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避難用作品投下スレ

417姉と弟:2007/02/11(日) 18:56:37 ID:nlusYtBc
「来ねえのか?来ねえなら――こっちから行くぜっ!」
そう言うや否や、雄二が再びバットを振り上げて走り込んできた。
その攻撃を受け止める事は無理だろう。速度で劣る以上、ただ避けても好機は生まれない。
ならば――近接戦になど、応じない。
環は痛む左肩を酷使して、デイバックを雄二の顔面目掛けて投げつけた。
「はんっ、こんなもん効くかよ!」
雄二はバットでそれを叩き落すと、勢いを落とさずにそのまま環に向かって突進する。
環もあの程度の攻撃で、雄二が止められるとは思っていない。所詮陽動、本命の攻撃は別に考えてある。
目前に迫る雄二のバット――だが、環は、引かなかった。
「――なっ!?」
雄二が目を見開く。それも当然だろう。環は雄二の横をすり抜けるように、地面に滑り込んでいたのだから。
予想だにしなかった事態に、雄二の反応が大きく遅れる。
環は体が地に着くのを待たずに、雄二の背中を狙って包丁を投げつけた。
振り返った雄二の瞳に、鋭利な包丁の刃先が映る。バットでの防御は、もう間に合わない。

――負ける?また負けるのか、俺は?何をやっても姉貴には、勝てないのか?
「くそ……負けてたまるかよぉぉぉぉぉっ!」
雄二は絶叫しながら、左手で包丁を受け止めた。腕に激痛が走り、鮮血が噴き出す。
それでも負けるくらいなら腕を失った方がマシだ。今の自分にとって、環への敗北以上に怖い事などない。
これで相手は手詰まり。武器を失い、体力ももう限界だろう。片腕が使えなくなった自分でも、勝てるんだ!
雄二はそう考えながら環の姿を探し――そして、声を掛けられた。
「雄二」
「――え?」
環が姿勢を低くして、雄二の足元にまで迫っていた。とても怪我人とは思えない動きだった。
そして環の手に、さっき自分が弾いた筈の包丁が握られていた。
それはすぐ近くに倒れている長瀬祐介の武器だったのだが、雄二にその事は知る由も無い。
――勝負あった。
立て続けに裏をかかれ傷を負った雄二に、環の攻撃を防ぐ術は無い。
「うわ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
雄二は苦し紛れに金属バットを振り下ろしたが、あまりにも遅すぎる。
環の包丁は確実に雄二の体を切り裂き、その命を奪うだろう。


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