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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

84煌月の鎮魂歌5 18/22:2015/07/19(日) 09:58:55
「ここじゃなければいいんだな?」
 素早く囁き、アルカードの手首をつかんで扉へ向かった。自分の中にうずくまる
正体のわからない逡巡から逃れたかった。いつの間にか背後にも回り込んでいた
人々が、悪臭を放つ獣にでも近づかれたようにいっせいに割れた。
「じゃあな」うなだれたまま後に従うアルカードをがっちりつかんで、ユリウスは
陽気に手を振ってみせた。
「まあ、せいぜい楽しませてもらうぜ、クズども。お前らが見下してる雑種の野良犬
にどんなことができるか、じっくりそこで見てな」
 最後の一言は奥で動かないラファエルに向かって投げつけられた。高らかにユリウス
は笑った。
 手の中のアルカードの手首は頼りないほどに細い。げらげら笑いながらユリウスは
アルカードを部屋から引きずり出した。黒い影のように立っていた家政婦の老女
ボウルガードが、何も見ていないかのようになめらかに頭を下げる。部屋から
噴き出してくる棘のような悪意と軽蔑と憎悪を快く感じながら、ユリウスは大股に
廊下を進み出した。


 世話係の手で部屋へ運ばれ、一人になるまでラファエルは泣かなかった。人前で
泣くというのは、誇り高いベルモンド家の当主としてあってはならないことだ。
「ご苦労」部屋着に着替えさせられ、ベッドの上に寝かされて羽布団をかけられて
から、尊大にラファエルは言った。
「時間になったら、ボウルガード夫人に食事を運ばせてくれ。今日は……食堂へ降りて
いかないから。少し疲れた。しばらく本を読むから、一人にしてくれ。用事があれば、
ベルを鳴らす」


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