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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

241 煌月の鎮魂歌10 32/43 :2017/08/12(土) 23:02:28
 鞭の試練で英霊の化身と戦ったときとは違った。あの時は、ユリウスと鞭とはあくまで
別の存在であり、それをあやつるのはユリウスの手であり意識で、鞭はユリウスの意志の
延長だった。
 しかし、真の所持者となった今、ユリウスにとって鞭は完全な肉体の一部だった。それ
以上であったかもしれない。肉体は鞭を操るための道具にすぎず、奇妙に冴えた意識はあ
らゆる空気の動き、気配の揺らめきをとらえた。ぶつかり合って離れる互いの鞭の衝撃は
そのままユリウスの肌に与えられる痛みで、相手の暗黒に染められた鞭の瘴気は、古くな
った酢のようないやな後味となって舌を刺した。
 攻撃しているのはユリウスではなかった。むしろ、主体となっているのは鞭の意志その
ものにほかならない。感じる憤怒と闘争心は、ただ冒涜された吸血鬼殺しの鞭の霊が発す
るものであって、ユリウスが感じているのは、ぼんやりとした苦痛と、静かに胸を浸して
いく悲しみの念だった。
 はじめて彼は、自分を憎む異腹の弟の顔をしげしげと眺めた。本当に子供だ、と思っ
た。ほんのガキだ。俺がブロンクスでネズミを食っていたときよりもっと──何も知らな
いガキだ。母親には放置され、父親には裏切られ、ただアルカードしか愛する相手を知ら
なかった、寂しい子供の顔だ。
 ユリウスは母の顔をほとんど知らない。だが、ナイフを振りかざした麻薬中毒者の前か
ら、息子を突き飛ばした両手は覚えている。幼い息子を壁際に押し倒し、背中を血まみれ
にしながら母は息絶えた。狂ったように踊り続けるジャンキーの靴に踏みにじられていた
母が、どんな顔をしていたのかもうわからない。苦痛の表情か、それとも──
 だが、ユリウスには、あのとき、目の前いっぱいに広がった母の手と、勢いよく突き飛
ばされた肩の痛みが、鮮明に残っている。激しい戦闘の中で、ふと、その手の感触を思っ
た。子供を抱えた若い女の生活が楽だったはずはない。その手は苦労の果てに荒れ、ひび
割れていたはずだったが、思い浮かぶ母の手は不思議にきれいでなめらかだった。その手
が髪をなでる感触さえ、今ははっきりと思い出せる気がした。


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