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SS投稿スレッド(ノーマル版)第一投稿スレッド

1管理人:2006/08/03(木) 13:09:31
こちらは、SS投稿用スレッド(ノーマル版)です。

TSF関連作品並びに、投稿された作品に対応する感想並びにアドバイスや、意見に関しては、自由に投稿して下さい。
ただし、暴言や、攻撃的な文言、それに対応する煽り、反発発言については、自由に投稿出来るという掲示板の雰囲気を保つためにも、皆様には、そういった発言を控えさせていただきますよう伏してお願い申し上げます。
また、そのような発言があったと確認される場合には、管理人は、警告の後、その警告を無視し、そのような投稿を続けた者に対してアクセス禁止などの厳重な対処を取ることがあります。
加えて、ストーリー展開や、文章スタイルなどに対するアドバイスや、意見については認めますが、過度の強制や、圧力を含む発言を行うことを固く禁じます。
こちらについては、個々において、嗜好や、方法が大きく分かれることであり、往々にして対立の原因や、議論の的になりやすいといえます。
このような事に関しては、アドバイスや、意見については認めますが、過度の強制や、圧力を含む発言については、和気藹々とした掲示板の雰囲気を保つためにも、皆様には、そういった発言を控えさせていただきますよう伏してお願い申し上げます。

具体的には、少年少女文庫、妖精さんの本棚の投稿練習用にご使用ください。
また、TSF関連作品ではあるものの、傾向的に少年少女文庫、妖精さんの本棚に投稿するには、難しいと思われる作品、投稿して既に反発を受けた作品の避難用、そして、試験投稿用としてもご使用ください。
加えて、少年少女文庫、妖精さんの本棚には、文章が散逸的、または、冗長すぎると著作者自身が感じられる作品の投稿用として利用してくださると幸いです。

追加として、自サイト並びに少年少女文庫、妖精さんの本棚等、TSF界関連サイトで既に発表されている作品、または、これから発表する予定の作品、過去において発表したものの著作者自身の事情により削除された作品に関して、著作者自身が転載することも認めます。
その際には、著作者自身による転載である旨の表明と、著作者名並びにその作品の元の掲載場所について付記してくださると幸いです。

最後に管理人から一言です。
皆さんには、この一言から管理人のTSF図書館に対する想いを汲み取っていただけると幸いです。

言葉は、時として凶器となります。
管理人は、言葉の持つ暴力性の部分により、著作者自身の創作意欲が殺がれることを最も恐れます。
確かに公共の場において発表するということは、その行為に対する責任も伴うことでしょう。
しかし、ここでは、そういった難しいことに関わるつもりは一切ありません。
ここは、作者さん達が自由に作品を投稿して、それに対して読者さん達が自由に感想を返してくれて、その中において皆で和気藹々としていこうという場所です。
皆様には、掲示板に投稿しやすい雰囲気を作るためにも、この点につきましては、どうかご協力下さい。
また、管理人は、些細な嗜好の違いにより、意見の対立や、排斥活動が行われることを極度に恐れます。
人によって嗜好は様々です。
皆様には、嗜好の違いは違いとして認め合い、いかなる傾向の作品でも、TSF関連作品であるという大きな視点から、皆様の広いお心で総てを受け入れてくださると幸いです。
もう一言付け加えさせていただきますと、初めから文章の書き方が上手い人や、人を引き込むようなストーリーを書ける人はいません。
どんな人でも、初めて作品を書いたり、それを皆の前で発表した時があるものです。
当然のことながら、ネット上で自分の書いた作品を発表するというのは、それだけで相当の勇気がいるものです。
皆様には、そういった作者さんたち側の気持ちを汲み取ってくださった上で、暖かい目で見守ってくださると幸いです。
最後に、TSF界全体に相互理解、共存共栄の精神が広がっていくことを願っていますと記し、管理人からの一言を締めくくらせていただきたいと思います。

