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死者たちが集ってよもや話をするスレ

804強化外骨格「名無し」:2008/12/22(月) 23:58:41 ID:ylXpVM460
「悲劇って……。それは、そうかもしれないけど……」
 誰一人として、生き残ったものがいないのだ。
 悲劇と言えば――そうなのかもしれない。

 ――今ならまだ間に合うわよ?

 つかさの心境を見透かしたように声が言ってくる。

 ――さっきの世界の「柊つかさ」はあんたと途中までまったく同じ経験をして、生還してるから。

 つかさは無言でいることを、考えている証拠取ったのか、響く声の口調は熱を帯びたものになっていく。

 ――乗っ取るわけじゃないのよ? さっきの世界のつかさと今のあんたが融合するだけ。

 ――記憶だって、足りない分を加えるだけ。ほんの一部しか失わない。

 ――封印するんじゃなく、忘れてしまえばきっと違和感だってなくなるはずよ。

「じゃあ、やっぱり私が死んじゃう時の記憶はなくなっちゃうんだ?
その後、強化外骨格の中で視てた記憶もだよね?」

 ――まあ、それは……。

「嫌だよ……。忘れちゃうの」
 つかさは首をふった。

 声は返ってこなかった。

「私、なくしたくないもん。みんなが頑張った記憶」

 忘れたくない。覚悟の苦悩を。ヒナギクを失って慟哭する姿を。それでも最後まで戦いぬいた、彼の雄々しい姿を。
 忘れたくない。ヒナギクの悲しい決意を。最後まで頑張って、頑張りぬいた姿を。そして、無念を。
 忘れたくない。川田の狂気とその結末を。できればあんな風に行動してほしくなかったけど、それでもあれは川田章吾。
          好きになって。どうしても守りたくって、守ることができた川田だ。
          覚えていたい――死ぬ間際に感じた彼の手の温もりを。言葉を。満たされた気持を。

「死んじゃう時の怖い気持も、死んで行く感覚も、全部私だけのものだもん。
捨てちゃうなんて、もったいなくてできないよ」
 

 ため息が、聞こえた。


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