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修正作品&試験投下スレ

1ルシファー@掲示板管理人 ◆8hviTNCQt.:2007/06/11(月) 01:23:42 ID:WrdARUbI
本スレ節約の為、修正した作品はこちらに投下して下さい。
また本投下する前に作品の内容や展開に不安がある時の試験投下の利用もどうぞ。

172 ◆yHjSlOJmms:2009/04/23(木) 21:52:06 ID:Xsba9H92
どうもここの修正所常連の◆yHjSlOJmmsでございます。
細かい誤字程度ならwikiのを直接修正しようと思ったのですが、
今後に関ってきそうなフラグをぽろっと入れ忘れたんで使わせてもらいます。

173本スレ219と差し替え希望:2009/04/23(木) 21:54:56 ID:Xsba9H92
説明しよう。何故彼らが3人同時にブーッをしてしまったのかを。
想像して欲しい。彼らの目の前で浮かび上がったデッキブラシから回転し、
地面に対して激しいランデブーを試みたこのドジっ子魔法少女(中身はヅラムス)が軸となるデッキブラシと接していた部分は当然尻。
その部分が上に来てしまえば、万物全てが重力の束縛から逃れられる事は適わず。
スカートが捲れ上がり、まぁ、そのなんだ? 
描写するのもおぞましいので端的に書くと魔法少女の岩石の様にゴツイヒップを覆う白地の布がフェイト達3名とファーストコンタクトを果たしたのだ。
それは正にこの世の地獄絵図。
見たくも無いのにその光景を網膜に焼き付けてしまった一行は、某ラピュタ王が『バルス!』と言われた時と同じ心境なのである。

「ぬぬぬぅ、失敗してしまった」
頭をカツラ越しに摩りながらブラムスが立ち上がった。
事前に被っていた波平のカツラのおかげで怪我をする事はなかった様である。
まさか、彼がこのカツラを初めて被る時に懸念していた『鬘が無ければ即死だった』という事態が現実の物になろうとは誰も予想してなかったのではないだろうか。
「(ドジっ子魔法少女がホウキでの飛翔に失敗。「いたたっ、失敗しちゃった」って光景は王道的な萌えシチュだと言うのに、
 中身がブラムスなだけでここまで酷いものになろうとは…)」
「(そんな事はどうでもいい。
 それよりも、お前の下らん魔法少女談義が原因でこの様な事になっているのだからどうにかしろ!)」
「(無茶を言うなっ! 実はコスプレなんてものは必要ないと告げて激昂でもさせてみろ。
 きっと奴は俺の直腸にあの手に握るイチジク浣腸の中身をぶちまけるに違いない)」
と、中年二人は囁くように口論を開始。
そんな二人を横目に見ながらフェイトがブラムスに歩み寄る。
「ちょっとブラムスさん。それを貸してくれませんか?」
ブラムスの手よりデッキブラシを譲り受けたフェイトはおもむろにそれに跨った。
「待つのだフェイト。その様な平服ではそれを使う事は…」
しかし、ブラムスの懸念とは裏腹にスムーズな浮上を遂げるフェイト。
元々バスケットの優秀選手に選ばれる程運動神経も良く、
ファイトシュミレーターでも似た様なモーションのキャラがいた事が幸いしたのか、フェイトは難なくこのデッキブラシを扱う事が出来た。
「なんと! 何故フェイトは着替えもせずに空を飛ぶことが出来るのだ?」
エルネストの魔法少女理論を鵜呑みにしているブラムスは困惑するばかり。
このままでは自分の直腸に決して入れてはならない劇物が浸入する怖れありと見たエルネストがすかさずフォローを入れる。
「そ、その、ブラムス。言い忘れていたのだが、中には衣装を変える事も無くホウキを扱える天才型魔法少女と呼ばれる存在がいるのだ。
 フェイトがまさかそれとは思わなかったなぁー」
どう考えても後付の嘘八百なのだが、その身に纏う衣装同様純真ピュアな心を持つブラムスは彼の言葉を事を信じた。
これにてエルネストは未知のレッドゾーンへチャレンジ(バブルローション直腸注入)をなんとか回避できたのであった。
「何はともあれ、これで僕が鎌石村に行く必要はなくなりましたね。
 少しでも早くソフィアにあって安心させてやりたいんです。お願いします。
 我侭を言っているのは十分承知です。
 でも、僕を観音堂の方のルートに行かせて下さい!」
飛行テストを終えたフェイトが一同に嘆願する。
「わかった。但しそっちのルートはブラムスの知り合いのレナスですら殺してしまった敵がいる可能性が高いんだ。
 だから、ブラムスと一緒に行ってくれ。戦力は高い方がいいだろう?」
(こいつ…一緒に歩きたくないからと不審者王をフェイトに押し付けたな?)
クラースが提案する中オリジンが冷やかな目でクラースを見つめた。
(それは間違っているぞオリジン)
オリジンの呟きをしっかり拾っていたクラースが、オリジンに対し思念のみで会話を開始。
(ブラムスが言っていた事を思い出せ。奴は優勝することが帰還への最善手と判断したら私達を手に掛けると言っていただろう。
 だが、それは私も同じ事だ。今はこうしてフェイト達と協力していた方が帰還出来る可能性が高いと判断しているだけに過ぎない。
 しかし、私が優勝狙いへと考えを変えた時、ブラムスが近くにいたとすれば…)
(不審者王も考えを変えている可能性が高いと?)
(そうだ。正直ミカエルやロキを素手で圧倒できる相手に勝機は極めて薄いだろう。
 そこで、今の内に危険な方に行ってもらい疲弊してもらった方が都合がいい。
 この場合強者同士で潰しあってくれるわけだからな。

174 ◆yHjSlOJmms:2009/04/23(木) 21:56:09 ID:Xsba9H92
後の細かいところ(時間表記など)は直接wikiを編集しときます。

175 ◆cAkzNuGcZQ:2009/04/24(金) 01:25:25 ID:v0MCebd.
一行程度の修正でここ使っていいものか迷いましたが、
せっかくなので使ってみることにします。
タイトルは
「頼れる相棒,守るべき妻子,愛しき女神の元へ」
これで。

176頼れる相棒,守るべき妻子,愛しき女神の元へ:2009/04/24(金) 01:26:27 ID:v0MCebd.
本スレ258と差し替え希望

(やべぇ…腕が…)
もう何発かガードしていたら腕が持たなかっただろう、という時、クリフのローキックが繰り出された。
反射的にジャンプして避ける。その瞬間、クリフがバランスを崩し、一瞬の隙が生まれていた。
クリフの隙に反応して、ローキックを避けたジャンプから跳び蹴りを放つ。
蹴りはクリフの顔面にクリーンヒットし、クリフが仰け反った。
(チャンス!)
「おぉぉぉっ!!」
両拳のラッシュを仕掛ける。だが腕の痺れが影響し、拳に100%の力を乗せる事が出来ていない。
(くそっ、この馬鹿力が…)
拳では駄目だと判断し、ドロップキックを決めてクリフを吹っ飛ばした。
ボーマンの足に、クリフの肋骨が折れたような感触が伝わってきた。
追撃するチャンスではあったが、先程『桜花連撃』を決めたシーンがフラッシュバックし、それを思い留まらせる。
クリフは桜花連撃をまともに食らっておきながらも、あれだけ高い跳躍から恐ろしい破壊力の急降下で反撃してきたタフネスだ。
腕に力が入らない今、それだけのタフネスを仕留めきれるとは思えない。
そう判断したボーマンは「距離を取る事」を選択した。距離を取ってまずは腕を回復させたい。そしてもう一つ…
ボーマンはクリフが蹴り倒した樹の場所まで走るとボーマン、倒れた樹、そしてクリフが一直線上になるよう位置取りをし
『旋風掌!』
倒れた樹に向かい旋風掌を撃ち込んだ。
旋風掌は樹に生えている木の葉を大量に巻き込み、軌道上にいるクリフに襲い掛かる。
「……!」
クリフが何か叫んでいたようだが、その声は竜巻に阻まれボーマンには届かなかった。
旋風掌がクリフを飲み込んだ事を確認すると、ボーマンはクリフとは反対方向に全力で逃走した。

100メートル程は走っただろうか。
ようやくクリフから離れる事が出来たボーマンだが、それだけでは事態は何一つ好転しない。
(バーニィシューズが壊れるってのは…ちっ最悪だぜ。これじゃ役場には行けねぇ)
役場での支給品入手はもう望めない。
(…アシュトンの方はもう終わったか?)
アシュトンのところに戻れば戦利品を分けてもらえるだろうか?
合流した時はアイテムの交換を拒否されたが、新たに入手したアイテムならばアシュトンも分けないとは言えないだろう。
(…いや、そういや金髪が「仲間を待たせてる」だとかヌカしてやがったな)
だが、きっとボーマンを見失ったクリフは仲間の所へ戻ろうとする。
同じ目的地に向かうとなると、バーニィシューズが壊れた今ではクリフに追いつかれる可能性も充分に有る。
逆に、クリフが戻るところを尾行する事も考えたが、その場合でも気付かれればやはり戦闘になる。
決定打もバーニィシューズも無い状態では、再び戦闘になった場合はこちらの圧倒的不利は明白。
(ここはやっぱ手持ちのカードで何とかするしかねぇな)
ボーマンは足を止めるとデイバッグからフェイトアーマーのカツラ部分と調合セットを取り出す。
(カツラも着けると徐々に体力が回復する、ねぇ。あまり時間は無いが…腕の痺れぐらい取れんだろ)
そう期待をしてカツラを装着する。
アシュトン達にフェイトアーマーの存在を知られたくなかったから装備していなかったが、今なら問題ない。
(アルテミスリーフが約2/3か…殆ど気休めにしかならんが無いよりマシだな)
これで調合用の薬草は底をついてしまうが仕方ない。
普段だったらニーネが、非常時に備えてボーマンの白衣に薬草をいくつか入れておいてくれるのだが
その薬草はこの島には持ち込めなかったようだ。
「ニーネ…エリス…」
つい妻と娘の事を考えたが、いや、とボーマンは頭を振る。
感傷に浸るのは全てが終わってからで良い。今は作業に集中しなくては。

177頼れる相棒,守るべき妻子,愛しき女神の元へ:2009/04/24(金) 01:27:16 ID:v0MCebd.
本スレ260と差し替え希望

クリフの知っている物とは形状が異なるが、確かにソレはバーニィシューズの破片だった。
(野郎の動きが鈍ったのはバーニィシューズが壊れただけだったってか。…くそったれが!…そういや良い蹴りしてたじゃねえか!)
つまりボーマンの足にはダメージなんて無いのだ。
冷静に観察していればボーマンにダメージを負ったような素振が無い事に気付いただろう。
だが、目先の「勝機」に目が眩み、判断力が鈍っていたのかもしれない。
その判断ミスのせいでクリフは無駄なダメージを負い、ボーマンを取り逃がす事になってしまった。
「情け…ねえ……だが」
自らの判断ミスを悔やむと、バーニィシューズの欠片を握りつぶし禁止エリア内に放り投げた。
(バーニィシューズはぶっ壊したんだ。それなら奴が役場に着く前に追い…いや、まてよ…野郎はそもそも何が狙いだ?)
そして、謎が1つ解けた事に刺激され、ようやくクリフは現状を冷静に考え始める。
デイバッグからペットボトルを取り出した。うがいをし、水を吐き出す。
吐き出した水には大量の砂と血が混じっていた。
(あの状況で役場に行く?なわけねえだろ。行ってどうする?)
ほぼ互角の戦闘状態からの突然の逃亡。
慌てたクリフはミラージュの身を案じて追いかけた訳だが、そもそものボーマンの目的は何なのか?
少なくとも、役場方面に逃走したからと言って役場に行くとは限らない。むしろ、行く理由など無いはずだ。
(なら…ミラージュがあの野郎に襲われる心配なんかまず無い…か?)
確かに普通に考えればミラージュがボーマンに襲われる可能性は少ない、いや、皆無に等しいだろう。
実際にはボーマンは役場に向かっていたのだが、第3回放送を聞いていないクリフに、ボーマンが役場を目指す理由は考え付かない。
(考えられるとしたら…奴の有利な場所に俺を誘い込む…これか?
いや、あれは誘ってるような走り方じゃねぇ。明らかに振り切る走り方だった…ちっ、分からねえ)
考えてもボーマンの狙いなど分かりそうもない。クリフは頭を掻きむしると一つ舌打ちをし、余計な事を考えるのを止めた。
(…まあ、野郎の目的なんざどうでもいい。今はミラージュを護りに行く。野郎を見つけたらぶちのめす。それだけだ)
ボーマンが役場に行く可能性などは無いはずだが、他の参加者ならば、いつ、どんな理由で役場に行くか分からない。
ならば、自分のやる事はやはりミラージュを護りに行く事。そう結論付けた。
そして「最悪ボーマンを逃がしてもミラージュに危険は無い」という結論はクリフの心を幾分か楽にさせ、余裕を持たせた。
クリフは時計を取り出して時刻を確認する。とっくに深夜0時を回っていた。
(…放送聞き逃しちまってたか…今はもうD−4も禁止エリアになっちまってるな。
放送内容は、後でミラージュに聞くとするか。…ふっ、さっきとは反対だな)
クリフはもう1度うがいをする。口の中の砂は気にならない程度には落とせた。ペットボトルをしまい、辺りを見渡す。
(野郎が戻ってこないとは限らねぇ。一応不意打ちは警戒しとかないとな)
クリフは辺りを警戒しながら、役場を目指して慎重に移動を始めた。


近づいてくる足音を聞き、まだ破砕弾を作り終えていないボーマンは少し焦った。
(あいつ、こっち来んのか!?仲間待たせてんじゃねぇのかよ?
…どうあっても俺を倒すってのか。チッ、まだ途中だってのに…しょうがねぇな)
足音はボーマンより東南側を、ほぼ西に向かって移動しているようだ。
つまり真っ直ぐボーマンに向かってきている訳では無いのだが、のんびりと作業している訳にもいかなくなった。
ボーマンは急ピッチで締めの作業に入る。
通常よりもサイズが小さくなってしまい殺傷能力に不安が残るが、この際贅沢は言ってられない。
(後は丸めてっと…何とか出来たな。…服も脱いどきたかったが…)
ガソリンまみれの服を着ていると破砕弾の飛び火に対してやや不安が残るし、
同じ理由から、自分の技の1つで炎の闘気を使用する「朱雀双爪撃」が撃てない。
それ故、出来れば脱いでおきたかったが、足音の持ち主、つまりクリフの姿が見え始めた。どうやらそんな暇は無いようだ。
ボーマンは広げた荷物を音を立ててデイバッグに突っ込んだ。足音が止まる。ボーマンの気配に気付いたようだ。

「てめえ、居やがんのか?出てきやがれ!」

クリフの怒号が聞こえる。ボーマンの姿まではまだ確認出来てないようだ。
(ああ、出て行ってやろうじゃねぇか!)
ボーマンはフェアリィグラスを飲み干した。

178頼れる相棒,守るべき妻子,愛しき女神の元へ:2009/04/24(金) 01:28:20 ID:v0MCebd.
本スレ269と差し替え希望

「クェーサーの事は俺にも良く分からねえ。奴との戦いの途中で気を失っちまって、目が覚めた時は奴はもう居なかった」
レザードは1つ頷き、先を促した。
「だがクェーサーの代わりに…て言うのも変だが、俺が起きた時はソフィアがこいつらと戦ってた。
 このオッサンと、龍を背負った男と、後もう1人、ただ突っ立って見てただけの野郎だが、その3人組だ」
「…ソフィアが戦っていた?彼女1人で、ですか?」
レザードは怪訝な顔をした。ソフィアが戦っているという事が信じられない様子だ。
「他に誰が居るっつーんだ!…あ、いや、そういや何でか知らねえがルーファスの奴が生きてたみたいだ。
 俺が起きた時、側に寝ていやがった。…もしかしたらクェーサーはあいつが何とかしたのかもしれねえ。
 今もルーファスが起きてりゃ良いんだが…」
「…なるほど、大体の状況は理解しました。ソフィアの居場所は金龍と戦っていた場所ですね?」
レザードがそう言い、立ち上がったところを
「そうだ、頼むぜ。…あ、ちょっと待て」
クリフが引き止めた。
「…どうしました?」
「さっきの放送内容教えてくれねえか?聞き逃しちまってよ」
「…申し訳有りませんが、私も聞き逃してしまったのです。今貴方に伺おうと思っていたのですが…」
お前もかよ、とクリフは1つ舌打ちをした。
「…そうか。じゃあもう1つ。お前、回復の呪紋って使えねえか?使えるなら1つ頼みたいんだがな。
 俺はミラージュを助けに行ってやらなきゃならねえんだ」
ミラージュの事はクェーサーに襲われる前の情報交換で話していた。
「…ミラージュ?確か鎌石村役場に待たせているという、貴方とソフィアの仲間でしたね?
 ですが、今、ここから向かわれるおつもりですか?」
レザードは眉をひそめる。おそらく禁止エリアの事が引っかかっているのだろう。
クリフはレザードに、禁止エリアの30秒の時間制限について話した。
「そう言う事でしたか…」
レザードは何やら考え込みそうな雰囲気だ。
「考えんのは後回しにしてくれ。で、回復呪紋は出来るのか?」
レザードは我に返ったような表情を見せたが、クリフと目が合うと微笑みを見せた。
「勿論です。では横になり目を閉じていて下さい」
「…悪いな」
クリフは言われた通り、目を瞑る。レザードが再びクリフの側に屈み込む気配が感じられた。
「少し冷えますが、心配なさらず、そのまま横になっていて下さい」
(冷える?何で冷えるんだ?)
クリフがそう聞こうとしたその時、クリフの身体を冷気が包んだ。
冷気の正体が何なのか、考える間も与えられず、クリフの意識は急速に暗闇に落ちていった。


クリフの話を聞き終えたレザードは、男の消火に使ったのと同じ呪文でクリフを凍結させ、彼のデイバッグの中身を確認した。
だが、目当てのドラゴンオーブは入ってない。やはりレナスが持っているようだ。
(まあ、期待はしていなかったがな。
それにしても、この男正気か?ソフィア1人にヴァルキュリアを任せるとは愚作、愚行にも程がある。
考えたくはないが、これではヴァルキュリアが既に殺されている可能性も高いか…?)
レザードが想定していた状況の中でも、今の状況は限りなく最悪に近い。
最悪なのは当然、レナスが既に殺されている事である。だが、今レナスが(クリフが確認した時点では)生きているとはいえ、
ソフィアが1人でレナスを守っているという状況は、最悪の状況と大して変わらないとレザードには思えた。
そして、レナスをそんな状況に陥らせたクリフに激しい怒りを感じていた。

179頼れる相棒,守るべき妻子,愛しき女神の元へ:2009/04/24(金) 01:29:38 ID:v0MCebd.
本スレ277と差し替え希望

ソフィア殺害の前に、ドラゴンオーブだけは何としても確保しなくてはならない。
脱出する際、ドラゴンオーブが有ればソフィアの能力『コネクション』が不必要だという事は
先程ソフィア達を見捨てた時に結論付けたが、逆に言えばドラゴンオーブが無ければソフィアが必要となってしまうのだ。
もしもドラゴンオーブが破壊されているなりなんなりでこの殺し合いの舞台から消失してしまえば、
レナスと共に脱出するには、不本意ながらソフィアに頼るしか無く、殺す訳にはいかなくなる。
「で、2人が死んじまってる場合は、さっき言ってたみたいに、緑髪の男に預けた道具の回収だけで良いのか?」
「…ええ。とりあえずは」
もしレナス、ソフィアが既に殺されている場合は、先程ボーマンに説明した通り
レナスの道具(ドラゴンオーブ)を回収する事を第一に考え、ボーマンはそれに協力させる。
つまり、レナスが生死、どちらの場合でも、ボーマンには利用価値が有るのだ。
むしろ、ボーマンと手を組んだ最大の理由は、この最悪の状況を想定しての事だった。
逆にクリフを殺したのは、今後の展開(ボーマンと手を組む事、ソフィアを殺す事、ソフィア達が殺されていた場合に
彼女を殺した者と一時協力する事)を考えた上で、ソフィアの仲間であるクリフは邪魔でしかないと判断したからだ。
クリフとソフィアに対してレナスとドラゴンオーブ。天秤にかけるまでも無い。
ドラゴンオーブさえあれば、輪魂の呪が使用出来たのだ。換魂の法も使用出来る可能性は高いはず。
ならばレナスが命を落としていても、再び蘇らせる事が出来るはずなのだ。そうレザードは考えていた。

「とりあえず…ねえ。後からアレコレ追加するのは止めて頂きたいもんだがな」
「ご心配無く。せいぜいクリフの道具分の要求を1つする程度ですよ。
 ところで、取引の話はさておき、情報交換を行いたいのですが宜しいですか?伺いたい事が有るのです」
レザードは今の内にボーマンから第3回放送の内容を聞いておきたかった。
話をしやすいよう、少し走るペースを落としてボーマンと並ぼうとする。
だが、何故かボーマンもペースを落とし、前に出てこようとしない。
レザードは振り返り、ボーマンの顔をチラリと伺う。そして前を向き直し、
(ふん…それで警戒しているつもりか?…まあいい。せいぜい役に立って頂きますよ?)
そう考え、ボーマンを蔑むように微笑んだ。


レザードとボーマンが走り去って数分後、クリフの氷像が解凍し始めた。
完全に凍り付いていた身体が元に戻り始め、徐々にクリフの目が開きだす。
クリフは胸を貫かれていたが、体中が凍結して、いわば仮死状態のようになっていた為、その時点では絶命しなかったのだ。
そして今、その凍結は自然と解除された。
(…終わったのか?)
今、クリフの胸には風穴が開き、両腕は砕け散っている。
だが凍結していた事が彼の痛覚を完全に麻痺させていた為、本来襲いかかるはずの激痛は、彼には感じられていなかった。
クリフは起き上がろうとした。が、身体が全く動かない。
胸の風穴、そして両腕から出血が始まっていた。瞬く間におびただしい程の量の血液が流れ出てくる。
クリフは再び冷気を感じ、急激に目の前が暗くなり始め、意識が薄れていった。
(何だよ、まだ終わってねえのか)
それは先程意識を失った時と同じ様な感覚だったので、クリフはまだ治療中であるものだと思い込む。
だが違った。今クリフが冷気だと感じたもの、それは単に出血多量による体温の低下だった。
出血した血液は地面に染み込むが、すぐに飽和状態となり、土の上に血溜まりを作り始めた。
(とっとと頼むぜ、レザード。ミラージュを待たせてんだからよ…)
心の中でレザードに話しかける。
だが、その場所に居るのはクリフのみだ。他には誰もいない。クリフはその事にも、もう気付けない。

クリフの意識は再び暗黒に落ちていく。

先程との決定的な違いは1つだけ。

彼が目覚める事は、もう二度と、無かったという事だ。

180 ◆cAkzNuGcZQ:2009/04/24(金) 01:44:32 ID:v0MCebd.
以上です。

>>176はボーマンがクリフの肋骨が折れた事に気付くように。
>>177はクリフが現在時刻を確認し、第3回放送を聞いていない事を自覚するように。
>>178はクリフがレザードに放送内容を聞くように。
>>179はレザードがクリフを殺害した理由の説明を追加。

それぞれ、このように修正致しました。

181試験投下 ◆A/Fc0qBU16:2009/04/26(日) 23:37:58 ID:6XwNo62o
本スレでパラライズチェックの件出てたので予約に影響でますかな?って
心配もありで、D-5パートは書き上げ前なんですが方向性これでいいかなと思ったんで
E-4パートのみ試験投下さしてもらいます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時間はそろそろ1時半をすぎた頃だろうか。
ぴゅろろろろと、言葉にするとかなり奇妙な音を立てて1本の空飛ぶデッキブラシが島を西から東へと走っていた。
地上のどこかで血生臭い争いが繰り返されているとは思えないくらいに、島の上空には満点の星がきらきら主張して
いる。そんな空を背景に年頃の青年と魔法少女を乗せて飛ぶブラシはファンシーな雰囲気を演出しているといっても
過言ではない、きっと。

「…ブラムスさん」
「む?」
「…いえ、ナンデモアリマセン」

前置きも無く唐突に向けられたフェイトの言葉に特に何かを思うでもなく、ブラムスは手の中のものへと視線を戻す。
青い髪が揺れる後ろで典型的魔法少女の装束を纏った男が折りたたんだ地図とコンパスとを眺めた。
夜に強い目はらんらんと輝いて月明かり程度で正確に紙面の図を読み取ることができる。
現在位置はおよそ、E-03からE-04の境界を超えるあたり。
フェイトの運動神経が助けとなっているからか、今のところデッキブラシの運行はこれ以上無いくらいには順調であ
る。

「フェイト、E-04に入る。心して飛ばすがよい」
「アイアイサー」

確かに夜空の散歩はこれ以上にないくらい快適だ。
しかし、デッキブラシの現・操舵主の気持ちはまさに壊れかけのチキンハート。
後ろから筋肉隆々の魔法少女@♂が野太い声で時々声を掛けてくるのが更にフェイトのブレイクンハート(byエルネ
スト)を刺激する。
星をかきわけるかのように疾走する夜風がブラムスの神経を高揚させるのか、興に乗った声で青年へと話しかける。

「うむ、この魔法のデッキブラシというものは実に快適なものだな。またがる柄がもう少し太ければ座るにも安定す
るのだが、この速度と空を行くという利便を思えば素晴らしい代物だ。そうは思わぬか、フェイト」
「ハハハ、ソウデスネ」
「どうかしたかフェイト」
「イエナンデモ」

石化でもしながらデッキブラシのバランスを器用に取るフェイトのMPは違う意味で尽きそうだ。
眼下の光景に目をやる。夜目が利くというのはこういう時便利なんだろうなあとか思いつつ、やっぱり話しかけるの
さえMPを多大に消耗しそうなのでほとんど口を開けなかった。
実際ここに来るまでの1時間弱、フェイトとブラムスに会話らしい会話はない。

「この下にはソフィア達はいないようだ。最も禁止区域となる場所を通ろうという豪胆な輩はそういないだろうがな」
「分かりました。急ぎましょう」

182試験投下 ◆A/Fc0qBU16:2009/04/26(日) 23:38:40 ID:6XwNo62o
少しばかりの落胆を隠しつつ、フェイトが前を睨んだ、それと同時にブラムスの赤い目もまた前方を見た。
一拍置いて、突然視界に赤と白を帯びた光の柱が走る。

「何だ!?」
「うぬ?」

それはあまりに一瞬のことで、フェイトとブラムスは確認のために目を凝らしてももう光はどこにも見当たらない。
だが二人揃って同じ色の光柱を目撃している以上、あれが幻でないことだけははっきりしていた。
大きな魔力や呪文の発現か。二人の考えたものはそう違わない。
ヴァルキリーを倒した敵が交戦しているのか。もしかしたらソフィアが襲われているのかもしれない。
1ブロックは離れていたと見える光の出所を睨んだフェイトは、後ろでごくりと息を飲んだ不審者王に首を捻る。
怖いもの見たさで振り返るガラスの心臓状態の青年に、ようやく真面目な会話が降ってきた。

「あれは…もしや」
「ブラムスさん何か心当たりが」

あるんですか、と続くはずだった言葉の続きが風に奪われた。
まずいきなり風の流れが上から下へと変わる。
変に思う間も与えられずにフェイトの背中にずしっと成人3人分くらいの重さが圧し掛かり、ブラムスのうお!?と
かいう間抜けな叫び声が聞こえた。
さて考えよう。
ここは空中。
そして操舵主は重さでバランスを崩した。
多分成人5人分はデッキブラシの定員を軽くオーバー。

「「「「;8お3yb80くぁ4w3vbーーーー!!!」」」」

声にならん悲鳴を上げてフェイトとヅラと、その他正体不明の三人が重力に従って勢いよく落下していく。
その姿を見届けた人間は、多分いない。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
話は落下地点に戻る。
あんだけの突飛良しのない状況にも関わらず、幸運にも落下地点が木の密集地帯だったために5人はほぼ無傷で生き
ていた。
ただし。