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3toshi9:2006/09/15(金) 00:01:59
某掲示板に即興で書いたものの内容をもう少しだけ膨らませてみたものです。
そのうちうちでアップしますが、あちらに投下したものがどっかにいっちゃいましたんで、どうぞ。


【4年後】

 あの嵐の日から4年が過ぎた。あの悪夢の日から……。
 嵐の中、雷を避けるために早紀と二人で飛び込んだ人里離れた洋館。そこで留守番をしていたありさちゃんが出してくれたピンク色のゼリーを食べてから全ては変わってしまった。
 気がつくと僕の体は顔だけを残して、他の全てが幼い少女に、ありさちゃんの体に変わってしまっていた。そう、120cmそこそこの小さな少女の体なのに、顔だけは僕のまま。
 だが不思議なことに買い物から帰ってきたありさちゃんの両親は、僕のことをありさちゃんと信じて疑わない。
 この顔は明らかに僕の顔だというのに、彼らには僕の全てがありさちゃんに見えるらしいのだ。
 そしてあの日以来、僕はありさちゃんとしての生活を余儀なくされた。

 ありさちゃんの両親と洋館で暮らす毎日。いくら僕が「自分は市川和夫なんだ」と説明しても、彼らは娘の夢物語としか聞いてくれない。
 自分の家に電話しても、幼い子供の悪戯だと一蹴されてしまう始末だった。

 新学期が始まると、僕は小学校の女子制服を着せられ、母親の車で小学校に通うようになった。だが小学校でも事態は何ら変わることなかった。両親と同じように先生もクラスの同級生も僕の言うことに取り合おうとしない。
 僕の周りの誰もが僕のことをありさちゃんだと信じ込んでいる。
 休みの日には母親の選んだドレスを着せられ、父親が買った人形に囲まれて暮らす。
 ありさちゃんは両親に溺愛されていた。
 だが僕にとってそれは逃げ場の無い牢獄のようなものだった。

 年月だけが空しく過ぎていく。

 少しずつ成長していくありさちゃんの幼い体は、幼女から少女らしい丸みのあるラインを描き始めていた。
 こりこりした違和感とともに、胸が日に日に膨らんでいくのを感じる。
 こないだ母親が「もうすぐありさにもブラジャーを買わなきゃね」って言ってた。

 そして遂に僕は……。

「う、うわぁ〜」
「どうしたの、ありさちゃん」

 母親がトイレの外から声をかける。
 個室の中で、僕はぶるぶる震えていた。
 僕の股間からは血の雫が滴り落ちていた。

 その夜の食卓には赤飯が添えられた。

 そして4年が過ぎた。
 14歳の僕はセーラー服を着て中学校に通っている。女子中学生として。
 こんなことにならなければ今頃僕は24歳、とっくに就職しているはずなのに……。
 不思議なことに、ありさちゃんの体が成長しても、僕の顔は4年前と変わらない。
 いや、体の影響を受けているのか、あの日以来ヒゲが生えることもなくなった。それに顔つきも女っぽくなってきたような気がする。
 僕の顔も、もしかしたら本来のありさちゃんになってきているのかもしれない。
 そう言えばこの頃、女の子としての暮らしにもすっかり慣れてしまった。その一方で男だった頃の記憶は段々あやふやになっていくような気がする。
 僕はこのままありさちゃんになってしまうんだろうか。
 時折そんな恐怖が頭をよぎる。
 でもそんな恐れは無駄なことなのかもしれない。
 だって誰も僕のことを僕と見てはくれないんだから。

 早紀はどうしているんだろう。あれから全く連絡が取れない。

(終わり)


後書き
 この作品は、ボディスナッチャー(ピンク)の後日談として書いてみた作品です。目にした方がいるかもしれませんが、実はある掲示板でボディスナッチャー(ピンク)の和夫は成長したらどうなるんだろうって議論されているのを偶然目にしまして、つい即興で和夫のその後を描いたショートストーリーをその掲示板に投下してしまいました。で、この作品はそれを元にもう少しだけ内容を膨らませてみたものです。
 それにしても、4年前に書いた作品を今でも話題にしてもらえる、作者にとってこんな嬉しいことはありません。あそこであの書き込みをしていただいた皆さん、もしご覧になってたら御礼申し上げます。
 そしてこの作品を感謝の気持ちに代えて。

