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避難用作品投下スレ5
126
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(ユケ!ヤレ!マーチ)/Prepare To Take The Field
:2009/07/06(月) 23:48:15 ID:XQXXsGks0
恐怖したのかもしれない。仲間同士で殺しあう凄惨な光景に人間不信となり、戻ってこられなかったのだと思っていた。
だがそれは椋が殺し合いに乗っていなかったらの話だ。
もしもあの時既に椋は殺す側へと回っており、こちらの殲滅を狙って毒を入れていたのだとすれば……
舞は軽く首を振った。詮無いことだった。
今さら、もう確かめることなんて出来はしない。したところで、もう何も変えられはしない。
ただ……椋が姉と出会えて死ねたのか。本望を達成することができたのかということだけが気になった。
誰とも会えないまま、ひとりで死んでいくなんて寂しすぎるから。
短い黙祷を胸の奥で捧げ、舞は改めて横を歩く往人の姿を眺めた。
自分と同じく、表情を無の形に保ったままで、唇を若干のへの字に曲げている往人は、しかし多くの思いを内実に秘めている。
誰だってそうだ。何も考えず機械のように生きられる人間なんてどこを探したっていない。
表情に出るかどうかは微妙な差異でしかない。往人は滅多に表情に出さない人間だ。
それは彼の強さなのだと舞は思う。自分は違う。感情を表に出せなくなったのは怖いからだ。
記憶の奥底にある、苦い過去が痛みを味わうまいとして作り上げた檻の中に閉じ込め、出られなくなった自分。
人と関わることを遠ざけ、辛くもなくなった代わりに喜びも忘れてしまった事実がそこにあった。
生きていこうと決意し、こうして人と一緒にいてもなお、自分の中にわだかまった膿を取り除けないでいる。
弱いままだと思い、だからこそ往人に対する感情を確定させられないでいるのかもしれないとも思った。
思慕だと評していながら果たして本当にそうなのかと自答してもいる。
恋だと断ぜられる自信はなく、寧ろ認めることではなく、
断じた先にあるものが怖いがあまりに受け入れずにいるのではないかとすら感じた。
話せば分かることなのだろう。ただ、そこに踏み込むには度胸が足りなかった。
利害関係の一致で一緒にいることはできても人と人、一対一の関係を保って一緒にいることは途轍もなく難しいことのように思えた。
要するにどう言葉をかけていいのか分からなかったし、距離を推し量ることもできなかった。
対人関係について必要ないと捨ててきた結果がこれなのかもしれない。ツケは大き過ぎた。
こんなことを相談できる相手もいない。一番近しいひとと距離も埋められていないのに、
それより浅い付き合いの人間とどう話していいのか分かるはずもない。
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