「きゃーーきゃーーきゃーーー!?」
「化け物めっその子から離れろ!!」
「…武器を納めないか、そこの男。私はブラムス、彼女の仲間だ」
「彼女のその状態を見て信じられるか不審者王ーーー!!」
「私は不死者王だ」
「いだだ。一体、何が…ぐっ」
(痛い…うるさい…)

183試験投下 ◆A/Fc0qBU16:2009/04/26(日) 23:39:25 ID:6XwNo62o
ブラシに乗ってた青年はいつかのヅラムス失敗例のごとく頭から地面に突っ込んだせいで近くに念願の幼馴染がい
るのに気づいていないし、その上に緑髪の青年がどっかり乗って気絶中なのを誰も察してくれない。
一歩離れた木の間じゃ、変態仮面から斜め135度にかっとんだ進化を遂げたかつての仲間だった代物にパニックに
陥ってるソフィア。
当然勘違いからそれを助けようとしているチェスターと、向かい合ってるブラムスは落下の際に木の枝か何かを
引っ掛けたらしくせっかく着替えた装束は胸元から裾までびりびりに破れてある意味の地獄絵図を撒き散らしてい
る。その頭には相変わらず一本だけの毛が立派に立っており、ここまで来ても傷一つ付かないヅラは本当にアー
ティファクトなのかもしれなくなってきた。

とりあえずはっきりしているのは。
お前らそこからさっさと離れないと禁止区域になっちゃうよ。

※状態表は略

184不協和音修正版:2009/05/07(木) 08:35:23 ID:/n4GHB0Q
そしてパラライチェック。本来ならばアタリアイテムに思えるが、チサトが装備していなかった事が引っかかる。
もしこれが本当に自分の良く知るパラライチェックだとしたら、装備しない理由が特に思い付かないのだ。
もしかすると、このパラライチェックは自分のよく知るソレの劣化版なのかもしれない。
いや、それかもっと想像もつかない別のモノである可能性もある。
しかし、読み終わった後適当な場所に放っておいたままなのか、デイパックには説明書が入っていなかった。
故に、効果を断言できる日は一生来ないと言えるだろう。
そして、これが呪いやトラップの類だという『最悪の可能性』を考慮すると、『装備してみる』という選択肢は消滅する。
単なる紛い物という可能性があるだけで全幅の信頼はおけなくなっているのだ、ならばもう装備する理由はない。
といっても捨てる理由も特にないので、残しておいて何かの交渉の道具にでも使うとするのが一番だろう。

185 ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 18:42:40 ID:jChTb/WI
ルシオ、洵で仮投下。
リレーする上で繋ぎ易いかどうかが不安なので、その辺を見て頂ければ幸いです。

186君が呼ぶ 哀しみのシュラオベ ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 18:44:57 ID:.EQpNDhU
 布に包まれてくすんだ灯は、青年から少し離れた場所にあった。
 道を逸れて草地に踏み出す仲間の足取りと地続きに揺れる光源を頼りにする、目の奥が痛みを訴えている。
 圧迫感に近い、それは寝不足で張った肩から伝わるのか、それとも睫毛さえ抜けかねない涙の塩辛さによるものか。
 たあいもないことを全力で考えて息を抜く。重圧にもたつく胸の内を淡白にすべく、尽力する。
 肉体に起因するのではない息の詰まりを抜いた青年は、脚を踏み出す前に短く双眸を閉じ、
「……く、――ぁ」
 きまりわるげに、閉じた口内にふくらむ欠伸を噛み殺した。
 * * *
 食えるだけマシであった食料を腹に入れて、三時間弱。
 三回目となる放送を聴いた洵の、こなれた胃に割り込んだ思いは紛れもない安堵だった。
『アリューゼ。ヴァルキリー。炎使いはミカエルと名乗っていたな。
 俺にとっての壁となりうる輩が、揃って脱落してくれたというわけか』
 戦闘狂同士の潰し合いか、あるいはゲームに乗らない者に返り討ちにされたか。
 ルシオを除けば戦乙女と最も付き合いの長いらしい傭兵が共闘する様を思い浮かべて、洵はかぶりを振った。
 生存者が半数を切ったためか。変更や追加の加えられた情報の山を前にして、無駄な回顧や想像に頭を使いたくない。
 名簿とともに開いていた地図に書き留めた、一気に増やされた禁止エリアの配置と順番に加えて、褒美の位置。
 風格を演出するためにか、どこかで一線を引いて言を紡いだルシファーの意図は、これ以上無いほどに明瞭である。
 ならば、当面の問題とすべきものは。

「プラチナ、っ、……ヴァルキリー」
 放送から先を考えかけた男が耳にしたのは、当面の問題とすべき青年。
 レナスにとって大切な、裏を返せばレナスに大切にされていたエインフェリアの声だった。
 弾かれたように口にした固有名詞から転じて、低く圧し殺した響きで呼んだレナスの代名詞は、だからこそ
付け足した”感が否めない。さりとて、紡がれた単語の重さにこそ差は見られないのだが――
 名簿にない単語を口にしたことが気の抜かりと言わんばかりであるルシオの様子に、洵は興味を惹かれた。
「言っても詮なき話だろうが、あの戦乙女のことだ。
 少なくとも、力で他人を押し退けるように振る舞うことなどしなかっただろう」
 それがレナスでなく、彼女の姉であるアーリィ・ヴァルキュリアであれば話は別に違いないが。
 ルシオの知らぬ、神と人とを“従属”で繋ぐ戦乙女の影を思い返して、洵は障害が消えたことへの快哉を隠した。
 ただ、彼の。レナスにとり大切なはずの青年がみせる煮え切らない態度は意外だ。
「いや、違う。俺は、……そんなことじゃないんだ」
 言語としての体をなさない、自問自答と変わらない言葉つきは、とても大切な者が喪われた者のそれとは思えない。
 促されて手にした名簿も地図からも情報が欠落している。そのくせ得手であるはずの剣を執らない。動かない。
 妹のために修羅となった自身からは想像できない状態に、レナスのために動くだろうルシオは落ち込まんとしていた。
 それゆえに、洵は練れた鋼の剣をいつでも抜けるよう、さりげない素振りで自身の側に寄せておく。
 収束する彼の意志が、自分に対する害意であれば叩き伏せねばならない――と。

「俺はただ、……誰にも。悲しい思いをさせたくなかっただけなんだ!」

 だが、青年がはっきりとかたちにしたのは自責と、言い訳であった。

187君が呼ぶ 哀しみのシュラオベ ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 18:48:57 ID:nwPGaamk
「それで、ひととおりの自己満足が済めば相手を見捨てるか」
 放送までの時間、ミランダを待ちながら聞いたルシオの来歴を持ち出して、洵は鋭く言を放った。
 夢の中で親しい者の名を呼んだという金髪の青年が今も生きているかどうかさえ、ここにいる二人には知りようがない。
 けれど、洵の控えた名簿によれば、彼の相手。“シン”という参加者は、既に殺し合いの場から脱落している。
「それは――」
「理想のほどは立派だが、この場にいる全員を掬い上げられるわけもない。
 俺が、ここに連れて来られる前……最後に見た戦乙女さえ、それを傲慢と断じ、ロキだけを追ったものだ」
 あの振る舞いの根本にあるものがルシオの仇討ちか、自己満足か義務感か悲哀か、洵には量れなかった。
 それでも、事ここに至れば、彼女の底にあったものがいずれであろうとも構いはしない。
 いなくなったものや取りこぼしたものに思いを馳せるのは、一度だけで、ひとつだけでたくさんだ。
「すまないが、今の俺に、お前を気遣う余裕はない」
 お前も心配していた、ミランダを探しに行く。
 ルシオを、彼の美徳であろう人のよさでもって縛りつつ、洵は腰を上げた。
 ここで彼を殺しても問題はないが、今なお戻らないミランダの去就によっては多対一を強いられる可能性もある。
 彼女の警戒のほどや二心の存在する可能性は、短くとも濃密な不在の時間が示していた。
 手札としての神官にも、戦乙女と懇意であった者にも見切りをつけた男は、卓上を飾る薄布をひといきに抜き取り、
夜闇に目立つランタンの灯をぼかして裏口へと向かう。
「待ってくれ!」
 ルシオが重い口を開いたのは、洵が居間を立ち去ろうとしたのと同時だった。
「――何だ」
 一瞥した青年の瞳に、先刻と変わって強い光が宿されるさまを見た男の眉根が寄る。
「洵。今の話が本当なら、いや……そうでなくても。
 彼女は――ヴァルキリーは。生きてなきゃならなかったんだ」
 訥々とした言葉つきを存外に太い響きで吹き払う、彼の頬には迷いと自責が混交していた。

 * * *

 手短にと釘を差したものの――
 ルシオの話を聴き終えた洵は、難しい表情で床に座していた。
 胡座をかき、片手であごをつまんだ彼の傍にあるランタンには、いまだ灯が点いていない。

「ホムンクルスとオーディンの……成長する神の体が、本質的に同じだと?」

 魔術師連中でも荒唐無稽と言うだろう話を彼が切り捨てないのは、ひとえに自身の見聞きしたものゆえだった。
 アーリィによって器を奪われ、精神体を砕かれたレナスを一時封じた器は、まさしくホムンクルスだったのだから。
「ああ。ロキに殺された俺が生き返れたのも、彼女の力さ。
 成長出来る神になったヴァルキリーは、ドラゴンオーブで破壊された人間界も、神界も蘇らせたんだ」
 だから、彼女がいなければ、すべてがどう転ぶか分からない。

「俺達と同じに、死んでヴァルキリーの中に入ったロキが生きていることにも、最初は驚いた。
 けど、お前が“そこ”から来たって言うなら、納得がいくんだ――」
「俺達は別の時間……おそらく、都合の良い時期から集められたか」

 確かに、自分と同じ時期からやって来たというのなら、フレイは腑抜けていたはずだ。
 主神の“滅”を前にしたはずの女神は、凶行を前にしてなお鏡面のごとく落ち着いた気を湛えていた。
 ゆえに、ルシオの仮説に首肯すると同時に、それよりも一歩進んだところで……洵は唸る。

 彼が気にかけるのは神界アスガルド、人間界ミッドガルド、冥界ニブルヘイムや妖精界アルヘイムといった
世界樹ユグドラシルの枝葉ではなく、根からして別の理で成り立つ世界の存在だった。
 見たことの無い道具、“コミュニケーター”とやら。絹や綿、麻ですらない質感の衣類。獅子戦吼や鳳凰天駆、
といった、系統だっていながら異質な、流派剣技の添え物らしからぬ格闘のすべ。
 そして数ある異質の中でも頭が抜けた、移送方陣の比でない速さを有する空間転移術――。

188君が呼ぶ 哀しみのシュラオベ ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 18:51:20 ID:yEeCRB.6
 クレスとマリア、二人との戦い以前に殺した男のナイフもだ。あれの有する機構は、神界にさえ存在していない。
 それでも武具のひとつ程度なら、神まで引っ張り込んでゲームを始めたルシファーがどうとでも調達するだろう。
 だが、戦士や魔術師の身につけた技や呪文ばかりは違う。あの血の通い方は、後から付け足せはしない。
 それを見た今なら、あの、“ルシファーを倒した”との言葉にも得心がいこうが――

『ならば、つまり……奴もまた蘇ったのだな。
 如何にしてかは知らんが、時間を渡ることも、俺達に肉を持たせる事も、奴は可能たらしめている』

 それこそが洵の希望を支え、現実味をまとって胸を押し上げた。
 あまりにも今さらな話ではあるが、魂のみの存在となった自分達が、レナスの手によるそれと同じに具現化――
マテリアライズされている時点で、気付くべきであったろうか。
 ルシファーの、物理的な意味にとどまらない強さを。褒美という単語の裏付けを。
 そして、理解している。

「ああ。確かに、由々しき事態だな……」

 ためらいがちに考えを表明する優しい青年が、戦乙女と懇意であろうとなかろうと、利用できる駒に違いないと。
「だが、――今はこのまま放っておいても、ある程度まで人数は減ってくれる」
 だからこそ、彼の外堀を埋めるべく……少し前には言わなかった台詞を、洵は口の端に載せていた。
 本来ならば気色ばむはずのルシオからは、反応がない。それこそが“反応”であると断じて。
「ルシファーとやらは、神界から俺達の魂を実体化した状態で呼び出した、神のごとき輩だ。
 しかし、ヴァルキリーがオーディンと同じく、成長する神となったらしいことはお前の話が証明してくれた。
 彼女が“何処”から来たのかは分からん。だが、奴に……ひいてはロキやラグナロクに対抗出来うる者がいなければ」
 言いかけた剣士はためらうような、あるいは決意を固めたかのような風情で言葉を濁す。
「あの世界に生きる、俺の妹。阿衣に何が起こることか、知れたものではない」
 濁して、今度こそは最後まで言い切った。
「洵。お前、まさか」
 自ら体験した魂の死と、大切な者の死。
 質のちがう喪失を両方体験していた青年は、それゆえに、彼の思うところを察した。

 “貴方の言う“すべて”って、何?”

 すべて。ヴァルキリーが紡いだという言の葉は、数え切れない寄り道や回り道をしたルシオの胸をえぐる。
 そして、洵の指した、すべて。助けてやりたいと思う者に対する感情は、ルシオ自身も抱いていたがために。
「ああ」
 洵の肯定を耳に入れても驚かなかった自身にこそ、青年は衝撃を受けていた。

189君が呼ぶ 哀しみのシュラオベ ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 18:55:20 ID:AYN4wIao
「俺は、あの戦乙女に借りがある。感謝してもいる。それは事実だ」
 続く、仲間の言葉。彼が戦乙女といかにして出会ったか、思えば聞いたことがない。
「だが、それ以上に。俺は、阿衣の為ならば、命も誇りも惜しいとは思わん。
 ……それを盲目と糺されようが、立つ世界が違おうが、阿衣を大切に思うことには変わりがない」
「あ――」
 みずから認めたように、盲目にして愚直な洵の想いが、ルシオの心の底にあるものを衝く。
 慕うがままに売られると知った彼女の手を引き、夜を駆けたあの日。自分は、彼のような目をしていただろうか。
「神になり得ない俺達が誰かの命を得たければ、自他の命を失うしかあるまい」
 回顧の生んだ間隙に、“皮肉だがな”と付け足された男の言葉が舞い込み、
 瞬間、銀は朱に変わる。廃虚と化した街で、自分の代わりに置いて逝った少女の姿が脳裡をよぎる。
 だからって、私を置いて逝かないでよ。薄れゆく感覚に、それでも突き刺さった言葉は今も鮮やかだ。
 しかし、彼女ならば。すべてを守れた、彼女であるからこそ。
「――そう、なんだろうな」
 青年は、譲れないものへ迷いを見せない仲間に、決定的な、
 返事をした。

 * * *

 あの放送から、およそ15分。
 その間に、ルシオは一夜も過ごしたような錯覚を受けていた。
 だが、それでも生来のカンの良さや、スラムで磨がざるを得なかった“ネズミ”としての感覚は鈍らない。

「こいつは、冗談じゃないぞ」

 首肯ののちに訪れた濃密な沈黙の後に口を開いたのは、洵。
 今後のために、彼から受け取った名簿と地図の書き込みを控えながら、彼はうめいた。
「気付いたか」
「ああ。まるで、貴族の連中がやるネズミ取り――盗賊を捕まえるための罠みたいだ」
 ささやかな褒美である、見せしめの支給品を配置された島の北東部。
 そして、それを目当てに動こうとする者を迂回させにかかる、禁止エリアの位置と発動時間。
 例えば島の東からC-3――安全な場所にある褒美を目指そうとしても、1時の時点で北を、3時で南を行く選択肢が潰される。
 といって、次の放送までに何とか通過できそうなF-6、G-7を目指せば、その時には襲撃側の恰好の的だ。
 島を分断しようという思惑には、これでは誰もが気付いてしまう。
 だからこそ、この流れには簡単に逆らえない。
「これだけあからさまなら、待ち伏せもやりやすいよな……」
 あのミカエルのように、相手を選ばず戦いを求めた輩でも、陣取るべき場所は分かるはずだ。
 ――つまり、まずもって誰もが、殺し合いの構造から逃げられなくなってしまった。
 それどころか、誰かの死が次の殺しを生む泥沼に落ち込む可能性さえ十分である。
「だが、俺達はそれに乗る必要はない。
 激戦で消耗した後に、残りの者を相手どれる保証もないからな」
 むしろ、地と時の利を得ているからこそと、洵が提案したのは傍観であった。
 ここから北東に位置する神社に配置されたデイパックを回収した直後、この村に戻る。
 そこに、回復の力が使えるミランダが戻っていればよし。いなければ自分達に仇なす対象と判断する。
「クレスと、マリアって奴もか。
 同じような事を考える奴は、どこにでもいるみたいだな」
 ルシファーが生きていると知った青い髪の少女が、生き残りを目指して金髪に赤いバンダナの青年と組んでいた。
 後者の特徴を聞くに、ルシオは陽が落ちる前に会ったチェスターの探し人である青年を思い浮かべてしまう。
 彼のように裏表が無い者の仲間らしく、熟睡出来てしまうほど緊張感の無い人間が人を殺せるとは思わないが、
きっと、それを言えばプラチナが。ヴァルキリーもあの時と同じ言質をもつ台詞を紡ぐだろう。
 愚かしい、くだらない。その言葉のひとつひとつに胸を裂かれたものだが、今は、それほどでもない。
 けれども――
「悪い。ちょっと……すぐに、なんとかするから」
 また置いていかれたら、どうしていいか分からない。
 洵の提案に乗り、自身で思考できようが、やはり。回収しきれない感情は積もりに積もって、ついに堰を切る。
『あの時。ロキに殺される前も、こうだった。俺は、成長が無いな』
 未熟さを露呈して、誰に言い訳をするつもりなのか。結局、それは言葉としての形を無くす。

190君が呼ぶ 哀しみのシュラオベ ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 18:58:21 ID:.EQpNDhU
「……他に。警戒するのはレザードと、ロキだ。
 ヴァルキリーが死んだって、あいつらは彼女の体や魂をどう、使うか。予想できない」
 強引に涙を拭ったルシオは、洵のそれと同質であろう光を、青い瞳へと宿してみせた。

 * * *

 ひとつだけ、洵に告げなかったことがあった。
 アービトレイター。ルシオ自身は銘すら知らぬ英雄の携えた剣が、歩み始めた腰で重さを主張する。
 詰まった吐息を漏らして青年が思うものは、神々の黄昏、ラグナロクにおける世界の破滅と再生の詳細であった。
 死によって人と繋がる戦乙女。オーディンと同質の力を得て、創造の力を手にしたレナス・ヴァルキュリア。
 彼女は世界の破滅に際してすべての人の魂があげる“声”を聞き取り、再びすべての人々を、世界を創りだした。
 洵に出会い、未来にあるものを知った彼の決意を聴くまでは、さほど意識することもなかったが……。

 “ここで戦っても、結局はアスガルド丘陵で魂の死を迎え、彼女にすべてを創られることになる”

 再生に伴う不可避の運命を知ってしまえば、彼はどれほどの衝撃を受けるだろう?
 自分の魂が再構成されると知ってしまえば、彼はどれほどの恣意を想像するのか?
 己に訪れてしまう行く末を知ってしまえば、彼はどれほどの失望を抱くことか――
 “一緒に、生きましょう”。いくら仲間が彼女の見せた側面を知っていても、こればかりは言えはしない。
 世界を創造した戦乙女、レナス・ヴァルキュリア。あるいは、寒村に生きた少女、プラチナ。
 彼女の愛を受けた人間にして、ロキに処分された後に魂そのものを彼女に作られたルシオは、
 しかし、だからこそ、創造によって孤独となった女神を哀しめなかった。

『プラチナが今の“俺”を創ったとして、一体……何が問題なんだ。
 たったの十四で死んだあいつを、俺はずっと忘れられなかったじゃないか。
 優しかったあいつが勇敢な戦乙女になっても、彼女がプラチナ本人でなくても、変わりはなかったじゃないか!』

 ――銀色だったから。
 下界に遺した少女の台詞がよみがえる。
 そうだ。陽光に透きとおり、埋もれ水のごとく清列に流れた紫の髪に、自分は何よりプラチナを視ていた。
 けれども“彼女を好きだ”ということには、今も、あの頃であろうとも、変わりはない。
 最も大切にしたい感情の発露に変化がないと言うのなら、“いちど創られた自分”に、なんの問題があろう?

 “他人のイメージを重ねるなんて、その人に対する侮辱でしかないのは分かってる”

 すべて忘れてしまいたいとまで口にしたプラチナが、
 その手を引いて人買いの手から救おうとした自分の記憶を思い出し、
 創造した“ルシオ”に、あまりに幼かった、あまりに危うかった恋の一幕を、
 最期に彼女を抱きとめた少年の面影を自分に反映させていたとしても、
 創られた事実を哀しむ権利など、彼にはない。

『最初にそうしたのは、他の誰でもない、俺なんだ』

 プラチナとヴァルキリー。
 ふたりの横顔をひとつに重ねていた青年は、年齢に反して滑らかな曲線を描く頬を月光へさらす。
 だから。あごを引いた口の中に反響した言葉の破片を押し隠しながらも、胸中でなぞり固めた。
『だから、今度はもう、泣いたりしない。
 もう一度拒絶されても、イヤリングみたいな奇跡が起きなくてもいい。
 でも。彼女に置いていかれたくない、一緒に生きたい気持ちだけは……絶対に。俺のものだ』
 ややあって、懊悩を諦観でもって締め出したエインフェリアの双影が距離を縮めた。


 ――何事もなかったかのように、夜風は表情を変えぬまま海へと吹き抜ける。
 草に埋もれかねないほどに小さな花は、その腕に素朴な白さがにじむ花弁をさらわれていった。

191君が呼ぶ 哀しみのシュラオベ(last) ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 19:00:10 ID:AYN4wIao
【E-01/深夜】
【洵】[MP残量:100%]
[状態:腹部の打撲、顔に痣、首の打ち身:戦闘にはほとんど支障がない]
[装備:ダマスクスソード@TOP、木刀]
[道具:コミュニケーター@SO3、スターオーシャンBS@現実世界、荷物一式]
[行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする]
[思考1:出会った者は殺すが、積極的に獲物を探したりはしない]
[思考2:ルシオを利用。彼と共にE-2に向かい、見せしめのザックを入手する]
[思考3:ミランダとの離別を半ば確信。状況次第で殺害も視野に入れる]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[現在地:E-1/平瀬村周辺・北部]

【ルシオ】[MP残量:100%]
[状態:軽い疲労、わずかな眠気、焦燥と不安]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:コミュニケーター@SO3、荷物一式]
[行動方針:レナスを……蘇らせる]
[思考1:洵と共にE-2へ向かい、見せしめのザックを入手する]
[思考2:レザード、ロキを警戒。レナスの死体の状態を知りたい]
[思考3:レナスを大切に思う自身に対する諦観。現状は積極的な交戦を選ばない]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[現在地:E-1/平瀬村周辺・北部]
[備考]:※コミュニケーターの機能は通信機能しか把握していません。
    ※マリアとクレスを危険人物と認識。名前は知りません。

192 ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 19:01:29 ID:DTqpp/sI
以上で投下を終了します。
既存の話を読ませていただいた上で、洵の参戦時期を決定しました。
Chapter8・Aエンドルートでレナスの復活を見た後、アスガルド丘陵でロキと戦う前を想定しています。
意見や感想、矛盾などがありましたら、忌憚無くお寄せいただけると幸いです。

193 ◆69O5T4KG1c:2009/05/12(火) 19:11:40 ID:DTqpp/sI
っと、推敲漏れ。
>>189の場面転換後は、“放送より三十分ほど”が正しいです。
あれだけ話して15分とかどんだけ早口なんだよ! ……申し訳ないです。

194名無しのスフィア社社員:2009/05/12(火) 23:51:43 ID:coiikjbM
おおお、投下乙です!
こっちで言えばいいんだよな?
問題は全然ないかと思われます。
禁止エリアについてしっかり考察もされてますし、繋ぎやすさの面でも全然問題ないかと。
感想は本投下までとっておきますね!

あと、一点だけあげるとしたら>>186
>付け足した”
とありましたが、冒頭に“が抜けてる気がします。
改めて仮投下乙でした!

