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避難用作品投下スレ4

257もう嘘しか聞こえない:2008/11/24(月) 03:13:08 ID:u8/9AdKg0
 正確には、初音が裏切ったという場合もあった。だが柳川は信じたくなかった。
 こんな自分にさえ、おじさんと言ってくれた初音が、まさか有紀寧に同調して殺し合いに乗り、騙していたなどと……
 穴はいくつもあった。已む無く従わされているのであれば、言葉の節々にもっと棘があるはずだったし、このように自ら武器を差し出すなんてあるわけがない。だがそう考えるしかなかった。どんなに僅かな可能性でも、柳川はそれに縋りたかった。

 俺は人殺しを楽しむ悪鬼じゃない。孤独を生きてきても、人と寄り添え合える心だってまだ失ってはいない。
 俺は化け物なんかじゃないんだ、こんな俺でも、人といたいと思うことだってある。

 忘れかけていた自分に、倉田佐祐理が教えてくれたもの。馴染めないと思いながらも悪くないと感じたもの。
 希望の残滓。鬼だって人間らしく生きられるということを信じさせてくれたもの。
 椋を付け狙うのだって、それを残酷に踏み躙ったことに対しての自分なりの決着のつけ方だと考えてのことだった。
 邪魔をした少年を殺害してしまったのも、椋に執着するあまりのこと……今にして思えば、とんでもないことをしてしまったという自覚はある。

 言い訳とも取れる考え方をしている自分に気付き、いつからこんなになってしまったのかと柳川は思った。
 目的のためには多少の犠牲も已む無し。今までの自分ならそう断じて対処してきたはずだった。
 倉田ならこんな自分に何と言うだろうか。いなくなってしまった彼女を想っていることも、今までの柳川ならなかった。
 倉田、俺は……

「本物みたいだね……なら、柳川おじさんだって、簡単に殺せるよね」

 柳川の思考が、ぷつりと途絶え、空白の一部を作った。
 初音の発した一言が、受け入れることを拒否した結果だった。それほどまでに信じられない一言だったのだ。

「初音さん、分かってますよね? 柳川裕也の前では、あなたは……」
「哀れな人質、だよね。大丈夫だよ、しっかりやるから」
「ええ。そうです。首尾よく柳川さんが何人か殺して、戻ってきた時には」
「ぱらららら。だよね? ……でも、それだけじゃ足りない。千鶴お姉ちゃんを殺した奴も、梓お姉ちゃん、楓お姉ちゃんを殺した人たち、みんな撃ち殺してあげるんだから……もう誰だって信じない。有紀寧お姉ちゃん以外は、みんな敵。もう私に、家族なんていないんだから」


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