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【クォンタム・ガーディアン:八咫烏の旗の下で】について その1

1earth:2026/07/12(日) 17:57:05 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
試験的に掲載していたオリジナル作品【クォンタム・ガーディアン:八咫烏の旗の下で】を
正式にHP側で掲載したのでネタスレから分離しました。
当作品に関する書き込みはこちらでお願いします。

353earth:2026/08/14(金) 00:25:14 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 八代はデスクの引き出しから、赤字で【極秘】とスタンプされた一通の封筒を取り出した。中から引き抜いた分厚い調査書類に目を走らせ、低く呟く。

「しかし、星間帝国軍の言語や文化を分析すればするほど、過去の旧地球におけるドイツ文化圏の痕跡に突き当たる。まぁ、連中が自称する国名からして【シュヴァルツヴァルト】。そのままだが……さて、これが何を意味するのやら」

 書類には、これまでの戦闘で回収された敵艦の残骸の解析データが並んでいた。さらに、その中には激しい損傷を負った敵乗員の「肉片」から採取された生体サンプルの分析結果も含まれている。

(……複数の遺伝子パターン。一つは我々と同じ人間に近い。だが、もう一つは……明らかに人工的に遺伝子を組み替えた形跡がある。人造生命体の一種か? 宇宙の生態系から自然発生した星間共同体の化け物とも違う……)

 記述から顔を上げ、八代は斜め後ろに立つ古森に視線を投げた。

「【管理者】として何か心当たりは?」

 「管理者」と呼ばれた古森は、一瞬だけ動作をピタリと停止させたが、何事もなかったかのように滑らかな声音で答える。

「25世紀の歴史において、遺伝子改造やクローン技術はありふれたものであり、その全てを把握・追跡することは困難です。
 ただ、このデータに見られる遺伝子改変の痕跡から判断するならば、かつて地球において厳しく倫理的法規で禁止されていた【特務用途の調整体】の技術に近いかと」
「……だとすれば、推測の域を出ないな」
「はい。正確に断定するためには、やはり生きた捕虜、つまり遺伝子が致命的な損傷を受けていないサンプルを確保するほかありません」
「そもそも宇宙空間に放り出された時点で、余程手際よく回収しなければ、強力な宇宙放射線や戦闘時の高エネルギー粒子線、さらには真空曝露による損傷も加わり、生体サンプルとしての状態を保つのが難しい。
我が軍が使用している兵器は破壊力、殺傷力が高く、今のところ、連中には脱出する暇すらほとんどない。包囲して降伏を呼びかけても自爆する可能性がある。確保するとしたら……陸戦しかなさそうだな」

 封筒をデスクに置き、八代は手元の端末に映された宇宙図――その中でもオルタナ星系を、冷徹な光を宿した瞳で見据えた。

「かの帝国が25世紀の地球の負の遺産の産物なのだとすれば……実に迷惑なことだ。23世紀の終わり頃、我々の先祖がこの星に漂着したことで、地球社会とは枝分かれすることとなった。
以降は顔も見たことのない遠い親戚でしかなかったのに、その尻ぬぐいかもしれないとは……それとも、ヤマトの件と合わせると、遥か太古の諺である【禍福は糾える縄の如し】というものかな?」
「どうでしょうか。ただ業務である以上、対応していただく必要があります。彼らを放置すれば人類文明が終わりかねません」
「全く、報酬以上に扱き使ってくれるものだ。これだけ労働条件の悪い人間など天原にだってそうはいまい」
「ではリタイアされると?」
「私以外に軍政部をかじ取りできる人物がいれば、後ろに回れるだろう。それとも【君】がどこかから、そんな都合が良い人材を見つけてきてくれるか?」
「まさか。【50年近い付き合い】ですが、貴方以上の適任はおりません。<YAMATO>の再起動、位相境界制御理論の構築、近衛宇宙軍創設、天原復興と発展、科学者としての才覚、政治家としての手腕、両方とも確かなものでした」
「よく言う」
「謙遜することはありません。0から1を作った訳ではないですが、1を100にしたのは貴方です。それは凡人では成しえない。誇ってもよろしいかと」

 本来は補佐官という立場の人間が言える言葉ではなく、普通なら叱責を免れ得ない態度であると言えた。
 しかし公式には彼女の上司である筈の八代は、特に咎めもせず、軽く溜息をつくだけであった。

「……まぁ良い。陸戦の件については藤堂元帥や堀大将のところに頃合いを見て持ち込もう。【補佐官】、根回しを頼む」
「承りました」

 古森が一礼して執務室を出ていき、扉が閉まるのを見届けた八代は「やれやれ」と首を横に振った後にニュース画面を再び見る。
 そこでは統合体の動きについてが報じられている。

「私としては天原一国を生き残らせるのが精一杯だから、これ以上負担が増えてほしくないが……そう簡単にはいかないだろうな」

 この時、八代は次に統合体絡みの問題、とりわけ外交問題が起きるであろうことを、漠然と予感していた。

「九条だけでなく、迫水にも頑張ってもらわなければならないか」

354earth:2026/08/14(金) 00:25:47 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 辺境方面での相次ぐ大敗、そしてオルタナ星系(帝国側名称:グリムニル)基地の事実上の壊滅。これを境に、星間帝国軍の動きは急速に萎縮していった。
 理由は単なる兵站の崩壊だけではない。増援部隊が到着して再構築した警戒網のわずか外側に出た艦艇が、近衛宇宙軍のミズチ級潜宙艦による神出鬼没の襲撃を受け、次々と葬り去られたからだ。
 「どこから撃たれるか分からない」という恐怖が、帝国軍を縛り上げた。
 彼らは基地の防衛圏から出る際、必ず複数艦で厳重な警戒態勢を維持せねばならず、機動力を著しく削がれていた。

 対星間帝国作戦用に秘密裏に設置された潜宙艦隊基地。
 その司令部にて指揮を執る潜宙艦隊司令の末原少将と、近衛宇宙軍総司令部の加東大将が通信を繋いでいた。

『長官。今は基地内部や、警戒網を敷く敵艦隊への攻撃を控えさせております』

 己の執務室にて末原少将の報告を聞いた加東大将は、満足げに頷く。

「賢明だな。その気になれば基地の喉元に潜り込んで暴れ回ることもできるが……今は連中に『自分たちの警戒網は機能している』と錯覚させる方が都合がいい。それに、例の偽旗作戦も順調だ」
『そこまで効果が出ているのですか?』
「ああ。辺境戦線のみならず、統合体中枢星系に面した戦線でも帝国軍の活動が減退しているとの報が入った。攻撃は続いているようだが本格侵攻ではなく、まるで【ピンポンダッシュ】のように、一撃離脱に徹しているとのことだ」
『ピンポンダッシュ……相変わらず辛辣ですね』
「君も戦場に長く居すぎたな。だが、帝国軍は今、統合軍全体の戦力規模を測りかねて立ち止まっているのだ。誇りたまえ、末原少将。君たちの影の働きは、この戦争自体の趨勢を確実に変えたのだから」
『はッ!』

