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正義の女戦士クリスタルローズ 6
3
:
舞方雅人
◆8Yv6k4sIFg
:2007/05/11(金) 21:13:58
「んあ・・・こ・・・ここは?」
目覚めたしのぶが周囲を確認する。
「そうだ・・・私・・・先生の部屋に・・・来ていたんだっけ・・・」
私は寝室の入り口から中を覗いていた。
「お目覚めのようね」
「あ、先生・・・」
そういえば私はいまだに君嶋麻里子の姿をしていたわね。
「あ・・・あの・・・その・・・ごめんなさい」
「?」
私は首をかしげた。
「無・・・無理やり・・・その・・・先生を」
「ああ、そのこと。気にしていないわ。私も楽しんだし」
しのぶは真っ赤になってうなだれている。私がかけてやったバスローブを羽織って。
「で、でも・・・私・・・おかしくて・・・その・・・女なのに・・・その・・・」
「しのぶちゃん・・・」
私は笑みを浮かべた。しのぶは周りの状況のおかしさにさえ気が付いていない。
「でも・・・私は・・・その・・・本気で・・・先生が・・・その・・・好・・・」
「ブラックローズ様っ! ブラックローズ様も一緒に食事しませんか? ワームの肉団子はおいしそうですよ」
部屋に響くムカデナの声。
すぐに寝室にムカデナが入ってくる。
全身にムカデを巻きつかせたその姿は、しのぶには頭から冷水を浴びせたような衝撃だったろう。
「魔、魔獣!」
しのぶがベッドから飛び降りて身構える。さすがに素早い。
「魔獣ですって? 失礼ね、私は妖女虫よ、間違えないでって・・・しのぶじゃない」
ムカデナが腰に手を当ててしのぶをにらみつけた。
「えっ?」
突然自分の名前を呼ばれて面食らったのだろう。しのぶの表情が変わる。
「まさ・・・か・・・」
「ふふん・・・そうか・・・あんたまだクリスタルの戦士とやらだったわね。ブラックローズ様に連れてきていただいたのならおとなしくしていなさい。さもないと、殺すわよ」
ムカデナの顔に笑みが浮かぶ。相手をかつての仲間だと知った上での邪悪な笑みだ。
「姫菜・・・栗原姫菜だろ? 何でそんな格好なんだ?」
「そんな名前で呼ぶのはやめてよね。私は妖女虫ムカデナよ。地底帝国の戦士なんだから以前の私と一緒にしないでよね」
しのぶはあっけに取られている。無理も無い。
つい先日まで一緒に戦った仲間だったのだから。
「ど、どういうことだよ、それ! いったいどうなっちゃったんだよ」
「まだわからないんだね。私はもうとっくに地底帝国の一員だってこと。ブラックローズ様に身も心も生まれ変わらせていただいたのよ」
物分かりの悪い子供を諭すようにムカデナはそう言う。
「ブラックローズ? いったいそいつは何者なんだ?」
しのぶは姫菜の変わりように愕然としながらも、何とか元に戻す方法を考えているようだ。
もっともそんなことをムカデナが望むはずは無いが。
「あきれた。目の前にいらっしゃるじゃない。かつてのクリスタルローズ・・・現在は私たち地底帝国の偉大な女戦士ブラックローズ様が・・・・」
ムカデナが我が事のように誇らしげに私のことを紹介してくれる。
困ったもの・・・どちらにせよこれでしのぶに逃げ道は無くなった。
「え?・・・・・・」
しのぶが固まった。
「先生が・・・麻里子先生が?」
「そうだよ。人間の時の姿は君嶋麻里子先生。でも本当の姿はブラックローズ様なんだよ」
しのぶに追い討ちをかけるムカデナ。
「うそだよ・・・」
「?」
しのぶはうつむいて肩を震わせる。
「うそだ・・・先生がそんなはず無いよ」
しのぶはきっとムカデナをにらみつけた。視線で人が殺せるならばムカデナは確実に死んでいる。
「ふう・・・正義なんかに心を売り渡した地上人に何を言っても無駄か。ブラックローズ様、こいつ・・・殺していいですか?」
ムカデナは口元に笑みを浮かべてしのぶと向かい合った。
「お待ちなさいムカデナ。春川しのぶ、私の本当の姿を見せてあげるわ」
私はすいっと前へ出ると、魔力を開放して本来の姿に戻る。
黒光りする外骨格と赤いブーツ状の脚や、ロンググローブ状の手が私を私たらしめていき、気分がとてもよい。
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