195 ◆cAkzNuGcZQ:2009/06/03(水) 19:59:39 ID:JIjIYVmI
一応完成はしたんですが、話全体の流れに不安があるので、まず試験投下させて頂きます。
不自然な展開だったり矛盾があったりしたらご指摘願います。

196Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:00:39 ID:JIjIYVmI
G−5エリアの山道。辺りは暗闇で視界が殆ど利かない。
唯一の自然光源である月明かりは密集している樹々の葉に遮られてしまっている。
稀にその隙間から僅かに射し込む光は、暗闇に目を慣らしたい人間にとってはむしろ逆効果となり、
余計に暗闇を強調しているかのようだった。

レナとプリシスの2人はランタンを点けてこの山道を下っていた。
『夜道に揺れ動く照明は人を寄せ付ける効果が有る』というのは、
この島でのたった半日だけの仲間、アリューゼがプリシスに教えてくれた事だ。
いや別に2人には誰かを呼び寄せるつもりなどは全く無い。
この暗闇の山道を歩くには、灯りを点けなければ余計に危険であり時間を取られてしまう、というだけの事だった。
一応不意打ちには備えてレナが左耳に魔眼のピアスを装着していたが、今のところピアスは何の反応も示さなかった。

「この辺だよね?レナ」
「そうね…」

もうすぐ最初の目標地点である、G−5エリアの三本の道が合流する地点に到着する。
そこには、半日程前にレナとディアスが見つけた2つの死体があるはずだった。
2人が平瀬村に行く事に決まった後、レナはまず最初にこの場所の死体の事を伝えた。
出来る事ならあのような惨殺死体など何度も見たくは無い。見ないで済むならそれに越した事は無いのだが、
この島からの脱出に繋がるかもしれない“首輪の結晶体”を回収するには
平瀬村への通り道にある彼等の死体は非常に都合が良いのだ。泣き言など言っていられなかった。


「あ…あそこかな…」
しばらく早足で進んでいると、左右に別れる道が見えてきた。倒れている2つの人間らしき物体も視界に入ってくる。
死体はレナが昼間見つけた時のままの姿のようで、周辺の荒れ具合も変わっていない。
2人は立ち止まり、レナがプリシスに話しかけた。
「酷い状態だから、覚悟しておいた方が良いわよ。…こんな言い方もあの人達に失礼かもしれないけど。でも…」
「…ねえ、レナ?――」
レナは言葉を続けようとしたが、死体を眺めていたプリシスがそれを遮って質問をしてきた。
その声は、気のせいか若干震えているように聞こえた。
「――ここで死体見つけたのって、お昼頃って言ったよね?」
「え?…そうよ。最初の放送が終わってから…そんなに経ってなかったと思う」
「…その時から、首が斬られてたの?」
聞かれて、レナはプリシスに死体の状態までは話していなかった事を思い出す。
さっきは、ただ2つの死体がここに有る事を伝えただけたった。
「…ええ…酷いわよね…こんな事をするなんて…」
レナは再び見る事になったこの惨状に気が滅入りそうになる。
と同時に、プリシスの事が気になった。彼等に同情して塞ぎ込んだりはしないだろうか。そう思いプリシスの方を振り向いた。
だが、レナの心配など杞憂であるかの様に、何故かプリシスは死体に向かって走り出したではないか。
「プリシス!?」
プリシスは女性の死体の元に駆け寄ると、屈み込んで死体を調べ始めた。
(…首輪を回収するだけじゃないの?)
首輪の回収の為に死体の首を自分達で切断しなくてもいい、という点でも彼等の死体は都合が良かった。
だが今、どうもプリシスは首輪を回収しようとはしていない。何をしているのか、レナには見当がつかなかった。
「どうしたの?プリシス」
声をかけるがプリシスは返事を返す事無く、もう1人の死体も調べ出し、更にランタンをかざして死体周辺を調べ始めた。
視線を地面に落としながらも時折レナの方向を向くプリシスの表情は、真剣そのものだ。
どうやらレナの声は届いていない様子である。
レナは、極力死体が目に入らないようにプリシスに近付き、もう1度声をかけようとした。

197Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:01:39 ID:JIjIYVmI
プリシスはこの2つの死体を見て、瞬時に昼間発見した夢瑠の事を連想していた。
夢瑠は現在地からほんの半エリア程の距離だけ南に離れた地点で殺されていた。
そう、まるで、この男女の死体と同じ様な状態で。
続けて連想される事はプリシスの最も考えたくない事だったが、
『きっと状況が似ているだけで、夢瑠の事とは関係が無いに決まっている』
プリシスは無理矢理にそう思い、それを証明する為に死体を調べ始めた。
(…そんなことないよね?)
放送後に発見された死体。その1、2時間後に夢瑠達に訪れた惨劇。半エリア程度の距離。
(…まさか…だよね…?)
切り裂かれている男女の身体。切り裂かれていた夢瑠の身体。身体に残る傷跡。
(…この人達も…首輪が無い…?)
切断された首。持ち去られている首輪。
だが、調べれば調べる程、考えれば考える程、両方の出来事は関連しているようにしか思えず、
プリシスの考えたくなかった或る1つの答えが導き出される。
すなわち、彼等2人を惨殺したのもアシュトンである、という答えだ。(首輪を持ち去る理由は不明だが)
プリシスもそんな答えは認めたくはなかったが、それ以外の推論をいくら都合良く組み立ててみても、
これだけの状況証拠の前では“アシュトン犯人説”以外の推論など何の説得力も持たなかった。
「…アシュトン…」
無意識に、呟いていた。
(この人達も…あたしのせいで…)
再び遭遇したアシュトンの狂気の足跡。
ネルと夢瑠の事。レオンの腕の事。アシュトンを恨みながら退場してしまったジャックとアーチェの事。そして今の彼等の事。
その足跡は否応なしにそれらの事を思い返させた。
そして思い返す度に、一度は抑え込んだプリシスの自責の念が少しずつ膨らんで大きくなっていく。
(…あたしのせい…それじゃあ…)
だが今のプリシスには、
(あたしがアシュトンを止めなきゃ!)
泣きじゃくっていた先程までの様な自虐的な考えは無かった。
勿論、自分のせいでアシュトンを人殺しにしてしまった事や
アシュトンが死なせてしまった人達への悲しみと贖罪の気持ちは大きい。
しかしその気持ちよりも勝り、そして彼女の自責の念が働きかけたのは
“どうにかしてアシュトンを止めたい”という前向きな、希望に通じる想いだった。

(でも…止めるって言ってもどうしたらいいのかな…?
 いつもだったら…どうしてたっけ?アシュトンが落ち込んでたりしたら…
 あ、ひっぱたいて励ましてたんだ。いつもならそれで立ち直ってくれたんだけど
 今のアシュトンは『いつも』のアシュトンじゃないんだもんね…
 …ひっぱたいたくらいじゃダメだよね…人を…殺しちゃうくらい…だもん。
 こんな残酷に…何人も何人も。…あたしの為に…あたしのせいで…
 でも…あたしの為にやってるんなら…あたしにしか止められないんだよね!        「――ス」
 どうしたらいいのか…まだ分かんないけど…頑張らなきゃ!アシュトンの為にも…)    「――シス…―リシス」

そしてその想いは少しの間、プリシスを思案に暮れさせる事になっていた。
レナが呼び掛けている事にもなかなか気が付けない程に。

198Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:02:21 ID:JIjIYVmI
「プリシス…プリシス」
「……ほぇ?」
何度目かの呼び掛けで、ようやくプリシスの意識はレナの呼び声を認識したようだ。
振り向いたプリシスの目は、まだ今一焦点が合っていなかった。
「…あ、ゴメンゴメン、なぁに?」
「…大丈夫?何か…あったの?」
「え?…あ、ううん!……首輪。そう、この人達の首輪がどこにも無いんだよ!」
プリシスは妙に慌てた様な態度で、微妙にチグハグな返答をした。
何かを誤魔化そうとしている?レナにはそう感じられた。
だが、プリシスの誤魔化そうとしている事も気になるが、『首輪が無い』という指摘も気になった。
「…首輪が?」
あまり直視したくなかったが、レナは死体を確認してみる。確かにどちらの死体にも首輪が無かった。
昼間はどうだったかと思い返すが、駄目だった。覚えていない。
惨殺されている事自体に気を取られ、首輪にまでは気が回っていなかったのだ。
そもそも昼間首輪が無い事に気付いていたら、この場所でわざわざ立ち止まろうとはしなかったが。
「何処かその辺りに落ちてるんじゃない?」
レナもランタンをかざして辺りを見回してみるが、少し見回した程度では周りに何が有るかまでは良く分からない。
辺りの探索をしてみようと考えたところで、
「…ん、無いと思う。多分首輪は犯人が持ってったんだよ」
プリシスがそう言い、立ち上がった。
「犯人…?こんな事をする犯人がどうして?」
自分達のように脱出を目指している者ならともかく、殺し合いに乗った者が首輪を持ち去っていく必要は無いはずだ。
「…そんなの…分かんないよ…」
プリシスは小さく、悲しそうに呟いていた。
だが小声だった為、レナは聞き取る事が出来なかった。
「え?」
「……ん!何でもないよ!さ、行こっ!」
プリシスは平瀬村の方向へ歩き出した。そのあまりにもあっさりとした様子にレナは疑問を抱く。
(…探さないの…?)
首輪は、脱出する為にはおそらく必要な物なのだ。
確かに今死体には首輪は無いのだから、彼等を殺害した犯人、もしくは他の誰かが持っていったと考えるのはまあ良い。
だが、それはあくまでも推測に過ぎないのだから、もう少し周辺を探してみても良いはずだろう。
なのにプリシスはあっさりと彼等の首輪を諦めてしまっている。
プリシスは“首輪は犯人が持っていってしまいここには無い”と『考えている』のではなく『確信している』ようだった。
「プリシス…――」
レナは思った。プリシスはここで何かに気付き、隠そうとしている。
そして、はっきりとは聞き取れなかったが、先程プリシスが考え込んでいた時に呟いていた言葉。
もしかしたら名前を呟いていたのではないか?レナにある予感と不安が芽生える。
プリシスがレナの呼び掛けに振り向いた。
(この人達を殺した犯人はアシュトンなの?)
レナはそう聞こうとした。プリシスがわざわざ誤魔化そうとする事などはそれ以外考えられなかった。
「――ううん…何でもない」
だが、聞くのは躊躇われた。
『彼等を惨殺した犯人はアシュトン』
その答えはレナ自身が聞きたくない事でもあったから。
「……うん!さ、急ご!レオン達より先に戻ろーね!」
まるでゲームでもやっているかのように言い、プリシスは前を向いて歩き出す。
レナも、胸の中に芽生えた暗い不安からは目を逸らす事にして、プリシスに続いて歩き始めた。

199Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:03:22 ID:JIjIYVmI
余談ではあるが、もし今2人がこの周辺で首輪の探索をしていれば、
もしかしたらディメンジョン・スリップを握ったロジャーの死体を見つけ出せたかもしれない。
だが、2人は探索せずにこの場から離れていく。当然、ロジャーには気付きようも無い。
誰かがロジャーを発見する時はいつになるのだろうか?いや、その時は来るのだろうか?
それはまだ、誰にも分からない。


死体の有った場所からしばらく道なりに進んだところで、レナは地図を出して進路上を確認した。
この場所から目的地である平瀬村に入るルートは、現実的に考えて2つ有る。
1つはF−3を通るルート。
こちらは村から出る、または村へ入ろうとする参加者と出会う可能性が有り、比較的危険度の高いルートだ。
もう1つはH−3北西部からG−3の禁止エリアを掠めるように通過してG−2に抜けるルート。
こちらは一見したところは禁止エリアに阻まれているが、首輪の30秒の制限時間のお陰で通り抜ける事は可能だ。
そして、首輪の30秒の制限時間を知らない人物ならあまり近寄る場所ではないだろう。
つまり、他の参加者が通る可能性は低く、安全性は高いと思われる。
レナとプリシスの2人は事前に、
レオンの『エルネストは村に居る可能性が高い』という推理、
アルベルの『出来るだけ安全なルートで進む』という旨の提案から、
安全性の高いルートであるH−3ルートから平瀬村に向かう事を決めていた。

「ねえ、平瀬村に到着する前に少し休憩しない?村に着いたら…何があるか分からないし」
レナが確認していたのは、進路上で休憩を取り易そうな場所だった。
今、レナはプリシスの事を心配していた。
その理由は、先程の死体を調べていた時と、その場所から今ここに来るまでの間の、
沈痛そうに眉根を寄せて思案に沈んでいたプリシスの様子にある。
いつものプリシスだったら何かを悩んでいる時や悲しんでいる時でも、
先程の様な露骨に思案に沈んでいる姿などは周りに見せようとせず、表向きは明るく振舞おうとするのだ。
だが、今のプリシスにはそんな様子があまり見られない。
それはつまり、感情を取り繕う余裕も無いくらいに肉体的、精神的な疲労が大きい、という事だろう。
他の参加者が集まっていると思われる平瀬村に到着してしまえば、
どんなタイミングで、どんな参加者と出会い、どんな事が起こるかは全く予測出来ないのだ。
出来る事なら、そんな危険な場所に今の状態のプリシスをこのまま向かわせるより、
村よりも安全であるはずの進路上で少しでも休ませて疲労を回復させてやりたい。
レナはそのように考えていた。
「大丈夫大丈夫!休むのはレオン達と合流してからにしよ!」
「…でも…」
「それに、今は時間がもったいないじゃん?はやくエルネストを見つけなきゃ!」
「……そう…ね」
だがプリシスを休ませたい気持ちと同時に、『時間が無く、急がなくてはならない』という気持ちもレナの中に存在していた。
状況は刻々と変化する。いつ仲間達が危険と遭遇してもおかしくないのだから、
今はプリシスの言うように、休んでいる暇を惜しんでも仲間達を探す事を優先するべきなのは間違っていない。
いや、むしろ正しいと言えるだろう。
その気持ちも持っていたレナは、今のプリシスの言葉に自分の提案を通せる意見を持ち合わせておらず、
『プリシスを休ませたい気持ち』と『急がなくてはならない気持ち』
自分の中に在るこの2つの相反する気持ちに、無力感にも似たもどかしさをただ感じる事しか出来なかった。
そして、自分が先程のプリシスの様に沈痛そうな表情を浮かべている事には気付いていなかった。

200Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:04:33 ID:JIjIYVmI
一方のプリシスは、レナが休憩を提案した真意を何となくではあるが気付いていた。
プリシスは目の端でレナを捉える。その表情は明らかに暗い。そして微妙に空気が重いように感じられる。
(やっぱり…心配させちゃったかな?)
おそらくレナは、先程から度々上の空になっていた自分を心配してくれてあの様な事を言い出したのだろう。
ただ、心配してくれるのは純粋に嬉しい事ではあるのだが、
『自分を心配して』と言うのは『自分のせいで心配かけてしまった』と言う事でもあるのだから素直に喜んでもいられない。
プリシスはアシュトンの事を考えるのは後回しにして、重くなってしまっている今の空気を何とかしようと考えた。
別に誰かが決めた訳では無いのだが、前の冒険でもパーティの雰囲気を盛り上げるのは彼女の役目だったのだ。
そのムードメーカーが自身のせいで雰囲気を暗くしてしまっては元も子もない。
(そだ!アレがあったっけ)
プリシスは自分の持ち物を思い出した。『アレ』の思い出話ならレナを元気づけられるかもしれない。
「あ、そだ。レナ、良いもの見せてあげる!」
「…良い物?」
ちょっといきなりすぎたかな?と思いながらもプリシスは自分のデイバッグをまさぐり、
「じゃ〜ん!」
1つの道具を取り出した。
「あ…それ」
「そ、『盗賊てぶくろ』だよ!懐かしいでしょ?」

『盗賊てぶくろ』
他人の持つアイテムを一定確率で盗む事が出来る手袋だ。
成功すればどんなに厳重に守っているアイテムでも気付かれずに盗み取れるが、
失敗すると、何処からともなく聞こえてくる『ブブー』というベタな効果音のせいで必ずばれる。


「本当、懐かしいわね。…持ってきてたの?」
「違うよ。これね、あたしの支給品の中に入ってたんだよ」
「へぇ、こんな物まで有るのね。…ふふ、クロードがよくそれ持って街中走り回ってたわよね」
レナはクロードの姿を思い出した。まだクロードとはこの島で再会出来ていない。
クロードは無事なのだろうか。放送では呼ばれてはいないが、誰かに襲われて怪我をしてないだろうか。
そのような事を考え、ほんの少し、不安で胸がチクリと痛んだ。
「な〜に言ってんの。レナもじゃん」
プリシスがニンマリといった感じの笑顔で言う。
「そ、そんなことないわよ」
あまり突っ込まれたくない話に、思わず顔を赤くして叫んでしまった。
「ね?ね?リンガのクロードとエルネスト覚えてる?」
プリシスは話を広げようとする。1つ面白かった話を思い出したのだ。
「あれよね?クロードがエルネストさんの持ってたバトルスーツを狙って、リンガ中つけ回してたのでしょ?」
レナもその話は良く覚えている。
その時のエルネストは自分をつけ回しているクロードに気付いており、
居心地悪そうにリンガの町中をうろうろと移動していたらしい。
「そーそー。そんで何か変な本に影響されてたオペラがさ、
 『エルは渡さないわよ!クロード!』な〜んて変な誤解しててボーマン先生が大笑いしてさ…」
そこまで喋ってから、プリシスはしまった、と思った。
オペラの名前を出した時からレナの表情が段々曇り出したのだ。
「あっ……えと…ゴメン」
「…ううん、平気よ」
再び暗い雰囲気に戻ってしまった。

201Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:05:09 ID:JIjIYVmI
だがプリシスは悪気があって言ったのではない。
この場を少しでも明るくしようとして言ってくれた事なのだ。それはレナにもよく分かっている。
「…ボーマンさんって言ったらクロスよね」
プリシスの『お姉さん』としては、プリシスだけに気を遣わせる訳にはいかない。今度はレナが話を始めた。
「…クロス?」
「ほら、クロスで首輪にオリハルコンつけた犬が居たじゃない?」
それはプリシスも覚えていた。確か、茶色の雑種犬だ。
「あ、あの犬?可愛かったよね〜♪そだ、思い出した!
 ボーマン先生さ、『犬っころの分際でオリハルコンとは生意気だ!』とか言って盗ろうとしてたっけ!」
「そうそう!結局失敗しちゃって。たまたまそばに居たアシュトンと一緒にその犬に追いかけられて、
 みんな『さすがアシュトンはロクな目に…」
プリシスの顔を見て、レナはハッ、と口に手を当てた。
プリシスの笑顔は先程のレナ同様、徐々に悲しげな、力の無い笑みに変わっていく。
今は『アシュトン』は禁句に近い言葉だった。
「あ…ごめんね…」
「……ううん!い〜んだよ。楽しかった事を話してるだけじゃん!」
「…そうよね…」
「…そうだよ…」

楽しかった思い出話。
そう、かつての冒険は辛い事も有ったが、思い返してみれば楽しかった思い出ばかりが蘇る。
いや、辛かった事だって、今になってみれば笑いながら話せているのだ。
きっと10年、20年と経っても、何十年も経ってみんながヨボヨボの老人になっても、
あの冒険は楽しい思い出として心に刻み込まれていたはずなのだ。
…こんな事に巻き込まれさえしなければ。

今の気持ちを素直に表すかの様に沈黙が2人を包み、笑みは無くなった。
並んで歩いていた2人だったが、プリシスの歩みがやや遅れ始めた。

2人はかつての冒険を思い出して、理解した。
あの冒険の思い出は今、痛みと悲しみに包まれているのだ。
決して傷の有った思い出ではない。つい2日前までは、ただ楽しかった思い出だった。
その思い出を、何故今は思い出すとこんなにも心が痛むのだろうか。
理由は分かっている。
この無意味な殺し合いが仲間達だけでなく、彼らとの思い出や絆までをも傷つけているのだ。
では、何故楽しかった思い出を、こんなにも悲しく思い返さなくてはならないのだろうか。
何故レナが、プリシスが、皆がこんな思いをしなくてはならないのだろうか。
その答えは、2人には出せなかった。
((…え?))
代わりに、2人は気付いてしまった。
((もしかして…ずっと…?))
あの冒険を、今までのように楽しく笑って思い出せる日は、もう2度と来ないのだという事を。
どうしたってレナを人質に取ったオペラを思い出してしまうのだから。
何の躊躇いも無くレオンの腕を切断したアシュトンを思い出してしまうのだから。
こんな事で命を散らせてしまった仲間達を思い出してしまうのだから…

202Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:05:48 ID:JIjIYVmI
その事に気付いた2人は、心が抉り取られたかのような、激しい喪失感を感じた。
それは、仲間の死や裏切りで感じてきたものとは全く別の、今までに経験した事の無い喪失感だった。
その喪失感は瞬く間に胸全体に広がり大きな痛みへと変化する。
全く想定していなかった痛みに不意を衝かれた2人は、思わず泣き出したくなった。声を上げて泣いてしまいたい。

(駄目よ!私が泣いたらきっとプリシスも泣き出すもの。
 堪えなきゃ!私はプリシスの『お姉さん』なんだから!)
レナは涙を堪える為、無意識にまばたきを繰り返していた。
自分がしっかりしなくてはプリシスを護る事は出来ないのだから、泣く訳にはいかない。

(だめだめ!…あたしが泣いたらレナも泣いちゃうよ。
 …我慢しなくちゃ……あたしは…ムード…メーカー…だもん…!)
プリシスは盗賊てぶくろを手に装着すると、後ろからレナに近寄り、スッ、と手を動かしてレナを追い抜いた。
「へへ〜」
プリシスは後ろ向きのまま手に持った短剣を掲げ、レナに見せる。
「え…?何それ?…ってちょっと!?プリシス!?」
レナは自分の腰に手を当てる。無い。腰に挿していた短剣が無くなっている。
するとやはりプリシスが持っている短剣は…
「成功〜♪」
プリシスはレナの方を振り向かずに、そのまま走り出した。
「『成功〜♪』じゃないわよ!ちょっと、待ちなさい、プリシス!」

(ゴメンね、レナ…今は待てないんだ…)
プリシスは泣いていた。
プリシスの泣くまいとする想いとは裏腹に、彼女の喉は強張り、胸は熱くなり始め、涙が溢れてくる。どうしても止められない。
せめてムードメーカーとして、泣き顔をレナに見せる訳には行かなかった。見られたくなかった。
だから逃げる。涙が止まるまで、逃げなくてはいけない。レナに心配させない為に。この場を暗くさせない為に。
それがムードメーカーとしての役目なのだから。

(ごめんなさいプリシス…『お姉さん』なのにあなたを慰める事が出来なくて…)
レナはプリシスが泣いているのに気付いていた。
プリシスは気付かれてないと思っているようだが、彼女の声は涙声で上擦っていた。
それにレナも涙を堪える事が出来ているだけで、プリシスと同じ気持ちなのだ。
いくら誤魔化そうとしても分かってしまう。
そして、同じ気持ちである分、この暗く憂鬱な気分を晴らす方法が無い事にも気付いていた。
どうすればこの気分が晴れるのかレナには分からない。つまり、同じ様に落ち込むプリシスを慰める方法も分からなかった。
(だから、この鬼ごっこには付き合ってあげるね。あなたの気が済むまで…)
「プリシス!待ちなさいってばー!」
レナも走り出した。プリシスを追いかけるのだ。
せめて、この悲しい鬼ごっこが終わるまでは何も気付かない振りをして。
自分に出来る事はそれくらいしか思いつかないのだから。

レナの目にも涙がにじむ。レナはそれをこぼさないように空を見上げた。
樹々の隙間からは輝いてる星々が見え、涙を通して見る星の光は、様々な方向に長く伸びて広がっている。
レナにはそれがまるで、自分の代わりに星が涙を流しているように見えていた。

203Sticky Fingers:2009/06/03(水) 20:06:21 ID:JIjIYVmI
【H-04/黎明】
【レナ・ランフォード】[MP残量:40%]
[状態:仲間達の死に対する悲しみ(ただし、仲間達のためにも立ち止まったりはしないという意思はある)、精神的疲労大]
[装備:護身刀“竜穿”@SO3、魔眼のピアス(左耳)@RS]
[道具:荷物一式]
[行動方針:多くの人と協力しこの島から脱出をする。ルシファーを倒す]
[思考1:プリシスと共に平瀬村を目指す。次の、ないしその次の放送までに鷹野神社に戻る]
[思考2:レオンの掲示した物(結晶体*4、結晶体の起動キー)を探す]
[思考3:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す]
[思考4:アシュトンを説得したい]
[思考5:エルネストに会ったらピアス(魔眼のピアス)を渡し、何があったかを話す]

【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:アシュトンがゲームに乗った事に対するショック(更に大きく)]
[装備:マグナムパンチ@SO2、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔100/100〕@SO2 盗賊てぶくろ@SO2]
[道具:無人君制御用端末@SO2?、ドレメラ工具セット@SO3、解体した首輪の部品(爆薬を消費。結晶体は鷹野神社の台座に嵌まっています)、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを倒す]
[思考1:レナと共に平瀬村を目指す。次の、ないしその次の放送までに鷹野神社に戻る]
[思考2:レオンの掲示した物(結晶体*4、結晶体の起動キー)を探す]
[思考3:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す]
[思考4:アシュトンを説得したい]
[備考1:プリシスの支給品は盗賊てぶくろでした]
[備考2:適当なところでレナに護身刀“竜穿”を返しています]

[現在位置:H-04北部〜北西部]

【盗賊てぶくろについて】
・盗賊てぶくろを装備すれば、他人が持つアイテムを盗む事が出来ます。
・盗みを行えるのは、使用者の手が対象者に触れられる距離に居る場合とします。
・盗む事が出来るアイテムは、装備欄か道具欄に表示されている物をランダムで1つとします。基本支給品は対象外とします。
・盗んだアイテムに説明書が残っているならそれも同時に盗みます。
・道具の効力で盗むので、どんなに厳重に守られているアイテムでも成功すれば気付かれる事無く盗めます。
・失敗時には必ずばれます。失敗時の効果音が聞こえてくるかどうかはどちらでも。
・使用者は1人の対象者に1度盗みを試みたら、次の放送までは同じ対象者から盗む事が出来ません。
・成否の確率、成功時に盗めるアイテムは適当に決めて下さい。

204 ◆cAkzNuGcZQ:2009/06/03(水) 20:09:05 ID:JIjIYVmI
以上で投下終了です。
話としては短いのですが、心理描写が上手く書けずに時間を取られてしまいました。
2,3日様子見て、問題点が無さそうでしたら本投下させて頂きます。

205 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 12:49:22 ID:rW5XtX.Y
当初の予定と若干違いますが投下します。

タイトルはネタバレになるので最後に書きます。

206 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 12:50:52 ID:rW5XtX.Y
僕はひたすらに道なりに歩みを進め続けていた。その足が目指す先は大切な仲間との再会の場所鎌石村。
ブレアさんとロキと名乗る青年と別れてからしばし歩き続けていた僕は、E−4とF−4の境目で一度その足を止めた。
このまま道なりに北へと進めば目的地には到着できる。
しかしこのままではアシュトンと交わしたもう一つの約束、仲間を集めるという事が達成できない。
特にアシュトンはプリシスとの再会をとても楽しみにしていた。
今からプリシスを探して鎌石村に辿り着く事は不可能かもしれないけれど、せめて僕達にかけられた疑いを晴らしてくれる仲間は集めておきたい。
このまま鎌石村で合流した時に、もしもアシュトンも仲間を集める事が出来ていなかったら、何のために二手に分かれたのかわからなくなってしまう。
それに正直な所、初対面の人がアシュトンの姿を見て警戒しないなんて思えない。
だったら、ここは僕が無理をするしかなさそうだ。
すっかり忘れていたけれど、僕はジャックの使っていた首輪探知機を持っている。
こいつを使って近くに誰かいないか探してみよう。出来れば1人でいる人よりも二人以上纏まっている人達がいいかな。
少なくとも殺し合いに乗っている人間が仲間を作るとは考えにくいしね。
ジャックがこの機械を見せてきた時に行っていた操作を思い出しながらあれこれと弄ってみる。
僕の不用意な発言の所為で死んでしまったと言っても過言ではない彼の事を思うと心が痛む。けれども、ここで立ち止まってはいけない。
まだここには生きている人達がいて、その中には助けを求めている人だっているはずなのだから。
なんとか動作を始めた探知機のモニターの中心点に光点が一つ、少し離れて二つの光点浮かび上がった。
(多分これは僕の首輪の反応だろう。こっちはブレアさん達だろうな。操作は出来そうだけど他には誰も周りにいないな…。
 もっと広域表示とか出来ないのかな? っと。出来た出来た)
装置側面についたボタンを押してみたところ、中心にあった光点のサイズが一回りほど小さくなった代わりに、
北東に五つ光点が纏まっている箇所とそこから少し離れて一つ、南東方向と北西方向に二つの光点が重なっている箇所が表示された。
(鎌石村からそんな離れてなさそうだし、北東の方に向かってみよう。
 それにもしかしたらこの人達は打倒ルシファーを掲げた大集団なのかもしれない。)
探知機をデイパックにしまい五つの光点があった地点へと僕は足を向けた。

207 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 12:52:58 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「君達はここで殺す!」
そう吼えたアシュトンが大剣を構え一直線にこちらに突っ込んできた。
(クロード? クロードがなんだって? あの口ぶり、アイツはクロードと手を組んでいるのか? 
 それに今の台詞は殺し合いに乗っているって事なのか? 
 くそっ! 訳がわからねぇ。とっ、とにかくアシュトンを無力化しないと!)
湧き出る疑問を振り払い、筒から3本いっぺんに取り出した矢を間髪入れずに2連射する。
アシュトンの機先を制すべく放たれた俺の攻撃は、その長身とは裏腹に軽やかなステップで回避されてしまった。
だが、この程度の攻撃で抑えられる様な生易しい相手ではない事は、こいつの戦いぶりを見ていた俺にだってわかっていた。
撃たずにおいた矢に闘気を送り込み、その矢をアシュトンの足元に向けて打ち出す。
矢が地面に突き刺さると同時に送り込んでおいた気が開放され大地を炸裂させた。
特訓の末に編み出した技のうちの一つ『衝破』だ。
そして、この技の役目は攻撃の他にももう一つある。打ち出した大地の破片でアシュトンの視界を奪う事だ。
この状態なら回避も、迎撃も間に合わないはず。
狙いはアシュトンの右手。武器を持つ事が出来なくなればきっとアシュトンを止められる。
そう思って放った一撃は、大地の破片と破片の僅かな隙間を潜り抜け、狙い通りの軌跡を描いた。
狙いは完璧。確かな手応えを感じた俺だったが、次の瞬間赤い炎が夜闇に瞬いた。
咄嗟にその炎を横っ飛びで回避し、体勢を整え新たな矢を構える。
そこには降り注ぐ破片をその背に受けたアシュトンが立っていた。それも無傷のままだ。
その背中から伸びる紅い龍の口に燻っている炎が見える。
(あの龍の吐いた炎で俺の矢を焼き落としたってのか?)
「へぇ、中々面白い事ができるじゃないか? でも、残念だったね。
 普通の剣士だったら今の攻撃で手傷を負っていたかもしれないけど、
 生憎僕にはこの二人がいるからね。今みたいな攻撃は通用しないよ」
「くそっ」
悪態と共に構えた矢を放つが、アシュトンはその攻撃を切り払った。
「無駄だって言ってるのわからない? さっきみたいに目を眩ましてからの攻撃ならいざ知らず。
 君と僕との実力差じゃ正面からの攻撃なんて当たりっこないよ。だから、おとなしく僕に殺されちゃいなよ!」
今度もさっきと同様にまっすぐに突っ込んでくる。
多分俺の矢を完全に見切っているんだ。確実に捌ききれる自身があるからこその突撃だろう。
(だからって、おいそれと引き下がっていたら、守りたい者なんて何一つ守れやしない。今度こそ、俺は守りきってみせる!)