通信が切れる。加東は小さく溜息をつき、執務机を指先で軽く叩いた。

「……しかし、これほど長期間、亜空間に潜行できるようになるとはな。LQGコア様様だ。問題は数を揃えるのに時間と手間がかかるということか」

LQG(量子幾何学的)コア――。
安定化された「白銀の極小コア(プランク星)」が持つ強大なエネルギーを、量子幾何学的遷移を介して取り出す次世代動力炉だった。
プランク密度近傍の極限状態まで圧縮されたコアを、特異点へ崩壊する直前の状態で固定し、量子状態の変調によって生じるポテンシャルを電磁エネルギーへ転換している。
損傷した場合のリスクが極めて高いため、正面戦闘を行う主力艦への搭載は禁忌とされているが、潜宙艦にとってはまさに命綱だった。

『私も、そのコアが喉から手が出るほど欲しいところですね』

末原少将との通話が終わった後、回線に割って入ったのは、航宙機動艦隊群司令長官の山本一二三大将だった。

『亜空間に潜らせた<テンリュウ>級や<ウンヨウ>級から艦載機を射出するタイミングを計るのに、もう少し猶予が欲しいのです』
「コストと安全性の問題だ、山本。そのあたりは八代提督や藤堂総司令と相談するしかない」
『安全性は運用で多少はカバーできますが、後はコストか。やれやれ……八代提督なら理屈さえ通れば柔軟ですが、また膨大な書類仕事が待っていると思うと気が重い。作戦家には務まらん仕事だ』
「将官とはそういう生き物だ。まあ、パイロット上がりの君にはサジタリウス腕で化け物相手に戦っている方が気が楽だろうがな」
『御意。しかし、星間帝国軍は亜空間からの攻撃に脆い。これこそが我らの最大の優位でしょう』
「情報の非対称性がなせる結果だな。通常空間での彼らは手練れだ。オルタナの基地中枢も、最後の最後まで偽装されていて絞り込めなかった。作戦能力は決して侮れんよ」
『低コストで戦争を終わらせるには、とにかく相手に我らの手の内を明かさないこと、ですね』
「ああ。戦線を辺境に固定し、我々が表に出ないようにすれば秘密は守れる。だが……」
『そう、上手くいきますかね?』

 作戦家と自認する山本ですら、ある程度は察することはできていた。
 加東もまた、今後のことを考えると、楽観的な気分にはなれない。

「……統合体の連中がごねるだろうな。外交の舞台では、九条にも頑張ってもらわねばならん。あの【銀の舌】を持つ男の手腕に期待するとしよう」

355earth:2026/08/14(金) 00:27:01 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 サジタリウス腕遷移領域に近い統合体の辺境領域において、帝国軍の出現頻度は目に見えて低下した。
 とりわけ、惑星ニューホライズンがあるエリュシオン星系に対しては、偵察すら停止している有様だった。
 近衛宇宙軍側はこれがオルタナ星系基地壊滅の影響であることを正確に把握しており、艦隊司令官である宗像中将も「あれだけ叩かれれば、慎重にもなるだろう」と冷静に納得していた。
 しかしそうかといって、宗像は艦隊全体が弛緩することを許さず、訓練に手を抜くことはなかった。

「帝国軍の活動は、加東提督指揮下の潜宙艦隊の活躍で抑えられている。しかしそうかといって油断はできない。まして、統合軍の前で無様な真似を晒すことは許されない」

 艦隊旗艦であるミカサ級戦艦〈カシマ〉の指揮所にて、宗像は部下たちに改めて発破をかけた。
 カゲロウ級戦闘巡航艦を超える〈カシマ〉や〈ハルナ〉を含む大規模な艦隊が惑星ニューホライズンを訪れ、防衛のために展開している様は、当然のことながら統合体側、特に辺境部で大きく報道された。
 ただでさえ中央では【辺境切り捨て】とも取れる新戦略が検討され始め、将来に対する暗い見通しが広がる中、宗像提督の艦隊が到着したタイミングと、帝国軍の沈黙が完全に一致して見えたことは、無数の憶測を呼んだ。

『統合軍がどうやっても帝国軍を止められなかったのに、天原の艦隊が来た途端に来なくなった』
『確か避難民の輸送船団を襲った帝国艦隊を一方的に撃破したって話だったよな。帝国側も恐れをなしたとか?』
『いや、ただの偶然だろ。アルクトゥルスで帝国軍も深手を負ったんだ。だから動きが鈍っているんだ』

 多種多様な意見が情報ネットワークの中を駆け巡る。

『統合軍はアルクトゥルスを失った。政府が言うように一時的だったにせよ、撤退せざるを得ない程、被害を受けたってことだろ』
『民主主義の守り手である統合軍が、帝政主義者の軍隊よりも弱いっていうのか!』
『弱いから帝国軍相手に戦線が後退しているんだろ』

 肯定、否定、さまざまな意見が飛び交うが、それでも近衛宇宙軍艦隊は嫌が応にも世間の注目の的となった。
 そうした状況の中で、辺境に住まう人々の間には、やがて一つの強い希望的観測が芽生え始めるようになる。

「ひょっとして、天原皇国の艦隊がいれば、我々は故郷を失わずに済むのでは?」

 かつて統合体に見捨てられた地獄を見たと思っている天原皇国の一般国民が聞けば「ふざけるな!」と激怒しそうな考え方であったが、見捨てられる恐怖に怯える統合体の辺境住民からすれば、それは藁をもすがる思いから導き出された当然の帰結でもあった。
 近衛宇宙軍の手によって直接救援され、ニューホライズンへ収容された避難民たちは、急速に辺境での戦火が鎮静化している現状を目の当たりにし、安堵の表情で語り合う。

