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避難用作品投下スレ5
43
:
明日ハレの日、ケの昨日
:2009/06/10(水) 02:55:29 ID:TIXYJhVg0
「宗一さん、無茶のしすぎです。傷だらけじゃないですか」
「そういう渚こそ危ない真似しやがって。一歩間違えたらそっちが撃たれるところだったぞ」
「宗一さんが助けてくれました」
「そりゃそうだ。もし渚に何かあったら、俺は……」
そこで那須宗一は言いよどんだ。宗一自身思ってもみなかった言葉がついて出たらしく、視線を虚空へと泳がせる。
しらを切ればいいものを、あまりにも分かりやすい態度に古河渚でさえも言葉の続きが理解でき、
顔に熱が昂じているのが自分でも理解出来た。そういえば、いつからお互いに名前で呼び合うようになったのだろう。
いらぬことまで考えてしまうと思った渚は作業を再開した。包帯が丁寧に宗一に巻かれていく。
ただ、どことなく気恥ずかしいものが残り視線を合わせ辛くなった。
治療が終わったらどうしよう、と持て余した感情をどこに向けるか考えてみるも、
他のメンバーは、というよりは国崎往人を中心として朝霧麻亜子と川澄舞が話し合っている。
比較的怪我の少なかった麻亜子と往人が捜索を終え、舞に報告しているらしかった。
自分のところにこないのは宗一の治療をしているからなのか、それともこの雰囲気を感じ取ったからなのか。
どうもしばらくはここに釘付けらしいということを理解して、渚は悶々とした気分になる。
よくよく考えてみれば自分たちはとんでもないことをしてきた気がする。
後ろから抱きすくめられ、情けない姿を晒しあい、てのひらを乗せ合った。
恋愛経験の少ない、というか全くなかった渚にはそれだけで赤面するには十分だった。
そして同時に胸が高鳴る我が身に驚き、どういうことなのか理由を求めようとするが話せる相手などこの場にいるはずもなく。
つまるところ自分で考えるしかないのだった。
いや考えずとも分かる。宗一の態度は明らかだ。好意を抱いてくれていることは間違いない。
急に気付いたというよりはここまで考える暇もなく、
己自身のことを考える時間の方が多かったし奔走していたせいもあったからだというのが理由だ。
いざ思い返してみれば思い当たることがぽんぽんと飛び出してくる。
それだけ様々なことがあったということだ。自らの内実に、ルーシーたちとのすれ違い、そして天沢郁未。
全てに決着がつき、ようやく自分のことを真に考えられるようになった。
今までではなく、これからのことを。
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