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【初めての】練習場【バトロワ】

47英雄の決断 6/10:2007/08/30(木) 14:41:35
「悩むな」
 伽耶が、ヒーローの肩に手を置いて言った。
「悩んで答えが出るなら悩むのもいい。だがそうでないなら、悩むだけ無駄だ。百害あって一利もない」
「でも」
 顔を上げて反論しようとしたヒーローの顔の前に、伽耶は人差し指を立てた右手を突き立てて制止する。
「我々に出来るのは、道を決めて進むことだけだ。道の先になにがあるのかまで気に病んでも仕方ないだろう」
 互いの目を見詰め合う。数秒の沈黙。先に耐え切れなくなって目を伏せたのはヒーローだった。後ろ手に椅子を
掴むと、力をなくしたように腰を落とした。
「…確かに、そうだね。そのとおりだ」
「そうだとも。何もかも背負い込む必要などない」
「…それは分かってるんだけど、僕には割り切れないよ、君みたいには」
 うずくまるように両手で顔を隠すヒーロー。伽耶が話に聞いていた"伝説の英雄"とは似ても似つかない姿だった。
先ほどまでの自信に満ち溢れた姿に比べ、ずっと小さく見える。神をも越える超大な力を持ち、過酷な運命を乗り
越えた存在であっても、中身はどこにでもいるただの少年なのだ。
「…君は、強いんだね」
「いや、弱いのさ」
 ヒーローの言葉に、伽耶は自嘲気味に答えた。本心だった。ヒーローのように、あらゆるすべての責任を背負い
続けて生きることなどできそうになかった。すべてを捨てて反逆者となると決めたのも、重圧に耐え続けて生きる
ことに疲れ、逃げ出したかったからかもしれない、と今は思える。自分が無意識に諦めたその道を、目の前にいる
少年はしっかりと歩き続けている。そのことは、伽耶の心のどこかに、大きな衝撃を与えた。
 だが、自分がヒーローに完全に劣るとは思わない。そう思うのは四十代目葛葉ライドウの沽券に関わる。だから
伽耶はニヤリと笑って付け足した。
「だが、弱いほうが生き延びることもある」
「…覚えておくよ」
 ヒーローが弱弱しく笑う。しかし目には失われることなく強い光があった。
「…少し、休む。なんだかどっと疲れた」
「ああ。見張りは任せておけ」
「GUMP、置いていこうか?」
 提案に、伽耶は首を横に振った。ホウオウの入った手製の封魔管を軽く振って不敵に笑う。
「君が味方でよかった。本当にそう思うよ」
 ヒーローはぽつりと言葉をかけて、返事を待たずに階段を上がっていく。
「…お互い様だ」
 ヒーローの背中が見えなくなったことを確認してから、伽耶は小声でつぶやいた。