4名無しさん:2006/10/11(水) 21:49:44
夕焼けが綺麗な公園のベンチ。あたしは涙をこらえながらそこに座っていた。
さっき彼にされたことを思い出すとまた涙があふれてくる、そんな時だった。
「お姉ちゃん、どうしたの?」小さな女の子が話し掛けてくる。
「あなたは?」と訊くと少女は答える。
「セールスレディです! 何か悩み事はありませんか?」といって名刺を渡してくる。
あたしはそれを受け取って、今まであったことを話すことにした。

「……そうだったんですか、それは大変でしたね」少女は話を続ける。
「彼って女の子のことを何にも分かっちゃいないんだから」あたしは応じる。
「でも、やっぱり彼と良く話し合った方がいいんじゃないでしょうか?」
「そうね、とはいってもまた同じようなことをされると思うととても……」
話していて、あたしはまた涙があふれて泣きそうになる。
「わかりました! 要は彼が二度とそんなことしないようになればいいんでしょ?」
「確かにそうなんだけど……そんなことできるの?」
「まかせてください! これでもあたし優秀なセールスレディなんですよ」
少女は言った。そして続けて
「明日になれば分かります。明日になったら彼のところに行ってみてください」
そういって少女は立ち去った。先ほどの悲しさがいつの間にか無くなっている。
少女の言葉に癒されたあたしは、とりあえず家に帰ることにした。

翌日。あたしはいつものように学校へ行った。
しかしなぜか彼は来ない。今まで学校を休んだことなどない彼がなぜ?
その日はそればかり考えていて授業は上の空だった。

下校時間になり家に帰る。それからあたしは彼の家へ行くことにした。
迷いが無いと言ったら嘘になる。でも昨日の少女の言葉がなぜか耳に引っかかっていた。
彼の家へ行き彼の部屋に入る。しかし、そこには彼ではなくて一人の女の子が。
悔しいことにあたしより美人だった。しかも守ってあげたくなるほどの可愛い子だ。
「誰? 誰なの?」あたしは訊ねる。その答えは意外なものだった。
「僕だよ、祐二だよ。といっても信じてもらえないだろうけど」
彼の声ではない。明らかに女の子の声だった。でもなぜかその子に彼の面影が……
「祐二なのね、あなた。でもなぜ女の子の格好なんかしてるの? まさか」
そういって、あたしは彼の胸を触った。その感触はまさしく本物の女のものだった。
「実は昨日の夜……」彼は話を始めた。

それによると、夢の中に女の子が出てきて話をしたとのこと。
背格好について訊くとまさしく昨日会ったあの子ではないか。
「あなたって、女の子のことを何も分かっちゃいないのね」
「ほっといてくれよ、僕は男なんだ。分かれと言う方が無理だよ」
「じゃあ、なぜ君は彼女にそんなことをしたの?」
「そ……それは……男の生理というものなんだ。仕方ないんだよ」
「そうなの、それじゃあたしが女の子のことを分かるようにしてあげる。
 あとは彼女に教えてもらいなさい。えいっ!」
その後のことは覚えていないとのこと。
ただ、朝起きてみたら女の子になっていたことだけは事実であった。

その話を聞いていて、あたしは今何をするべきであるかはっきりと理解した。
「そう、それじゃ今から女の子のことをやさしく教えてあ・げ・る」
そういって、あたしは彼、いや彼女にキスをした。

