告は私の中にある!!
現実逃避の神様が来たッ 八十島秋乃!!!

蝶野には絶対に敗けん!!
潔癖症の狂気見せたる 風紀委員 水原維澄だ!!!

バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
下剤所持のピュア・ウォッチャー 桐野ラキだ!!!

京終財閥から最強美少女が上陸だ!! 自重ゼロ 京終春日!!!

706全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:50:43 ID:.M8WR.7o0
ルールの無い復讐がしたいからジョーカー(道化)になったのだ!!
最後の復讐を見せてやる!! 板倉竜斗!!!

人間電磁調理器とはよく言ったもの!!
マーダーの首輪が今 実戦でバクハツする!! サイキッカー 有栖川桜だ―――!!!

本校生徒会長こそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの女がきてくれるとはッッ 高森乙子!!!

闘いたいから拡声器使用ッ キャリア一切不問!!!!
未来のプロボクサー 琴浦周斗だ!!!

私の武術は世界最強ではない対人戦で最強なのだ!!
御存知京終ファミリー 中川いさ!!!

謎の鎌は今や足に刺さってる!! オレを驚かせた奴はいないのか!!
藤ヶ原二臣だ!!!

デヴゥゥゥゥゥいッ説明不要!! 1m60!!! 160kg!!!
月元夢子だ!!!

言葉は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦言葉責め!!
草食男子から静間菅人の登場だ!!!

夕璃菜はボクのもの 邪魔するやつは思いきり騙し思いきり殺すだけ!!
奉仕マーダー黒百合従姉妹 砂野碧衣

教祖を守りに日本へきたッ!!
シシリアンマフィアの暗殺者 サフィロ・シャリーノ!!!

美容に更なる磨きをかけ ”ギャルマーダー”三住明梨朱が帰ってきたァ!!!

707全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:51:25 ID:.M8WR.7o0
今の自分に気力はないッッ!! 花火職人 戸崎繭!!!

桐原重工の頭脳が今ベールを脱ぐ!! 本社から 桐原千里社長だ!!!

碧衣ちゃんの前でなら私はいつでも全盛期だ!!
真性基地外 砂野夕璃菜 巨大ロボで登場だ!!!

教師の仕事はどーしたッ 下僕の魂 未だ消えずッ!!
主催も奉仕も思いのまま!! 蝶野杜夫だ!!!

特に理由はないッ 着ぐるみが心地良いのは当たりまえ!!
素顔はないしょだ!!! 演劇部所属!
ジョナサン大山がきてくれた―――!!!

援交で磨いた調教テク!!
ゴシックロリータ・アイアンメイデン 上原鞠愛だ!!!

調教だったらこの人を外せない!! 超A級寄生師 フラグメント.Nだ!!!

超一流女子高生の超一流の教師イジメだ!! 生で拝んでひれ伏しやがれッ
主催蝶野の奉仕対象!! 麓山留夏!!!

遠隔狙撃はこの男が完成させた!!
マーダー男子の切り札!! 渡世朝秋だ!!!

若き裸体が走ってきたッ
どこでイッていたンだッ マゾヒストッッ
俺達は君を待っていたッッッ三木清葉の登場だ――――――――ッ

708全生存者入場!!:2010/12/16(木) 17:52:08 ID:.M8WR.7o0
加えて蝶野脱落に備え超豪華なテロリストを9名御用意致しました!

吸血鬼 ネイサン・ホーマー!!
改造人間 骨洞芙蘭!!
カルトの教祖!黒嵜暁羽!

……ッッ  どーやらあと6名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ

709テストしたらば名無しさん:2010/12/16(木) 18:23:49 ID:tGOKvj8kO
投下乙乙。
いやぁ、砂野は強いですね

…いや、チートすぎて笑う。

そしてふた○りは自重しろ。



全選手入場とかwww
てか六人早く来いwww

710テストしたらば名無しさん:2010/12/18(土) 18:55:44 ID:m7qx2I0A0
パロロワ毒吐き別館の交流雑談スレのロワ語り
(※注:毒を吐くのではなく、普通に前向きに語る企画です)

12月20日(月)0:00〜23:59まで、本ロワ・自作2です。
このスレには書けないような方向の感想を書いていきましょう。

711テストしたらば名無しさん:2010/12/18(土) 19:11:21 ID:SIeK.KIQO
え、マジでうちなの?w

多分レス4つとかで終わると思うけど…orz

712テストしたらば名無しさん:2010/12/18(土) 19:36:24 ID:m7qx2I0A0
マジでうちです。
しかも自分、巻き込まれ規制で書き込めません…orz
代理投稿を頼むか、リモホ指定で規制解除してもらうよう頼んでみるか…

まあでも、把握不要っていうのは圧倒的に強みですよね。
SSの本数も少ないからすぐ読み終わる、即日書き手になれるっていう。

ああでも、SSの本数が少ないって、強みなんだろうか…
寒さが身にしみる…細かいことは気にしないようにしよう…

713テストしたらば名無しさん:2010/12/21(火) 01:53:58 ID:t3FUuDbQ0
終了〜。
思ったより盛り上がった気がするな。
これからも頑張ろー。

714テストしたらば名無しさん:2010/12/21(火) 11:05:51 ID:ClNW6zno0
ああ、自分が寝てから盛り上がってた…orz
そういえばこのロワって、優勝してもその時点で主催側が全滅していたら
首輪を外せないし帰還も出来ないんだな。
たとえ生きていても、今度はテロリストとして働かされることになりかねないという…

715テストしたらば名無しさん:2010/12/21(火) 23:22:34 ID:72BHWve2O
そこで誰かの介入ですよ。
…いや、流石にもう限界か?


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