「天原皇国の艦隊が来てから、世界が変わった」
「あの国が、帝国を退けてくれたんだ」
「彼らなら、同胞たちの仇を取ってくれるかもしれない」

 もっとも、天原皇国にとって避難民船団の救援は、あくまで自国の宇宙ステーションを守るため、その領域を荒らす星間帝国軍を横殴りに叩いた結果に過ぎない。公式上も「協定に基づく民間人救援」という限定的なスタンスを取っていた。
 だが、助けられた人々にとって、天原皇国や近衛宇宙軍のイメージは決して悪くはなかった。たとえ、彼らが所属する統合体のイデオロギーとは相容れない国であっても、命の恩人であることには変わりなかったのだ。
 加えて、ニューホライズンで建設されている難民収容施設には、人道支援の名目で天原側も深く関わっていた。その現実が、人々の期待をさらに加速させる。

356earth:2026/08/14(金) 00:27:44 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

「確かに天原皇国と我々の間には多くの政治的隔たりがある。でも、話し合えば、対帝国で本格的に手を取り合うこともできるんじゃないか?」

 そのような声さえあがる一方、冷静に現実を見据える者もいる。

「いや、さすがに他国の軍隊をそこまであてにするのは間違っている」

 様々な思惑と議論が交錯する。それでも――。

「……今日は、安心して眠れそうだな」

 誰かが発したその呟きを、否定する者は誰一人いなかった。

 一方、統合軍内部にも、動揺が広がっていた。
 帝国軍の不可解な沈黙に対する疑念、そしてニューホライズンのラグランジュポイントに悠然と遊弋する、天原皇国近衛宇宙軍艦隊への底知れない畏怖。
 アルクトゥルス会戦での大敗によって深く意気消沈していた統合軍人たちにとって、近衛宇宙軍の圧倒的な実力はあまりにも眩しく、そして脅威に映っていた。
 さらに、近衛宇宙軍が展開する辺境宙域では明らかに帝国軍が沈黙し、逆に近衛宇宙軍が展開していない中枢星系周辺の宙域では、一撃離脱とはいえ帝国軍が動き回っている。
 この【事実】はあまりにも重かった。

「天原皇国近衛宇宙軍を、帝国軍が恐れて警戒しているのでは……?」

 疑念は少しずつ、そして着実に確信へと変わりつつあった。
 そのような認識は、まず辺境を中心に広まり、やがて統合体各地へと急速に波及していった。
 天原皇国は、意図せずしてシュヴァルツヴァルト星間帝国に対する抑止力として、その存在感を急速に肥大化させていた。

357earth:2026/08/14(金) 00:31:05 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
14話終了。古森とヤマトについて少し触れました(作品の根幹設定の一つ)。

次回、外交フェーズです。

358New:2026/08/14(金) 00:42:05 HOST:119-230-89-1f1.osk1.eonet.ne.jp
乙ヤマトとは一体・・・?

359ハニワ一号:2026/08/14(金) 07:52:38 HOST:124-144-118-196.rev.home.ne.jp
乙です。
果たして古森とヤマトはどんな存在なんでしょうね・・・。
帝国人は昔の地球のドイツ系の勢力が作った人造生命体の子孫らしい可能性が出てきましたね。

360earth:2026/08/14(金) 09:51:14 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>358
ヤマト(YAMATO)と呼ばれるものには正式には別の名前があります。
YAMATOと呼ぶのは……SEEDで
General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis Systemを
頭文字と取ってガンダムと読んだのと同じと思ってください。

このあたりの設定考えるのは苦労しましたが……いずれ開示予定です。
まぁ私のモチベがそこまで続けばの話ですが。
(やはりWW2系仮想戦記のほうが受けが良いのだろうかと思えてくる時がある……)

>>359
とりあえず古森とヤマトには深いかかわりがあり、古森と八代は50年近い付き合いです。
古森との出会いで八代は色々と得ましたが、引き換えにブラック社畜もビックリな人生かな……。

旧地球のヤラカシが大いに関係しています。

361トゥ!ヘァ!:2026/08/14(金) 12:17:04 HOST:FL1-60-237-167-201.kng.mesh.ad.jp
乙です

秘書の古森さんは一体何者なのか…

統合体の方は前線近くの民意から徐々に皇国へ寄ってきていますね。
民主主義国家であること考えれば悪くない反応ではありますね。

>>軍事評論家
この時代でも生きていたんかぁ!?と思う職?がw

結構まともなこと言ってますし八代さんあたりの仕込みでしたかね?

362earth:2026/08/14(金) 15:30:38 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>361
いずれは開示予定です。
機動要塞ヤマト(と呼称される)の中枢に関われる重要キャラですかね。
(全設定開示されたら、ここの住人の方々のうち、40才以上は少し既視感を覚えるかも?)

統合体住民については好意というより一方的期待という見方も……
八代たちも、新戦略を検討しているハワードも、頭痛の種といったところですかね。
ついでに仲介役を期待されるヤシマ管区の担当者も。

363トゥ!ヘァ!:2026/08/14(金) 15:54:24 HOST:FL1-60-237-167-201.kng.mesh.ad.jp
帝国も謎の攻撃で前線陣地が壊滅しますし皆揃って頭が痛い状況…w

364earth:2026/08/14(金) 16:05:25 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>363
天原皇国が参戦して比較的、利益があったのは統合体でしょうが、それでも内部分裂の種にもなっている状態……
うまく乗り越えないと統合体が分裂の危機ですかね。

365トゥ!ヘァ!:2026/08/14(金) 16:06:45 HOST:FL1-60-237-167-201.kng.mesh.ad.jp
>>364
まあ統合体に関してはそもそも単独で帝国に対抗できなかったのが原因なので…(汗

366ナイ神父MK-2:2026/08/14(金) 17:20:34 HOST:p765250-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp
乙です。
シュバルツシルトも分岐した地球からの派生種なら遠大な内ゲバになり得ますなぁ···
統合体の方は民主主義と言えばソレまでですが割と不確かな情報が多く世論も荒れ気味な感じですかね?

367earth:2026/08/14(金) 17:47:41 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>366
帝国の正体については後ほど。

不確実な情報というより、そもそも統合体は前線基地の存在自体を知らず、皇国が帝国の前線基地を潰していることも
知らないという情報戦で劣勢の状態なので、自分たちが見て取れる事象のみから影響を受けている状態ですかね。
作中でも触れた【情報の非対称性】が統合体にも及んでいます。

368モントゴメリー:2026/08/14(金) 18:34:23 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
乙です。
ネームドキャラで唯一の女性だった古森=サンがキーパーソンだったか。

369ぷよ全消し:2026/08/14(金) 18:37:58 HOST:220-219-5-5.sk.cty-net.ne.jp
earthさん、遅ればせながら投下乙です。

味方よりも得体の知れない組織を頼るようになってはねえ……
まあこの手の風向測定器ぶりはやむを得ない所はありますが……

統合体もそろそろ場外乱闘をやめて腹をくくらないといけないですが、果たして?