5菓子。:2006/12/11(月) 19:33:42
というわけで、例のものをw


『彩』


かばんに手を入れる。
ボールが停まっている。どちらにも転がらずに、迷っている。


電車が来るから下がるように。告げるアナウンス。
光に乗ってやってくる電車。僕は一歩、下がる。電車が風を連れてくる。僕はスカートを押さえる。
車両は完全に停止。ぷしゅーと音を立てて、扉が開く。降りてくる乗客は、満ち潮のようだ。やがて。引き始めた潮に僕は乗った。

暖かい空気が包みこむ。いつもの所を通り過ぎて、ボックス席。向かい合う4人用。
ロングヘアーの黒。紺色の長袖セーター。額に上げたアイマスクは目の落書き。たてはは、頬杖をついて、眠そうに僕を見上げて。
「おふぁよう。たま。今日は何の相談かな」
たてはは頭の上で手を重ねて、ぐぐっと背中を伸ばす。
「どうして、わかったの」
たてはの向かいに座る。いつものことながらどうして、たてはは僕の行動がわかるのだろう。
「たまが、あたしんとこに来るときは、何か悩んでるときだからね。わふぁひやふいのよ。たまは」
たてはは、ふああと1あくび。電車が動き始めた。

たてはは、いつも通りに眠そうだ。
「実は」
ボールは停まっている。
「僕の友だちが告白されたらしくて相談されたものの。知っての通り僕にもそんな経験はないから。たてははこの手の話に強いから、相談しようと思って」
どうしたらいいかわからずに、停まっている。
「朝から饒舌ねぇ」
たてははまた、1あくび。
「僕はどうしたらいいと思う」
電車は揺れる。まったく、ぼろい路線だ。

停車のアナウンスが流れる。
「それで」
たてはは、口を隠さず、大きなあくび。
「肝心のたまはどう思うの」
かばんの中のボールを握る。鈍いボール。昨日の放課後を思い返す。
「わからない。すごく悩んでいる」
発車のアナウンスが流れる。景色が動き始める。
「あっそ」
たてはは目を閉じる。電車は揺れる。

かばんの中のボールを握る。
「たてはは」
どれだけ強く握っても。
「何も言ってくれないの」
ボールは答えを返してくれない。たてはは、アイマスクを目元に下ろす。
「だってさ」
たてはは、頭の後ろに手をやる。おやすみもーどまで、後1分。
「もう、答えでてるみたいだし」
言ってることがよくわからなかった。
「悩んでいるから相談してるのに」
どうしたらいいかわからない。不安だ。怖くてたまらない。だから。
「悩むってことは、変わるか、変わらないかを考えることでしょう」
答えが欲しい。
「何かを捨てて、新しいものを手に入れるか。何も捨てないで現状維持か」
捨てるなんてできるわけもない。答えは決まっている。
「でもさぁ。そんなときのあたしの答えは」
電車は大きく揺れる。

ボールは、少し跳ねる。
「いつも動くなんだよねぇ。みいろたては16歳。恋は経験則。積み重ねてこそ、なんぼでしょう」
たてはは、何故か僕を指さす。
いつもながら、その答えを即座に選べる。しっかりとした自分を持っているたてはは、うらやましいと思う。
「それにしても、しっかしさぁ」
たてはは僕を観る。
「何」
じろじろ見られるのは、あまり気持ちよくない。舐め回すような視線は、何か彩雲みたいだ。
「たまが恋愛ごとで悩むなんてねぇ。時間の無駄だとかほざいてたころが懐かしいわぁ」
確かに。あのころの僕なら、気にもしなかったこと。
「とても。すごく大切な人だから」
自分でも意外な答えだった。
答え終わる前にいびきが聞こえてきた。ちょうど1分。


よだれといびきを垂れ流すたては。綺麗な美人も台なしだ。
どこまでも我を押し通すたてはについた名前が、赤い稲妻。何かわかる気がする。
だいたい。
どうしてこんなに僕が悩まないといけないんだ。


口癖は。
我に追いつく敵機なし。
実際、彩雲は早かった。もちろん、足も速かったけど行動への取りかかりも。何よりも怪しかった。
身体が変わって混乱していた僕に放課後。真っ先に近寄ってきた彩雲が最初に言った言葉は。

