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避難用作品投下スレ3

497十一時二十分(2)/散文的に、時には詩的に:2008/04/15(火) 21:35:53 ID:2LxlvcbQ0
「義を見失うのが國ならば、俺は俺の義を貫くまでだ……!」
「他人を、巻き込むなって話……だろう、がっ!」

言い放つと同時、綾香が全身の撥条を使って体を捻じる。
鬩ぎ合う力を横に流そうとする試みは成功した。
流れた白刃が綾香の左肩、その皮膚を浅く削いだが、それだけである。
体勢を崩され、無防備な脇を見せた蝉丸に向けて綾香の横蹴りが放たれる。
上体捻じった勢いを加算した重い横蹴りが、蝉丸の脇腹に食い込んだ。

「ぬぅ……っ!」

息を漏らした蝉丸だったが、しかしすぐさま流れた刃を返し、強引な切り上げに入る。
下から迫る刃に追撃を断念し、綾香が飛び退る。
再び距離が開いた。蝉丸の白刃は既に油断なく綾香へと向けられている。
刃を横に寝かせた平青眼、必殺の突きを狙う構えに再度の接近を試みようとした綾香の足が止まった。

「人形遊び、か……貴様から見ればそうなるのだろうな、来栖川」

告げた蝉丸の顔からは、一瞬だけ浮かんだ苦痛の色は消えている。
暗夜に浮かぶ月の如き静謐をもって、その瞳が真っ直ぐに綾香を見据えていた。

「あれらを、生み出したのではなく……作り出した、と貴様等は言う。
 驕慢でなく、傲然でなく、ただそれを当然と、疑念すらを抱かず貴様等は言うのだ」

凛と冷え切った声音が言葉を紡ぐ。

「何故、その聲を聞かず、その道を見定めず、無用の長物と放り棄てる。
 あれらを人でなく、傀儡と育んだは貴様等の罪業だろうに、何故それを肯んずる。
 生の意味を与えず、思考の時を与えず、命を求める声をすら与えず」

白刃は揺らがぬ。
声音は荒れぬ。
しかしそれは一片の違いなく、

「そこに―――如何な義の在るものか」

坂神蝉丸が見せた、激情の吐露であった。


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