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ショートショート作品

19beebeetomxxx:2010/01/13(水) 23:34:34
「家族」



ぼくは女の赤ちゃんのオムツを替えた後
傍らで眠っている男の子の頭をそっと撫でた。
ふたりとも、とにかくほんとに可愛い。
ぼくはとっても幸せな気分に浸っていた。
このままぼくがパパになって二人を育てていくのも
悪くないような気さえしていた。
でもあの不思議なおじいさんの話だと
明日になったらぼくたちは元の姿に戻っちゃうんだそうだ。
たった一日だけなんてとても残念なことだとぼくは思った。
ぼくは女の赤ちゃんを抱き上げて言った。
「裕子ちゃん、元に戻ったら前よりはちょっとはやさしくなってね。」
そして寝ている男の子にも声をかけた。
「隆志くんも、元に戻ったらもう少しちゃんとしっかりしてね。」
でも今日現在、生後6ヶ月の赤ん坊と3歳の幼児には
ぼくの言葉が理解できる訳がなかった。
それでもぼくは残り少ない時間、幼い二人にありったけの愛情を注いだ。



「隆文、遅刻するわよ。
パパみたいなだらしない大人になったらどうするつもり。」
「ひどいじゃないか。ぼくだってお前たちのために
毎日がんばってるんだぞ。」
「それならもうちょっと偉くなって、
私がやりくりしないですむようにお給料あげてもらってよ。」
元の大人に戻ったパパ(隆志)とママ(裕子)の
相変わらずの朝の会話を聞いてぼくは正直がっかりした。
少なくとも、ぼくの注いだ愛情はちっとも二人を変えていなかった。
やはり一日だけでは無理だったのだ。
ぼくはランドセルを背負って、とにかく家を出ることにした。
そしてまたあの不思議なおじいさんに会って
今度は1カ月くらいかけて、両親を育て直したいと本気で思った。


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