帝国の正体はいまだ不明ですが、ゼントラーディとかマンアフターマンとかのかほりが……

370earth:2026/08/14(金) 19:50:15 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>368
重要キャラです。
最初は一話からすべて丁寧に描写することも検討したのですが、
話のテンポが悪くなりそうなので、今の形(プロローグで艦隊戦)に。


>>369
得体は知れない組織ではありますが、実力があり、帝国と敵対している事実が大きいですね。
統合体の動きは次話以降に。
まぁリアルの民主主義国家群よりはまだマイルドになるでしょう(多分)。

帝国側もあと何話かしたら本格的に描写を入れることを検討しています。

371earth:2026/08/14(金) 21:02:00 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
しかしSFは物語の筋だけでなく、技術面の設定考えるのもキツイですね……
最初はたんに縮退炉で済ませようかと考えていたら、chatgptから突っ込み入るし。

SF心を動かしつつ、物語も組む……うん、ファンタジー(魔法)で片づけるのが一番楽な気がしますね。

372霧の咆哮★:2026/08/14(金) 22:11:16 ID:???
earth氏乙です

帝国側も大変でしょう
向こうの主力艦隊壊滅程の被害は受けてませんが、辺境艦隊や前線基地含めた4連敗もしたら、連中だって厳しい顔で対策会議に紛糾するでしょうし。
生き残りが0なら取れるデータも限られるでしょうが。

統合体が全盛期アメリカみたいに、敗北からの覚醒が出来たら良いですが、逆にWW2フランスみたいにグダグダするだけの浪費に終わる可能性も低くないのが、リアル参照の政治の酷さですよなぁ。

アルペジオのイオナもそうでしたが、潜水艦隊戦は、こうしたひりつくような頭脳戦が輝きますねぇ
脳筋には出来ません

天原からしたら三大大国全部嫌いでしょうけど、その中でも嫌いな順番はあるんですか?

共同体は共同体で、統合体みたいに内ゲバしてるんですか。

帝国が地球系国家を敵視するのは、勝手にかつて自滅した全盛期地球圏の負の遺産
人造生命体として製造・使役されてた者らの反乱軍が祖になってるみたいな、疑惑が生えてきましたか
そりゃ先祖の報復を大義とばかりに動きますか
現行人類からしたらはた迷惑でしかないですが。

だからカクヨムやなろうだので、Sfよりファンタジー系の方が圧倒的母数を誇るようになったとも言えます
>ファンタジー(魔法)で片づけるのが一番楽な気がしますね。


>【クォンタム・ガーディアン:八咫烏の旗の下で】 12話・13話・14話

373トゥ!へァ!スマホ:2026/08/14(金) 23:17:42 HOST:FL1-60-237-167-201.kng.mesh.ad.jp
>>371
読んでいる側としましては色々な設定が出てくる度に楽しませてもらっております。

374ナイ神父Mk-2:2026/08/14(金) 23:21:48 HOST:p765250-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp
>>371
この辺、他の創作見ててもSF系作品で万能物質が出るのはコレを介した技術ではコレが限界とかそう言うのを作り易いからなのでしょうね。

375earth:2026/08/14(金) 23:40:29 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>372
帝国も対策に乗り出しますが、情報が少ないので有効的な手立ては打てていません。
まぁそのように近衛宇宙軍側が誘導しているというのもありますが(実に紺碧チック)。
統合体は……まぁWW2の米英のようにはいかないでしょう。

天原で嫌われている国となると星間共同体>人類統合体>星間帝国ですかね。
ただ星間帝国の要求を考慮すると星間帝国よりは統合体のほうが比較的マシというだけで。

まぁSFよりも魔法で済ませる方が楽ですからね……。

>>373
ありがとうございます。

>>374
まぁ一応、拙作ではイオノンがそれに近いですかね。
しかし、ただの【粒子】という設定にすると、色々と問題が起きるので設定(通常空間と亜空間の境界線上にのみ固定される不確定性を持つ量子状態)を捻りましたが。

亜空間や高次元からの重力波逆流などの設定とか……これだけ考えて話が受けなかったら徒労感半端ないですからね。
さらに言えばこの手のオリジナル設定を納得させるための物語、表現も必要だし。
……うん、SFが避けられるのも納得です。

376yukikaze:2026/08/15(土) 08:22:43 HOST:p874035-ipxg00b01kamokounan.kagoshima.ocn.ne.jp
更新乙です。

統合体の一部が天原への帰属を求めていますが、歴史的経緯を考えれば
天原側は「ふざけんな」だし、統合体の政治家も「天原は我々を侵食する気だ」
と、自分達の不手際棚に上げて逆恨みするのが目に見えているのが・・・

この辺、天原が技術的にはリードしていますが、星間国家としては規模が小さいせいで
綱渡りの運営せざるを得ないというのが。
つくづく旧王朝及び革命政府のヤラカシが尾を引いているなあ。

天原的には「帝国も統合体も共同体も対消滅しやがれ」でしょうけど
仮にこれらに匹敵する国力あれば「復讐の時来たれり」と、絶滅戦争
おっぱじめる空気になっているでしょうし、近衛上層部はそれはそれで
頭抱えそうですが。

377earth:2026/08/15(土) 08:59:48 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>376
統合体辺境地域での考えは、星間帝国の脅威がある以上、天原皇国との連携を深めたい(近衛軍という盾が欲しい)といったところですかね。
現状では中央に反旗を翻すまではいきませんが……まぁ不信と不満は溜まっており、「話し合うのは結構だが、俺たちを守るための手立てを考えてくれ」と
いうのが偽らざる思いでしょうか。
勿論、統合体の政治家にとっては頭痛の種です。
リアル政治を参考にすると、天原を逆恨みした挙句に、何を言い出すか(苦笑)。

天原は技術的にはリードしており、ヤマトのブーストで小国とは思えない規模の軍事力を有しています。
まぁ規模が大きいといっても量的には共同体には及ばず、サジタリウス腕への本格侵攻は不可能だし、本来は
本格的な対帝国戦線(オリオン腕方面戦線)とか構築したくないのが本音ですかね。

仮に天原の国力が周辺の大国相手に総力戦を仕掛けられるようになったら……
星間共同体相手には絶滅戦争、人類統合体相手には、報復戦争(統合体解体を目指す)が叫ばれるでしょう。

378earth:2026/08/15(土) 23:19:13 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
15話ができたので投稿します。

379earth:2026/08/15(土) 23:20:25 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