野球しないか。

ばかだと思った。思わず彼に中島の称号を与えたくなった。
心を緩ませたのが、まずかった。つい噴きだしてしまった。
彼はほんの少し、止まって。

きれいだ。

と呟いた。一瞬、彼が何を言ったのかわからなくて。それから、何をしたらいいかわからなくて。
言う通りにしていたらいつのまにか、ボールを投げていた。
いろいろ考えているのがばからしくなった。不安なんてものは、散らばってしまっていた。
いびきが響く。電車は揺れる。

6菓子。:2006/12/11(月) 19:35:11
実はほとんど、昨日と変わってませんw

彩雲曰く。名前の由来は、最速の飛行機。生まれたとき、あやしい雲があった。とのこと。
怪しい雲って何だろう。というのが正直な感想。
彩雲は彩しい雲と書く。本当はとてもきれいな名前だ。
たてはの身体が動く。

停車のアナウンスが流れる。
「ふぁああ。もう行かなきゃならんのか。眠いのにのぅ」
たてはは、大あくび。ついで、背中伸ばし。
「たま。思った通りに動いたらいいよ」
たてははアイマスクを上げる。
答えは、動かない。最初から決まっていたことだ。何も悲しいことはない。
「答えはたまの中にあるんだし」
たてはは、僕の胸を指さす。僕の中にある。とは、どういうことだろう。
「んじゃね。たま」
電車は駅に入る。

外の風景がゆっくりになる。
たてはは、窓を上げる。直接響くブレーキ。たてはは、片足を窓の枠に乗せて、次にもう片足。窓のすきまに身体を通し、ホームに着地。
いつもながらきれいだ。10点。
「たま。荷物とって」
たてはは、催促する。何がすごいかって、お客さんたちが平然と拍手をしていること。もちろん、僕も。慣れって恐ろしいと思う。
「恥ずかしくないの」
窓から、たてはの荷物を渡す。
「別に。パンツの1枚や2枚見られようが、恥ずかしいもんじゃないでしょう」
たてはは、堂々と断言する。流石にちょっと、恥ずかしいと思うんだけど。
でも。
僕はたてはがうらやましい。思った通りに動けたら。
「まぁ。そんなに深う考えなさんな」
窓越しに話しかけるたては。ベルが発車を告げる。
「どうせ、勝手に決まるもんだし」
車掌が笛を吹く。扉が閉まる。
「窓を閉めていいかな」
窓に手をかける。
「どうぞ。どうぞ」
窓を閉める。とても暖かい。外の音は聞こえない。たてはは、ガラスの向こうにいる。
「ありがとう」
僕は呟いた。


僕はボールを手に取る。
暗くなる。トンネルに入ったみたいだ。電車の窓に僕が映る。

手に残る重い感触。
「ごめん。聞き取れなかったんだけど」
ボールは動かない。
「何度でも言う。俺はたまを彼女にしたい」
聞き間違いじゃない。
「僕は」
何を言えばいいのかわからなかった。まったく、予想していなかった。
僕は固まっていた。
「もちろん、いきなりこんなこと言われて、たまが混乱するのもわかる」
逆光で彩雲の顔がわからない。
「だけど、この思いを隠しながら、たまといっしょにいるのは、卑怯だと思ったから」
彩雲は話す。
「だから、言った」
彩雲は振り返って走る。背中が遠ざかっていく。


電車は揺れる。
電車の窓に僕が映る。

校内では誰もが認めるばか。けど、野球では期待の俊足。
彩雲はいつも、ばかみたいに単純に。
笑って。
騒いで。
怒って。
喜んで。
いつのまにか気がついたら、僕もいっしょに。僕は、彩雲が好きだ。だけどあくまで。
友だちとして。


