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避難用作品投下スレ

459Mother:2007/02/18(日) 06:11:38 ID:swIjNkyk
朝の激闘から、時を経る事六時間以上。
ようやく意識を取り戻した水瀬秋子は、すぐさま診療所を発つべく玄関に向かった。
そこで那須宗一とリサ=ヴィクセンに遭遇し、二人に見送られる形となった。
幾分かマシにはなっているが――秋子の顔色は優れているとは言い難い。それも当然だ、もう何度も無理をしているのだから。
秋子は、体の不調を気力だけで埋めようとしている。そんな彼女を気遣い、リサが声を掛ける。
「一応の処置は済ませたけど……あまり無茶するとまた傷口が開きかねないわ。それでも行くつもりなの?」
「愚問です。私にはもう名雪しかいませんから……こんな所でぐずぐずとしている訳には行きません」
取り付く島も無いとは、この事だろう。秋子は考え込む仕草すら見せずに、断言した。
「……OK。私はこれ以上力になれないけど、健闘を祈るわ」
「ありがとうございます。それから――宗一さん」
秋子はそう言って、視線を宗一の方へと移した。秋子と宗一は、一度完全な敵同士として戦闘している。
その事が原因か、宗一は険しい表情をしていた。
「何だ?」
「謝っても許されるとは思いませんが……本当にすみませんでした。私の軽率な行動で……こんな結果に……!」
秋子は何も守る事が出来なかった。澪も祐一も、死なせてしまい、みすみす自分だけ生き残ってしまった。
俯きながら、彼女は微かに肩を震わせた。宗一の位置からその表情を窺う事は出来なかったが、おおよそ推測は出来る。
宗一は諦めたように目を閉じ、そして言った。
「……過ぎた事を悔やんでも仕方無いさ。それより、これからどうするべきかを考えた方が良いぞ。
それに――俺はあんたみたいな美人には甘いんだ」
宗一はそう言うと、表情を緩め、微笑んで見せた。まるで、気にするなと言わんばかりに。
秋子は一瞬きょとんとした顔になったが、やがて頬に手を当て、笑顔を形作ろうと努力した。
強引に作られた表情は秋子本来のものとは程遠かったが、それでもそれは笑顔と呼べるものだった。
「重ね重ね、ありがとうございます。それでは失礼します――あなた方も、どうかご無事で」
「ああ、あんたもな」
宗一とリサに向けて、最後に一礼する。そうして秋子は、診療所を飛び出した。
今度こそ、罪の無い子供達を守る為に。己の命に代えてでも、最愛の娘を守る為に。


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