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避難用作品投下スレ3

174ふたりのうた(後編):2008/01/12(土) 03:59:44 ID:Km9uiEBs0
「早く、逃げ……」

逃げろ、と言葉にしようとして。
瞬間、浩之は口を噤んでいた。
見えたのは柳川の隻眼、残った片方の瞳。
そこに浮かぶ、色だった。
言葉など要らなかった。
呼吸は伝わっているのだと、そう確信できた。
逃げてくれというメッセージと、庇うという意志。
炎の鳥を、どちらに向けて放つか。
柳川もまた、敵を討ち果たす方を選びはしなかったと。
それだけのことだった。

「バカ……、だな……」

手を伸ばす。
ほんの少しの距離。
ぬるりと、生温かい。
それが柳川の命の温度だった。
温もりを感じながら、目を閉じる。
この世界の最後まで、それを感じていたかった。

無数の触手が矛先を撓めていく、ぎちぎちという音が聞こえた。
恐怖はなかった。
ただ手に伝わる鼓動だけが、優しかった。
それが最後の、筈だった。

 ―――Brand New Heart
      今ここから始まる

歌が、聴こえた。


***


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