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避難用作品投下スレ2

196星めぐりの歌:2007/05/05(土) 10:14:53 ID:p7rYmdAA0


「ぐっ……あああっ……」
脇腹の骨という骨を砕かれた有紀寧は、途方も無い激痛に喘ぎ苦しんでいた。
折れた骨の何本かが内臓を傷付けたらしく、喉の奥底から血が湧き上がってくる。
それでも未だ有紀寧は諦めずに、倒れた姿勢のままで床を這っていた。
(くぅ……こんな所で……死ぬ訳には…………!)
死にたくない――唯一にして恐るべきその執念だけが、有紀寧に最後の活力を与えていた。
どれだけ無様でも良い。どれだけ滑稽でも良い。
何としてでも逃げ切って、怪我を癒し、生き延びてみせる。
自分の怪我は致命傷では無い筈だから、この場さえ凌げればきっと何とかなる。
死んでしまっては全てが無意味なのだから、逃げ切った後は復讐に拘らず身を潜めよう。
階段まで、後もう少しで辿り着く。
(あそこまで……あそこまで行けばっ……!)
あそこまで辿り着ければ、敵の前から姿を眩ませれれば、きっと――

「――逃がすと思うか?」
そこで、殺意に満ちた底冷えのする声が聞こえた。
声のした方に首を向けると柳川と佐祐理が、お互いに支え合う形で立っていた。
柳川は横に視線を移し、少々困惑気味に訊ねた。
「倉田……本当にお前もやるのか?」
「はい。佐祐理も罪を背負います」
「……そうか」
迷いの全く見られぬ佐祐理の返答を前にして、柳川は頷くしかなかった。
そして二人は片方ずつ手を伸ばし、一本の武器を――留美が使用していた日本刀を握り締めた。


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