【クォンタム・ガーディアン:八咫烏の旗の下で】

  第十五話


 近衛宇宙軍が展開する辺境宙域では、帝国軍の活動が完全に沈黙へと追いやられ、逆に近衛宇宙軍の影すら届かない中枢星系周辺の宙域では、一撃離脱とはいえ帝国軍が活発に動き回っている。
 この紛れもない【事実】から導き出された「天原皇国近衛宇宙軍を、帝国軍が恐れて警戒している」という認識は、もはや一つの確信として辺境を中心に広まり、やがて統合体全域へと急速に波及していった。

 統合体の辺境のみならず、中枢星系に位置する主要な情報網ですら、「天原艦隊の展開地域において、帝国軍の活動が統計的に有意なレベルで減少している」との分析データを堂々と報じる始末だった。

 かつて統合体が見捨て、星間共同体に蹂躙されて歴史書上の存在になったと思われていた天原が、突如として〈皇国〉として再建され、自ら接触してきたという事実だけでも、当時の統合体世論にとっては十分すぎる衝撃だった。
 だが、事態はそこにとどまらなかった。ニューホライズンへ移送中の避難民の船団を襲撃した星間帝国軍艦隊を、近衛宇宙軍が一方的に撃滅したこと。そして、その救助艦隊を遥かに上回る規模の大艦隊がニューホライズンへ展開し始めた途端、帝国軍の行動が目に見えて劇的な変化を見せたのだ。
 この連続する衝撃的な成果の前に、天原皇国に対する統合体の注目度は、政府や軍の枠を飛び越え、民間レベルですらうなぎ上りに高まっていた。

「天原皇国近衛宇宙軍、その驚異的戦闘能力の背景とは?」
「知られざる軍事大国――天原の科学力と国家体制」

 主要なニュース番組は連日このように銘打った特別特集を組み、解説者たちが声を大にしてその神秘的な存在を分析し続けている。
 ネット上の各種プラットフォームや週刊誌、専門誌に至るまで、検索ワードのランキングは天原関連のトピックで埋め尽くされていた。

 天原の歴史
 皇国における統治制度と皇帝の権能
 謎に包まれた近衛宇宙軍の実態
 天原を支える超高度な科学技術体系
 統合体と天原の過去の確執と接点
 なぜ天原皇国は星間帝国軍に対してこれほどまでに強いのか

 オルビスをはじめとする中枢星系から遠く離れた、その辺境に存在する小規模国家に対する関心としては、あまりにも過熱しすぎた熱狂だった。
 市民たちは日々流れてくる断片的な情報に貪りつき、議論を戦わせていた。
 また、天原皇国が旧地球の「日本」の系譜を色濃く引く国家であることが広く知られるにつれ、彼らの先祖が歩んだ歴史や、独自の伝統文化そのものへの関心も爆発的に高まっていった。
 世間の熱狂に便乗しようと、メディアや野次馬たちはまず、星間共同体との戦争に敗北して統合体に亡命していた「旧革命政府」の残党たちへ一斉にマイクを向けた。
 しかし、彼らは「天原皇国など旧体制の残滓が築いた反動国家でしかない!」と、自分たちの没落棚上げでヒステリックに口角を泡飛ばして貶すばかり。
 まともな内情や技術的背景など何ひとつ持っていないことが露呈し、かつての「革新の闘士気取り」だった彼らは、わずか数日で世間の興味対象から急速に外れていった。

 代わって持て囃されたのは、統合体の中枢図書館やネットワークの奥底で埃をかぶっていた古い記録データだった。
 それらを元に、失われた日系文化の文物や料理が勇猛果敢にリメイクされ、次々と市中に流通し始めたのだ。
 ただし、それは数百年におよぶ歴史的乖離と、幾重もの伝言ゲームのなれの果てだった。
 街のショップには、漢字の一部が微妙に間違っていたり、謎のスローガン「大盛精神」がプリントされた妙なデザインのTシャツや、四角いプラスチック製の「提灯型LEDランプ」といった、天原皇国の人間から見れば絶妙にピントのずれた「パチモン臭い日本風雑貨」があふれ返った。

 しかし、その熱狂は一般市民の好奇心だけに留まらなかった。
 大手報道機関の特派員や著名な戦場ジャーナリストはもちろん、各管区の情報機関、中央政府の調査官、軍事研究者、宇宙工学の研究者、大学教授、さらには民間メガコープの技術者や渉外担当者までが、我先にと惑星ニューホライズンへ向けて宇宙船を飛ばしていた。
 ニューホライズンの宇宙港には各方面から到着した船がひしめき合い、ニューホライズンへ向かう便には予約待ちが発生するほどだった。
 ただの物見高い興味ではない。近衛宇宙軍が保有する情報、技術、そして圧倒的な軍事力そのものに、計り知れない価値があると考える者が、それだけ増えていたからにほかならない。

 ニューホライズンへ向かう定期船のラウンジでは、肩書きの異なる者たちが、互いの探り合いという名の情報収集を行っていた。

380earth:2026/08/15(土) 23:22:03 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

「……で、貴殿が掴んでいる噂はどうです? 近衛艦隊のあの常識外の攻撃精度について」

 軍事研究者の男が、ワイングラスを傾けながら隣席の兵器技術者に耳打ちする。技術者は苦笑して首を振る。

「噂なんてレベルじゃない。あのカゲロウ級のセンサー配置を見たか? 統合体の現行技術では説明のつかない信号処理能力があるはずだ……あれは、単なる人類の技術ツリーの枝分かれではない。更に飛躍した何かだ」
「だとすれば、なぜ今になって彼らは姿を現したのか。統合体の危機を救うためか、それとも帝国との戦争という【試金石】を利用して、我々の技術レベルを検分するためか」

 記者はその会話を聞き逃すまいと手持ちの端末で録音する。
 周囲の学者たちもまた、互いに専門分野の知識を小出しにしては、相手の口から「天原の真実」を引き出そうと躍起になっていた。

「そういえば聞きましたか? 現地では地価の高騰が凄まじいらしいですよ」
「ええ。各メガコープが血眼になってニューホライズンに支店を置きたがるのは、天原との距離を縮め、技術ライセンスのひとつでも掠め取ろうという魂胆でしょう」
「企業が血眼になるのも理解できます。天原皇国が隠しているのは、単なる兵器じゃない。文明そのものの根幹だ。……我々は今、歴史の転換点に乗り合わせているのかもしれません」

 言葉の応酬の中には、学術的探究心と、政治的な打算、そして経済的な強欲が複雑に絡み合っていた。
 少なくとも彼らの多くは、そう信じていた。このニューホライズンに降り立った瞬間、自分たちは「世界を変える鍵」に触れることになるのだと。