208 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 12:55:13 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

チェスターが訳のわからない事を言って寝返った時は少し驚いたけど、今のやり取りだけでわかった。こいつは僕の敵じゃない。
確かに矢を狙った所に撃つ技術は高いけど、それだけなんだ。
常に正確な狙い故に、攻撃が来るタイミングさえ掴めれば簡単に見切ることが出来る。
チェスターが新たな矢を構えた。僕の間合いまではまだ遠い。
攻撃を阻む事は出来そうにないけれど、チェスターの視線の先を捉えれば彼の狙いは丸わかりだ。
おそらく彼の狙いは僕の右肩。
攻撃の来るタイミングは狙いを定めてから攻撃に移る時の僅かな呼吸の変化。

まだだ…、まだ来ない。
残りの距離を更に詰める。

そして、残りの距離が僕の間合いまで後数歩となった所でチェスターの呼吸が変わった。

来る!

チェスターの指が矢羽を離すと同時に、踏み込んだ左足を軸に体を捻り回転させる。
僕の左肩を掠めた矢が闇の彼方へと消え去るのを横目に剣を振りかぶる。
回転の勢いと共にフルスイングした『アヴクール』の切っ先が二の矢を放とうとしたチェスターの弓を逸らした。
次の攻撃に移れるのは僕の方が早い。振り抜いた剣を両手に持ち直し、叩きつける様に『アヴクール』を振り下ろす。
だけど、この攻撃は地面を叩いてしまった。やはり使い慣れていない武器だと僅かに振りが遅れるみたいだ。
飛び退いて僕の攻撃をかわしたチェスターが反撃の矢を空中で構えている。
(狙いは僕の左足か。紙一重で交わして着地間際を攻撃するか? 
いや、さっきみたいに地面を砕いてくるかもしれない。なら、間合いをいったん離した方が良さそうだ)
チェスターの攻撃と共にバックステップで距離を開ける。
寸前まで僕の左足があった位置を彼の放った矢が貫いていた。
(予測どおりだ。一気に間合いを…。なっ!?)
僕は驚いた。突如として地面に突き刺さる軌道を取っていた矢がホップアップしたからだ。
薄緑色の闘気を纏ったそれは周囲の空気を陽炎のように揺らしながら地を這って僕に迫ってきた。
「頼んだよギョロ!」
「ギャッフ!(わかった!)」
ギョロが放った火炎弾の狙いは寸分違わずチェスターの矢を捕らえていた。
なのに、その炎は矢に当たる寸前に消滅してしまった。突然の出来事に一瞬回避が遅れてしまう。
なんとか直撃は間逃れたけれど、その矢は僕の左腿を掠めていた。
「痛っ」
掠っただけのはずだったのに、僕の腿には切り傷の様な痕が残っている。
(今の攻撃は一体?)

209 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 12:57:15 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(裏をかいた『鷲羽』でも掠り傷程度しか与えられないか…)
矢に纏わせた闘気を真空に変え、風に乗せて矢を放つ攻撃。これも特訓の中で身につけた技だ。
「ちょっと君を侮ってたみたいだ…。本気で行くよ!」
アシュトンから放たれる気迫が一段と増した気がした。
『リーフスラッシュ』
俺の体を中心に木の葉が渦を作って視界を奪い去った。さっきの金髪との戦いで見せたあの技だ。
(どこから来る? 右か? 左か? せめてあいつの位置さえわかれば…。
 『震天』で手当たり次第攻撃を…。駄目だ。そんなに矢の本数に余裕が無い。そうか! あれを使えば!)
「『衝破』」
左右に一回ずつ『衝破』を使い大地を巻き上げる。
続けて俺はデイパックに手を突っ込んで目的の品を引っ張り出した。
(ボーマンさんから譲ってもらったアイテム。こんなところで出番があるなんて…)
「行けーっ」
取り出したそれを思いっきり地面に叩きつける。
地面に出来た凹凸にぶつかった『スーパーボール』が勢いよく跳ね上がり、そして、さっき巻き上げた大地の破片にぶつかりまた跳ねる。
俺の周囲を跳ね回る『スーパーボール』が木の葉の群れの一角にぶつかると地面や欠片とぶつかった時と異なる挙動を示した。

「そこか! 『紅蓮』」
矢を炎の闘気で包んで撃ち出す俺の得意技が触れた木の葉を焼いて直進する。
『スーパーボール』がぶつかった木の葉に『紅蓮』が当たると同時に俺の周囲を舞っていた木の葉が一斉に消えた。
晴れた視界の先には右の肩口に矢を受けたアシュトンの姿があった。
思った以上に距離を詰められている。すぐさまバックステップで距離を開ける。
「こんなおもちゃで…」
肩口に突き刺さった矢を抜きながら忌々しげに呟くアシュトン。
「悪足掻きをっ! 『デッド・トライアングル』」
アシュトンが目の前で突然消え去った。
そして次の瞬間には俺を取り囲むようにアシュトンが、
(3人!?)
まるで三角形を形作るように出現したアシュトン達が同時に剣を大地に突き刺した。
すると、アシュトンを頂点とした三角形の中が高濃度の魔力で満たされる。
「ぐあああぁぁぁぁっ!」
まるで体が焼かれるような衝撃に意識が飛びそうになる。
漸く魔力の渦から解放された俺は両膝を折り、前のめりに崩れ落ちた。
(駄目だ…。力が、入らない…)
しばらくは今の攻撃のショックで動けそうに無い。
「手間取らせないでよっ!」
冷たい視線を俺に投げかけるアシュトンが剣を振りかぶった。
(クソッ、こんな所で…)
剣を振り下ろそうとするアシュトンが急に飛び退いた。
さっきまでアシュトンがいた位置に複数の氷の矢が突き刺さる。
(この魔法はアーチェ? いや…、アーチェは死んだはずだ…、じゃあ誰が?)
氷の矢が放たれた先を辿るとそこには、さっきまでアシュトンと戦っていたあの娘が杖を構えて立っていた。

210 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:01:06 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(どうして? あの子はあの人と戦っているの?)
戸惑う私はしばらく弓を持った子と龍を背負った男の人の戦いを眺めていた。
弓を持って戦うその姿は、私を何度も守ってくれたあの人の姿に少しだけダブって見える。

木の葉が舞い、大地が砕け、炎が闇夜を駆け抜けた。

二人の戦いはなんとか弓を持った男の子が食らいついていっていると言った感じだった。
けれど、状況は突如として一変する。
龍を背負った男の人の姿が消え、次に姿を現した時には3人になっていた。
突き立てた剣と共に地面に陣が描かれ、その中をここからでも判るくらい凄まじい紋章力が満たしていく。
地に伏してしまった男の子に龍を背負った男の人が歩み寄り剣を振り上げた。
(助けなきゃ!)
その光景を目にした時、頭の中を巡る疑問はどこかに吹き飛んで、代わりに私は強くそう思った。
(あの女の子の仇を取りに来たんじゃないの?)とか(何故仲間同士で戦っているの?)
なんて今はどうでもいいんだ。
(あの男の子は私を助けようとしてくれている。それはつまり、また誰かが私を守ろうとして傷つこうとしているという事。
 役立たずの私を守ろうとして傷つこうとしている。もう誰にもそんな事になって欲しくない…。
 だから私は決めたんだ。変わろうって。守られてばかりいる自分を変えようって)
「『アイスニードル』」
龍を背負った男の人目がけ氷の矢を殺到させる。矢は全て回避されてしまったけれど、なんとか男の子の事を守ることが出来た。
(そうよ。もう、守られてばかりじゃないんだから!)
そんな私の行動が癇に障ったのか、イラついた様子でこっちを睨みつけながら龍の青年は呟いた。
「どいつもこいつも邪魔ばかり! チェスターの次は君なんだから、もう少し黙っててよ!」
剣を虚空に奔らせ印を結び、鋭く巨大な氷の槍を作り出して私の方に打ち出してきた。
(『リフレクション』でなんとか弾かないと)
障壁呪紋の詠唱を始めた所で氷の槍は溶解した。
青い髪をした男の子が放った炎の矢が氷の槍を打ち落としていた。
「言っただろ! その娘は俺が守るって!」
大きく飛び退いて距離を開け、男の子はそう叫んだ。
苛立ちをよりいっそう強くした様子で、私とチェスターと呼ばれた男の子に鋭い視線を送る龍を背負った青年。
そんな彼の背負った龍が青年に声をかける。
「ギャフー」
「そうだね、ウルルン。少し頭に血が上りすぎてたみたいだ。その作戦で行こう」
そう呟いて大きな剣をデイパックにしまうと新たに赤い刀身の剣を引き抜いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

そうだ。ウルルンの言う通りだ。別に正面からぶつかる必要は無いじゃないか。
ウルルンはこう言った。
「ギャフー(頭を冷やせアシュトン。持久戦に持ち込めばいずれ抵抗できなくなる)」
そう、僕はこの剣で牽制だけを繰り返していればいいんだ。
何故かと聞かれれば単純な話だ。紋章術使いと弓使い。この二者に共通して言える弱点は攻撃回数に限界がある事だ。
厳密に言うと剣も刃こぼれ等を考えればその範疇ではあるけれど、矢や紋章術と比べればその差はあって無い様な物だ。
ソフィアっていったっけ? 君は後何回紋章術が撃てる?
僕とボーマンさんを相手にしてた時からずっと戦いずくめだよね? そろそろ限界なんじゃないか? 
そして、チェスター。今何本矢を使った? 確かあの子の荷物から取り出した矢は40本だったよね? 
この短時間で結構な本数使ってたみたいだけど、残りの本数で僕を倒すことは出来るのかな?
このまま僕はこの剣から火炎弾を飛ばし続ければいい。
多少疲れるけど紋章剣技を使うのに比べたらこんなの疲労の内に入らない。
必死に、矢で打ち落としたり呪紋で逸らしたりしているけど、そのままでいいのかい?
僕は別に構わないけどね。君達が抵抗できなくなったらゆっくり殺させてもらうよ。
それが一番疲れなくて済むからね。

211 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:03:49 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(クソッ! アシュトンの奴さっきから剣を振って火の玉を飛ばしてくるだけじゃないか!)
火球自体の速度はたいした事は無いから『凍牙』で簡単に打ち落とせる。
間断なく撃ってくるから反撃のチャンスは中々作れないけれど、こんなのただの時間稼ぎにしかならないじゃないか。
またもや飛ばしてきた火の玉を迎撃しようと、矢筒に手を伸ばしたその時、
俺は残りの矢の本数が心許なくなっているのに気付くと同時に、漸くアシュトンの狙いがわかった。
火炎弾を撃ち落さずギリギリまで惹きつけてから横っ飛びでそれをかわす。
(アシュトンの奴こっちの弾切れを狙って? そういやあの娘もずっと戦っていたけどまだ魔法が使える余力は残っているのか?)
さっきまでは火炎弾の合間に反撃の魔法を撃ち込んでいたあの娘が、今はずっと回避に専念している。
(クソッ、このままじゃ追い詰められちまう)

「キャッ!」
女の子が足をもつれさせて体勢を崩してしまった。その隙をアシュトンは見逃す訳も無く火球を放つ。
(間に合え!)
残り少なくなってきた矢を取り出し、火の玉目掛け『凍牙』を放つ。
しかし、焦って照準をした所為か標的から僅かに上に逸れてしまった。
「しまった!」
女の子は咄嗟にデイパックを盾にしてなんとか直撃を間逃れていた。彼女の荷物の中身が辺りに散らばったがどうやら無事みたいだ。
(もうこっちには余力が残されてない。こうなったら一発もらうのを覚悟で、勝負に出るしかない! 
 一撃で決める為の大技…。やっぱりあれしかないか)
特訓を続けて最近編み出した技『大牙』。
送った闘気で矢を巨大化させて放つあの技ならば、あの剣の火炎弾や炎のブレスでも焼き落とされることは無い。
けど、この技は直ぐには撃てない。送り込まなきゃいけない闘気の量の多さ故、どうしてもタメが必要になってしまう。
撃ち落されはしなくても避けられてしまっては意味が無い。
(どうすればアシュトンの足を止める事が出来る? 思い出せ。戦いの中でアシュトンは何回か足を止めていた事があったはずだ
 あの娘が使った炎の魔人の攻撃の時か? 違う。
 あの娘が使った無数の光線魔法の時か? 確かに足は止めていたけれど違う。
 俺にも出来そうな攻撃で足を止めていた事があったんだ)
アシュトンの戦闘の光景を記憶の中から引っ張り出し、該当するシーンを必死に探し出す。
その最中に飛んで来た炎弾を横っ飛びでかわすが、着地の際に地面を砕いた時にできた出っ張りに躓いてしまった。
追撃の火球が迫ってくる。躓いた時の勢いを利用し、そのまま地面を転がりなんとか回避して体を起こす。
その時だ、探していた光景が脳裏にフラッシュバックしてきたのは。
(そうだ! アシュトンは岩の雨を降らす魔法の時や俺の『衝破』の時に足を止めていた! 視界が塞がれていたからか? 
 多分そうだ。下手に動くよりも迎撃に勤めた方が被害が少ないんだ。
 それにアイツには二匹の龍もいる。事迎撃に関しては他の剣士なんかよりも安全に出来るんだ。
 ならば、視界さえ奪えば『大牙』を叩き込むチャンスは作れる!)

女の子の方をチラリと見やる。着ている服は切り傷や擦り傷でボロボロ。その上息が上がってきている。
(もう一刻の猶予もない。ここで勝負に出る!)

212 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:05:29 ID:rW5XtX.Y
矢筒から3本纏めて取り出して構える。
俺の動きに気付いたアシュトンが剣を振り、炎の弾を飛ばしてきた。
しかし、迎撃している余裕なんて無い。肉を切らせて骨を断つ。多少の怪我でアシュトンを止められるならば御の字だ。
「『衝破』」
火炎弾の脇を掠めるように矢を放った。火の玉の影で少しでもアシュトンにこの矢を気付かれるのを遅らせる為だ。
アシュトンの目の前の地面に着弾。砕かれ巻き上げられる大地の欠片。
それと同時に火炎弾が俺に当たった。さっきのアシュトンから受けた魔力攻撃の時に負った傷が響く。
だけど、怯む訳には行かない。炎により与えられる痛みを省みず、俺は降り注ぎ始めた地面に狙いをつけた。
「『豪天』」
一際大きなかけらに突き刺さった矢に眩い雷光が降り注いだ。
「ギャッ!」「ギャッフ!」
これで、アシュトンも二匹の龍も目を潰されたはずだ。
アシュトンは粉塵を受けて目をつぶっているし、その間を守る為に二匹の龍は暗闇に目を凝らしていた。その最中にあの雷。
(今しかない!)
掴んでいた最後の矢を装填し思いっきり弦を引き絞る。
矢に巡らした闘気を質量に変え、矢を次第に巨大なものに変えていく。
その矢のサイズが槍を越え、そして、大地に根を下ろす大樹の様に巨大になった。
「『大牙』!!」
弦を離し、戒めを解かれた巨大な1本の矢が真っ直ぐにアシュトンへと突き進んでいく。
『大牙』をその身に受けたアシュトンは周囲の瓦礫や木々を巻き込みながら吹き飛ばされた。

「どうだ?」
アシュトンが吹っ飛んだ時に巻き上がった土煙と、夜闇の所為でどうなったかわからない。
手加減をする余裕なんてなかった。もしかしたら殺してしまったかもしれない。
でも、この女の子を守る為にはしょうがなかったんだ。
(クソッ、なんでこんな事に…)
そんな事を考えている時だ、炎の中に吹雪の入り混じった空気の渦が煙の向こうから飛んで来たのは。
それを間一髪でかわして矢を抜き煙の先を見据える。

213 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:08:30 ID:rW5XtX.Y
「今のは結構危なかったよ…。後一瞬気付くのに遅れたら僕はこの剣みたいにバラバラになっていたんじゃないかな?」
そう言って煙の向こうからアシュトンが出てきた。その手に握っていた炎を出す剣は刀身を砕かれ柄だけになっていた。
その柄を放り捨て、デイパックから大剣を引き抜く。
「もう面倒だ…。ギョロ、ウルルン。アレをやるよ。バックアップをお願いね」
そう言うとアシュトンは両手で持った大剣を眼前に掲げ凄まじい量の魔力を放ちだした。
まるで嵐の中にいるかの様な風が巻き起こる。さっきの分身攻撃の比じゃない魔力がこの位置からでも感じられる。

撃たせたらヤバイ。
直感がそう告げている。どんな攻撃かわからないが身を隠すような場所も無いこんな所で直撃を受けたら無事じゃあすまない。
「させるか! 『鷲羽』」
この風に流されること無く、また、龍の炎の息に撃ち落される事のない攻撃を選択する。
「「ギャギャッ、ギャフ!」」
すると、アシュトンの背に生えた二匹の龍の内赤い方が大地に火炎の息を当て無数の瓦礫と粉塵を巻き上げ、
もう一方の蒼い方の龍がそれらを凍らせて即席の氷の盾を作り上げ俺の『鷲羽』を弾いた。

「大いなる創造神トライアよ――」
アシュトンが剣を振り上げる。その剣閃を追う様に蒼白い凝縮された魔力が光の筋を残す。
(責めて、この娘だけでも!)
この女の子はずっと守っていた緑色の長髪をした男を覆う様に抱きしめていた。
俺はこの身を盾とする為にアシュトンとこの娘の間に立ち塞がる。

「全ての敵を滅せよ!! 『トライエース』」

一閃
刀身から蒼白い燐光が迸り、極限まで凝縮した魔力が開放される。
大気がぐらりと歪み、周囲の粉塵や瓦礫、更には焦土の中生き残ることが出来た僅かな木々でさえ飛び散らした。

更にもう一閃
巻き起こる爆風。大気が更にいびつに歪み、よじれ、空間そのものが悲鳴をあげた。

そして最後にもう一閃
一際強烈な魔力の奔流。数百匹の魔獣の咆哮に似た大音響と共に空間、果ては重力すら捻じ曲げるかの様な凄まじく圧倒的な力。
その全てが俺たちに牙を剥いた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「思った以上に疲れるね…。これもルシファーが言ってた制限って奴なのかな?」
『トライエース』を使った疲労からその場に膝を突くアシュトン。
「ギャフ、フギャ(大丈夫かアシュトン?)」
「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと眩暈がしただけさ。さぁ、早くあの三人の首輪を回収しよう。
そうしたらボーマンさんと合流しようか。まだあの人には使い道がありそうだからね」
「フギャフフギャー(待て、どうやら技の威力も制限されていた様だ)」
ウルルンの言葉を聞いて顔を上げたアシュトンは、ゆっくりと脇腹を押さえながら立ち上がるチェスターの姿を捉えた。
「そうみたいだね…。でも、もう抵抗する力すら残ってはいないだろうからさっさと済ましちゃおう」
(巻き込まれた瓦礫に当たって、穴でも開いちゃったのかな? 
 あんまり運はいい方じゃないみたいだな。少し親近感を感じるよ)
剣を支えにしながら立ち上がると、その剣を引き摺る様にしてチェスターに歩み寄るアシュトン。
「これでまた一歩、プリシスの一番に近づける訳だね…。フフフッ、待っててねプリシス。僕がもっと首輪を集めてあげるから…」
何かに取り憑かれた様な不気味な笑みを浮かべたアシュトンは、確かな足取りでチェスターへと迫った。

214 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:12:50 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(クソッ、視界がぼやける。腕にも力が入らない。結局俺はこのまま誰一人守り抜く事すら出来ずに死んじまうのか…。
 クレス悪い…。あれだけ大口叩いて別れたってのに、アーチェの仇を討つ事も、この娘を守る事も出来なかった…)
思い返せばここ最近の記憶は後悔ばかりだ。
村を守れなかった事。再会したクレス達の足手纏いにしかなれていない事。
ここに来てから起きた分校での出来事。アーチェの死。
そしてこの女の子の事。
(せめてアシュトンだけは止めないと…。俺がこの娘に持ってきちまった災いだからな…。
 くそっ、俺に力があれば…。何でもいい。俺に力をくれ。この娘を守れるだけの力をっ!)
そう俺は願った。神様なんていないって思っている。それでも祈らずにはいられなかった。
心の底からこの女の子を守りたいとそう思った。その思いを遂げる為強く、強く願った。

そして、その願いが何かを起こした。

先程この女の子のデイパックから転がり落ちていた水晶玉が、俺の足元で赤く眩い光を放っている。
(これは…? あの娘の荷物から出てきた…。一体なんだろう?)
俺はそれに思わず手を伸ばした。触れた途端体に何かが流れ込んで来る。
その瞬間。今まで俺の頭の中にあった微かにしかない、
雲の様に掴み所の無い断片的なイメージが、一つ、また一つと、まるで実体を持つかの様に収束していった。
そう、これは特訓の中で浮かんでいた断片的なイメージ。これを習得できればきっとクレス達の助けになれる。
そう感じ、いつも掴もうとしては霞のように消えていってしまっていたその感覚が、今俺の中に確かに一つの形を成して存在していた。

触れていた水晶玉は光を失い、透明な水晶玉に戻っている。
今の現象が俺に何か影響を及ぼしたのかわからない。
わかる事は唯一つ。俺にはまだこの娘を守れる可能性が残されているという事。

矢を構える。
この技に必要なのは送った闘気が拡散しない様に矢に定着させる事。
そして、それを幾重にも重ね合わせ、ただ一点のみを貫く為に研ぎ澄ます。
そう、どんなに強固な鱗に覆われた龍でさえ、その一撃の下に屠る。
そんな意味を込めたこの技の名前は、

「『屠龍』! ぶちぬけぇええええ!!」

解き放たれた赤き必倒の一撃。
俺の想いの全てを乗せた一筋の光がアシュトンに襲い掛かった。

215 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:15:57 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「フギャー!(やばいぞアシュトン! 避けろ!)」
(出来ない。体が重くて思うように動かせない。『トライエース』の反動?
 違う、もう呼吸は整えられてるし、さっきまでこんなに体が重いなんて事は無かった)
ふと、前を見ると女の子と目が合った。その手に持っている杖が輝きを放っている。
(あの娘の紋章術? 重力操作の?)
「ギャース!(チッ、世話の焼ける宿主だ!)」
「フギャー!(全力で行く、踏ん張れよ!)」
ギョロとウルルンが同時に巨大なブレスを真っ直ぐ向かってくる赤い闘気を纏った矢に浴びせる。
それでもチェスターの放った矢は一向に止まる気配を見せない。二人の吐く炎と氷の渦を受けながらも真っ直ぐに迫ってきている。
体は未だにあの女の子の紋章術で動かせない。だから、せめて二人の応援をしようと彼らを見上げた時、僕は自分の目を疑った。
何故かはわからないけど二人の体が透けてきているのだ。
「二人共もう止めるんだ! このままだと君達が魔力を使い果たして消滅してしまうよ!」
こんな事今まで無かったけど、どう考えても今魔力を使い果たそうとしている事が原因なのは明白だ。
「ギャッ(何寝言を言っている)」
「ギャフッ(お前が死んだらどの道俺達も死ぬんだ。無駄口叩いてないで手伝え)」
「駄目だ、あの娘の紋章術の所為で体が動かないし剣も持ち上げられない」

尚も迫り来る赤い闘気を帯びた矢に懸命にブレスを放ち続ける二人。
それでも勢いを少し落とすのが精一杯。確実に僕らの命を奪おうとそれは迫って来ていた。
「ギャギャ(ウルルン)」
「ギャーフ(そうだな…)」
「どうしたのさ? 二人共?」
僕はいつもと違う雰囲気の声を発する二人に急に嫌な感覚を覚えた。
「ギャッギャギャフン(今まで楽しかったぞ。アシュトン)」
「ちょっと!? ウルルン? 何言ってるの?」
「ギャース(このままでは3人纏めてあの世行きだからな。お前だけでも生きろ、アシュトン)」
「ギョロ!? 何勝手な事を言ってるのさ?」
「ギャフフギャフー(なんだかんだ言って俺たちはお前の事が気に入ってるんだ)」
「ギャッギャー(だから、お前にはもっと生きていて欲しい)」
二人が信じられない事を言っている。僕を生かす為に死のうとしている。
止めなくちゃ、そんな事受け入れられるはずが無い。
「待ってよ! また僕を困らせる様な事を言って! お願いだからたまには言う事を聞いてよっ!」
「ギャー(いいか? これを凌ぎきれたら一旦退け。北西の方角から二人。まだ遠いが近づいてきている)」
「ギャッフ(ボーマンが味方を連れて来たとは考えにくい。『トライエース』を撃った疲労状態でこれ以上の戦闘は危険だ)」
もう二人の姿は目を凝らさなければ視認出来ない程に薄くなっている。
「ギョロ! ウルルン! 話を聞けよっ! 僕達はこれからもずっと3人でっ!」
つい語気が荒くなってしまったけど、二人が思い直してくれるならそんな事構わない。

「ギャフー(生きろよ)」
「ギャース(生きろよ)」

そう言い残し二人は更に吐き出すブレスを巨大にさせた。
僕らに迫る矢は漸く止まり、そして纏わせた闘気を拡散させるように巨大な爆発を起こした。

216 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:25:23 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「これで決まって無ければ…」
もう駄目だ、立っているだけで精一杯だ。血と一緒に残された気力も流れ落ちてるみたいだ。
爆煙の先に人影が蹲っているのが見える。
突如として吹いた夜風が煙を晴らしてくれた。
ぼんやりとした視界で捕らえたアシュトンのシルエットに違和感を覚える。
(何かが違う…。いや、それよりも倒せたのか?)
しかし、どうやら俺の願いはさっき叶えて貰った分で受付が終了したらしい。
フラリと立ち上がるその姿が見えた。でもおかしい。さっきより小さく見える。

完全に晴れた視界のおかげで漸くその違和感の正体に気付いた。
背中の龍がいないのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
突然叫び声を上げたアシュトンが続けて、ものすごい形相で俺を睨んできた。
「殺してやる! 次に会った時は必ず殺してやるっ! 二人が受けた苦痛を何倍にして味合わせてから殺してやるからなっ!!」
怨念の様なものを込めながら呟くアシュトンを中心に霧が発生したかと思うと、ややあってから霧が晴れた。
その時にはあいつはこの場から姿を消していた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(なんとか追っ払えたみたいだな…)
チェスターが張り詰めていた緊張を解いた瞬間、急に膝がガクリと崩れ落ちた。
前のめりに倒れる彼を受け止めたのは硬い地面の感触ではなく、
何か別のやわらかい、擬音で例えるならフニャンといった感触だった。
「だっ、大丈夫ですか?」
意識を失いかけていたチェスターはその呼びかけで瞼を再び開けた。
その彼の目に飛び込んできたのは
(特盛りっ!)
何が特盛りなのかは敢えて説明するまでも無い。
「ごっ、ごめん! 大丈夫、大丈…」
慌てて飛び退いたものだからまたしてもグラリときてしまう。
再び倒れようとするチェスターを受け止めようとしたソフィアだったが、
散らばった瓦礫に躓いてしまい、チェスターを支えきる事は出来ず二人仲良く転倒してしまった。

「ホントッ、ごめん。もう大丈夫だから゛!」
意図せずソフィアを押し倒すような形になってしまったチェスター。
そんな彼の眼前に広がった光景は童顔巨乳美少女のあられもない姿。
激しい戦闘の末所々破けてしまっているストッキング。
チラリと白い下着が見える様に捲くれ上がったミニスカート。
そして、先ほど彼を受け止めた豊かな胸。
その周囲の布地はアシュトンの『ハリケーンスラッシュ』やら何やらを受けて白い肌や下着が見え隠れしている。
更に、チェスターは健全な17歳男子である。目を逸らそうとしてもどうしてもチラチラとそれらに目が行ってしまう。
そう、彼は将来的には仲間内から『スケベだいまおう』というありがたい称号を賜る身。
そんな彼の男としての悲しい性がそうさせるのであった。

(イカン鼻血が…)
そして、彼は昏倒した。
ただでさえ脇腹に穴が開いて血が足りない状況だというのに、余計なところからも出血してしまったのだから無理も無い。

チェスター・バークライト享年17歳出血多量にて死亡

【チェスター・バークライト死亡】

217 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:28:08 ID:rW5XtX.Y
○●○●○●○●○●○●○●○●

(ここは…?)
俺はやけに眩しい所に寝転がっていた。
起き上がると鼻からツツーっと鼻血が垂れて来るのを感じ取ったので素早く袖で拭った。
(おかしい、さっきまで夜だったのに…。しかもさっきの女の子がいない)

「チェスターさん」
背後から聞き覚えのある声に呼びかけられた。俺は立ち上がって声の主の方に向き直った。
「お久しぶりです。お元気にしてましたか?」
そう言って礼儀正しい一礼と共に優しい笑顔を俺に向けたのは
「ミント? ミントじゃないか!?」
「はい」
そう、目の前にいるのはサラリと流れるような長い金髪と、聖母の様な微笑みを併せ持つ女の子。
どこからどう見てもあのミントだ。

「どうして死んだミントが俺の前に? 待てよ? もしかして、俺死んじまったのか?」
錯乱する俺の質問に首を左右に振るミント。
「いいえ、チェスターさんはまだ生きていますよ。ただ、近くを通りかかるって話を伺ったものですから。一言挨拶を、と思いまして。
 それと、どうしてもあなたに会いたいという人を連れてきました」
そう言ってミントは俺の視界から外れるように横に移動した。
ミントの背後に隠れていた人物が俺の目の前に現れた。
見間違うはずも無い。アイツの姿がそこにはあった。
ピンク色の髪をポニーテールに纏め、その髪と同じ色をした瞳でいつも挑みかかるように睨んできたアイツだ。

「アーチェ!」
アーチェに歩み寄る。話したい事がいっぱいあった。沖木島では再会して直ぐクロードに殺されちまったから。
だけど急に現れるものだから何を話せばいいかわからなくなっちまった。
よく見るとアーチェは俯いて小刻みに震えている。
そうかそうか。俺と会えてお前も嬉しいのか。こういうところはやっぱりかわいいなと思ってしまう。

「アーチェ…」
ズドム!
呼びかけながら一歩踏み出した俺の顔面にアーチェの鉄拳が炸裂した。

2HIT! 3HIT!
「何よ! 何よ! ちょっとあの娘がかわいいからってデレデレしてっ!」

4HIT! 5HIT! 6HIT!
「そんなに大きいのがいいのか!? 大きいのがいいのかぁー!!」

7HIT 8HIT! 9HIT!
「このスケベだいまおう! チェスターなんかーっ!」
訳もわからず連打を浴びた俺はグロッキー状態。頭の周りをヒヨコ達がくるくると回っている。
「巨乳の角に頭をぶつけて死んじゃえー!!」
10HIT!

