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避難用作品投下スレ4

5(おねえさん)/Island Atlas:2008/08/11(月) 17:41:33 ID:GEqu3C0o0
 次だ。今の状況はどうなっているのか。
 これは確かめようがなかった。
 体はいくらか動くものの無闇にここから出るわけにもいかない(包帯が巻かれているということは、治療してくれた人間がいて、今は出払っていると考えられるからだ)。礼も言わずに出て行くのは失礼だし、そもそもここがどこか分からない以上移動のしようがない。
 時計くらいはあるかもしれない。出来るのは時間を確かめることくらいか、と思って布団を持ち上げた……と同時に、ようやく気付いた。

「え、なに、ちょ、は、裸っ!?」

 というか、パンツ一丁である。全裸一歩手前である。
 冷静だったはずの頭が急に温度上昇を始め、慌てふためく杏。

「服、服服服服! 服どこっ!?」

 治療してくれた人間は見たのだろうか、これはセクハラで訴えることができるのではないかという思いは蚊帳の外に置いておき、とにかく必死に服を探す。
 宇宙を見渡す勢いで三次元空間を凝視した後、ようやくハンガーに制服(血まみれ)がかかっているのを発見する。
 獲物を見つけた獰猛な肉食動物よろしく黄金の右腕でひったくり、服に袖を通そうとして――肝心なものが足りないことに気付いた。

「……ブラが……ない……」

 ジーザス。これはひどいと杏は神を呪った。
 実を言うと聖が治療を行ったときには銃弾やら血液やらでボロボロであったため、已む無くゴミ箱へゴールインさせたのである。
 が、そんなことを知るわけもない杏はどこへやったと鬼神の形相で探し回るものの、見つかるわけがない。
 グレイト。どうやら治療をしてくれた人間は変態なだけでなく自殺希望者だったらしい。

 大辞苑の角の部分で高らかに殴ることを刹那の見切りで決定した杏ではあったが、いかんせん物が見つからないのではどうしようもない。
 常識的に考えるならそんなことを思案するよりスカートだけでも穿いておくとか、とりあえずノーブラでもいいから服を着ておこうとかの対策を講じておくべきだったのだが、花も恥らう乙女にそれを望むのは酷というものだろう。
 そして運命はあまりにも残酷であった。
 ガチャ、という音と共に保健室の扉が開かれたのである。


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