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避難用作品投下スレ4

94(最初だけ怖いっス)/Theme of Black Knight:2008/09/21(日) 02:35:40 ID:kZsTBTYo0
 二階、階段の上に一人佇む、水瀬名雪の姿。
 実は郁未の予測は当たっていた。
 身体能力に関して郁未の方に分があると考えた名雪は七瀬留美と交戦させるべく走り回っていたのだが、意外と早く郁未が意図に気付いてしまった。
 ならば戦術を元に戻し、待ち伏せに切り替えようとした名雪だったが、そうはいかなかった。
 どこかで火が放たれたのか、炎がホテル各所に燃え広がっており、已む無く脱出するしかないと判断したのだ。
 ついでに放置されている薙刀を拾ってから脱出しようとした名雪だったが……拾った先に、待ち構えていた郁未に発見されたのだ。

「ラストバトルと行こうじゃないの!」

 郁未がM1076を持ち上げ、名雪がジェリコを持ち上げる。
 最初の刺し合いに戻ったかのように、二人の取った行動は同じであった。
 数十メートルの距離を置いて交差する弾丸の群れ。まずは銃撃戦のセオリーとして、敵の射撃に当たらぬよう回避しながら撃ち続ける……はずだった。名雪を除いて。

 あろうことか、臆することなく名雪は射撃の雨の中を突っ切ってきたのだ!
 死をも恐れぬ名雪の行動に、郁未は驚愕しつつもさらにM1076を連射する。

 近寄ってくれば、当然相手との距離も縮まる。即ち当たりやすくもなる。
 名雪に弾丸が命中するのもまた必然だった。連射した二発の弾丸が名雪の腹部ど真ん中へ命中する。普通ならば致命傷である。
 が、何も策もなく突進するほど名雪は無謀ではなかった。彼女が突っ切れて来れたのは身に纏っていた衣服――防弾性能のついた割烹着――のお陰だった。
 多少足を遅らせたものの、前進を止めることはできなかった。

 撃たれても平気で攻め込んできた名雪に今度こそ郁未は動揺し、切磋の判断を誤る。
 弾切れを確認するため残りの弾数を確認しつつ撃っていたのだが、迫る名雪にカウントを忘れてしまう。
 薙刀を構える名雪。射程に入るまでは残り数歩。焦った郁未がM1076を撃とうとしたが、カチリと響く弾切れの音。
 しまったとデイパックを無理矢理下ろし、中に手を突っ込むが、中身を取り出すよりも早く名雪が攻撃動作に入った。

 ガツン、という鈍い音と共に名雪がM1076を叩き落す。「あうっ」と郁未は短い悲鳴を上げる。
 勝利はわたしのものだよ、と名雪は確信する。
 リロードを行うはずだったM1076はその手から零れ落ち、仮に鉈を取り出そうにも薙刀の方が射程が上だ。
 郁未の攻撃は届かない。


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