アーチェのアッパーカットが俺の顎にクリーンヒット。俺はマットの上に沈んだ。
「しばらくこっち来んな! 行こっ! ミント!」
「あっ! 待って下さいアーチェさん。それではチェスターさんごきげんよう。クレスさんとクラースさんにも宜しくお伝え下さい」
(えっ!? ちょっとミント! この扱いは酷くないっすか?)

そうして俺は、この眩しい真っ白な世界の中で暗闇へと落ちていった。

218 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:31:01 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ってか、待てアーチェ! 巨乳に角なんてないぞ!!」
アーチェに向けて手を伸ばした俺の手は擬音にしてフニュンといった感触のモノを掴んだ。

【チェスター・バークライト生存確認】

次第に覚醒していく意識。今俺の右手に掴んでいるモノの正体を知覚するのに2秒程かかった。

どうやら俺はさっき助けた女の子に膝枕されている状態な様だ。
そして、伸ばした手は彼女の豊かな胸を下から持ち上げている様な格好になっていた。

「キャアッ!」「うわぁ、ごめん!」
慌ててその場から飛び退く俺。しまった。また急に動いちまったら。
「って、あれ? 傷が塞がっている」
「あの…、うなされていた様ですけど大丈夫ですか?」
胸を抱きかかえ、ちょっと涙目になりつつ上目遣いで俺に尋ねてきた。

(何だこれは? 反則だろ…)
「いや! もう! ホント大丈夫だから。それよりも君が傷を治してくれたのか?」
「はい。これを使って」
そう言って彼女はなにやら複雑な構造をした金属の塊を俺に見せてきた。
「もうエネルギーが切れちゃったから使えないけど、まだ痛みますか?」
傷はもう痛まない。服を捲くって確認してみたが綺麗に傷が塞がっている。
(どういった原理か判らないけど、きっとミントの法術を貯めこんでおける道具かなんかなんだろう。っとそれよりも)
「なぁ、君に聞きたい事があるんだ」
突然まじめな顔になった俺にこの娘も表情を強張らせる。
「君言ったよね。金髪の女の子を殺したって。アシュトンから君を守ったけど、事と次第によっては君を…」
殺す。そう続けようとしたが、どうしてもその続きは声に出せなかった。
命がけで守った娘だからだろうか。それとも、ずっとそばにいる長髪の男を守りながら戦っていた姿を見た所為だろうか。
不思議とこの娘が理由も無くあんな惨い殺し方をする訳が無いという確信があった。

少女は目を伏せポツポツと言葉を紡いでいく。
「多分あなたが言っている女の子は私達との戦いで負った傷が原因で亡くなったんだと思います。
 でも、そうするしかなかったんです。でなければ私達は皆あの子に殺されていた…」
「ちょっと待ってくれ! あの女の子に? だって君達はそこの男の人と、
 もう一人の金髪の男の人も含めて3人もいるじゃないか! それがあの子一人に?」
「そうだ! クリフさん! あの人はとても強いからきっと大丈夫だとは思うけれど、やっぱり心配。助けに行かなくちゃ」

そう言ってこの女の子は横たわる男を背負おうとして
「キャッ!」
つぶれた。
「おいおい、大丈夫か? 君の体格でそいつをおぶってくなんて無理だ。
 それよりもさっきの続きを聞かせてくれ。納得できたら俺も手を貸すから」

男の下敷きになったこの娘を引っ張り出して、服についたホコリを払ってやった。
別にセクハラ目的とかそんなんじゃないんだからな。勘違いすんなよ。
「すみません。ありがとうございます。それでは続きですけれど…」
こうして彼女は自分達と金髪の少女との間に何があったのかを俺に話してくれた。

219 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:32:44 ID:rW5XtX.Y
【D−5/深夜】
【ソフィア・エスティード】[MP残量:10%]
[状態:疲労中]
[装備:クラップロッド、フェアリィリング、アクアリング、ミュリンの指輪のネックレス@VP2]
[道具:ドラゴンオーブ、魔剣グラム、レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:レナス@ルーファスを守る]
[思考2:クリフと合流する]
[思考3:フェイトを探す]
[思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考5:自分の知り合いを探す]
[思考6:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[思考7:レザードを警戒]
[思考8:チェスターを信頼]

[備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています]
[備考2:ヒールユニット@SO3を消費しました]

【チェスター・バークライト】[MP残量:50%]
[状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)]
[装備:光弓シルヴァン・ボウ@VP、矢×15本、パラライチェック@SO2]
[道具:チサトのメモ、アーチェのホウキ、レーザーウェポン@SO3、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考1:クロードを見つけ出し、絶対に復讐する]
[思考2:このままソフィアについて行く]

[備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[備考2:クレスに対して感じていた劣等感や無力感などはソフィアを守り抜けた事で無くなりました]
[備考3:スーパーボールを消費しました]
[備考4:レーザーウェポンを回収しました]

【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:40%]
[状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中]
[装備:連弓ダブルクロス、矢×27本]
[道具:なし]
[行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する]
[思考1:???]
[思考2:ルシオの保護]
[思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)]
[思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考5:協力してくれる人物を探す]
[思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す]
[備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます]
[備考2:ルーファスの意識はほとんどありません]
[備考3:半日以内にレナスの意識で目を覚まします]

[現在位置:D−5東部]

220 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:35:25 ID:rW5XtX.Y
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「一体何が起きたっていうんだ?」
E−4を北東方向に突っ切ろうとしていたクロードが、目的地の確認をしようと探知機にスイッチを入れた時だった。
そこに表示されていたのは六つ集まっていた反応の内二つが北西に移動していた。
そしてそれを追う様にして少し離れた位置にあった光点も移動している。
他の三つの光点は位置を変えていない事から何かあった事は明確であった。
それを確認したのが一時間位前の出来事。

そしてD−5に足を踏み入れたので、再確認の為に探知機を起動したクロードは目的地に更なる変化が訪れている事に気が付いた。
「近くに誰かいる?」
目的地としていた三つの反応があった場所には現在二つしか反応が無かった。
そして、おそらくさっきまでその地点にいたと思われる反応が自分の直ぐ近くにあるのだ。
(何があったのかを聞かなくちゃ)
探知機の反応を頼りに周辺を探すクロード。
「この辺りの筈なんだけれど…。うわっ!」
夜の暗闇の所為で足元にあった何かに躓いてしまった。
やけに重たい感触だったのだが、今のは一体なんだろうと振り向いたクロードは驚いた。
「ちょっ!? 君大丈夫? って、アシュトンじゃないか!? しっかりしろアシュトン!」
アシュトンを助け起こし、肩を揺さぶる。
「うっ、クロード?」
目を開けたアシュトンと目が合った。何故倒れていたのか? とか、平瀬村に向かったんじゃないのか? 等の疑問が浮かんだが、
まず最初にクロードはアシュトンの体の変化について尋ねた。
「アシュトン。ギョロとウルルンはどうした?」
二人の名を呼ばれたアシュトンその身を強張らせる。
「…。あいつらが…」
今までクロードが見たことも無い暗い怒りを秘めた表情のアシュトンが先程の戦いで起きた出来事を語り始めた。

221 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:37:36 ID:rW5XtX.Y
「…」
アシュトンの語った内容を聞き終えたクロードは言葉を失った。
「僕行かなくちゃ…」
フラリと立ち上がったアシュトンを慌ててクロードが止める。
「行かなくちゃってどこに? そんな体でどうするつもりなんだよ?」
「決まってるじゃないか、二人の敵討ちだよ。僕はあいつらが許せないんだよ。僕から大切な友達を奪っていったあいつらが。
 あの時は二人が逃げろって言ったから逃げてきたけどさ、このままだとあいつらがどこかに行ってしまうからね。
 少し休んで疲れも取れたから大丈夫だよ」
「アシュトン、君がどれだけ悲しいのかはよくわかるよ。でもね、敵討ちなんかしてもあの二人は生き返らないんだよ」
(そう、ここで死んでしまった皆も…)
「そんな事はわかってるよ! でもあの二人の為に何かして上げられる事がこれ位しかないんだ!
 だから僕は行くよ。クロードが止めたって無駄だからね」
それを聞いたクロードは少し悲しげな顔をした。
(あの温厚なアシュトンがこんなにも憎しみに囚われてしまうなんて…。
 それにねアシュトン。ギョロとウルルンが命がけで守ろうとした君に対して望む事は、敵討ちとかそんな事じゃなくて、
 二人はなにがあろうと君に生き抜いて欲しいって思っているんじゃないのかな?)
そう口に出そうとしたがクロードはやめておいた。
今の彼にはきっと何を言っても心に届かない。そう判断したのだ。
だから変わりに
「わかった。僕も行くよ。敵討ちを認めることは出来ないけど、そんな危険な連中を野放しにするなんて出来ない」
アシュトンに対して同行を求めた。
こんなにも危うい状態の友人を放っておくなんて事は彼には出来なかったし、
近くにいればアシュトンの無茶を止める事が出来るかもしれないと思ったからだ。
「そう…。じゃあついて来て、こっちだよ」
アシュトンは剣を掴んで虚ろな眼をしながら北の方向へと歩みだした。
クロードも荷物を纏めてアシュトンの後について行く。
これが良くない兆候だとはわかってはいたものの、今のクロードにはどうする事も出来なかった。

222 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:38:31 ID:rW5XtX.Y
【D-5/黎明】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード]
[道具:昂魔の鏡@VP、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:アシュトンと共に行動]
[思考2:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考3:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい]
[思考4:ブレア、ロキとも鎌石村で合流]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:アシュトンの説明によりソフィアとチェスターは殺し合いに乗っていると思っています]


【アシュトン・アンカース】[MP残量:60%(最大130%)]
[状態:疲労中、激しい怒り、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲・ギョロ、ウルルン消滅]
[装備:アヴクール、ルナタブレット、マジックミスト]
[道具:無稼働銃、物質透化ユニット、首輪×3、荷物一式×2]
[行動方針:第4回放送頃に鎌石村でクロード・プリシスに再会し、プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる]
[思考1:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ]
[思考2:プリシスのためになると思う事を最優先で行う]
[思考3:ボーマンを利用して首輪を集める]
[思考4:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい]
[備考1:ギョロとウルルンを殺された怒りが原因で一時的に思考1しか考えられなくなっています]
[思考2:イグニートソード@SO3は破損しました]

[現在位置:D−5南西部]

223 ◆yHjSlOJmms:2009/07/05(日) 13:57:14 ID:rW5XtX.Y
以上で終了です。
タイトルは『鎌石村大乱戦 第二幕 〜龍を屠る赤き一撃〜』です。

因みに本来だったらこの後ソフィア達とレザード様ご一行が接触。
なんやかんやで戦闘になりボーマン対レザード、ソフィア、チェスターの構図にして
ボーマンピンチ!ってところで光の勇者様華麗に登場。
クロードの姿を見て復習の炎を滾らすチェスター。
そして更にチェスター、ソフィアを目の敵にしたアシュトンが二人に迫る。
ってな感じの完全な乱戦を作ろうとしたんですが力及ばず…。

本スレにもいらん誤爆してしまうし、最近こんなんばっかや…。

因みに今回のネタの元は本スレで、チェスターはなんで未来編からの参戦なの?ってところからです。
自分はチェスター登場話の書き手ではありませんが、きっとその人はロワ中で成長が見込めるキャラにしようとしたのではないかと考えました。
全員がゲーム終了だと成長イベントは原作で消化済みなキャラだらけになってしまいますしね。
そこで、一話前で精神的成長をみせていたチェスターに今度は実力的に成長してもらうように書いてみましたがどうでしょうか?

後シリアスストーリーしかしてないのにネタキャラ臭がするって言われてたんで、ネタキャラ要素としてスケベだいまおうを原作より引っ張ってきてみました。

それと◆wKs3a28q6Qさんすみません。アシュトンとギョロとウルルンに生じた亀裂のフラグをいっさい活かす事無くへし折ってしまいました。
鎌石村周辺に集まった対主催の戦力のバランスと、マーダーのバランスを整えたかったので、クロードをマーダーサイドにつけようとしたらああするしかありませんでした。

他にもいろいろツッコミどころがあると思われますので宜しくお願いいたします。

224 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:13:13 ID:iOFvMv.U
実はあまり後先考えず、既に書き上げていたりするのですが、

『展開のための展開』はイクナイ(・A・)!

に引っ掛かりそうな気もしているので試験投下させて頂きます。

225盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:14:03 ID:iOFvMv.U
「那々美……か」

菅原神社の本堂入り口で、洵は同じ倭国出身のエインフェリアの事を思い出した。
倭国最大の国、『海藍(ファイラン)』にある昂后神社の巫女職の継承者だった少女。
初対面の時には、おとなしく真面目で控えめな少女という印象だったが、それは彼女の一面に過ぎない。
夢瑠と2人で行動する時などには一緒になってカシェル辺りに悪戯を仕掛けて楽しんだり、
仲間内の恋愛話に興味を持ったりからかったりという、どこにでもいる少女のような面も有った。
いや、エインフェリアとしての資質以外を見れば、実際どこにでもいるような少女だったのだろう。

この遊戯の開戦の狼煙代わりにされたのはそんな少女だった。
流石にあの時は洵も怒りを覚えたのだが、殺し合いに乗ると決めてからは敢えて思い出そうとはしなかった。
決意が鈍るだとか非情になりきれないだとか、そういった理由からではない。只、無意味だからだ。
それでも神社という特殊な環境に1人で居ると、自然とその巫女の事が脳裏に浮かんでくる。

(お前が生きていたなら、やはりこの遊戯を止めようと行動したのだろうな。
 ……俺にはお前の想いは汲めないが、悪く思うな。お前の分の道具は有効に使わせてもらう)

那々美を思い出したからといって「仇討ち」などの方向に心が動く訳ではない。
だが争い事を好まなかった彼女の事を思い起こさせるこの場所が、少々居心地悪く感じられるのは確かだった。
早いところ探索を終えて本堂を出るとしよう、洵がそう考えた所で、

『……今、何か言ったのか?』

耳の後ろからルシオの声が聞こえてきた。
正確には耳の裏に接着して取り付けた、コミュニケーターに付属されていた『小型イヤホン』だ。
これと衣服に取り付けた『小型マイク』で、2人は今コミュニケーターを手に持たずとも会話が出来るようになっている。
どうやら洵の呟きは伝わってしまったらしい。
「……何でもない。それより俺の方には今の所は見当たらないが、そっちはどうだ?」
『あ、ああ。有ったよ。階段のところに有った。中身はまだ見てないけど』
「分かった。今行く」

先程の放送によると、新たに支給品が置かれるのは「菅原神社入口前」だった。
しかし、この伝え方だと「神社境内の入口」とも「神社本堂の入口」とも受け取れた為、
E−1エリアからだと神社の裏側から敷地内に入る事になる2人は、二手に分かれて探索する事にしたのだ。
何か有った場合にはすぐに駆けつけられるように、コミュニケーターの通信を入れたままにしておいたのだが、
結果的には必要の無い事だったらしい。

洵は通信を切り、本堂の扉を開く。
その時には、那々美の事などは完全に忘れていた。



226盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:15:56 ID:iOFvMv.U
本堂から出てきた洵の姿を見たルシオは、新たに入手したデイパックを持った腕を掲げ、小走りで洵に近づいた。
「それか」
「ああ。中身は今見ておくんだよな?」
2人はその場でざっと中身を確認する。
今までの経験から、パックを開けたら作動するような罠にも警戒したが、何かが起こる事も無かった。
「剣の類は無しか……出来れば木刀以外の物が欲しかったが」
武器が入っているならすぐに取り出そうと考えていたのだが、
その期待は空振りに終わり、出てきたのは道具類ばかりだった。
「仕方ないさ。アイテムが増えただけでも良しとしなくちゃあな」
実入りが有れば良しとする。スリで生計を立てていて身に付いた考え方だ。
「ふん。ルシファーに感謝しろとでも言うのか?」
「そうじゃないけどな……」

パックを閉じると、2人は神社を離れ、E−1へと向かった。
道具の詳しい説明を確認するのは禁止エリアを出て安全圏へと移動してからだ。
ルシオは時計を見て時刻を確認する。充分E−2を抜けられる時間は残っていた。

「……結局誰も居なかったな。人を集める罠だと思ったんだけど……」
ルシオは独り言のように呟いた。
新たに支給品が置かれたのはルシファーの気紛れや、ましてや言葉通りの「褒美」で有る筈も無い。
これを餌として殺し合いを加速させる罠である筈なのだ。
場合によっては自分達同様に支給品を取りに来る他の参加者と一戦交える覚悟はしていたのだが、
実際には神社には誰も居らず、支給品も手付かずのまま。
つまり自分達以外には誰もここには来なかったし、時間的に見て今から誰かが来る可能性も低いと思われる。
これでは菅原神社に置かれた支給品は、本当にただの自分達への褒美にしかならない。
「禁止エリアとなる時間が近い事も有る。他の奴らは、そう言った意味での危険は無い鎌石村の方に流れたのかもしれんな」
「それにしても誰も来ない可能性を考慮しないなんて……ルシファーはそんな甘い奴なのか?
 ……いや、何かおかしい。何かを見落としてる……?」
事が都合よく運びすぎている時は、落とし穴が大口を開いて待ち構えている場合が多い。
そんな貧民街での経験がルシオに警告を発していた。だがその警告が具体的な形を成さない。
「見落とし?」
「ああ。そんな気がする。
 そもそも『褒美』で人を集めるんだったらその場所を禁止エリアにする必要なんか無いんだ。
 禁止エリアにさえならなければ、ここに向かってくる人数だって増えるはずなんだから。
 ……まてよ、禁止エリア?……待ち伏せ……?」

ルシオは考え込む。
今回臨時に増やされた分を合わせて計6つの禁止エリア。
この内の4つは島を縦断するように、いや、縦断する為に配置されたのだろう。
これは島を縦断し、島の東側から出てくる参加者を待ち伏せさせる為。
そしてエリアごとの人口密度を一気に高めて参加者達を遭遇させる為だ。
狙いは明確では有るが、抵抗する事が困難な罠となっている。ここまでは先程の民家で気付いていた。
残る2つの禁止エリアの内のE−2とE−4。
ここが禁止された事で、鎌石村に居る参加者が村から出ていく場合にはE−1、またはE−3を通らざるを得ない。
同時に、もしもD−5に参加者が居るのなら、E−5とF−5以外に道は無くなる。
そう考えると今回の禁止エリアは今までの禁止エリアに比べ、
より参加者の移動経路を限定し、待ち伏せをし易くなるように定められたように見えてくる。
ならばE−2に置かれた支給品はどうなのか?これだけ罠でも何でも無いなどという事があるのだろうか?
菅原神社に支給品が置かれた理由も他と同様なのだとしたら……

227盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:16:44 ID:iOFvMv.U
「……もしかして……そういう事か?」
「何か気付いたのか?」
後方から聞こえてきた呟きに洵が反応を返して振り返ると、ルシオは険しい顔付きで立ち止まっていた。
「……これも『ネズミ取り』だったのかもしれない。
 今まで気付かなかったけど、よくよく考えれば今の俺達は完全にハマってるんだ」
「ハマっている?……どういう事だか説明しろ」
ルシオは辺りを見回しながら口を開いた。
「ああ。走りながら話すよ。とにかくこのエリアを抜けよう。俺の考えが正しかったら敵が近くまで来ているかもしれないんだ」
「……分かった。行くぞ」
洵は走り出す。確かに間も無く禁止エリアになる場所で戦う事などは御免だった。
ルシオも、1度後ろを振り返り誰も居ない事を確認すると、洵に続いて再び走り始めた。

「……今度の禁止エリアはまずこの島を縦断するように配置されてる。
 これには移動経路を制限して参加者同士をぶつけ合わせようとするルシファーの意図が有るのが明白だったな」
「ああ」
「だけど、それは縦断された場所に限った事じゃない。支給品が置かれたこのE−2だって同じ事なんだ。
 こっちも俺達の移動経路を制限して待ち伏せされやすいように考えられてる」
神社での待ち伏せならともかく、移動経路を制限した上での待ち伏せ。それを聞いた洵は眉間に皺を寄せる。
「どういう事だ?」
「良いか。0時に放送を聞いて神社に支給品を取りに行くとする。
 ……俺達が1番だったんだから、俺達を基準で考えるけど、
 到着した時には、禁止エリアになるまで残り1時間をとっくに切ってただろ?」
お前との会話が無ければもっと早くに到着していたがな。洵はそう思いながらも相槌を打った。
「E−2は2時に禁止エリアになる。で、神社はエリアの西側の端に近いんだ。
 多少時間が余ってたとしても、誰だって1番速くエリアを出られる所へ向かいたがる筈さ」
つまり、今彼等が向かっているE−1へと。
「……なるほどな。確かに俺達はE−1への最短距離を走っているが、
 これはルシファーに誘導されての事……奴の思惑通りという訳か」
「多分な。支給品を手に入れてE−1に出たら、その後はもうD−1かF−1に出るしかない。
 他のやる気になってる奴らがこの事に気付いていたら、確実にそこで待ち伏せされてるだろうな」
そういった輩からすれば、洵とルシオはわざわざ新たな支給品を持ち運んで来てくれる『運び屋』であり『獲物』だ。
ミッドガルドでも、例えばアルトリアからヴィルノアへと続く街道では、運び屋が襲われる事など日常茶飯事だった。
バドラック辺りの言葉を借りれば洵とルシオを襲撃するのは『おいしい仕事』となるだろうか。
「最悪の展開を考えると、D−1方向から来る奴、F−1方向から来る奴、
 それと俺達のように支給品を取りに行ってE−2から出てくる奴の3組に囲まれる可能性だってある。
 ……今のところ後ろ(E−2方向)から誰か来る気配は無いけど」
それを聞き、洵は忌々しげに舌を鳴らした。
「傍観を決め込む事にした矢先にこの状況か……とにかくE−1の道路まで出るぞ。
 見通しの良い場所で、まずは新たな道具を確認する。良いな」
今はとりあえず早く禁止エリアから脱出しなくてはならない。
2人はエインフェリアの仲間内でも1、2を争える敏捷さでE−2エリアを駆け抜けていった。



228盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:17:53 ID:iOFvMv.U
道具の確認を終えた洵とルシオは、元居た民家を目指して街道を歩いていた。
出来れば急いで移動したいが、ルシオの読みが正しければこの先には敵が待ち構えている可能性が高いのだ。
街道の周囲には木々や茂みなど、隠れられる箇所も多く存在する。現に洵が最初に殺した男も茂みに潜んでいた。
襲撃者があのような小物なら問題は無い。だが強敵に不意を衝かれれば気付かぬ内に殺されてしまう事も考えられる。
それ故、2人は移動速度よりも周囲の警戒に重点を置き、進んでいた。
朝の経験から洵は、遮蔽物の多い街道よりも見通しの利く海沿いを行こうと提案したのだが、
海沿いで襲われて暗い海に落ちると這い上がれなくなる危険性が有るし、
あまり見通しの利く場所だと逆に大魔法等から狙われやすい。
そうルシオに反論され、已む無く街道を進む事になった。

そうして移動してきた現在地、E−1の南部の街道。
ここで、ミカエル戦以来となる緊張感が洵とルシオを包んだ。道の先に灯りが見えるのだ。
ランタンの灯りかどうかまでは分からないが、あの様な灯りは2人が菅原神社へ向かう時には無かった。
何者かが灯りの辺りに居るのは確実だ。

「ルシオ、どう思う?」
「…………分からない。罠だとしても露骨過ぎる」
「確かにな。アレは避けて海沿いを進むか?」
「……いや、もしかしたらそれが狙いかもしれない。あの灯りは囮で、避けて移動した俺達を暗闇で叩く罠なのかも……」
ルシファーに移動経路を誘導されていたという考えは、ルシオの心に軽い疑心暗鬼をもたらしていた。
「ならば――」
洵は抜刀した。
「――ここで考えていても堂々巡りとなるだけだな。行くぞルシオ。コミュニケーターで会話が出来るようにしておけ」
通信をオンにしろと言う意味だ。
「行くって……正面からか?!」
「そうだ。ここから眺めていて罠かどうか看破出来るはずも無いのだからな。
 他にやりようが無いなら向かうまでだ。罠ならば叩き切れば良いだけの事!」
しばし逡巡する様子を見せていたが、その言葉で心が決まったのだろう。
ルシオは黙って頷き、コミュニケーターを操作すると、自身の腰からアービトレイターを静かに引き抜いた。

2人は同時に攻撃される事を避ける為、左右に若干距離を離して進んだ。
灯りが罠、囮であるなら、襲撃されるのは灯りよりも遥か手前である可能性も有るが、
2人のそのような警戒心をまるで無視するかのように、灯りは何事も起こさず、ただ揺らめくのみだった。
2人がE−1とF−1の境界、二股に分かれている道の手前まで到達したところで、灯りの正体が次第に明確になり始める。
「ルシオ、見えるか?」
「ああ。女……だよな」
灯りの正体はランタンであり、歩み寄るに連れて浮かび上がるのは、それを手に持つ1人の女性の顔だった。
洵もルシオもこの女性に見覚えは無い。
「この女……?」
洵は女の立ち振舞いを見て訝(いぶか)しむ。
堂々と姿を見せて待ち構えている割には、女はあまりにも隙だらけなのだ。
洵がその気になれば、この女に抵抗らしい抵抗もさせる事なく殺せるだろう。

