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テスト

714時風@PC:2020/06/06(土) 09:41:27 HOST:KD106173219113.ppp-bb.dion.ne.jp
テスト

「…………どうしようか」

起こすことは決まっている。が、どうやって起こすかが問題だ。穏やかに寝ているのだから、声を掛けて起こすのはおそらく論外…な筈だ。いきなり声をかけられて起こされるのは、存外に不愉快なものでもある。
肩を揺らす?いやいや、それも論外。いきなり俺の顔が目の前に見えてたら驚くに決まっている。下手をしたらセクハラだ。けどこの場合、どこからがセクハラなのかも問題だろう。最悪どこかを…頬をつつくだけでも認定されかねない。
……眉間を抑えながら、どうやって起こすかを思案する。
起こさなければいいなんて考えはなし。そんなことをしたら、それこそ彼女は不機嫌になるだらう。直感だけど、そう思う。よくて数分、下手をしたら数時間も彼女から不機嫌な思念を当てられたらどれだけ気が滅入るのか分かったものではないし、そもそもレイチェルからそんな思念が送られてくるだけでダメージが入るだろう。多分。
そして。

「ええい、ままよ……!」

呻くようにそう言って、起こすことにする。とりあえず手を伸ばす。
……肩が頬かは、もうその時の判断で決めることにした。
ゆっくり、音を出さないように手を伸ばす。自分が柄にもなく緊張しているのが分かる。原作で言えばネオ・ジオンの軍服に身を包んでいるレイチェルにパイロットスーツ姿の自分が手を伸ばすという構図だからだろうか?
そんなことをふと考えて。

「……ん……ぅ」
「!!」

反射的に手を引っ込める。全身が一瞬熱くなって、冷める。まどろむように動いた彼女の頬に、触れてしまったから。
彼女の瞼が一瞬動いて、目が開く。

「……どうしたの?」
「ああ、えっと……」

言葉が詰まる。目をそらす。
寝ぼけ眼のまま、彼女の首がこてんと傾く。
少しの時間の後、にへらとレイチェルが笑って。

「はい」
手を出してくる。右手。まだ、寝ぼけているのだろうか。
急かすように、ん!と言いながら更に右手を伸ばしてくる。少しだけ、頬が膨れている。

「OK、行くよ」

観念したように言って、手を重ねる。レイテェルが引っ張って、無重力に身をまかせる。
瞬間。

「?!」

抱きつかれた。背中に腕を回されて、水の中にいるかのように互いの位置が変わり変わっていく。
なぜ、という困惑が先に来て、身体が固まる。視線の先にいる彼女がまた笑って大きく視界が回る。抱きついてくる力が、少し強くなる。
これは、流石に予想外だった……。
––––––––––温かいね。
思念が伝わって、強張っていた体の力が抜けていく。
––––––––––うん。やっぱりアキトは温かい。
人の温もりが伝わってくるのを感じた後に、彼女の身体が密着状態から離れていく。繋がった右手はそのままに、また一回、コーヒーカップのように位置が回転する。

「ん!これで大丈夫!」

彼女が笑って、手が離れる。ありがとうねと言いながらハンガーの出口に向かっていくのをぼうっと見て、一瞬せっつかれるように思念が来た。すぐ行くと生返事気味な思念で伝え、彼女が嬉しそうな感覚を発しながら食堂に向かうのを確認してから、周りを見る。

「……なんだよ」

微笑ましいものを見るような人、こっちと視線を合わせた瞬間慌てて逸らす者。ニヤニヤしながらこっちを見てサムズアップをしてくる者。タッチパネルをなにか恨みがあるかのごとく連打してる奴など、色んな人がいる。
特に気になったのは手に持っていたカメラを背中で隠してる奴だ。お前はそれで何を撮ったんだと無性に言いたくなるのはなぜだろうか?
……やっぱり、ウチ(ニカーヤ)には夢幻会の愉快な人達みたいなのが多い気がする。
考えてもしょうがないことだけど、ため息をつくくらいは許されるだろうし、小さく息を吐くことにした。浮いているうちに近くなって来た壁を蹴り、ハンガーの出口に向かう。

「なぁ、写真しっかり撮れたか?」
「勿論。うちのトップエースとレイチェルちゃんが手を伸ばしあってる構図を!満面の笑顔付きさ!」
「良心的な範囲なら言い値で買う。現像頼んだ」
「抱き合ってるほうは?」
「あれはレイチェルちゃんが寝ぼけてただけだし、笹原少尉にとってはアクシデントだからノーカウントだ、良いな?」
「了解、後で消しておきます」
「とりあえず誰かブラックコーヒー持ってきてくれ…!」
「無言で通じ合うって響き、甘くて良いわよねぇ」
「あの、香織曹長。明人君に聞こえたらどうするんですか!?」
「リア充爆発しろリア充爆発しろリア充爆発しろ……!」
「そんな何度も言ってたらバレるぞ」

……なんかひそひそ声で色んなことを……一部怨念混じりで……喋っているのをドアが閉まる前に聞いた気がするが、まぁ、問題はないだろう、うん。
そう思いながら、食堂に入って。




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