48英雄の決断 7/10:2007/08/30(木) 14:42:18
 ベッドに腰掛けた姿勢のままヒーローは仮眠を取った。寝そべったら、そのまま何時間も寝続けてしまいそうな
気がした。これほどに疲れたことはなかった。高校の部活動でも、金剛神界でも、カテドラルでの激戦でも、これ
以上はないと思えるほどの疲労を覚えたものだったが、そのいずれも今回に比べればオママゴトみたいなものだ。
(また将来、もっとすごいことに巻き込まれて、そのときも同じようなことを思うのかもな)
 ふと皮肉な考えが思いついた。面白いが、笑えなかった。冗談じゃない。殺し合いとか、戦争とか、そんなのは
もうウンザリだった。ほんの少し前までは普通の高校生だったのに、いつの間にかどんなイカれた世界にも簡単に
順応できるようになっている、そのこと自体がたまらなくイヤだった。
(だが、イヤでもやらざるを得ない)
 と頭の中で自分が自分にツッコミを入れる。ああ、くそ、確かにそうだ。それは分かっている。死ぬのはもっと
イヤだった。ならば、戦うしかないのだ。
(なら余計なこと考えてないで、しっかり頭と身体を休めたらどうだ?)
 確かにそれも道理だ。しかし考えを止めることはできなかった。考えてしまう性分なのだ。それに…考えるのを
止めるわけにはいかないような気もした。考えるのを止めるのは、自分が壊してきたものを信じていた人たちへの
裏切りのような気がする。法に準じた友も、混沌に興じた友も、この手で殺めてきたのだ。いまさら思考停止する
なんて、彼らへの裏切り以外の何者でもないではないか。
(彼らもなぜか生き返ってこのゲームとやらに参加してるけどな)
 また頭の中で皮肉な声が響いた。これまた笑えない話だ。悪魔を殺すのだってあまり平気ではないというのに、
人を殺さなければならないのは、とてもつらい。しかも相手がかつては背中を任せ合った仲間だった元・友人――
それも2人も同時にとくれば、なおさらだ。
 彼らの顔を思い浮かべ、ふと、とある違和感に気付いた。
(『彼』が、Chaosの手駒を蘇らせたのは、まだ理解できる。…なぜ、Lawの使徒まで復活させたんだ?)
 あの最初の教室で、そして今日の日の出のとき、頭に直接響くように語り掛けてきた、魅惑的な低音の声。姿は
見えなかったが、ヒーローにははっきりと一人の男の姿が思い出せた。中性的な顔立ち、透き通るような白い肌、
ブロンドのロングオールバック、趣味のよいブラックのスーツ。声の主は『彼』で間違いないだろう。だがしかし、
『彼』にとってすれば、メシアに転生したロウ・ヒーローなど、不倶戴天の敵ではないのか。
(いったい、なにが目的なんだ?)
 ぱっと思いつくところでは、ロウ・ヒーローをChaosの手駒に引き込もうとしていた可能性がある。が、それは
どう考えてもできるはずもないことだった。百歩譲ってできたとしても、それが有効な手だとはとても思えない。
ロウ・ヒーローが使えなくなったら、Lawの神たちは容赦なく彼を切り捨てるだろうから。それはかつて至上なる
存在でありながら切り捨てられた『彼』本人が一番知っていることだろう。
 とするならば、あとは現時点で考えられる理由はひとつしかない。法に逆らい混沌を求める『彼』らしい理由。
『彼』は、『彼』の管理するこの閉鎖空間にすら混沌を求めたのだろう。真の混沌には、敵が、味方が、強者が、
弱者が、善が、悪が、光が、闇が、法が、混沌が――あらゆる存在がいなくてはならないと考えたのではないか。
(…平たく言えば、ゲームを盛り上げたかった、ってことだよな…相変わらず細かいところで勤勉だなァ)
 ヒーローは軽く苦笑する。今回の皮肉は、ほんの少しだけ笑えた。が、それより燃え上がる怒りのほうが大きい。
一方的な思惑で他人の命を取捨選択し操作する傲慢に、許しがたい怒りを覚えた。同じようなことをしておいて、
法の神を批判する資格などがあるとは思えない。法も、混沌も、相変わらずどっちもどっちだ。
 ――君がどちらに傾くか… 期待しているよ、ザ・ヒーロー…
 あのとき、最後にかすかに聞こえた声を、ヒーローははっきりと思い出した。あの、見惚れるような品のよさと
背筋も凍る邪悪さが同居した微笑みが否応なく目に浮かぶ、忘れられない魔力を持ったささやき声。
「…期待に沿えるかどうか、お約束はできかねるよ、魔王サマ…」
 目を閉じてうつむいたままつぶやく。そのまま、ヒーローの思考は散漫になり、眠りの底へ散らばっていった。

49英雄の決断 8/10:2007/08/30(木) 14:43:01
 ピピッ… ピピッ… ピピッ…

 どこからか聞こえる電子音が、ヒーローを眠りの闇から引きずり出した。ほんの数秒だけ眼を閉じたような記憶
しかなかったが、時計を見るともう11時を過ぎている。1時間ほど寝たということか。
 毛布で汗を拭った。それほど暑くはないのに、ずいぶんびっしょり寝汗をかいている。覚えていないが、なにか
イヤな夢でも見たのかもしれない。ありえなくはなかった。小細工が好きな魔王サマのことだ、安眠を妨げる夢魔
たちを街中にばら撒いていたっておかしくはない。
「やれやれ、閣下ともあろうお方が、ずいぶんセコい真似をなさるもんだね」
 つぶやいた。今度の皮肉は、かなり笑える。仮定の話から決め付けての人格攻撃は少し卑怯かな、と思ったが、
別に気にしないことにした。罪もない人々を、いや、罪があろうがなかろうが、こんな風にかき集めて閉じ込めて
殺し合いを強制すること以上に卑怯なことなどありはしない。誹謗中傷のひとつやふたつぐらいで文句を言われる
筋合いなどないだろう。ヒーローは笑いを押し殺しながら、外しておいた武器を装着した。
 身支度を整えて、仮眠室を出て階段を下りた。ドアの開く音を聞きつけて顔を上げた伽耶に、ヒーローは挨拶の
代わりに片手を挙げた。
「眠れたか?」
 椅子に腰掛けた伽耶が、手元に視線を戻しながら言った。カッターナイフで鉛筆の表面を削る作業をしている。
精巧な文様が刻まれた鉛筆が、机の上に何本か転がっていた。この1時間、ずっとこの作業をしていたのだろう。
「それなりにね。けっこう休めたよ、ま、さすが万全とはいえないけど」
「夜まで寝ててもらったって構わないぞ、私は」
「はは、そうは行かないよ… ところで、それ、なに?」
 鉛筆を指差して尋ねたヒーローを、伽耶は意味ありげな微笑を浮かべて無視した。
「それより、何か鳴ってるぞ。GUMPじゃないのか?」
「え? あぁ、そうか、そういやなんか鳴ってた」
「…おいおい、寝惚けてるのか? しっかりしてくれ」
 伽耶が呆れたように言う。ヒーローは苦笑してGUMPを開いた。こんな大きな音を聞き逃すなんて、寝惚けている
と思われても仕方ない。
「…HYAKUTAROH?」
 画面に点滅している文字を読んだ。ひゃくたろう、だろうか。そういえば、インストールソフトの中にそういう
名前のものがあったことを思い出す。確か、機能は…
「…伽耶」
「分かってる、かなり近いな」
 伽耶はいつの間にかデスクの上の荷物を片付け、鉄パイプとスタンガンを手に視線を窓の外へ向けている。数秒
遅れて、ヒーローも窓の外に蠢く害意を感じ取る。荷物を背負い、鉄パイプを構え、GUMPのグリップを握った。