「私に戦う気は有りません。あなた方にその気が無いのでしたら止まって頂けますか?」

女の方から声を掛けてきた。

229盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:18:53 ID:iOFvMv.U
彼女から見れば、洵とルシオの姿まではまだ確認出来ていない筈だが、誰かが近付いてくる気配には気付いていたのだろう。
『ルシオ、俺が止まるまでは止まらなくて良い。周囲を警戒しろ。この女自体が罠かもしれん』
囁くように話しかけるが、マイクとイヤホンのおかげで問題も無く、聞かれる事も無く会話が出来る。
『分かった』
ルシオの返事を確認すると、洵は女に向けて話し掛けた。
「こちらにもやる気は無い。だが貴様の顔がはっきりと確認出来る位置までは進む。良いな!」
方便だった。洵の狙いは自身の最速の技にして奥義でもある『千光刃』の間合いに入る事。今の位置は、それには少し遠い。

「…………でしたら私から行きます。私の顔が確認出来たら声を掛けて下さい。……『洵』さん」

「「なっ?!」」
2人に動揺が走り、足が止まった。代わりに女は洵達に向かってゆっくり歩き出す。
何故この女は姿も見えない洵の事を判別出来たのか。
いや、姿を見られていたとしても、洵はこの女と面識は無い。姿だけで参加者の誰かまで特定出来る筈もない。
『知り合い……じゃないよな?』
ルシオから通信が入った。
『……全く知らん女だ。何者だ?この女……』
ミッドガルドでも神界でも会った事がない。
考えられるとしたら、洵から見たルシオのように未来の人物か、もしくは、
「貴様、ミランダか?」
ミランダが何らかの方法で化けている事くらいだった。
「…………いいえ。ミランダ・ニームではありません。私は……」
「そこで止まれ!顔は確認出来た。……ミランダでは無いのならば何故俺を知っている?」
動揺して声を掛ける事を失念していた。
女性までの距離は10mも無い。彼女の持つランタンの灯りが洵とルシオの顔を照らしている。
向こうからも既に2人の顔は見えている筈だ。

「……それは……私がルシファー・ランドベルドの妹だからです」

「……何?」「……え?」
意外すぎる返答に、洵とルシオは言葉を失った。
と言うのは驚いて、という訳ではない。女の言っている事への理解が追いつかないのだ。
そんな2人の様子に構わず、女は続けた。

「お二人にお願いが有ります。……助けて下さい。今、私はロキに脅されているんです」

「何!?」「何だって!?」
そして今度は驚愕のあまり、言葉を吐き出した。


★  ☆  ★  ☆  ★

230盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:19:57 ID:iOFvMv.U
ロキは、少し離れた場所からブレアの様子を伺っていた。
菅原神社へと向かっていたロキとブレアが何故E−1とF−1の境界付近に居るのか?
簡潔に言えば、それはほぼルシオの考えた通りの理由での『待ち伏せ』であった。
その『待ち伏せ』を思い付き、実行に移したのは無論ブレアではなくロキである。

ブラムス達を追って菅原神社を目指していたロキとブレア。
ロキ1人でなら充分追い付ける予定だったのだが、ブレアの足の遅さが計算外だった。
このまま進んでも、自分達が菅原神社に到着する頃には既にブラムス達は去った後だろう。
それでは神社に向かう意味が全く無い、と考えたロキは、
神社に居るブラムス達には追い付けないとしても、
ブラムス達が神社から平瀬村に向かう所ならば、このペースでもまだ先回り出来るはず。
そう判断し、早々に進路を菅原神社から平瀬村に切り替えていた。

F−1とE−1の境に到着した後は灯りを持たせたブレアを1人で街道に立たせる事にした。
ブラムスのパーティにブレアを潜り込ませるにはロキ自身が姿を見せて待ち伏せる訳にはいかないし、
このようにしてブレアを目立たせれば、ブラムス達でなくとも神社方向から平瀬村に入る者と接触出来る確率は高くなる。
ここで接触するのがブラムス達なら後は作戦通りにブレアに頑張ってもらい、
別の誰かなら情報交換だけ行わせ、その情報次第で行き先を考えれば良い。
もしも接触する人物がブレアに攻撃を仕掛けようとした場合には、ロキが容赦無く魔法を撃ち込むつもりだった。
遠距離から飛び道具で攻撃された場合でも、ロキにはそれを察知して撃ち落とせる自信も有る。
一応ブレアはロキにとって使える駒なのだから、そう簡単に殺させる訳にもいかない。

そしてどのくらい待っただろうか。ようやく他の人物の気配を感じた。
(やっと誰かお出ましか。ブラムスなら話が早いが……違うみたいだな)
ややあって、ブレアに動きが有った。接触した様子だ。
ロキの位置からは声までは聞こえないが、今の所はその誰かがブレアに襲いかかる気配は無いようだ。
それならばロキが動く必要は無い。動くとしたらブレアが情報交換を済ませた後。その情報次第だ。
ロキは、ここでブレアがブラムス達以外の人物と出会った場合には、ブラムス達の移動先をある程度特定する為、
その人物から『菅原神社で支給品を手に入れたかどうか』を聞き出す事を命じていた。
ロキが最後に見たブラムス達の居た場所を考えるに、
第3回放送後にどちらの支給品配置場所にも尤も近い位置に居た参加者は、まずブラムス達だ。
つまり、ブラムス達が支給品を取りに行けば、どちらに行ってもまず間違いなく一番乗り出来るだろう。
その前提で考えると、もしも今ブレアと接触する人物が菅原神社で支給品を入手していたとしたら(Aパターン)
ブラムス達は神社に行かなかったという事になる。つまり鎌石村に向かった可能性が高い。
逆に支給品を入手していなかったのなら(Bパターン)、
ブラムス達が支給品を手に入れている場合と、更に別の誰かが支給品を手に入れている場合とが有るが、
どちらにしてもブラムス達が既に平瀬村の何処かに来ている可能性は生まれる。
Aパターンならともかく、Bパターンの場合はブラムス達がこの場所の近くに居るかもしれないのだ。
ここで派手に動いてロキがブレアと一緒に居る所を見られてしまえば、ブレアが警戒されてロキの作戦は台無しとなる。
出来る事なら、ロキもここでは余計な騒ぎを起こしたくは無かった。

ブレアが接触した人物に近付き始めた。ランタンの灯りがその人物、いや、人物達の姿を照らし出す。
それを見たロキは若干の驚きの後、薄ら笑いを頬に浮かべた。

(あいつルシオ!?名簿の『ルシオ』はやっぱりあいつか。ここであいつを見つけられるとはね。
 さて、こうなると……とりあえずは情報交換が終わるのを待って、その後は……どうしようかな?)


★  ☆  ★  ☆  ★

231盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:20:34 ID:iOFvMv.U
「――貴様の顔がはっきりと確認出来る位置までは進む。良いな!」

(良いわ!とても良い!『声』を出してくれたのだからね!)
ブレアからは姿が見えなかったが、聞こえてきた声のおかげで暗がりから向かってくる参加者の正体を『検索』する事が出来た。
(この声は、レナス・ヴァルキュリアのエインフェリアの1人『洵』ね。
 私の呼び掛けに返事を返してきたのだから、今すぐに私を殺そうとする事は無いでしょうけど……)
とは言え、警戒されているのは事実。
データでは洵の視力は決して悪くなく、この距離でランタンを掲げ上げているブレアの顔が見えないとは考え難い。
おそらくは、自身の攻撃し易い距離まで近付く為の方便だろう。
洵の他にもう1人分の気配も有るし、攻撃をされる事を避ける為にも、この場でのペースは掴まなければならない。
「――私の顔が確認出来たら声を掛けて下さい。……洵さん」
ブレアは彼らに『謎』を1つ提示した。『何故か自分の事が知られている』という『謎』だ。
この殺し合いの状況下で、面識も無い人物の口から自分の情報が出てくれば、こちらが何者かが気になるはずだ。
洵がゲームに乗っているとしても、少なくともいきなりブレアを殺そうとはせず、『謎』の答えを聞き出そうとするだろう。
そうなればしばらくの間はブレアの安全は保証される。
とりあえず、危険な時にはロキがブレアを守る手筈となってはいるが、
ロキなど信用出来る訳がないのだ。自分で打てる手は打っておかなくてはならない。

ブレアが洵の名前を口にした事で、2人は驚愕の声を同時に漏らした。
それを聞いたブレアはすかさずもう1人の声で検索をかけ、その人物を割り出した。
(ルシオ!?この2人はルシオと洵なの!?……ツイてるわ!この2人なら、使える!)
ブレアとしては、ここでブラムスに出会いロキを始末させる事が出来ればベストだったが、
この2人に出会うという状況も悪くない。いや、現状で考えるならブラムス達の次に良いかもしれない。
ブレアはゆっくりと歩き出し、ランタンの灯りで徐々に彼等の身体を照らし出していく。

「――ミランダでは無いのならば何故俺を知っている?」

ブレアの思惑通り、洵が食いついてきた。
ミランダ・ニームと間違われた理由は不明だが、それは取るに足らない事だ。
今重要な事は、これで当面の間はブレアの安全が確保出来たという事。
そして2人の姿だけでなく顔を照らし出せる距離まで近付けた事。
(これでロキもこの2人の顔を確認出来たはず……当然、ロキならルシオを生かしておくはず無いわよね。
 貴方達には悪いけれど、ロキを消耗させる為の道具になってもらうわ!!)

「お二人にお願いが有ります。……助けて下さい。今、私はロキに脅されているんです」

「何!?」「何だって!?」
2人は同時に叫ぶ。
「ロキ!?今あんたロキって言ったのか!?」「ロキに脅されているだと!?奴は近くに居るのか!?」
ルシファーの妹と言う話より、ロキの名前に強い反応を見せて少々取り乱す2人の様子を、
ブレアは心では笑いながらも、表面上は気にも留めないかのように、冷静に言葉を継いだ。
「落ち着いて下さい。ロキは近くに居ますが、今は攻撃を仕掛けてくるような事はありません。まずは私の話を聞いて下さい」



232盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:21:22 ID:iOFvMv.U
“ミッドガルドに対する神界アスガルドのように、神界よりも更に上位に位置する異世界が存在する。
 ルシファーとブレアはその異世界の人間で、そこの人間は簡単にミッドガルドや神界、
 そしてこの島に集められた様々な参加者達の世界に関わる事が出来るし、情報を引き出す事が出来る。
 自分はルシファーに反抗したが為にこの殺戮ゲームの登場人物とされてしまった”

ブレアは名乗った後、まず自分の事や自分が提示した謎の答えをこのように説明した。
ルシオ達からしてみれば、神界の更に上位の世界の存在など荒唐無稽な話で信じ難い事ではあったようだが、
本人以外誰も知り得ないような洵とルシオの過去の話やこの島へ連れて来られた時期、ラグナロクの顛末までブレアが話すと、
不承不承という素振を見せながらも彼女の話を信じたようだった。(ラグナロクの顛末については少々ルシオが口を挟んで来たが)

ブレアの話が一段落すると、やや興奮した面持ちでルシオが口を開いた。
「それじゃあ……あんたもルシファーと同じように死んだ者を甦らせる事が出来るのか!?」
「それは――」
「待て!ルシオ。それは後にしろ」
が、洵が口を挟んできた。
「……貴様が俺達の事を知っている理由は分かった。
 本当にルシファーの妹かどうかは判断しようも無いが、その異世界から送り込まれた人間だという話は信じよう。
 それで、ロキの目的は何だ?何故わざわざ灯りを点けて目立たせて、貴様をここで待たせている?」
ルシオはともかく、洵はどうやらブレアの話の全てを鵜呑みにしている訳では無さそうだ。
だがブレア自身に危害を加えようとしない限りは問題は無い。
「これは私の推測も交えているんですが――」
そう前置きをして、ブレアはこれまでの経緯を簡潔に話し始めた。

“自分はこの殺し合いを止める為に行動していたが、その最中、ブラムスに敗北した直後のロキに捉えられてしまった。
 ロキの目的は、ロキ自身にとって強敵であるブラムスを味方に付ける事。自分を捕らえたのは、その際に利用する為。
 そして、新たに置かれた支給品を取りに行ったと予想されるブラムスを待ち伏せる為に、自分はこの場所に立たされていた。
 ロキは少し離れた場所から自分を監視しており、自分に襲いかかる相手がいたらロキが攻撃を仕掛ける事になっている”

無論、脚色と偽りも交えて。
「この灯りを消せないのも、ロキが私の様子を監視する為なんです。
 お願いです。助けて下さい!ロキは用が済んだら私を殺す……そういう男です。
 この殺し合いを止める為にも、私はまだ死ぬ訳にはいかないんです!」
ブレアはそう訴えかけて2人を見た。

「……ロキは今は襲っては来ないんだな?」
「はい。情報交換が終わり、その内容を確認するまでは手を出さないでしょう。
 それはロキ自身の利益に繋がる事でもあるのですから」
「……ならば、少しルシオと話をする。貴様は離れていろ」

何か言いたそうなルシオを抑えながら、洵は少し下がった。
やはり完全には信用されていないようだが、
どうせすぐにロキに殺される男達なのだから信用などされなくて良い。いや、極端な話、正体がばれても良い。
ブレアも素直に後ろに下がり、2人から距離を取った。
(私を助けたいと考えているのかしら?見捨てたいと考えているのかしら?
 でも、近くにロキが居るのは分かったでしょう?ロキが自分の正体を知るルシオを逃がすと思う?思わないわよね?
 なら、ロキを倒す策を考えなさい!勝てないまでも、ロキを消耗させるのよ。私の為にね!)
ロキと2人を戦い合わせるだけならば、ロキに合図を送ってこの場に出てきてもらえば済む。
だが、ルシオ達には出来る限り善戦してロキを消耗させてもらわなければならないのだ。
もしもロキが2人を瞬殺してしまえば、消耗するどころではない。逆に2人の支給品を手に入れてロキが潤ってしまう。
そうならない為にも、戦い合わせる前に多少なりともロキ対策を考えてもらった方が都合が良かった。
そう、おそらく、今彼等がしているように。


★  ☆  ★  ☆  ★

233盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:22:11 ID:iOFvMv.U
「ルシオ、この女に気を許すな。こいつは何か妙だ」
洵は、先程からブレアを信じている様子を見せるルシオに忠告をした。
ルシファーの妹を名乗る人物ブレア・ランドベルド。洵は彼女に違和感を感じていたのだ。
それはほんの些細な事がきっかけだったのだが、この状況下では、疑惑の種としては申し分の無いものだった。
「…………妙だって?……何が妙なんだ?」
洵の忠告に対するルシオのあっけに取られた様な反応からも、ブレアを疑おうなどとは全く考えていない事が窺える。
おそらくはルシファー以外の異世界の人物に対する期待、優勝せずともヴァルキリーを甦らせる事が出来る可能性が、
無条件でルシオにブレアを信じさせているのだろう。
ここでルシオを切り捨てるならともかく、駒として利用し続けるつもりの洵としては、
脱出の可能性などという期待を持たれるのは良い展開ではない。
洵は内心でルシオの甘さに舌打ちをしながら、自分の感じた違和感を話す事にした。
「何を考えているのかは知らん。
 だがこの女、俺達の姿を見ずに俺達の事を判別出来ていたというのに、その後、ランタンで俺達の姿を照らしたな?
 いくら俺が声をかける事を失念していたからと言ってだ、
 ロキとお前の因縁を知っていたこの女が、ロキにわざわざお前の姿を晒す理由が何処に有る?
 助けを請う人間が、何故助ける側の人間に不利になるような事をする?この女、言動と行動が合っていない」
「それは……たまたま照らしちまっただけかもしれないだろ?」
ルシオは無意識に、だろうが、ブレア側の立場に立って意見を述べていた。
洵は再び、内心で舌を打つ。
「いや、さっきの理路整然とした話し方からしても、この女は馬鹿ではないし、慌てている素振りも無い。
 灯りを近付ければロキに俺達の姿が見える、その程度の事に気付かない筈あるまい。あれは故意にした事だ」
実の所、洵も『たまたま照らしてしまっただけ』という可能性が無いとは考えていない。
だが、今は少々無茶な理屈でも『ブレアが疑わしい』という話を納得させる事が出来ればそれで良いのだ。
「そんな――」
「ルシオ、お前は何を以ってこの女を信用している?」
「え?」
「この場でもしもロキが同じ様な事を言ってきたとしたら、お前は信用するのか?」
「……え?」
一瞬の後、ルシオはハッと息を飲んだ。洵の言わんとする事を理解したようだ。
「この女が異世界の人間であろうと、この島に居る以上は優勝を目指して行動していても何の不思議も無い。
 寧ろ、俺達の事を知っているからこそ、それらしい作り話で騙す事も容易い筈だ。
 本人の言い分だけで信用するなど、愚かにも程がある」
「……いや……だけど…………じゃあ、ロキに脅されてるって話は嘘だって言うのか?」
それについてはブレアと話している時に、洵は既に結論を出していた。
「ロキに関して話した事はおそらく真実だ。脅されている事も、ブラムスを待ち伏せていた事も、俺達に助けを求めた事もな。
 脅されでもしなければ、こいつのようにまるで戦闘能力の感じられない女がこれほど危険な待ち伏せなどする筈が無い。
 脅されているなら、脅しているその誰かの事を偽って伝える必要も無い」

つまり今、洵とルシオの2人にロキという危険が迫ってきている事は確実なのだ。洵はそう判断していた。

234盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:22:47 ID:iOFvMv.U
「……俺達に不利になるような事をして、俺達に助けを求めてる?……そんな事をして何の意味が有るんだよ?」
「さあな。言っただろう。この女が何を考えているのかは知らん。
 今、最も重要なのは、こいつは決して俺達の味方ではないという事だ。
 ルシオ、この女を救おうなどと余計な事を考えるな。さもなければ、ここでまたロキに殺されるぞ!」
ルシオは俯きながら顔を歪めた。その表情が物語る感情が何なのかは分からない。
だが、ルシオが次に顔を上げた時、
「……そう……だな。洵、お前の言う通りだ」
つい今まで見せていた興奮の面持ちは、もう見られなかった。
決して期待を捨て切れてはいないのだろうが、今はこれが限度だろう。

「けど、だったらどうするんだ?逃げるのか?」
「……いや、ロキとはここで決着を着ける」
洵はロキと戦う事を明言した。
「……戦うのか!?」
その言葉を聞いたルシオは、意外そうな表情を浮かべて洵を見た。
つい先程、戦闘での疲弊を避ける為に傍観を選択したのは他ならぬ洵本人だし、彼はブレアを疑ってもいる。
逃げる事を選択するものだとばかり考えていた。

「ああ。ロキがあのブラムスと組もうとしているのなら、それは阻止しなくてはならん。
 奴らに組まれてしまえば俺達に勝機はなくなるからな。ロキはここで殺す!」
確かに他の参加者の疲弊を待つ事が洵の計画ではあったが、この場合はそれに準じて行動する訳にはいかない。
ロキの目的がただ優勝を狙っているだとか、ただ脱出を目指しているだとか言うなら今はまだ戦う必要は無いが、
ロキはブラムスと手を組む為に行動していると言うのだ。
例えここでロキとの戦闘を回避出来たとしても、万が一ブラムスと組まれてしまえば、
ロキは今よりも強大な障害として洵達の前に立ち塞がるだろう。
それではますます勝ち目が無くなってしまう。そうなる前に叩かなくてはならない。

「だけど…………いや、確かにロキを倒すなら今がチャンスかもしれないな。
 あいつがどの時期から来てるのかは分からないけど、ここでは少なくともドラゴンオーブは持っていない筈だ!」
ルシオも洵もこの島に連れて来られた時に、持っていた道具も装備も全てルシファーに没収されていた。
それはロキとて例外では無い筈なのだ。
「そう、その事も有る。ドラゴンオーブの無い今、奴はオーディンを倒せる程の能力は解放出来ない。
 下級神以上の能力を出せないのなら、そしてダメージを負っている今ならば、俺達が手が届かない程の相手ではない!
 ……それからもう1つ、俺達に有利な点が有る」
「もう1つ?」
もったいぶる事も無く、洵は言った。
「ブレアだ。この女は俺達の味方ではないが、ロキの味方でもない。こいつにとってもロキは敵の筈。
 弱点だろうと何だろうと知ってる事は素直に話す筈だ。こいつからロキの情報を聞き出せるだけ聞き出すぞ」



235盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:23:54 ID:iOFvMv.U
ブレアがロキに合図を出した。
詳しい事は洵達は知らないが、今出した合図はこの場にロキを呼び出す為の合図らしい。(合図は他にも数パターン有るらしい)
ブレアが合図を出すとすぐ、彼女のかなり後方から人の気配が感じられた。
その気配に反応した2人は思わず武器を構える。ルシオはアービトレイターを。
洵は、新たに入手した支給品『マジカルカメラ』で複製したアービトレイターとダマスクスソードを。
ロキは2人が剣を構えたのは見えているだろうが、それを警戒してもいない様子で、
まるでペースを変える事無く近付いてくる。やがて、暗がりから無邪気そうに微笑んでいるロキの顔が見え始めた。

「ロキ!!」
ルシオが叫んだ。
「こいつがロキ……」
洵が呟いた。神界に送られた事の無かった洵は、これがロキとの初対面だ。
こんな形で会う事になるとは2日前には想像もしなかったが。
「何でここに……ブレアの仲間って……」
ルシオはブレアをチラリと見た。無論、これは演技だ。
ロキには『ブレアはロキを裏切っていない』と思わせておく方が彼等にも都合が良かった。

「そう、俺だよ。驚いたかい?……それにしても久しぶりだな、ルシオ。元気だったかい?心配してたんだよ?」
「……何を、白々しい事を!」
このロキがルシオ殺害後から来たロキだという事はブレアから聞いている。

「本当さ。お前には色々聞きたい事が有るんだ。安心しな。俺はお前を殺す気は無いよ」

ロキの意外な一言。この場に居る誰1人として、その言葉を信じる者は居なかった。
洵は思わず失笑を漏らす。
「確かに白々しい。誰がそんな言葉を信じる?」
「ん?何だお前?」
ロキが洵を睨み付けた。
「お前は確かレナスの……ふっ、まあ良いや。どうやらお前も俺がルシオを殺した事は聞いてるみたいだな。
 だけどもうそんな事はどうでも良いのさ。フレイとレナスが死んだ今となってはね」
「何?」
「俺がルシオに何をしたかなんてばらされてたらマズイのは彼女達だけさ。
 よく考えたらブラムスは神界の揉め事なんてどうでもいいだろうし、この島に居る他の奴らなんて取るに足らない存在だろ?
 だったらばらされて困る事なんて……おい、何をしてるんだ?」

話の途中だが、ロキはルシオに問いかけた。
ルシオがいつの間にかボールを手に持ち、掲げているのだ。
ルシオはその問いに答えず、一言だけ“ロキ”と呟き、ボールを放り投げた。
すると、ボールは光となり、ロキに向かって飛んでいく。

236盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:24:27 ID:iOFvMv.U
「おいおい、聞く耳持たずか?」
ロキは素早くグーングニルを手に持つと、その光に向かって叩きつけた。
しかし、槍には何の手応えも感じられず、光はまっすぐにロキへと向かい、命中した。
「くっ?!」
命中したがロキには変化は無い。ダメージはおろか、状態異常にかかる訳でも無い。
それも当然だ。今のボールは攻撃用のアイテムでは無いのだから。
ロキは自分の身体を見回し、何かが起こる事も無い様子に気付くと、ルシオを睨みながら言った。
「……今のは何だ?」
ルシオは黙っている。
「答えろッ!俺に何をしたッ!」

今ルシオが投げたボールは、新たに入手した支給品の1つ『アナライズボール』だ。
洵やルシオ達の世界で言えば『スペクタクルズ』と同等の性能を持つ道具で、対象者の状態を調べる事が出来る。
2人にボールからの情報が伝わった。確かにロキは大きなダメージを負っている。魔力は9割以上有るが、
体力は3割程度しか残っていない。ブラムスから受けたダメージはあまり回復していないようだ。
そう言えば、と洵は思い出す。
アスガルド丘陵でロキと戦う事になった時に、ヴァルキリーから聞いていたロキの能力についてだ。
ロキは基本的には魔術師タイプの神族だが、攻撃魔法を好む為か、回復の類の魔法は得意ではないのだと聞いた。
魔力が充分に残っているのに体力を回復させていない今のロキ。それがこの話の裏付けになると言えるだろう。
使えない訳ではないようだが、おそらくは不得手の魔法故、消費する魔力と回復力の量が割に合っていないのかもしれない。
そしてこのロキの状態はブレアの話の裏付けにもなっていた。ならば、迷う事は無い。
2人は左右に散らばり、剣を構え直した。

「……まさか『これが答えだ!』とか言いたいのかい?
 ふんっ、貴様等、見逃してやると言ってるのに……本気で神である俺と戦う気か?
 いや、戦いになると思ってるのか?……思い上がるなよッ!人間ごときがッ!!!」

ロキは怒鳴りつけると同時にグーングニルを振りかざし、構える。瞬間、闘気の波動が周囲に広がった。
「くっ!」「うっ!」「キャアァァ!!」
それを受け、ブレアだけが10m程後方に吹き飛ばされた。ルシオがそれを反射的に目で追った。
「ウスノロ!貴様は邪魔だよ!引っ込んでいろ!」
わざとやった事のようだ。だがこれは洵とルシオにも都合が良い。

『行くぞ、ルシオ!』
『ああ!』

2人は同時にロキに向かって駆け出した。




ルシファーの手によって中断させられていたロキとエインフェリア達の闘い。或いは既に過去の出来事となっていた戦いは、
ルシファーとルシファーの送り込んだプログラムに導かれ、形を変えてこの島で再開されようとしていた。
舞台が変わった事で運命は彼等の変化するのか?それはきっとルシファーにも分からないのだろう。
この沖木島という盤面の上では、ポーンがクィーンよりも必ずしも劣っているとは限らないのだから。

237盤上の出来事 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:24:57 ID:iOFvMv.U
【E-01/黎明】
【洵】[MP残量:100%]
[状態:腹部の打撲、顔に痣、首の打ち身:戦闘にはほとんど支障がない]
[装備:ダマスクスソード@TOP、アービトレイター@RS]
[道具:コミュニケーター@SO3、アナライズボール@RS、木刀、スターオーシャンBS@現実世界、荷物一式]
[行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする]
[思考1:ロキを殺す。今はその事だけに集中]
[思考2:基本的にブレアは信用していないが、対ロキに関してのみ信用]
[備考1:ロキの使用できる技はここでブレア、過去にヴァルキリーから聞いて把握している可能性があります]

【ルシオ】[MP残量:100%]
[状態:軽い疲労、焦燥と不安]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:マジカルカメラ(マジカルフィルム付き)@SO2、コミュニケーター@SO3、????×1、荷物一式×2]
[行動方針:レナスを……蘇らせる]
[思考1:ロキを倒す。今はその事だけに集中]
[思考2:ブレアは信用しない(だが、心では淡い期待を持つ)]
[備考1:コミュニケーターの機能は通信機能しか把握していません。(イヤホン、マイク込みで)]
[備考2:マリアとクレスを危険人物と認識]
[備考3:新たに入手した支給品はアナライズボール×2、マジカルカメラ(マジカルフィルム付き)、????×1です。
     アナライズボールは洵と分け合い、ルシオの分は使用しました。
     マジカルカメラで複製出来ない物、マジカルフィルムの個数は後の書き手さんに一任。
     ????×1は洵、ルシオとも確認済み]
[備考4:ロキの使用できる技はブレアから聞いて把握している可能性があります]

【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%]
[状態:ノイズは治まり気味
    ロキに対する怒りと同時に、ロキを殺せる希望を見つけた事に対する喜びを併せ持つ]
[装備:無し]
[道具:荷物一式]
[行動方針:参加者に出来る限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい]
[思考1:ルシオ、洵を利用しロキを消耗させる。2人は死んでも良い]
[思考2:出来る限りロキの足を引っ張る]
[思考3:その他の事は後で考える]
[備考1:クリフの特徴を聞きました。
     名前は聞いていませんが、前もって人物情報を聞かされているので特定しています]
[備考2:フェイト達に会うまでは保身を優先し、誤情報を広めるつもりはありません]

【ロキ】[MP残量:90%]
[状態:自転車マスターLv4(ドリフトをマスター)
    顔面に大きな痣&傷多数 顎関節脱臼(やや痛むが何とか修復完了)、残り体力30%程度]
[装備:グーングニル3@TOP、パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔50/100〕@SO3]
[道具:10フォル@SO、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、スタンガン、ザイル、ボーリング玉、拡声器@現実世界、万能包丁@SO3、首輪、荷物一式×2]
[行動方針:ゲームの破壊]
[思考1:ルシオ、洵を殺す]
[思考2:ブレアは駒として使えるので、今は簡単に殺させる訳にはいかない]
[思考3:その他の事は後で考える]
[備考1:顎を治しましたが、まだ長い呪文詠唱などをすると痛みが走るかもしれません]
[備考2:自分をフルボッコにした相手はブラムスと特定しています]
[備考3:レザードは多分殺し合いには乗っていないだろうと予測(マーダーであるブレアが殺したがっているから)]

[現在地:E-01南部。道が二股に分かれているところ]


【残り21人+α?】

238 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/02(日) 14:26:35 ID:iOFvMv.U
以上で投下終了です。タイトル元ネタはありません。
相変わらずオリジナル設定満載ですが、大丈夫かな……?

