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SS投稿スレッド(ノーマル版)第二投稿スレッド

25あろーんさん:2009/03/21(土) 01:05:59
 洋館を出たダタラは町への道をとぼとぼ歩いている。どうやら好きな物を
買える喜びから冷静になり、女の子の姿での買い物する事に対する物が
少しずつ出てきたようだ。
「……何でこんなヒラヒラしたカッコでオラが買い物せにゃならんのかね。
そもそもこの姿に化けるように仕向けたのはご主人様のクセに……」
今の姿には似合わない口調でグチると勢いをつけ、ぴょーんと三メートルは
ある森の木々を超えるジャンプをしてから自分の顔をパンと張る。
「うしっ、うじうじ考えてもしょーがねぇ。さっさと終わらせて好きな物を
買って帰るぞぉ」
思いっきり跳んで気分を切り替えたダタラは元気よく町へと駆け出した。
町に着いたダタラは通っている商店街の門の前に行くと何度か深呼吸をする。
「私は女、私はメイド、だからキチンとするっ……すーはー。うん、オッケー」
ボロを出さないように自分は女の子だと言い聞かせてから門をくぐると”茶屋
茶山”のおばちゃんが話しかけてきた。
「こんにちはダタラちゃん」
「茶山のおばさまこんにちは」
ダタラが姿勢を正してキチンとお辞儀をするとおばちゃんは一瞬呆気に
取られてからガハハと豪快に笑う。
「やだよーいつもみたいにおばちゃんでいいって」
「でも一応メイドで家政婦ですし……」
「いいじゃないの、アンタの所の主人が見ている訳でもないんだから〜」
おばちゃんの言葉に考える事しばし……ダタラはキリッとしていた顔を緩める。
「確かにムリしてもしょうがないですよね〜」
「そうそう人間素直がイチバンッあっはっは」
「あははー……」
流石に”人間ではないです”とも言えないので、ダタラは頭をボリボリと掻き
ながら乾いた笑いをするしかなかった。
「あ、それじゃあこのお茶貰っていいですか?」
「はいよ、しっかしアンタの所の主人って何やっている人なの?」
「えっと、本人は研究者だと言ってます」
本人がそう言っていただけでダタラは男の職業を何だかは知らない、だが男が
研究している事の過程で出会ったのは知っている。おばちゃんは腑に落ちない
ような反応をしてお茶の袋を取り出す。
「ふーん……まあ、アタシはアンタの味方だから、ヒドイ事されたら一緒に
警察とか行ってあげるわね。ハイ、八百円」
「は、はぁ……」
おばちゃんの優しさはありがたいが力強すぎて困ってしまうのでありました。
 とりあえず八百屋と魚屋を周ったダタラは最後に肉屋で鶏肉と豚肉を買うが
貰ったお金は五円も残らないのに気付く。
「野菜も魚もお肉もみーんな安いの選んだのに……おやつのコロッケ買おうと
思ったのに……」
「ダタラちゃん……」
心底残念だったようで、屈んでケースの百円のコロッケを潤んだ瞳で見ている。
これに困ったのは肉屋の店主、この不況の中で流石にタダであげる訳にも行かない。だが店の前に買わないのにずっと居られても迷惑になる……お得意様の
しかも(見かけは)女の子を強引に追い出す訳にも行かない。
「そろそろ他の客の迷惑に……」
「おじさんのコロッケおいしーのにぃ……」
次第に商店街の人々やそこを通りかかった人が何事かと集まってきた。端から
見たら肉屋の前で女の子がへたり込んでいるように見えるこの状況、観衆は
店主がとんでもない事をしでかしたのではと冷たい視線を送る。どんどん
追い詰められていく店主はついに決断した。
「今回だけだからねっ」
「へ?」
「お得意様だから今回だけコロッケ一個サービスするって言ってるの」
そう言ってヤケクソ気味に渡されたコロッケを受け取るとダタラの顔は一気に
笑顔に変わる。
「ありがとーおじさん♪」
「い、いいって……」


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