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避難用作品投下スレ2

418あしたの勇気/受け継ぐもの:2007/05/27(日) 19:08:05 ID:mtJ9QK0c0
――自分が、春原陽平という人間を好きだったという事を。
けれども、全てが手遅れだった。
何もない。大切なものをなくしてしまった。
大事にしていた宝物を、奪われてしまった気持ちだった。
「…休もう」
一時間前まで眠っていたというのに、一日中重労働していたかのように心身ともに疲弊していた。
運がいい事に目の前の倉庫には鍵がかかっていなかった(そこは夜が明ける前まで坂上智代と里村茜が使っていた倉庫で、今はもぬけの空だ)。
ぎぃ、という重苦しい音と共に薄暗い倉庫の中へと入る。誰かがいるかもしれないとも思ったが、今のるーこにはたとえ誰かがいたとしても逃げるだけの余力がなかった。
いっそのこと、ここに誰かが潜んでいて、自分を襲って殺してくれてもいい――そんな風にさえ思っていた。
ところが、倉庫の中には人の気配が感じられない。もう既に出て行ってしまったのかあるいは開けっ放しになっていただけなのか――るーことしては、もうどうでも良い事だった。
少しだけ死ぬ時間が遅くなった、その程度の事である。
とぼとぼと歩いていき、見るからにみすぼらしいソファに身を投げ出すようにして寝転がる。安物らしく、寝心地はよろしくなかった。
るーこは仰向けになり、シミのついた倉庫の天井を眺める。とても空虚で、静かな空間だった。

『そう言えば自己紹介がまだだったね。僕は春原陽平。君は?』
『るーの名前はるーこ。るーこ・きれいなそら』
『るーこちゃんか。これから先よろしくな?』
『るー』

『やめなよ』
『……うーへい?』
『こいつ…泣いてるよ。 そんなやつが殺すわけ無いよ。……少なくとも、こっちの女の子は』

『僕はこういうのには慣れ…いやいや、風邪を引かない鋼鉄の肉体なのさっ! バカは風邪を引かないってね…って、僕はバカじゃねぇよっ』
『ああもうとにかく! しばらく着てていいから! ほら行くよ! こうなったら、まず着替えから探すぞっ』
『…ありがとう』

じっとしていても、思い出すのはこれまでの事ばかり。思い出す度に、また涙が溢れる。
出来事は、だんだん現在へと近づいていく。


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