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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

232 煌月の鎮魂歌10 23/43 :2017/08/12(土) 22:56:30
「皆、離れなさい!」
 崇光が叫ぶと同時に、アルカードが彼をかかえて数メートル近く後ろに飛びすさった。
ユリウスも、ほとんど考えることなくイリーナを抱いて同様にしていた。床におり、本能
の訴えるままに少女を腕にかばって身をかがめる。ほとんど時をおかず、壁面にひびが入
った。一瞬、黒い爪のようなものが見えたが、すぐに縦横無尽に飛び交うなにかが、傷一
つない壁をずたずたに引き裂いた。
 破片が崩れ落ちる。イリーナをかばいながら、ユリウスは頭を上げた。破壊された壁の
むこうに、小柄な影が立っている。背後は暗い。濃い血臭と、なまぐさい腐臭が流れ込ん
できた。蒼白い鬼火が明かりの代わりに、点々と闇を照らしている。
「アルカード、見てよ、僕、立てるようになったんだよ」
 無邪気な声がした。彼はゆっくりとがれきを踏み越え、破壊された室内に入ってきた。
 金髪の巻き毛を輝かせ、満面に誇らしげな笑みをたたえた、すらりとした少年。萎えて
骨と皮ばかりだった彼の下肢はまっすぐで強く、こともなげに段差を踏み越えてそのてっ
ぺんに立っている。
 靴先が血しぶきで赤く染まっていた。少年は呆然と見上げるひとびとを見回し、主人然
とほほえんだ。手には宝石で飾られた豪奢な鞭がある。鞭は油を塗られて黒く、無機物に
擬態した爬虫類めいていて、少年の手のうちで悪意のこもったとぐろを巻いていた。
 一目見た瞬間、強烈な嫌悪と反発がユリウスを襲った。それはいま彼が手にしている鞭
の、完全な陰画として作られたものだった。光に対する闇、肯定に対する否定、真実に対
する欺瞞。存在すること自体が聖鞭ヴァンパイア・キラーに対する侮辱であり、使い手に
対する嘲笑だった。
 アルカードの唇がうすく引き締まった。蒼氷色の瞳が色を淡くし、揺らめいて、黄金色
の炎に変わって燃え上がった。
「……ラファエル」
「ラファエル」くいしばった歯から、ユリウスは声を絞りだした。
「なんで、おまえが──」


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