問題になりそうなところは

・コミュニケーターのイヤホンとマイク
・ロキの進路変更が都合良過ぎ
・ロキの体力
・支給品多すぎ
・状態表削り過ぎ

などでしょうか。他にも有りそうな気はしてますが……
洵の状態表の「参戦時期」につきましては、迷いましたが外させて頂きました。
一応今後のテンプレには表記されている事と、他のキャラは状態表に参戦時期が書かれていない事が理由となります。
それも含めまして、問題点、矛盾点、ご指摘、ご感想などありましたら是非。

本当はもう1人使う予定でしたが、それ入れると容量的に中途半端に前後編になりそうだったので断念。
これで追跡表も合わせて34.4K……通った時、前後に分けずに済むと良いな。

239修正 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/04(火) 19:22:43 ID:wMHkUogw
指摘の有った箇所を修正させて頂きます。




「……それは……私がルシファー・ランドベルドの妹だからです」

「……何?」「……え?」
意外すぎる返答に、洵とルシオは言葉を失った。
と言うのは驚いて、という訳ではない。女の言っている事への理解が追いつかないのだ。
そんな2人の様子に構わず、女は続けた。
「お2人にお願いが有ります。……助けて下さい。私は今、貴方達の良く知る人物に脅されているんです」
ルシファーの妹がここで自分達の知り合いに脅されている?洵もルシオも状況が上手く理解出来なかった。
だが、何者かに待ち伏せされている事だけは確実のようだ。一体誰だと言うのか。
「……俺達の良く知る人物だと?」
「はい。私はその男に脅され、ここで待ち伏せする事を強要されています」

今この島で生き残っていて、女を脅して利用するような、自分達の顔見知りの男。
洵もルシオも、瞬時に約2名の顔を思い浮かべた。

「彼は少し離れた場所からこちらの様子を監視しています。
 私程度の声でしたら届かない距離だと思いますが、念の為に出来るだけ声を抑えて頂けますか?」
「……その人物とは?」
洵はそれには素直に従い、声を小さくした。
「それは――」
女はルシオを見て、続けた。
「ルシオさん。特に、貴方が良く知る男です」

わざわざ『ルシオ』を強調するのならば、その男とは――

「ロキ……ロキが……近くに居るのか……?」


★  ☆  ★  ☆  ★

240修正 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/04(火) 19:23:52 ID:wMHkUogw
ロキは気配を消し、ブレアからある程度離れた場所から様子を窺っていた。
菅原神社へと向かっていたロキとブレアが何故E−1とF−1の境界付近に居るのか?
簡潔に言えば、それはほぼルシオの考えた通りの理由での『待ち伏せ』であった。
その『待ち伏せ』を思い付き、実行に移したのは無論ブレアではなくロキである。

ブラムス達を追って菅原神社を目指していたロキとブレア。
ロキ1人でなら充分追い付ける予定だったのだが、ブレアの足の遅さが計算外だった。
このまま進んでも、自分達が菅原神社に到着する頃には既にブラムス達は去った後だろう。
それでは神社に向かう意味が全く無い、と考えたロキは、
神社に居るブラムス達には追い付けないとしても、
ブラムス達が神社から平瀬村に向かう所ならば、このペースでもまだ先回り出来るはず。
そう判断し、早々に進路を菅原神社から平瀬村に切り替えていた。

F−1とE−1の境に到着した後は灯りを持たせたブレアを1人で街道に立たせ、自分は大きく距離を取った。
ブラムスのパーティにブレアを潜り込ませるにはロキ自身が姿を見せて待ち伏せる訳にはいかないし、
あまり近くで様子を窺っていれば、ブラムスに自分の気配を感付かれてしまう恐れも有るだろう。
だから、ロキ自身は大っぴらには動かない。その代わりに、このようにしてブレアを目立たせる事にした。
こうすれば、ブラムス達でなくとも神社方向から平瀬村に入る者と接触出来る確率は高くなる。
ここで接触するのがブラムス達なら後は作戦通りにブレアに頑張ってもらい、
別の誰かなら情報交換だけ行わせ、その情報次第で行き先を考えれば良い。
もしも接触する人物がブレアに攻撃を仕掛けようとした場合には、ロキが容赦無く魔法を撃ち込むつもりだった。
遠距離から飛び道具で攻撃された場合でも、ロキにはそれを察知して撃ち落とせる自信も有る。
一応ブレアはロキにとって使える駒なのだから、そう簡単に殺させる訳にもいかない。

そしてどのくらい待っただろうか。ようやく他の人物の気配を感じた。
(やっと誰かお出ましか。ブラムスなら話が早いが……違うみたいだな)
ややあって、ブレアに動きが有った。接触した様子だ。
ロキの位置からは、はっきりとした言葉までは聞き取れないが、今の所はその誰かがブレアに襲いかかる気配は無いようだ。
それならばロキが動く必要は無い。動くとしたらブレアが情報交換を済ませた後。その情報次第だ。
ロキは、ここでブレアがブラムス達以外の人物と出会った場合には、ブラムス達の移動先をある程度特定する為、
その人物から『菅原神社で支給品を手に入れたかどうか』を聞き出す事を命じていた。
ロキが最後に見たブラムス達の居た場所を考えるに、
第3回放送後にどちらの支給品配置場所にも尤も近い位置に居た参加者は、まずブラムス達だ。
つまり、ブラムス達が支給品を取りに行けば、どちらに行ってもまず間違いなく一番乗り出来るだろう。
その前提で考えると、もしも今ブレアと接触する人物が菅原神社で支給品を入手していたとしたら(Aパターン)
ブラムス達は神社に行かなかったという事になる。つまり鎌石村に向かった可能性が高い。
逆に支給品を入手していなかったのなら(Bパターン)、
ブラムス達が支給品を手に入れている場合と、更に別の誰かが支給品を手に入れている場合とが有るが、
どちらにしてもブラムス達が既に平瀬村の何処かに来ている可能性は生まれる。
Aパターンならともかく、Bパターンの場合はブラムス達がこの場所の近くに居るかもしれないのだ。
ここで派手に動いてロキがブレアと一緒に居る所を見られてしまえば、ブレアが警戒されてロキの作戦は台無しとなる。
出来る事なら、ロキもここでは余計な騒ぎを起こしたくは無かった。

ブレアが接触した人物に近付き始めた。ランタンの灯りがその人物、いや、人物達の姿を照らし出す。
見覚えのある姿に気付いたロキはそのシルエットを凝視した。そして、若干の驚きの後、薄ら笑いを頬に浮かべる。

(あの姿……もしかしたらルシオか!?名簿の『ルシオ』はやっぱりあいつだったか。ここで見つけられるとはね。
 さて、こうなると……とりあえずは情報交換が終わるのを待って、その後は……どうしようかな?)


★  ☆  ★  ☆  ★

241修正 ◆cAkzNuGcZQ:2009/08/04(火) 19:25:34 ID:wMHkUogw
>>229の後半部分をブレアに誘導されて静かに同様するように修正。
>>230での様々な点の変更、修正。
ロキまでの距離がそれなりに開いている事への描写
声が聞こえない→はっきりとは聞こえない程度に変更
誰がいるのか確認できる→姿を見てどうにか判別出来る程度に変更
ブレアが最初に洵とルシオの2人に声のボリュームを下げるように指示

242本スレ>>527状態表修正 ◆Zp1p5F0JNw:2010/02/14(日) 19:19:29 ID:qzqPiIGI
【D-05/黎明】

【アルベル・ノックス】[MP残量:90%]
[状態:左手首に深い切り傷(レナに治癒の紋章術をかけてもらいました。もう少し安静にすれば完全に回復します)、
    左肩に咬み傷(ほぼ回復)、左の奥歯が一本欠けている。疲労小。ヘイスト。ハイテンション]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界、????×0〜1、
鉄パイプ@SO3、????(アリューゼの持ち物、確認済み)、荷物一式×7(一つのバックに纏めてます)]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法…はこのガキ共が何とかするだろ!]
[思考1:取りあえずクロード、アシュトン、デコッパゲ(チェスター)を死なない程度にまとめて叩きのめす]
[思考2:レオンと共に鎌石村へ。次の、ないしその次の放送までに鷹野神社に戻る]
[思考3:レオンの掲示した物(結晶体*4、死んで間もない人物の結晶体*1、結晶体の起動キー)を探す]
[思考4:エルネストを探す]
[思考5:レオンキュンハァハァ…こんなに可愛いんだし女の可能性も…はっ!俺は一体なにを]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。

【レオン・D・S・ゲーステ】[MP残量:20%]
[状態:左腕にやや違和感(だいぶ慣れてきた)、軽く混乱、疲労]
[装備:メイド服(スフレ4Pver)@SO3、幻衣ミラージュ・ローブ(ローブが血まみれの為上からメイド服を着用)]
[道具:どーじん、小型ドライバーセット、ボールペン、裏に考察の書かれた地図、????×2、荷物一式]
[行動方針:これ以上の犠牲者を防ぐ為、早急に首輪を解除。その後ルシファーを倒す]
[思考1:何とかしてこの場を穏便に収める]
[思考2:アシュトンを説得したい]
[思考3:アルベルと共に鎌石村へ。次の、ないしその次の放送までに鷹野神社に戻る]
[思考4:結晶体*4、死んで間もない人の結晶体*1、結晶体の起動キーを探す]
[思考5:死んで間もない人の結晶体を入手したら可能な限り調査する]
[思考6:信頼できる・できそうな仲間(エルネスト優先)やルシファーのことを知っていそうな二人の男女(フェイト、マリア)を探し、協力を頼む]
[備考1:プリシスと首輪解析の作業をして確定した点
① 盗聴器が首輪に付随している事。
② 結晶体が首輪の機能のコントロールを行っている事
③ 首輪の持ち主が死ぬと結晶体の機能が停止する事
まだ確証がもてない考察
① 能力制限について(62話の考察)
② 死んで間もない人間の結晶体が首輪解析に使えるかどうか]

243本スレ>>528状態表修正 ◆Zp1p5F0JNw:2010/02/14(日) 19:20:33 ID:qzqPiIGI
【アシュトン・アンカース】[MP残量:50%(最大130%)]
[状態:疲労中。激しい怒り、焦り。体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲。ギョロ、ウルルン消滅]
[装備:アヴクール@RS、ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3]
[道具:無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪探知機@BR、首輪×3、荷物一式×2]
[行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる]
[思考1:この状況を何とかしたい。クロードには自分がマーダーだとは絶対に知られたくない]
[思考2:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ]
[思考3:プリシスのためになると思う事を最優先で行う]
[思考4:ボーマンを利用して首輪を集める]
[思考5:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい]

【クロード・C・ケニー】[MP残量:70%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)、背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)、全身に軽い痛み]
[装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP]
[道具:昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:レオンと謎のヘソ出し男に対処]
[思考2:チェスター、ソフィアの無力化。殺す気は無い]
[思考3:アシュトンと共に行動]
[思考4:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考5:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい]
[思考6:ブレア、ロキとも鎌石村で合流]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:チェスターの事は、『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しています]


【チェスター・バークライト】[MP残量:40%]
[状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)]
[装備:光弓シルヴァン・ボウ(矢×9本)@VP、パラライチェック@SO2]
[道具:レーザーウェポン@SO3、アーチェのホウキ@TOP、チサトのメモ、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考1:いきなり乱入してきたこいつは何者だ!?]
[思考2:クロード!殺してやる!]
[思考3:アシュトンを倒す]
[思考4:平瀬村へ向かい、マリア、クレスと合流。その後鎌石村へ]
[思考5:レザードを警戒]
[備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[備考2:クレスに対して感じていた蟠(わだかま)りは無くなりました]

【ソフィア・エスティード】[MP残量:5%]
[状態:疲労大、ドラゴンオーブを護れなかった事に対するショック]
[装備:クラップロッド、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3、ミュリンの指輪のネックレス@VP2]
[道具:魔剣グラム@VP、レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:アルベルさん!?]
[思考2:アシュトン、クロードを倒す]
[思考3:平瀬村へマリアを探しに行く]
[思考5:マリアと合流後、鎌石村に向かいブラムス、レザードと合流。ただしレザードは警戒。ドラゴンオーブは返してほしい]
[思考6:フェイトを探す]
[思考7:自分の知り合いを探す]
[思考8:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています]

【現在位置:D-05南部】

244状態表修正 ◆Zp1p5F0JNw:2010/02/14(日) 19:22:24 ID:qzqPiIGI
修正個所は
・時間表記:早朝→黎明
・レオンのMP残量:80%→20%
・レオンの状態:疲労を追加(ヘイストのかけ続けによるもの)
・チェスターの弓の本数:15本→9本
です。

245 ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:40:51 ID:fPGbHLMI
ゲリラ試験投下いきます。

246大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:41:55 ID:fPGbHLMI
静けさが、辺りを包んでいた。
警戒心を常に忍ばせている耳に届く音と言えば、この付近に居る5人の人間が立てる微かな物音のみ。
このような自然豊かな未開惑星の民家の庭で、虫の声すら聞こえてこない事には少々の物足りなさと不自然さを感じながらも、
エルネストは束の間の安息に磨り減らしていた精神を委ねていた。

その安息の中でも、ボーマンは余程警戒しているらしい。頻りにレザードを気にする素振りを見せていた。
今の短い会話の中でもそうだった。
露骨に睨みつけるような、そんな下手な真似は流石にしていないが、多々室内に注意を向けている。
分かりきっていた事だが、この島では誰もが平等に落ち着ける場所など存在しないらしい。その一例がこれだろうか。
溜息混じりの煙を燻らせると、エルネストはポケットの中の小さな箱をボーマンへと差し出した。

「どうだ?」
「あん?」

振り返ったボーマンの視線が箱に落ちる。
ワイルドセブン。この住宅で見つけた地球語表記の煙草。

「味もネーミングセンスも今一つだがな。選り好みしている場合でもないし、拝借させてもらった」
「あ〜っと、悪いな、いらねえ」

予想外の返答に、エルネストは思わずボーマンの顔を見下ろした。
ボーマンはエルネスト程のヘビースモーカーではないが、どちらかと言えば煙草好きの部類に入る男だったはずだ。

「やめたのか?」
「ああ。最近な」
「健康を気にするのはオヤジの始まりだぞ」
「ははっ。お前、オヤジじゃないつもりかよ?」

ようやく見せたボーマンの自然な笑顔に、エルネストも釣られて微笑んだ。
根本的な解決とは程遠いが、こうして少しでも気を紛らわせる事で多少のストレス解消になってくれれば。そう思った。

「実はな、子供が産まれたんだ」
「…………ニーネさんに、か?」
「あのなあ。他に誰が居るっつーんだよ。お前さん俺を何だと思ってやがるんだ?」

再会した時から見せていた何処と無くピリピリとした緊張感も、幾分かは和らいでいるようだ。
こんな状況だが、かつての冒険と同じ様な空気に、エルネストは居心地の良さを感じていた。

「ふっ。悪い悪い、他意は無いんだ。
 しかし……ここに来てから色々あったがな、今のが一番驚いた。……おめでとうボーマン」
「ありがとよ」
「そうか。……オヤジじゃなく親父になったってわけか」
「ああ……この俺が親父だぜ。まったく信じられねえよ」

目を細めるボーマン。
視線の向こうには子供の姿が映っているのだろう。これまで見た事もない穏やかな表情をしていた。
エルネストも子供が出来て変わった人間を何人も見てきたが、これは宇宙共通の感覚らしい。

「煙草をやめたのも?」
「赤ん坊にゃ煙草は毒だからな。吸った後の肺に残る空気ってのも悪影響なんだぜ?」

エルネストは、勉強してるな、と微笑みながら煙草の箱をポケットに戻した。
ボーマンもまた、子供の為に、と変わったのなら、おそらく煙草に手を伸ばす事はないだろう。

「男の子か?」
「娘だ。エリスっていうんだ。可愛いだろ?」
「名前だけじゃ何とも言えんさ」
「そこは可愛いって言っとけよ。これだから親の気持ちってのが分からねえ独身貴族様はよ」
「独身貴族……か」

その言葉は、無性にエルネストの心に響いた。
独身。無論それ自体を気にしているのではない。気侭な独身生活は彼の性に合っているし、結婚願望は無いに等しい。
ただ、その言葉から走った一人の女性への思い。この地で失った恋人オペラの事が胸を痛めたのだ。

247大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:42:39 ID:fPGbHLMI
エルネストはこれまで、女性との付き合いよりも研究を優先する生活を送ってきた。
付き合う女性が出来ても、フィールドワークに出て行けば長期間連絡を取らないのは日常茶飯事。
帰ってくる頃には決まって女性側が音信不通となっていた。
身勝手な考古学者を待っていてくれるような気の長い女性はいなかったし、エルネストもそれで良いと思っていたのだ。

だが、オペラはそれまでのどの女性達とも違った。
彼女はその迸る情熱で、音信不通となった身勝手な考古学者を追いかけてきてくれたのだから。
初めてオペラが旅先の惑星に追いかけてきた時、エルネストは思わず苦笑した。
自分にはこういう女があっているのかもしれない。そう考えてしまって。
いつかは根負けして、一緒に暮らす事になるのだろうか。そう夢想したのも一度や二度ではなかった。
おそらく、そう遠くない未来では、その夢想は現実のものとなっていたはずだったのだ。

今ではそれも、露と消えてしまった幻想に過ぎないのだが。



痛みを表情に出してしまっていたのか、ふと気付けばボーマンがばつの悪そうな顔を向けていた。
エルネストはそれを誤魔化すかのように、深く煙を吸い込み、意識的に吐き出した。
立ち昇る煙草の煙は、彼の視界をやけに刺激し、滲ませていた。

「オペラは、な」
「…………ああ」

感傷が言葉を紡がせようとしたその時――――

「そろそろ、頭は冷えましたか?」

窓を開いたレザードが声をかけてきた。
条件反射で二人の眉間には嫌悪という名の皺が寄せられる。
この男と一緒に居ては頭の冷える事などありはしないのかもしれない。

「出来れば早めに今後の方針を定めておきたいと思うのですがねえ」
「今行く」

室内に戻るレザードを見届け、エルネストは携帯用灰皿に吸殻を投げ入れた。
ボーマンを見ると、その顔からは今までの穏やかさが嘘のように消えてしまっている。レザードが、そうさせているのだろう。
ますます気に入らんな。エルネストは口の中でそう呟き、家内に入ろうとしているボーマンの背中に声をかけた。

「ボーマン」
「あん?」
「今度、会わせろよ。お前の自慢の娘に」

即答は、無い。静けさが再び辺りを包んでいた。
当然といえば当然だ。この島から生きて出られる保証などどこにも無いのだから。
そんな事はエルネストも承知している。だが、敢えて口にした。
ボーマンに、少しでもいつもの気楽なノリを取り戻してもらいたくて。
同時に、自分達は必ず生還するのだと。決して気休めで終わらせるつもりのない誓いを込めて。
振り返りかけていたボーマンは、結局エルネストを見る事なく前を向き直し、言った。

「無理、だな」
「無理? そんな事は無いだろう?」
「いや、無理だ。だってお前……」
「……何だ?」
「ロリコンだろ?」
「っ!」
「そんな奴に娘は会わせられねえな」

ボーマンは小さく笑うと、家内に入っていった。
軽いやり取りとは裏腹に、エルネストの胸にやるせなさを残して。

ボーマンの今の言葉が、妙に気にかかっていた。
『ロリコン』――――の方ではない。それが冗談である事くらいは分かる。
だが、『無理だな』と言ったボーマンの口調。
こちらの言葉は切実な響きを帯びていたように聞こえて。まるで本心から諦めているような、そんな気がしたのだ。
レザードに追い詰められているからなのか、それとは関係無く生還に希望を持てていないのか。理由は分からない。
或いは杞憂に過ぎないのかもしれない。しかし――――

エルネストは無意識に取り出しかけていた煙草の箱から手を放すと、庭を後にした。


☆   ★   ☆   ★   ☆   ★

248大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:43:14 ID:fPGbHLMI
4人は先程同様にちゃぶ台を囲むように座った。
しかし、先程とは確定的に違う『物』が、台には乗せられている。
誰もが訝しげに、または戸惑いを隠そうともせず、その『物』とそれを置いた人物に視線を往復させていた。

「さっきは熱くなって、すまなかったな」

集められた視線達の望んでいる返答にはなっていない事を知ってか知らずでか、クラースはまずそう口を開いた。

「いや、冷静になってくれれば良いんだけどよ……それ『酒』……だよな?」

ボーマンの問いに、クラースは大きく頷き「ちょっと待て」とだけ答えた。
そして4人分のカップを並べ始めた。

「良いか、諸君。我々はこれから共にルシファーと戦い、奴を倒す仲間だ。
 その仲間同士で先程のようにいがみ合っていては、勝てる戦いですら敗北し、命を落とし兼ねん。
 そうなれば奴を倒す事はおろか、辿り着く事も出来ない。それはここにいる誰もが望まぬ事だろう?」

クラースは一旦言葉を止め、一同を順に眺めた。
その一同はと言えば「ええ」とか「まあ」とか相槌は打つものの、まだまだ困惑の色は消す事が出来ない。

「ならば、いがみ合わなければ良いだけの事だが、残念ながらそれは難しい。
 我々は出会ったばかりで、互いがどのような感性の持ち主なのかも知らないからだ。
 先程の我々の諍いは何故起きた? そう、互いに対する理解が足りない為に起きたのではないかな?
 では、あのような愚かな行為を二度と繰り返さない為に何が必要だろうか。互いを知る事。これしかないだろう。
 我々は何とかして短時間で互いを深く知る必要が有るのだ。その為にはどうすれば良いのか。何をすれば良いのか。
 私は考えた。休憩時間の全てを使い、考え抜いた。そして思い付いたのがこいつという訳だっ!」

クラースは置かれていた『酒』を一度掴むと、タンッ、とちゃぶ台の上に打ち付ける。

「古来より、人というものは親睦を深める為の道具としてこいつを上手く使ってきた。
 つまりだ。我々も偉大なる先人達に習って、互いを深く理解し合う為にもだなぁ。
 まあ簡単に言うならば、とりあえず飲もうじゃないかぁ!」

言い終えると同時に、今度はクラースはちゃぶ台に片足を乗せ、『酒』を勢いよく高く掲げ上げた。
その顔からは、説得力という物をどこかに置き忘れてしまったかのように、だらしなさがとめどなく溢れ出ている。
気のせいか、口元からは光が一筋垂れて…………いや、気のせいだろう。

そして一同はと言えば――――

249大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:43:47 ID:fPGbHLMI







































「……さて、それでは今後の方針ですが」

250大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:44:19 ID:fPGbHLMI
永遠とも思えた気まずい膠着を打ち破ってくれたのはレザードだった。
彼の空気を読めない能力がこうもありがたく感じられる時が来ようとは、さしものボーマンも思わない。

「ああ」
「おう」
「ちょ、ちょっと待てっ!」

待ってましたとばかりに直ぐ様相槌を返す二人。
慌てて三人を見下ろすクラース。
おっくうそうに見上げられた視線が、何だか後ろめたさを呼び起こす。

「何か?」
「『何か?』ではない! 何故私の提案を無視するのだ!?」
「私は下戸ですので」
「げ……な、何だって?」

げこ。ゲコ。GEKO。

聞き慣れない言葉に一時混乱するクラース。
『下戸』の事だと気付いたのは十数秒経ってからだった。
彼の辞書にそんな言葉は無いのである。

「それに、そんな場合ではないでしょう?」

心底呆れ果てたようにレザードが言った。
その態度に反発の声を上げようとした時、遮ったのはエルネストだ。

「クラース。今回ばかりは俺もレザードに賛成だ」
「お前まで?! 何を言うんだ?!」
「それは俺の台詞だ。いつ誰が襲ってくるかも分からんこの状況で宴会が出来ると思っているのか?」
「俺もエルネスト側だな。あんたが酒好きってのはよーく分かった。
 いつか飲み明かしてみたいと思うけどよ、今はとりあえず片付けようぜ?」
「む……むぅ……」

黙り込んでしまったクラースを尻目に、話し合いは再開された。

251大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:44:51 ID:fPGbHLMI
【C-04/黎明】

チーム【変態魔導師と不愉快な中年達】
【レザード・ヴァレス】[MP残量:5%]
[状態:精神力を使用した事による疲労(やや大)]
[装備:サーペントトゥース@SO2、天使の唇@VP、大いなる経典@VP2]
[道具:ブラッディーアーマー@SO2、合成素材×2、ダーククリスタル、スプラッシュスター@SO3、ドラゴンオーブ、アントラー・ソード、転換の杖@VP、エルブンボウ(矢×40本)、レナス人形フルカラー@VP2、神槍パラダイム、ダブった魔剣グラム@RS、荷物一式×5]
[行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る]
[思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える]
[思考2:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない]
[思考3:フェイト、マリア、ソフィアの3人は屍霊術で従えることは止めておく]
[思考4:ボーマンを利用し、いずれは足手纏いのソフィアを殺害したい]
[思考5:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考6:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す]
[思考7:首輪をどうにかしたい]
[備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません]
[備考2:クリフの持っていたアイテムは把握してません]
[備考3:ゾンビクリフを伴っています]
[備考4:現在の屍霊術の効力では技や術を使わせることは出来ません。ドラゴンオーブ以外の力を借りた場合はその限りではない?]