50英雄の決断 9/10:2007/08/30(木) 14:43:35
 窓の外に人影が見えた。濁った臭気と殺気を漂わせつつ、散漫な動きで周囲を探っている様子が伺える。ゾンビ
に代表される、屍鬼の類の悪魔だろう。ヒーローは軽く舌打ちした。知能が低く邪悪なため仲魔にしづらいうえ、
戦力としても合体材料としてもあまり魅力的な種族ではない。
「面倒だな、どうする?」
 ヒーローは伽耶に話しかける。やりすごすか、倒すか。どちらにせよ大した敵ではない、と思っていた。しかし
伽耶は真剣な表情を少しも緩めず、窓の外を凝視したまま動かない。
「どうもこうもない、隙を見て逃げるぞ」
「…え?」
「分からないのか、あれはゾンビなんて甘いものじゃない」
 言われて初めて、ヒーローは自分の考え違いに気付く。周囲に悪魔の気配がないことはさきほど何度も確かめた。
ゾンビの習性から考えて、縄張りから離れて単独でふらふら歩いてくることは考えにくい。とするならば。
「…くそッ、またネクロマの術か」
 ヒーローは毒づいた。屍体をゾンビとして操る呪術、ネクロマ。それにより蘇った屍体と、既に一度やりあって
いる。あのときは逃げることしかできなかった。今も、戦力的にはあのときと大差はない。
(…どうする…?)
 考えた。圧倒的に不利であったとしても、やり方ひとつで逆転できるということは、ヒーローが今まで経験して
きた戦闘から明らかなのだ。現にこの街に来てからも、諦めずに考え抜くことで、何度も危機を免れてきたのだ。
 考えた。手持ちの武器。仲魔のメンツ。自分たちの体調。部屋の構造。部屋の中にある物。この状況を打破する
ために、どうするのが最善か。疲れの抜け切らぬ寝起きの頭を、強引にフル回転させて、考えた。
 考えをまとめる時間は、なかった。窓の外の人影がこちらを向いた。部屋の中にいる新鮮な肉に気が付いたのだ。
力の加減ができなくなったような激しい動きで、手に持った何かを振り上げ、投げつける。窓が割れた。がちゃん、
と機械特有の音を立て、四角い物体が床で跳ねた。
(…電動ドリル?)
 窓を破り侵入してきた物体を、ヒーローはつい反射的に眼で追ってしまう。
「余所見するな、来るぞッ!」
 伽耶が叫ぶ。慌ててヒーローは正面を向いて、GUMPをホルスターから引き抜いた。

51英雄の決断 10/10:2007/08/30(木) 14:44:11
【時間:午前11時半】


【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:全身に軽症(ほぼ回復) 疲労(仮眠により大分回復)
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み) 虫のようなもの
道具:マグネタイト7700(ハーピー召喚で消費) 舞耶のノートパソコン 予備バッテリー×3 双眼鏡
仲魔:魔獣ケルベロスを始め7匹(ピクシーを召喚中)
現在地:青葉区オフィス街
行動方針:伽耶の術を利用し脱出 現状打破

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格、疲労(仮眠により大分回復)
武器:スタンガン 包丁 手製の簡易封魔用管(但しまともに封魔するのは不可能、量産も無理)
道具:マグネタイト4500 イン・ラケチ  文様を刻んだ鉛筆×5 カッターナイフ
仲魔:霊鳥ホウオウ
現在地:同上
行動方針:ザ・ヒーローと共に脱出 現状打破

【反谷孝志(ハンニャ)@ペルソナ2】
状態:ネクロマ状態、記憶が曖昧、シドの服を着ている
武器:電動ドリル(壊れている)
道具:盗聴器(存在には気付いていない)
現在地:同上
行動方針:とにかく殺す


【ピクシー(ザ・ヒーローの仲魔)】
状態 魔法使用により少し疲労
現在地 平坂区カメヤ横丁近辺
行動指針 ヒーローの命令遂行(周防達也を探して天野舞耶たちの元へ連れてくる)

52 ◆Woz8bGGVKg:2015/11/10(火) 23:51:16
test

53 ◆WWE.FIHli.:2015/11/10(火) 23:52:00
test


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