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避難用作品投下スレ

329名雪の戦争:2007/01/23(火) 21:33:05 ID:n2kR5K4o
自分がまだ生きていることに、名雪は不思議な感慨を持った。先程見ていた本当の悪夢で、殺されていたからかもしれない。
「――そうだ、祐一」
思って、すぐに名雪の中であの光景が蘇った。
全身に傷を受け、ぼろぼろになって死んでいった祐一。
まだ無事な名雪を見て、逃げろと言って死んでいった祐一。
そして、同時に助けを求めていたようにも見えた祐一。
今、祐一はどうしているだろう? これが夢でないとするならば――
これは続いている、まぎれもなく続いている。
そして、この瞬間にも、祐一はあの黒服のような人間に襲われ、命を落としかけているかもしれない――そう思うと、名雪の体に震えが走る。
「嫌…そんなの、絶対に嫌だよ…」
七年前のあの雪の日から、ずっと祐一の事を想い続けてきた。それはこんな狂った状況でも変わりなく。
会いたい。抱きしめたい。言葉を交わしたい。一緒にいたい――
祐一に対する欲望と失う絶望が入り混じり、さらに悪夢の影響で、名雪の精神はかなり擦り切れていた。さらにこの部屋の暗闇が、恐怖を増長する。
――それが、名雪に錯覚を起こさせた。
『わたし、わたしはどうしたいの?』
「…えっ?」
部屋のどこからか聞こえてくる、妙に懐かしい声。それが、昔の自分の声だと気付くまでに、数秒を要した。
『正直に答えて。ね、わたしが一番したいことって、なあに?』
どうしてこんな声が、と考える余裕はすでに名雪にはなかった。心のままに、名雪は答える。
「…祐一と、一緒にいて、いつまでも、一緒にいたい」
『そう、だったら、そうできるようにしようよ』
「そうできるようにって…わたし、どうすればいいの?」
『簡単だよ。わたしと、祐一以外の、みーんなを殺しちゃえばいいんだよ。そうしたら、何に怯える事もなくなって、いつまでも大好きな祐一といられるよ』
「みんなを…殺す…」
それは、今まで思いつきもしなかった魅力的な提案だった。


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