 尤も、これらの客を受け入れる惑星ニューホライズンの宇宙港周辺では、かつてない喧騒が住民たちの生活を脅かしていた。
 地元のニュース番組ですら「宇宙港周辺の混雑が、3年前に比べて数百倍に膨れ上がっている」と辟易したように報じている。

「おい聞いたか? また新しい団体客が宇宙港についたらしいぞ。今度は中枢星系の報道機関らしい」

 地元のカフェでコーヒーをすする住民たちが、ため息混じりに談笑する。

「またかよ。せっかく近衛宇宙軍のおかげで警報が鳴らなくなったっていうのに、今度は報道と学者の大渋滞だ。あの連中、街中を徘徊しては『近衛宇宙軍の軍人と会ったことはあるか? 何か話をしたことがあるか?』とか聞いて回るんだぜ。まるでスパイだな」
「まあ、無理もないさ。俺たちにとっては『恩人』だが、中枢の連中にしてみれば、謎だらけの『未知の勢力』なんだからな」
「それより、聞いたか? 宇宙港の近くの更地、今度は中枢星系のメガコープがオフィスを建てるとかで、地主は笑いが止まらないらしいぜ」
「笑いごとじゃねえよ。俺たちの住んでるアパートの大家まで、立ち退き料をチラつかせながら『売却先が決まった』なんて言いやがった。この辺の家賃も数日で大幅値上げだ」
「開発が半ば凍結されたド辺境で、土地なんてタダ同然だったのにな。今や、先を争うかのように土地の買収合戦だ」

 彼らが少し視線を外すと、そこには急ピッチで開発が進む市街地の光景があった。

「仕事が増えるのはうれしいがね。避難民も仕事にありつけているおかげで、街に馴染み始めているし」
「それはあるな。大量の難民受け入れた惑星は治安が悪化するのがお決まりなのに、こちらは人口が増えて、経済も活発化。他の惑星が聞いたら泣いてうらやむぜ」
「できれば家賃上昇が緩やかになって、無作法な客がもう少し静かになってくれれば、言うことはないけどな」

 住民たちは、かつての恐怖から解放された安らぎを噛みしめつつも、押し寄せる「外部の狂騒」をどこか冷ややかな目で見守っていた。

 恐怖から解放された民間人たちが浮かれる一方で、かつての人類統合体の守護者であるはずの統合軍軍人たちは、全く異なる暗い心理に囚われていた。
 非番を利用して久しぶりにニューホライズンの市街地へ私服姿で降り立った彼らは、街を覆う弛緩した空気を敏感に察し、苦々しい表情を浮かべた。
 彼らは酒場に入り、カウンター席でそれぞれ己の好きな酒を注文し、愚痴を口にする。

「……おい、聞いたか? 宇宙港のほうじゃ、今度は報道機関が特番の生中継をやってるそうだ」
「民間人のように手放しで大喜びできれば、どれだけ気楽なことか……」

 そんな呟きが漏れる中、かつて近衛宇宙軍に助けられた経験を持つゲン・タナカ大佐は、ビールを少し口にした後、自嘲気味に呟く。

「なあ……本当に、あの天原艦隊が来てから帝国軍は引いたのか?」

381earth:2026/08/15(土) 23:22:50 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

「統計上はそうらしい。あの艦隊が展開して以降は一機の偵察機すら姿を見せていない」
「……統計上、ね」
「何が言いたいんだよ」
「俺たち統合軍は、このニューホライズンでも、アルクトゥルスでも、帝国軍の猛攻を前に、ただ敗北を重ねてきた。それがどうだ。彼らが来た途端に、あの帝国軍が蜘蛛の子を散らすように引っ込んだんだぞ」

 同僚たちの多くは口ごもる。

「帝国軍は確かに負けた。そして彼らは強い。その強さは目の前で見ているからな。だが、あの帝国軍がただの一度の敗北でここまで引き下がると思うか?」

 数少ない統合軍のベテラン勢、星間帝国軍相手に生き残ってきた男たちが、どこかで感じている違和感を、タナカは言語化する。

「俺には、帝国軍の連中が何をそこまで恐れて身を引いたのか……そっちの方がよっぽど恐ろしくて、仕方がないのさ」




 小惑星基地イワムラが本格的に稼働するようになると、外交用の宇宙ステーションにあった外交区画は、イワムラ基地の一角に移転された。
 九条は貴族らしく多くの調度品や高価なデスクが置かれた執務室にて、山のように積み上げられた申請書類のデータが流れる端末を眺め、深く溜息をついた。

「……面会希望の件数が、いよいよおかしなことになってきたな」

 側近の部下が、引きつった笑みを浮かべながら報告する。

「先月までは一日十数件で管理できていたのですが、先ほど確認したところ、今日の段階だけですでに三桁に達しています」
「記者どもだけならまだ追い返しようもあるが……研究者、民間企業の代表、果ては軍関係者や、どう見ても情報機関の人間まで混じっている。もはや無法地帯だな。ふむ、【善意】の仲介者だったヤシマ管区からは何か?」

端末のデータをスクロールしながら問う九条に、部下は渋い顔をして答えた。

「はい。同じ日系文化のルーツを持つ【同胞】として、今後も【誤解のなき】交流を行うために、とりわけ文化面での交流を深めていきたいと」
「ふん。相変わらず抜け目のない連中だ。まぁ他の管区の連中よりは話はしやすいがな」

 次々と届く面会・取材申請のリストをスクロールしながら、九条はふと手を止めた。
 冷徹な洞察力が、その背後にある思惑を正確に見抜いていく。

(……連中は、ただ単に「天原皇国という国家の全貌を知りたい」わけではない。天原が隠し持っている【決定的な何か】――その技術的、あるいは軍事的な機密の尻尾を掴みたいがために動いているのか)

 九条は知っていた。加東大将の指揮下にある航宙遊撃艦隊、その隷下の潜宙艦隊が帝国軍の重要拠点であるオルタナ星系基地を密かに襲撃し、甚大な損害を与えたという裏の事実を。
 だが、その最高機密に属する作戦の全貌や、潜宙艦という存在自体を、九条は統合体側に対して一言も漏らしていなかった。

(……統合体の連中からすれば、宗像提督の艦隊がこの宙域に到着した途端、あれほど猛威を振るっていた帝国軍がピタリと動きを止めたように見える。無理もない。これほど露骨な結果を見せつけられれば、こちらを探りたいと思うのも当然の心理だ)

