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避難用作品投下スレ2

213天空に、届け:2007/05/06(日) 05:10:03 ID:hwEAUQBA0

時は数分を遡る。

「―――仕掛けるぞ小僧、遅れるな」
「自分の心配してろ、爺さん!」

山頂に顔を覗かせた巨大な人型、砧夕霧に向けて、古河秋生と長瀬源蔵は走っていた。
踏み出した足の下で砂礫が舞う。機先を制し、畳みかける狙いだった。
それを逃せば勝機は薄いと、二人は状況を正しく理解していた。
消耗戦に持ち込むだけの余力など残されているはずもなかった。
もはや傷口から流れ出す血液すら、殆どありはしなかった。
矜持と意志、そして魂と呼ばれるものだけが、二人を突き動かしていた。
皹の入った骨、断裂した筋肉、破れた臓腑。そのすべてを無視して、駆ける。

夕霧の巨体が迫る。
山頂付近の同胞をも喰らい尽くし膨れ上がった巨躯の、膨大な質量に耐え切れず、
地面のそこかしこに亀裂が走っていた。
亀裂を飛び越して走る源蔵に、夕霧が重々しく腕を伸ばす。
長い年月を経た大木の如き重量と容積をもった腕が、さながら小さな嵐のような暴風を
巻き起こしながら源蔵を叩き潰そうとする、その動きを阻止したのは赤い閃光である。
伸ばされた夕霧の肘を、外側から撃ち抜く一撃。
夕霧の巨大な眼球が、己に痛打を与えた原因を探すべく、ぎょろりと左右を睨んだ。
一瞬だけ動きが止まる、その隙を逃すことなく源蔵が夕霧の足元へと辿り着いた。

大地に突き立てられた長大な槍の如き脚は、身じろぎ一つで半径数メートルにクレーターを穿つ。
常軌を逸したその威容にも表情を動かすことなく、源蔵が握った拳を解き放った。
まずは左、ジャブ気味に放たれた一発で距離感の補正と手応えを測る。
得られた感触は人間の皮膚。但し重量は無限大。
刹那の間を挟んで、源蔵の拳が輝いた。
食い縛られた歯の隙間から苦しげな呻き声を上げる源蔵。
限界を超えて搾り出された闘気を乗せて、電光石火の右が唸った。

衝撃。
轟音と共に、地響きが辺りを揺るがす。
踝を打ち抜かれた夕霧が、大きくバランスを崩したのだった。
確かな手応えに、続けざまの一撃を叩き込もうと踏み込む源蔵。
しかしその表情は、次の瞬間、驚愕に歪んでいた。
眼前に、怪異があった。


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