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避難用作品投下スレ6

27名無しさん:2010/08/27(金) 22:03:01 ID:w1hhOi020
十五時〇〇分/高天原格納庫

 サリンジャーは色を無くした表情で、音声が発された方向を見ていた。
 ノイズ混じりのオールビューモニターの向こう側では、レールキャノンの真っ黒な銃口がサリンジャーを捉えていた。
 なぜ、と呟く。アハトノインだけではなく、シオマネキですらも裏切ったことに対する『なぜ』。
 このタイミングでレールキャノンの冷却が完了し、再砲撃が可能になっていたことに対する『なぜ』。
 まるで世界が自分を負け犬に仕立て上げようとしていることに対しての『なぜ』だった。

『ふ、ふざけるな、まだ私は負けるわけには……』

 操縦桿を握り、フットペダルを踏み込んでレールキャノンの射程から逃れようとするが、動かない。
 故障かと思い、半ば恐慌する気持ちでシステムをチェックしてみたが異常はなかった。
 馬鹿な、と震える声で言ってみたが、どう動かしてもアベル・カムルは動かない。
 試作品だったからか? いや、テストならば十分にこなした。
 設計ミスではないことも自分自身が知り尽くしている。
 ではどういうことなのかと巡らせた頭が、ひとつの答えを導いた。
 裏切った。
 アハトノイン、シオマネキに続いて、電脳まで持たないはずのアベル・カムルでさえ裏切った。
 何の抵抗もなく侵入してきた結論にそんなことがあるはずがない、とサリンジャーは喚き散らした。

『機械風情が私に逆らうな! 動け、動け、動け! なぜ動かない!?』

 無茶苦茶に操縦桿を動かしても、
 力任せに拳を叩きつけても、
 緊急脱出装置のボタンを押してでさえ、
 何も反応することはなかった。
 まるでサリンジャーの周囲だけ時間が止まったかのようだった。
 ただひとつ、シオマネキが死の宣告を告げる以外には。


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