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避難用作品投下スレ6

20名無しさん:2010/08/27(金) 21:58:17 ID:w1hhOi020
十四時五十七分/高天原格納庫

「いけるか、渚」
「何とか……」

 顔の周りの汚れを拭いながら、渚は自分の力で立ち上がる。
 視線の先ではリサとアハトノインが縦横無尽に立ち回り、巧みにアベル・カムルの攻撃を回避している。
 今まで戦ってきたはずの敵が味方をしてくれている理由は分からない。
 鞍替えをされている、とは思わなかった。
 早く退避を、と語ったアハトノインの表情は今までと変わらず、無機質な目をしていた。
 命令を受け、忠実に任務を遂行するだけの機械。それは今までも、現在も変わりはないのだろう。
 そこまで考えたとき、渚は自分がアハトノインそのものに対して憎しみを抱いてはいないということに気付いた。
 友人が殺されたのに? しかしその問い自体が間違っていると渚はすぐに思い直した。
 ルーシーが殺されたときのアハトノインと、自分達のために戦ってくれているアハトノインは違う。
 命令ひとつでこちらの味方をするような代物でしかなかったのだとしても、
 あのアハトノインは無慈悲に人間を殺戮するだけの機械でないと信じたかった。
 アベル・カムルの主とは違う、本当に正しい命令を与えられ、人間のやさしさに従って動くロボットなのだと……

「すまん、俺のせいで」
「大丈夫です。生きてますから」

 そう、まだ皆無事だ。まだ誰一人として欠けてもいない。
 髪の結び目で光っている十字架が、自分を支えてくれている。
 大切な人を守れるだけの力を与えてくれている。
 力を貸してくれているのは、自分が弱いからでも、無力だからでもない。
 自分の意志を受け止めるだけの人間になれたことを認めてくれているからだ。

 ……だけど、まだ、もう少しだけ力が欲しい。


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