 さらに、ニューホライズンに収容された避難民たちの動静や、彼らの間で高まる世論のうねりを思い出す。

(統合体中枢に半ば見捨てられ、我々の手で救われた避難民たちは、今や皇国との強い連携を声高に主張し始めている。そして、その期待の声が辺境のローカルな話題に留まらず、中枢星系の大都市圏にまで波及しつつあるとすれば……)

 九条は端末の画面を消し、静かに窓から見える宇宙港を見据えた。
 そこには、統合軍艦艇とは明らかに異なるデザインを持つ近衛宇宙軍の艦艇がイワムラ基地周辺に停泊しており、その中から1隻のカゲロウ級がイワムラ基地の宇宙船ドックに収容されようとしていた。
 片や、近衛宇宙軍が設定した航行制限区域の外側に、統合体の民間船が群がるように集まっている。
 民間船に偽装した観測船が、様々な方法でイワムラ基地や宗像艦隊の艦艇を観測していることは、九条でも容易に察することが出来た。

「……なるほど。覗き、盗撮に加えて通信傍受もか? レディーの寝室を暴こうとするとは、紳士の風上にもおけんな」

 冗談めかした口調でそう言った後、部下に視線を向ける。

382earth:2026/08/15(土) 23:23:27 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

「機密保全は?」
「重要区画については外部から観測されないように保護しています。また許可された以外の人間は、統合体の人間と接触を禁じており、それは守られています。ただ……」
「多少の漏洩は免れない、か。まぁ奴らも完璧な無能というわけではないからな。ふん、ミカサ級だけでもこの騒ぎ。イズモ級重戦艦やテンリュウ級宇宙空母を派遣するようなことがあれば、どんな騒ぎになることか」

 近衛宇宙軍が誇るミカサ級戦艦の〈カシマ〉と〈ハルナ〉の存在は、統合体にとって注目の的となっていた。
 九条はあえて、ミカサ級が旧式艦であることを隠さなかった。むしろ独立戦争以来の武勲艦であり、幾度もの近代化改装を経て現在も現役であることを、公式・非公式の場で積極的に説明していた。
 そして【独立戦争の武勲艦】という歴史の古傷をチラつかせて統合体側の出方を試してやったのだが、新しく派遣されてきた統合体の外交官は、そんな皮肉など涼しい顔で受け流してみせた。

「おお、そのような名誉ある歴史的武勲艦を我らが宙域に派遣していただけるとは、ありがたい限りです。貴国の素晴らしいご決断は、かつての痛ましい歴史的確執を乗り越えて新たな未来を切り開く、歴史的な第一歩となりましょう」

 その言葉の裏で、外交官はグラスを傾けながら、こう付け加えることを忘れない。

「――つきましては、これほどの艦艇を、かの戦争中に貴国はいかなる工業力と資源をもって建造し、そして現在まで維持してこられたのか。その体制の秘訣だけでも、差し支えない範囲でご教示いただければ……」

 最初に相手にした外交官よりも手強い相手の態度を思い出し、九条は統合体側の外交官に対する評価を修正する。 

(こちらの狙いを理解しつつ、こちらの肘鉄をかわして探りを入れるか……ふん。統合体は人間の数が多いだけに、こういう人材も出てくるわけか。それとも、いよいよ本気を出してきたか?)

 天原皇国側としても、過去の統合体の仕打ちや歴史的確執を今さら蒸し返して、血祭りに上げるような無意味な報復をするつもりはなかった。
 もちろん、外交や軍事的な交渉の場において、過去の統合体の失策をカードとしてちらつかせ、主導権を握るための道具にすることはあるだろう。だが、統合体に対して短期的に破滅的なダメージを与えるような、得にならない選択肢を取る気など毛頭なかった。
 天原の現在の目的は、星間帝国から天原を守れる戦略環境を作ることであり、統合体を崩壊させることではない。
 九条は再び宇宙港へ視線を移す。

「この喧噪は、単なる善意や友好の芽生えなどではない。……関心と、それ以上の深い【警戒】が同時に高まっている証拠だ」

 九条がそう呟いた直後、執務室の静寂を切り裂くように、専用端末のディスプレイに一通の電子書簡が舞い込んだ。
 それは、これまでのように下部組織やメガコープ、あるいはヤシマ管区から送られてくるような、探り合いのレベルをとうに超えた代物だった。

 表示された発信元。
 それは、数多の星系を束ねる統合体の最高意思決定機関――【人類統合体中央評議会】の正式な認証印が表示されていた。

 九条は数秒間、その冷たい文字列を無言で見つめた。
 辺境での騒ぎやメガコープの買収合戦は、所詮は水面下の前哨戦に過ぎなかったということだ。中央の本丸が、ついに直接的な接触のカードを切ってきた。

「……とうとう、尻尾を掴みに出てきたか」

 九条の口元に、微かな、しかし鋭利な笑みが浮かぶ。
 
「本国に緊急連絡を入れろ。中央評議会の特使を迎える準備を始める」

383earth:2026/08/15(土) 23:26:30 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
15話をお送りしました。
……いろいろ長くて本格的な交渉に入れなかった(白目)。

こんな展開で大丈夫か、色々不安になってくる。

384ナイ神父MK-2:2026/08/15(土) 23:31:09 HOST:p765250-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp
乙です。まぁ、この辺は気にしない方がおかしいですからな。
謎が多いのと合わせて憶測は憶測を呼ぶ以上仕方がないと言えましょうな。
統合軍が比較的冷静なのも合わせて政治の方のに趣が起きやすくなるのは血を流さないという方向ではいいのでしょうが···

385earth:2026/08/15(土) 23:33:48 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>382
へんな表現になっていた(汗)
誤)許可された以外の人間は
正)許可された者以外は

386yukikaze:2026/08/15(土) 23:41:26 HOST:p874035-ipxg00b01kamokounan.kagoshima.ocn.ne.jp
更新お疲れ様です。

まあ統合体にしてみりゃ「そうなるわな」なんですけど、何というか「もう少しお行儀よくできんのか」感が。
外交官辺りはそこら辺よく理解していて「踏み込んでいいところと踏み込んだらやべーとこ」の線引きを慎重に
行っている訳ですけど、民間レベルはどうかというと・・・
流石にヤシマは「下手なことしたらヤバい」と、文化面での交流という「天原側の反発が殆どない」選択肢とった訳ですが。

中央評議会の特使派遣ですけど、前の反応見ていると変なのよこさないよなという不安感が。
まあここで天原怒らせると統合体詰みますのでそこら辺はしっかりしているでしょうけど、
特使はともかく随行員迄ちゃんと選抜できているのかねえ。