思った通りに動いたらいいんだよ。
どうせ、いつかは決まることなんだから。

たてはの言葉が流れる。ボールは軽くなる。


断ろう。僕はまだ。
捨てたくない。
失いたくない。
だから、断ろう。
きっと、彩雲もわかってくれる。
答えが決まる。窓に田んぼの風景が広がる。電車はトンネルを抜ける。


そうだ。だいたい。
彩雲がいきなり、柄にもないことをするから悪いんだ。
どうして僕が、あんなやつのために悩まないといけないんだ。
だいたい、あいつは偵察専用だろう。ふだん、かき回されてるだけでも迷惑なのに。
あげくの果てに、爆弾投下なんて、ふざけるな。
勝手なのはあいつだ。
そうだ。あんなやつに気を使うなんて、ばからしい。
悩んで損した。


冷たい空気が流れてきた。
いつのまにか、駅に着いていた。みんな降りてしまったみたいだ。席の周りには誰もいない。
ボールをかばんに戻して。僕は周りを見渡す。
窓の目の前は、階段の裏。もしかして、今だったら。
僕は、窓を開けて。
やっぱり下ろした。

7菓子。:2006/12/11(月) 19:36:19
ふぅ。これで最後ですw ご感想ありがとうございました。

扉から出て、電車を降りる。
階段を上って歩いて、改札が見える。階段を下りる。


改札を抜ける。
いつも通りに、売店に入ると。
「M・Y・R・T」
何か暗号が聞こえてきた。本人曰く。これ1つで1日のあいさつができるから便利。とのこと。
ぜったい怪しい。無視しよう。
「M・Y・R・T」
暗号は繰り返される。無視だ。無視。関係者だと思われたくない。
「昨日は悪かった。たま」
僕は足を止める。


レジの前に彩雲は立っていた。
「そんなとこにいたら、買う人の迷惑だよ。彩雲」
僕は当然の義務を行う。
「俺は勝手だった。あんなこと言われて、たまがいやな思いをすることはわかっていたのに。
 それなのに自分の欲望を抑えられなかった。俺は自分勝手なやつだ」
彩雲は僕の言うことも聞かずに。
「だから、謝りに来た」
頭を下げる。
「俺のことは忘れてくれ」
彩雲はまた、僕に背を向ける。


ふざけるな。


「はうっ」
僕は彩雲を蹴っていた。
「僕の心をあれだけかき回しておいて、それなのに忘れろだと。自分勝手なやつだ」
僕はかばんに手を入れる。
「僕は昨日、とてもうれしかったんだ。なのに、勝手に返事も聞かずに帰って。今日も逃げる気か」
僕は彩雲にボールを投げつける。
「ふざけるな。僕は彩雲が好きだ。何遍だって言ってやる。僕は彩雲が好きだ」
彩雲はこちらを振り返る。
うれしそうに、喜んでいた。とても怪しかった。


頭の血が下がっていく。
周りが見えてくる。顔が熱くなるのがわかった。
もう、何もわからなくなって。
僕は走り始めた。

ああ。もう。まったく。
何てことを言わせるんだ。だからあいつは苦手なんだ。
ああ。明日は電車乗れないじゃないか。
「たま」
彩雲が僕を呼ぶ。

「俺もたまのことが好きだ。とてもかわいい。彼女にしたい」
ばかか。あいつは。何てことを大声で。
僕は加速する。もう、彩雲なんて知るものか。
「たま。見てくれ」
ばか。ここが駅だってことわかってるのか。同じ制服だってたくさんいるんだぞ。僕は後ろをちらりと見る。
彩雲はボールを高く突き上げて。
「俺はこのボールを宝にする」
何あいつはこっ恥ずかしいせりふを真顔で。
まずい。さっきより、差が縮まっている。やっぱり、野球部最速の名は伊達じゃない。
でも。
追いつかれたくないのに。
彩雲に近づいているのに。
どこかうれしい自分がいた。

息が苦しくて、上を向く。
雲が飛んでいた。とても彩しかった。

8名無しさん:2009/12/24(木) 15:30:49
そして星になった・・・
伝説は伝説となった


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