【ボーマン・ジーン】[MP残量:10%]
[状態:全身に打身や打撲 上半身に軽度の火傷 フェイトアーマーの効果により徐々に体力と怪我は回復中]
[装備:エンプレシア@SO2、フェイトアーマー@RS]
[道具:サイレンスカード×2、メルーファ、調合セット一式@SO2、バニッシュボム×5、ミスリルガーター@SO3、七色の飴玉×2@VP、エターナルソード@TOP、首輪×1、荷物一式×5]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:完全に殺しを行う事を決意。もう躊躇はしない]
[思考2:とりあえずレザードと一緒に行動。取引を行うか破棄するかは成り行き次第]
[思考3:調合に使える薬草を探してみる]
[思考4:レザードのコンディションを見てからレザードを倒すかブラムスと合流を優先するか決める]
[備考1:アシュトンには自分がマーダーであるとバレていないと思っています]
[備考2:ミニサイズの破砕弾が1つあります]

【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:45%]
[状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中]
[装備:連弓ダブルクロス(矢×27本)@VP2]
[道具:なし]
[行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する]
[思考1:???]
[思考2:ルシオの保護]
[思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)]
[思考4:4回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考5:協力してくれる人物を探す]
[思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す]
[備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます]
[備考2:ルーファスの意識はほとんどありません]
[備考3:後7〜8時間以内にレナスの意識で目を覚まします]
[備考4:首輪の機能は停止しています。尚レザードとボーマンには気付かれています]

【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)]
[装備:縄(間に合わせの鞭として使用)、シウススペシャル@SO1、ダークウィップ@SO2、自転車@現実世界]
[道具:ウッドシールド@SO2、魔杖サターンアイズ@SO3、煙草(ワイルドセブン)@BR、荷物一式]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間と合流]
[思考2:炎のモンスターを警戒]
[思考3:ブラムスを取り引き相手として信用]
[思考4:ボーマンを信頼。レザードに警戒心と嫌悪感]
[思考5:次の放送前後にF−4にてチーム魔法少女(♂)と合流]


☆   ★   ☆   ★   ☆   ★

252大人の嗜み  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:45:22 ID:fPGbHLMI
(……オリジン?)
(何だ?)
(この作戦……何がそんなに駄目だったかな……?)
(当然何もかも駄目だろう。だから私の話を聞けと言ったではないか。
 何が「彼等を酒で酔い潰し、その間に荷物を盗み見る」だ!
 仮に成功したとして、酔い潰れた奴らを連れてブラムスとの合流地点まで行けると思っているのか?)
(…………無理、だろうな)
(それに奴らが潰れている間にロキに狙われでもしたらどうするつもりだ? たちまち全滅する事になるぞ?)
(…………なる、だろうな)
(お前がそんな事にも気付かぬとは、私も流石に信じられんが)
(…………………………………………すみません)
(お前、やはり自分が飲みたかっただけではないのか?)
(そ、そんな事はないぞ! いくら私でもそれはない! 馬鹿にするな!)
(まあ、良い。良いから次の作戦を考えるのだな)
(その前に、この酒なんだがな……)
(む?)
(このままにしておくのは勿体無いから――)
(いかん!)
(ま、まだ何も言っていないじゃないか)
(言わなくても分かる! 持っていこうというのだろう?)
(な、何故分かった?!)
(分かるに決まっているだろう! いかんいかん、お前に酒など猫にまたたびよりも質が悪い!)
(それは……言い過ぎだろう)
(言い過ぎなものか。この間泥酔した時など道端で寝込んで風邪をひいてミラルドに散々小言を言われていたではないか!)
(くっ…………)
(その前の時は道路を平泳ぎして家まで帰ろうとしていたな。お前は酔うと何が見えるのか分かったものではない)
(それは私も覚えていないのだが……)
(なお悪い。諦めて今はしっかり話を聞いておけ)
(分かったよ。……でも、なぁ……昨日も飲んでないしぃ)
(いい加減に酒から視線を外せっ!)


【クラース・F・レスター】[MP残量:50%]
[状態:正常]
[装備:ダイヤモンド@TOP]
[道具:神槍グングニル@VP、魔剣レヴァンテイン@VP、どーじん♂@SO2、薬草エキスDX@RS、荷物一式*2]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:ブラムスと暫定的な同盟を結び行動(ブラムスの同盟破棄は警戒)]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ]
[思考4:グングニルとレヴァンテインは切り札として隠しておく]
[思考5:次の放送前後にF−4にてチーム魔法少女(♂)と合流]
[思考6:ブラムスに対してアスカが有効か試す(?)]
[思考7:レザードを警戒]
[思考8:可能なら『エターナルソード』をボーマンとレザードの荷物から探す]
[備考1:あくまでも作戦の一部として謝罪したのであって、レザードの考えを肯定する気はありません]
[備考2:酒に目が向いてます]

【現在位置:C-04南東部の民家】

253 ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/04(月) 01:51:30 ID:fPGbHLMI
投下終了です。
俺の書いたコミカルなものを読んでみたいという声を頂き、
調子に乗ってコミカルに挑戦しようとしたら何故かこんな事になってしまいましたw

いくらなんでもクラースさんの扱いが酷すぎるかな? とも思いますし、
何より話が進んでないので試験投下扱いとしました。
こんなんでも大丈夫という意見があるようでしたら、本投下させて頂きます。

254名無しのスフィア社社員:2010/10/04(月) 13:26:19 ID:7f9szL6k
>>253 投下乙っす。わざわざリクエストに答えてくださってありがとうございます。

クラースさんの扱いはギャグパートならあれでも問題ないっす。中々かわいらしい一面が見れたし良かったっすよ。
個人的には彼は突っ込みキャラだと思ってるんで、オリジンに言われたから渋々やったら案の定白い目でみられたでゴザルをやらせてもいいかもと思いました。
後エルとボーマンのパート全体的に漂う妙齢のおっさんならではの独特な空気がすげー好きです。
他の面子は若いの多めだからあんな感じの空気は出せませんしね。

後話が進んでないのが気になるのでしたらこの後にシリアス展開に傾れ込んでもいいと思いますよ。

255 ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/05(火) 01:45:29 ID:oNDnUVSs
>>254
指摘&感想ありがとうございます!
コミカルに挑戦したはずが、コミカルパートよりもシリアスパートの方が
クオリティが高い結果になってしまった(気がしている)という不思議な事に……
おっさんは偉大ですw

指摘を受けてオリジンに進められたから……という方向で書いてみようとしましたが、
そうすると今後ロワ内で二人が仲違いしてしまいそうなので断念しましたw

あーと、言葉足らずで申し訳ありません。
話があまり進んでないにも関わらず休憩時間潰しちゃってる事が1番気になるところでした。
この後の展開はどなたかにお任せしたい気持ちはあるんですよねw

256大人の嗜み(微修正&追加)  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/06(水) 20:01:07 ID:NsYcPr4g
☆   ★   ☆   ★   ☆   ★


(……オリジン)
(何だ?)
(この作戦……やはり駄目ではないか!
 何が「彼等を酒で酔い潰し、その間に荷物を盗み見る」だ!
 お前のおかげで全員から変な目で見られる事になったじゃないか! どうしてくれるんだ!?)
(……何を言うか。私の作戦は完璧だ)
(どこが完璧なんだ!?)
(足りないのはお前の説得力の方だ。もっと巧みに誘導しないからこういうことになるのだ)
(何を人のせいにしている! お前の言う通りにやったんだぞ!)
(私はあそこまでしろとは言ってないぞ。大体何だあの顔は。あんな顔をしてたら飲みたいだけだと思われて当然だ)
(何だと!)
(お前、何だかんだ言って自分が飲みたかっただけではないのか?)
(そ、そんな事はない! いくら私でもそれはない! 馬鹿にするな!)
(まあ、良い。それよりも奴ら話し合いを再開しているぞ。早く片付けろ)
(何!? くそっ、後でまだ話があるからな。覚えておけ!)
(分かった分かった)
(……ところでその前に、この酒なんだがな……)
(いかん!)
(まだ何も言っていないじゃないか)
(言わなくても分かる! 持っていこうというのだろう?)
(な、何故分かった?!)
(分かるに決まっているだろう! いかんいかん、お前に酒など猫にまたたびよりも質が悪い!)
(それは……言い過ぎだろう)
(言い過ぎなものか。この間泥酔した時など道端で寝込んで風邪をひいてミラルドに散々小言を言われていたではないか!)
(くっ…………)
(その前の時は道路を平泳ぎして家まで帰ろうとしていたな。お前は酔うと何が見えるのか分かったものではない)
(それは私も覚えていないのだが……)
(なお悪い。そうなると面倒だから駄目だと言うのだ)
(分かったよ。……でも、なぁ……昨日も飲んでないしぃ)
(いい加減に酒から視線を外せっ!)


☆   ★   ☆   ★   ☆   ★

257大人の嗜み(微修正&追加)  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/06(水) 20:01:40 ID:NsYcPr4g
「では、気を取り直しまして」
「ああ」
「おう」

台所でお片付けをしているクラースを気にかける奴は誰も居なかった。
まあ、俺も酒は好きだがあれはちょっと、な。

「今後の方針ですが、我々はまずブラムスとの合流を第一に考え、全員で合流地点まで向かうべきだと思います。
 ロキが近くに居るかもしれないのならば、戦力を分散させるたり減らしたりする事は危険ですからねえ」

そう言ってレザードは口元を吊り上げ、変わり果てたクリフを見る。
何処までも嫌みたらしい野郎だが、そいつが余計にエルネストの反感を買う事になるなら俺としては願ったりだ。
しかし、エルネスト達が三人がかりで負け、レザードが警戒する相手か。厄介な野郎ばかり居やがるな、ここは。

「その後は状況次第でしょうね」
「と言うと?」
「言葉の通りです。その時になってみなければ分からない事は多い。
 例えば放送でソフィアやマリアの死亡が告げられる可能性もあります」

……そうだな。俺もソフィアが死んだ時の事は考えておかないとな。
レザードとの契約はソフィアの殺害だ。
それを他の誰かが実行してくれるなら面倒無くて良いんだが、ソフィア死亡後のレザードがどうでるか。
こいつの事だ。全員の前で「実は彼は殺人鬼でして」なんて言い出したり……
流石にそれはねえかな。「じゃあ殺人鬼と一緒にいたお前は何なんだ?」って話になるしな。
だが、それこそ様々な状況を想定しとくに越した事はねえ。
そう考えると、やはりベストは下手に不利な状況になる前の今なんじゃないか? 今ならこいつを潰すには――――

「すまない、聞きたい事がある」

そこでクラースが戻ってきた。
ちゃぶ台の下で力を込めてた拳をリラックスさせ、何だい? と返事を返すが、どうやらレザードへの質問だったようだ。

「お前は元々の世界では、ブラムスの……仲間、なのか?」
「いえ、違いますよ。一時的に協定関係にあった事もありましたがね。
 彼は不死者達の王。人間の私とは一応は敵対関係という事になりましょうか」
「ならば、ブラムスの弱点を聞いても構わないな?」

258大人の嗜み(微修正&追加)  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/06(水) 20:02:10 ID:NsYcPr4g
何を言い出すのかと思えば、仲間の弱点なんか聞いてどうするんだ? まあ俺にはちょっと興味ある話だが。
そう思ったのも束の間だった。
クラースとエルネストの説明では、ブラムスって奴は場合によっては優勝狙いに切り替えるかもしれない、だそうだ。
しかもソフィア、マリア、フェイトの内の誰かが死んだらスタンスを変える可能性が高いという。
ちょっと待て、そんな大事な事は早く言え。
あのミカエルを素手で、しかも無傷でぶっ殺す奴が優勝狙い……冗談じゃねえぞ。んなもんどうやって勝てっつーんだ!?
と、思ったら今度はレザードがとんでもない事を言い出した。
今気絶している兄ちゃんがブラムスとも同等以上の強さらしい。ただしそれも真の実力が出し切れればの話らしいが。
これにはエルネストとクラースも目を丸くしている。てか俺もそうなってる。
ソフィア達を襲った強敵をこの兄ちゃんが倒したって話は聞いたが、まさかミカエル以上の強さとは考えもしなかった。
半信半疑ではあるが、もし本当ならそれはまた厄介だ。
ブラムスにロキにこの兄ちゃん。
俺がいくら頑張っても勝ち目の無い奴らがまだまだゴロゴロしてるって事だからな。
そんな奴らどうやって殺せばいいんだよ……?
この兄ちゃんなら気絶してる今なら殺せるだろうがそれはレザードが許さないだろうし、
先にレザードを殺したとしてもこの兄ちゃんまで殺す理由が無い。
レザードを殺すどさくさに事故を装って殺すなら可能か?
ただそうなると今度はロキやブラムスとは三人で戦う事になるが……勝てる気がしねえな。
この兄ちゃんは置いといてレザードだけ殺すって手もあるが、
ブラムス戦で兄ちゃんの真の実力とやらが出ない事を考えれば、レザードも必要な戦力だ。
聞くところに寄ればブラムスは素手で戦うタイプ。ロキは接近戦もこなす魔術師らしい。
そんな化け物共との戦いで俺が前衛を務めるのは御免被りたい。その時このクリフは捨てがたいよなあ。
だが無論ソフィア達が死んでもブラムスが優勝狙いに切り替えない可能性。つまりブラムスと戦わない可能性もある。
その場合レザードを生かしとけば、さっき考えてたみたいに何を言い出されるか分かったもんじゃない。
それにこの兄ちゃんはレザードの仲間だ。
エルネスト達にも火種を残したとは言え、兄ちゃんが起きた後でレザードを殺すのは難しいよな……
ならやっぱり今……ってまずいな、堂々巡りになってきた。

おいおい、何だこの状況は?
何を選ぼうとも厄介事が残る可能性がついて回りやがる。
「あちらを立てればこちらが立たぬ」にも程があるだろうが。
どうすりゃ良い? 何が最善手だ? そもそも最善手なんてあるのかよ?
…………いや、違うな。何が最善手か、じゃねえ。こうなったらギャンブルみたいなもんだ。
今は全てのカードが伏せられている。オープンしてみなけりゃアタリかハズレか分からない。
一枚選び、それがハズレだったらその時どうにかするしかない。

だったらシンプルに、どのカードを引くか。それだけを考えるか。
とりあずは、レザードのコンディションだ。それを確認してからカードを引く。
今レザードを倒すか。ブラムスやロキに備えるか。或いは――――

259大人の嗜み(微修正&追加)  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/06(水) 20:02:53 ID:NsYcPr4g
【C-04/黎明】

チーム【変態魔導師と不愉快な中年達】
【レザード・ヴァレス】[MP残量:5%]
[状態:精神力を使用した事による疲労(やや大)]
[装備:サーペントトゥース@SO2、天使の唇@VP、大いなる経典@VP2]
[道具:ブラッディーアーマー@SO2、合成素材×2、ダーククリスタル、スプラッシュスター@SO3、ドラゴンオーブ、アントラー・ソード、転換の杖@VP、エルブンボウ(矢×40本)、レナス人形フルカラー@VP2、神槍パラダイム、ダブった魔剣グラム@RS、荷物一式×5]
[行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る]
[思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える]
[思考2:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない]
[思考3:フェイト、マリア、ソフィアの3人は敢えて殺してまで屍霊術で従えようとは思わない]
[思考4:ボーマンを利用し、いずれは足手纏いのソフィアを殺害したい]
[思考5:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考6:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す]
[思考7:首輪をどうにかしたい]
[備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません]
[備考2:クリフの持っていたアイテムは把握してません]
[備考3:ゾンビクリフを伴っています]
[備考4:現在の屍霊術の効力では技や術を使わせることは出来ません。ドラゴンオーブ以外の力を借りた場合はその限りではない?]

【ボーマン・ジーン】[MP残量:10%]
[状態:全身に打身や打撲 上半身に軽度の火傷 フェイトアーマーの効果により徐々に体力と怪我は回復中]
[装備:エンプレシア@SO2、フェイトアーマー@RS]
[道具:サイレンスカード×2、メルーファ、調合セット一式@SO2、バニッシュボム×5、ミスリルガーター@SO3、七色の飴玉×2@VP、エターナルソード@TOP、首輪×1、荷物一式×5]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:完全に殺しを行う事を決意。もう躊躇はしない]
[思考2:とりあえずレザードと一緒に行動。取引を行うか破棄するかは成り行き次第]
[思考3:調合に使える薬草を探してみる]
[思考4:とりあえずはレザードのコンディションを窺う。それからレザードを倒すかブラムス戦に備えるかを考える]
[備考1:アシュトンには自分がマーダーであるとバレていないと思っています]
[備考2:ミニサイズの破砕弾が1つあります]
[備考3:レザードが知り得る限りのブラムスの弱点(属性等)を聞きました]

【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:45%]
[状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中]
[装備:連弓ダブルクロス(矢×27本)@VP2]
[道具:なし]
[行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する]
[思考1:???]
[思考2:ルシオの保護]
[思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)]
[思考4:4回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流]
[思考5:協力してくれる人物を探す]
[思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す]
[備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます]
[備考2:ルーファスの意識はほとんどありません]
[備考3:後7〜8時間以内にレナスの意識で目を覚まします]
[備考4:首輪の機能は停止しています。尚レザードとボーマンには気付かれています]

260大人の嗜み(微修正&追加)  ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/06(水) 20:04:35 ID:NsYcPr4g
【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)]
[装備:縄(間に合わせの鞭として使用)、シウススペシャル@SO1、ダークウィップ@SO2、自転車@現実世界]
[道具:ウッドシールド@SO2、魔杖サターンアイズ@SO3、煙草(ワイルドセブン)@BR、荷物一式]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間と合流]
[思考2:炎のモンスターを警戒]
[思考3:ブラムスを取り引き相手として信用]
[思考4:ボーマンを信頼。レザードに警戒心と嫌悪感]
[思考5:次の放送前後にF−4にてチーム魔法少女(♂)と合流]
[備考1:レザードが知り得る限りのブラムスの弱点(属性等)を聞きました]

【クラース・F・レスター】[MP残量:50%]
[状態:正常]
[装備:ダイヤモンド@TOP]
[道具:神槍グングニル@VP、魔剣レヴァンテイン@VP、どーじん♂@SO2、薬草エキスDX@RS、荷物一式*2]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:ブラムスと暫定的な同盟を結び行動(ブラムスの同盟破棄は警戒)]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ]
[思考4:グングニルとレヴァンテインは切り札として隠しておく]
[思考5:次の放送前後にF−4にてチーム魔法少女(♂)と合流]
[思考6:ブラムスに対してアスカが有効か試す(?)]
[思考7:レザードを警戒]
[思考8:可能なら『エターナルソード』をボーマンとレザードの荷物から探す]
[備考1:レザードが知り得る限りのブラムスの弱点(属性等)を聞きました]

※議論は継続中。今後の方針がどう決まるかは後の書き手さんに一任します。

【現在位置:C-04南東部の民家】

-----------------------------------
>>252の少々の修正と、ブラムス包囲網フラグを少し進めてみました。
こんな感じなら本投下大丈夫でしょうか?

261名無しのスフィア社社員:2010/10/07(木) 13:16:58 ID:LwhTeLNI
>>260修正乙っす。
対ブラムスルートフラグとか今後活かせそうなフラグの強化はうれしいですね。
投下準備万端って感じっすね。
最悪ここのパートならブラムス合流を選択すれば次の放送いけそうですし。

262 ◆cAkzNuGcZQ:2010/10/08(金) 02:10:14 ID:xCuSJ3iY
御意見どーもです!
OKが出た(と思う)ので投下させて頂きました!

確かにここは放送もいけそうですね。
対ブラムスルートフラグ進めはしたんですが、
果たしてキーマンレナスは起きてくれるのか……w

263 ◆cAkzNuGcZQ:2011/11/05(土) 17:19:39 ID:/Ch18lSg
ちょっと不安なので仮投下させて頂きます。
問題になりそうでしたら破棄しますので、ご意見頂きたく存じます。

264 ◆cAkzNuGcZQ:2011/11/05(土) 17:23:22 ID:/Ch18lSg
『洵。聞こえるか?』
『ああ』
『聞いてたか?』
『一言一句、聞き漏らしてない。お前の方は大丈夫か?』
『大丈夫だ。クロードは仲間の様子を見てる。この距離なら聞かれない』
『注意だけはしておけ。それで、その首輪を追跡する道具だが――――』
『さっき言った通りだ。ここからだと生き残り16人全員分の反応が見られる』
『俺の居場所は分かるか?』
『多分、D−3のこれだ。……気を付けろ。すぐ南西が禁止エリアだ』
『……禁止エリアか。俺を道連れにしようと目論んでいたのかもしれんな……』
『……それから、そこから東の方向に4つの反応がある。見えるか?』
『東、だな。…………いや、ここからは見えないが――――少し待て。行ってみる』








『ルシオ』
『どうだ? 見えたか?』
『お前の言う通り、確かに一つの集団が街道に留まっている。だが……遠目で分かり辛いが、五人は居るな』
『5人? でも反応は――――』
『待て。あの内の一人はレザードだ』
『レザード……間違いないのか?』
『あの格好は、恐らくな。であれば説明はつく。他の四人のどれかは屍だ。その道具は死者には反応しないんだったな?』
『……屍霊術か』
『恐らく、な。……他にこの辺りに反応は?』
『無い。他の反応は、さっきの平瀬村に4つ。クロードが戦った奴らの方に4つ。俺とクロード達で3つ。それで全部だ』
『……平瀬村に四つ? ……クロードが戦った奴らにしても三人だったはずだな?』
『ああ。でも確かにどっちも殆ど固まってる……。平瀬村は、1つはブレアとして、後2つはマリアとレナだけど……』
『……確か、レナが一度あの家には逃げ込んでいたな。家内にもう一人隠れていたという事か。それも、戦力にはならん奴が』
『ちょっと待てよ。だとしたらクロードが戦った奴らの側にいるのは――――』
『……ブラムス、だな。平瀬村にもここにもいない以上、そこしかない』
『……よりによってこいつら、ブラムスと敵対してるのか』
『やれやれ。……厄介な奴らを引き入れたな』
『……どうする? ここで殺すか?』
『……いや、まだだ。マリア達を殺す分には、そいつ等は使える』
『それは、俺もそう思ったんだけど……』
『理想は、マリア達を殺す際にそいつ等も殺す事。ブラムスと敵対しているならば、そいつ等の首は良い手土産になる』
『ブラムスに取り入るのか?』
『不死者風情を信用する気はない。だが奴が何を案じているのかは知らんが、当面、人間と手を組んでいるなら何かしらの取引は出来るかもしれん』
『だったら、出来る限り早く行動しないとな。まだブラムス達に動きはないけど、追い付かれたら台無しだ』
『……俺はこのまま平瀬村に戻る。お前もなるべく早く動け』
『レザードはどうする? ほっとくのか?』
『今はどうする事も出来ん。いくら俺でもレザード相手に一対五では勝ちは拾えん。
 ……ブラムスと鉢合わせて足止めになってくれれば良いんだがな……』
『そればっかりは運を天に任せるしかないか。……分かった。じゃあ出来るだけ早めに移動する。他には何かあるか?』
『そうだな……。クロード達が持つ道具は把握しておけ。無論、可能であれば分配する様に誘導しろ』
『分かってる。……いざとなったらスリ取ってやるさ』
『……頼もしい特技だが、見習いたくはないな』
『これが飯の種だったからな。……俺が自慢出来るのはこれだけだけど』
『……後はその道具だ。その首輪を追跡する道具は絶対に返すな。適当な理由をつけてお前が持っているんだ。……俺からはそれくらいだ』
『それも分かってるさ。じゃあ、俺は戻る。コミュニケーターはこのままにしておくから、何か話したい事があったら合図でも送ってくれ』
『……くれぐれもばれるなよ』
『……それも、分かってる』

265 ◆cAkzNuGcZQ:2011/11/05(土) 17:25:00 ID:/Ch18lSg
【F-04/朝】


【ルシオ】[MP残量:10%]
[状態:身体の何箇所かに軽い打撲。身体中に裂傷、打ち身、火傷。衣服が所々焼け焦げている(ほぼ回復)。精神的疲労大]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:マジカルカメラ(マジカルフィルム×?)@SO2、
    コミュニケーター、10フォル@SOシリーズ、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、グーングニル3@TOP
    拡声器、スタンガン、ボーリング玉@現実世界、首輪、荷物一式×4]
[行動方針:レナスを……蘇らせる]
[思考1:クロード達の道具を確認し、出来れば分配する様に誘導する。その後平瀬村へ]
[思考2:洵と協力し、殺し合いを有利に進める]
[思考3:ブレアから情報を得る]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[備考1:デイパックの中にはピンボケ写真か、サイキックガン:エネルギー残量〔10〕[70/100]が入っています]
[現在位置:F-04西部]




【D-03/朝】


【洵】[MP残量:5%]
[状態:手の平に切り傷 電撃による軽い火傷 全身に打撲と裂傷 肉体、精神的疲労大]
[装備:ダマスクスソード@TOP、アービトレイター@RS]
[道具:コミュニケーター@SO3、アナライズボール@RS、スターオーシャンBS@現実世界、荷物一式×2]
[行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする]
[思考1:平瀬村に向かう]
[思考2:ルシオ、ブレアを利用し、殺し合いを有利に進める(但しブレアは完全には信用しない)]
[思考3:ゲームボーイを探す]
[備考1:ブレアの荷物一式は洵が持っています]
[現在位置:D-3南西部]

※D-3南西部にクレスの死体があります。
※クレスの死体にはポイズンチェックが残っています。
※チーム中年がD-3まで移動しています

266 ◆cAkzNuGcZQ:2011/11/05(土) 17:26:56 ID:/Ch18lSg
えー、以上で投下終了です。
会話だけで1作ってどうなのか。こんな形でチーム中年の位置を動かすのはどうなのか。
この2点についてご意見頂きたく思います。
それ以外にもご指摘ありましたらお願い致します。

267名無しのスフィア社社員:2011/11/05(土) 22:20:17 ID:16eE9XE2
投下乙です。
個人的には全く問題ないと思います。
こういう話があってもいいんじゃないかなー。

268名無しのスフィア社社員:2011/11/05(土) 23:22:46 ID:bAEzrDdw
仮投下乙ー!

チーム中年>もともと移動中でしたから2エリア分の距離なら問題ないと思います。
もう少し進めそうではあるけれど人を運んでるならこんなものなのかも?

会話だけで一作>地の文があった方が親切ではあるけれど無くても大丈夫だと思います。
個人的には地の文が少しあった方が状況が分かりやすいとは感じました。
コミュニケーターを繋いだままだった事とかルシオとクロードが少し離れる様子とか…
いえ前者は私が忘れてただけなんです。
後者は前回登場作を読み返すとルシオはクロードとの会話後に離れた描写がないようなので。
まあ細かいところばかりなので各自が脳内補完しても問題ないかな。

269 ◆cAkzNuGcZQ:2011/11/06(日) 00:45:16 ID:diJUd5eI
返答ありがとうございます!

>>268
今回の話は、放送聞いて、反応して、その後の事のつもりでした。
なので前回から動きがあった事にしてみたのですが、当然と言うか、分かりにくいようですね。
やはり地の文か、或いは少し説明的になりますが会話を追加した方が良さそうですかね?

270268:2011/11/06(日) 03:25:16 ID:cNDrmaTE
>>269そのままでも良いと思いますよ。
他の方も仰ってますが、たまにはこういう話もいいかと。
268については単に私の読み込みの甘さもありますし、別の話で補完することも可能でしょうから。

271 ◆cAkzNuGcZQ:2011/11/06(日) 10:08:59 ID:gaBBQu/o
ご指摘を受けまして、前半部分少々加筆しました。
結局会話だけですが、これでいかがでしょう?
他にもありましたら遠慮なく仰って下さい。

----------------------------------------------------------

『洵。聞こえるか?』
『ああ』
『聞いてたか?』
『一言一句、聞き漏らしてない。お前の方は大丈夫か?』
『大丈夫だ。クロードからは離れた。この距離なら聞かれない。今あいつは仲間の様子を見てるよ』
『注意だけはしておけ。……それにしてもそいつ、ロキにまで丸め込まれていたとはな』
『ああ……放送聞いて落ち込んでるよ。お人好しにも程がある。
 ……まあ、だからこそ見張り役を買って出た俺をあっさり信用して「こいつ」を貸してくれたんだけどな』
『…………ふん』
『どうした?』
『何でもない。それで、その首輪を追跡する道具だが――――』
『クロードのさっきの説明の通りだ。ここからだと生き残り16人全員分の反応が見られる』
『俺の居場所は分かるか?』
『多分、D−3のこれだ。……気を付けろ。すぐ南西が禁止エリアだ』
『……禁止エリアか。あの男、俺を道連れにしようと目論んでいたのかもしれんな……』
『……それから、そこから東の方向に4つの反応がある。見えるか?』
『東、だな。…………いや、ここからは見えないが――――少し待て。行ってみる』


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