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避難用作品投下スレ2

482彼にとっての復讐の意義と、彼女にとっての懺悔の対象:2007/06/02(土) 01:27:58 ID:KiKzaUIw0
それはここに来て勝平が初めて振るった、殺意を含まない暴力だった。
自分を追い詰めた祐一はこんな情けない男じゃないということ、こんな男を殺しても復讐になどなる訳がないということ。
ここで祐一からの反撃でも飛んでくれば勝平は満足だった。罵詈雑言の類が飛んできて、いつもの彼の調子に戻ってくれたらと期待した。
しかし、いつまで経っても祐一が口を開く様子はない。
むしろそのままずるずると祐一の体は沈んでいき……ついに、祐一は廊下に横たわるようにして身動きを止めるのだった。

「……くそっ!!」

頭部を強打されたことで気を失ってしまったのだろう、結局祐一が勝平の期待に答えることはなかった。
勝平の中の苛立ちは、収められる場所を失い発散の場所を求めてきた。
横たわる祐一、勝平の手にする電動釘打ち機を叩き込めばその命を散らすことなど造作もないことだろう。
そう、あの時のように。
勢いのまま杏の命を奪った時のように。
……だがあの後の苦い思いを経験した勝平が、同じことを繰り返すことなど……できる訳、なかった。
復讐という行為に対する意義を自覚した勝平にとって、この場でできることはなくなってしまった。





来た道をとぼとぼと、勝平は歩いて戻っていた。
別に祐一に言われたからではない、しかし彼の脳裏にふと浮かぶのは観鈴の朗らかな笑顔であり。
何故か、勝平はそれが恋しく感じ仕方なかった。
思い通りにいかない事態、祐一の覇気のない態度、それら全てが勝平の心に棘を増殖させ彼の余裕をなくしていた。
観鈴は、日常の象徴だった。
繰り返される緊張感のない会話、害のない穏やかな少女の存在自体がこの状況ではイレギュラーであろう。
ふと。祐一が言っていた観鈴の価値が、そういう面なのではないかと。勝平の中で一つの答えが導き出される。
その時だった。


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