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避難用作品投下スレ4

149十一時三十六分/this is a B.R.:2008/10/13(月) 03:30:33 ID:5deI7JdI0
 
獣が向かい合っている。
白い毛並みの虎と、石造りの体躯を誇示する巨獣の像。
その体長は実に十数倍の差。
吼え猛る白き魔獣と、吹き抜ける風をこそ己が声と立つ森の王の彫像。
四肢で大地に立つ白の獣と、後脚を巨龍の胴に埋めた獣の像。
ただ一頭の白虎に対し、巨獣の像は背に少女を乗せている。
幾つもの違いを持った二頭の巨獣は、しかし相似形の影をしていた。

先を取って動いたのは白の獣である。
暴風の如く突進した白虎が、疾走の勢いのまま天高く飛び上がる。
鋼鉄の城壁すら歪ませかねない大質量の体当たりが襲うのは、獣の像の前脚である。
大木をも薙ぎ倒す衝撃に、しかし巨獣の像はこ揺るぎもしない。
罅一つ入れず受け止めてみせた、その脚が軽く振るわれる。
それだけで、白虎が宙を舞った。
数百キロを優に超える巨躯が、じゃれつく子犬を払うような仕草一つで振り落とされたのである。

追撃はない。
獣の像は後ろの脚が巨龍の背に埋まっている。
他の像と違い武具を持たぬ獣の身では自然、可撃範囲が小さくならざるを得ぬ。
それが、白虎の救いであった。
中空で体を捻り、巨躯に似合わぬ身軽さで地に降り立った白虎が苛立たしげに一声、吼える。
対して見下ろす巨獣の像、その石造りの牙の間から漏れる咆哮はない。
吐息の代わりとでもいうように、乾いた風が吹き抜けて高い音を立てた。

と、全身の毛を逆立てて吼え猛る白虎が、不意にその咆哮を止める。
一瞬の沈黙の後、身も竦むような大音声と替えて巨獣の口腔に宿ったのは、白い光である。
山頂を銀世界に変えた絶対零度の吐息、その前兆であった。
身を乗り出す巨獣の像が伸ばす爪が届くよりも、更に外側。
繊細に細工された硝子の砕けるような、鋭くも冷たい響きが高まっていく。
必殺の吐息が、正に吐き出されようとした刹那。
白虎の視界が映したのは、蒼穹を背景に飛ぶ、夜の闇。
不可解に思うよりも早く、激痛と共にその鼻面が、歪んだ。


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