387New:2026/08/16(日) 00:27:04 HOST:119-230-89-1f1.osk1.eonet.ne.jp
乙まあ知らぬということほど恐ろしいことはないですしね・・・。
まだまだ下世話だけどライン守ってるのぞき見なら許せるがライン超えなら
それ相応に対応しないとね

388ぷよ全消し:2026/08/16(日) 01:01:20 HOST:220-219-5-5.sk.cty-net.ne.jp
earthさん、投下乙です。
銀河連合日本を彷彿とさせますが、まあこの手の『専門家』や『マスコミ』が鋭角の隙間から滲み出すのはいつもの事ですからw
ただ、企業や政府だとどっかで『タガ』が外れかねんのが……
(特使派遣でその手の輩山盛りは想像つきますが……)

389ハニワ一号:2026/08/16(日) 07:39:01 HOST:124-144-118-196.rev.home.ne.jp
乙です。
過去に統合体に見捨てられた過去がある天原皇国の市民が見たらブチ切れそうな光景だろうな。
天原に対する統合体の狂騒曲はそれぐらい帝国軍に追い詰められている事の裏返しなんでしょうけどもうちょっと大人しくできんのかとなりますね・・・。

390ひゅうが:2026/08/16(日) 07:41:50 HOST:opt-123-254-26-67.client.pikara.ne.jp
乙です
むむむむ。真空の量子的基底状態との揺らぎ――観測者が絶対となるギリギリの大きさ、まさか…!?とか色々妄想がはかどりますな

391earth:2026/08/16(日) 14:18:16 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>384
統合軍の場合、精鋭艦隊壊滅状態で、新戦略でgdgdしている最中に近衛宇宙軍の登場、帝国軍の不気味な沈黙と
ある意味で思考と対応力が飽和状態ですかね……ハワード大将、貧乏くじってレベルじゃないですね。

>>386
民間は御覧のあり様……近衛側のラインはまだ超えていないですが、まぁ礼儀はなってないですね。
尤も、現実のマスゴミを見ているとまだマシに見えるのがリアルの救いのなさよ(白目)……。

中央評議会の特使はマトモです。
随行する人間は……まぁ統合体が巨大国家であることを示してくれるでしょう(目逸らし)。

>>387
まぁこれ以上、統合体側の動きが加熱するなら、ライン越えも近いですかね……
いきなり撃沈とか強硬手段には出ないでしょうが。

>>388
統合体の狂乱劇は当分は続きそうです。
特使と一緒についてくる面々は、面白おかしく踊ってくれるでしょう。

>>389
皇国側民間人が見たら、血圧はかなり上がりそうですね……。
まぁ今回の交渉で多少はルールが出来れば大人しくなる……かも?

>>390
SF設定しようといろいろと調べると、奥が深い……この手のSFが難易度が高い理由が良く分かりました。

392トゥ!ヘァ!:2026/08/16(日) 14:37:34 HOST:FL1-60-237-167-201.kng.mesh.ad.jp
乙です

>>その体制の秘訣だけでも、差し支えない範囲でご教示いただければ

そっちの機密を教えろとは統合体は随分強気な外交姿勢ですね。

皇国の機嫌を損なって戦力撤退されたりすることを考えていないのか、はたまた皇国にとってもニューホライズンの防衛線は重要と見抜いての行動なのか…

次回は遂に統合体の中央評議会特使の登場ですか。
どのような話し合いが起きるのか楽しみですね。

393ナイ神父MK-2:2026/08/16(日) 15:16:23 HOST:sp49-109-228-30.tck01.spmode.ne.jp
>>392
ある程度向こうの線引きとかを探ってる面もあるのでは?
こう聞いて向こうが開示してきたもの(調べられても差し支えない技術、理論)でも統合体の知らない技術があれば儲け物ですし、向こうを測る指標になり得ますからな。

394earth:2026/08/16(日) 15:18:33 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>392
どちらかというと、かなり婉曲な「情報要求・探り」の範疇かと。
九条の外交官としての振る舞いを分析して「これくらいなら言っても大丈夫だろう」というラインで来てます。
強硬なら「技術を提供しろ」とストレートに言うでしょうし。


特使はまともです。
ただ随行員については……どうでしょうね(目逸らし)。

395トゥ!ヘァ!:2026/08/16(日) 15:19:36 HOST:FL1-60-237-167-201.kng.mesh.ad.jp
きちんとラインを見極めての発言だったのですね。

>>随行員
どうしてそんな片手落ちに…(白目)

396名無しさん:2026/08/16(日) 19:08:53 HOST:dhcp129109.orihime.ne.jp
乙です。
特使の随行員に関しては………民主主義国家だから有権者、納税者の意向を無視出来ないのは仕方無いね(棒

397earth:2026/08/16(日) 20:24:20 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>396
素晴らしきは民主主義()、といったところですかね。

398モントゴメリー:2026/08/17(月) 20:18:53 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
乙です。
天原本国では一般のニュースで「前線基地攻撃」を報じているのに
統合体では全くの未知なんですね。

…マジで国交断絶状態ですね。

399earth:2026/08/17(月) 20:48:00 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>398
確かに外交交渉はしていますが、民間交流までには至っていないので……。
さらに言えば15話でも触れましたが機密保全について天原は徹底しています。

統合体側は天原の背後に星間共同体のような巨大国家がいるのではと疑っていたので
天原がある宙域へ艦を出すのも躊躇っていたのも大きいですかね。
(以前、星間共同体相手に大火傷した経験があるので)

400名無しさん:2026/08/17(月) 21:06:26 HOST:pl17672.ag1001.nttpc.ne.jp
乙です
一応は加盟国ではあるものの、実質建前上で鎖国に近い状況なんですかね

401earth:2026/08/17(月) 21:26:38 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
>>400
天原皇国はそもそも加盟国ですらないですね……。

統合体へ加盟を図ったのは旧共和国(旧王朝を倒して樹立)ですかね。
ただし調子に乗って星間共同体と戦争して滅亡し、統合体は撤退したという流れです。

共同体を追い払って天原を再建したのが皇国(正確には近衛宇宙軍)です。
この間、天原は滅亡したと統合体は判断していたので、結果的には鎖国状態でしたが。

402モントゴメリー:2026/08/17(月) 23:43:09 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
前にも言ったけど、本当に九条中将が異色ですよね。
旧貴族階級からしたらUR級の立ち位置ですし。

近衛宇宙軍で中将まで行って現役と言うことは、「独立戦争」で最前線に立ってかつ引退しなかったということですし。


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