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避難用作品投下スレ2

206憎しみを呼ぶ音:2007/05/05(土) 19:19:47 ID:ZVI98tr.0
だが聞こえた言葉から推測するに、冬弥は今この瞬間、誰かを殺そうとしている。それも名前を呼んでいた事から、知人だ。
冬弥が見せたゲームに対する姿勢から、能動的に無抵抗な人間を攻撃しているとは考えにくい。だとすればすなわち、冬弥は知人が『乗って』いるのを確認してしまい、已む無く射殺しようとしているのだ!
「駄目…そんなの、私が許さないからね、藤井さん!」
出会った時に、共に行動している時に見せてくれたあの優しさは嘘偽りなんかじゃない。
優しいから、こんな事をしているんだ。
七瀬は冬弥にこれ以上の過ちを犯させないため、勢いをそのままに自転車で冬弥の方向へ突っ込んだ。
だが、しかし――そこには七瀬が予想していたような光景とはまったく逆で…
見えたのは…
「あ…あなた! 藤井さんに何してるのよっ!」
倒れている冬弥に銃口を突きつけ、すぐにでも引き金を引かんとしている女の姿があった。
「な…七瀬、さん?」
地面にうつ伏せになっている冬弥が、苦しげに声を吐き出す。よくよく見れば足元からは赤い血溜まりが形成されている。きっと、さっきの銃声の所為だろう。
あまりにも想像と違う光景に困惑しながらも、七瀬は怒りを包み隠すことなく言葉をぶちまける。
「藤井さんから離れなさいっ! 離れないと…撃つわよ」
自転車から飛び降り、大型拳銃であるデザート・イーグル(.44マグナム版)を構える。だが銃口を向けられているはずの長髪の女、篠塚弥生はまったく臆する事無く、それどころかいきなり目の前に現れ、冬弥の名前を呼んだこの第三者を鬱陶しくすら思った。
弥生にしてみればいざ止めを刺す段階になって水を指したこの七瀬留美は邪魔者以外の何者でもない。たとえ藤井冬弥の知り合いだろうが何だろうが、邪魔をすれば殺すのみ。
幸いにして冬弥の足は奪ったも同然であるしその上丸腰だ。殺すのを後回しにしたところで問題など無い。
寧ろ武器、それも銃を持っているのだ。殺して装備を奪い、生存確率を高めるのは当然。
いち早く思考を切り替えた弥生はP-90の銃口を無言で七瀬に向ける。
弥生の合理的な性格をよく知っている冬弥は、すぐさま静止にかかった。
「やめて下さい! その女の子は無関係です!」
だが当たり前のように弥生は聞く耳を持たない。ならばどうすればいいか。答えは――身体を張る、それしか無かった。
指が引き金にかかる寸前、冬弥が上半身の力だけで起き上がり弥生に組み付いた。
「七瀬さん! 逃げてくれっ! この人はもう誰にも容赦しないんだ!」
言い終わると同時に二人の体がバランスを崩しごろごろと地面を転がっていく。
思わぬ反撃に僅かながらに苛立ちの表情を見せた弥生が底冷えのするような冷徹な声で囁く。


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