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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

213 煌月の鎮魂歌10 3/43 :2017/08/12(土) 22:45:09
 むろん、馴染みの怒りが戻ってきて、とがった指ではらわたをつつくこともあった。だ
がその時には、いつでも指に残った銀髪と、そのひやりとした感触がよみがえり、燃えか
けた火はすみやかに凪いだ水面の静謐さに変わった。ユリウスは黙々と身体を動かし、こ
れまでにはなかった静穏さのなかで鞭をふるい、修練用の魔道機を次々と落とした。
 やってみると、これまでいかに怒りと憎悪が感覚を曇らせていたかがわかった。気づい
ていなかった目覆いがふとすべり落ちたかのようだった。派手な身振りは影をひそめ、必
要最低限の動きで鞭を操ることに、ユリウスは慣れた。立ちつくしたまま、わずかな手首
と指のひねりだけで、数十に及ぶ目標を落とすこともわけなくできた。
 ユリウスの目は澄み、赤くぎらついていた毒蛇の目はしだいに、深く青いベルモンド家
の瞳に似通ってきた。血を浴びたような赤毛はそのままだったが、挙動には急速に落ちつ
きと一種の優雅さがそなわり、粗野のかわりに沈黙と思慮がとってかわった。
 崇光でさえ、彼が変わったことを認めずにはいられなかった。神官の視線はあいかわら
ず厳しかったが、それでも日ごとにユリウスを見る視線には考え深い色が宿り、思案げに
指を唇にあてることが増えた。
 ユリウスは気にしなかった。以前──あの月の夜以前──なら、そんな風にうかがわ
れ、力量を取りざたされることにははげしく反発しただろうが、彼にはもう、眠る月と彼
のこぼした記憶のかけらがあった。涼しい薄荷の一片のように、それはいつでも匂やか
に、香り高く彼の胸をなだめた。あるいは薔薇。露を含んだ、清らかな純白の薔薇の花び
ら。
「決戦が近づいています」
 そしてついに、崇光は決断を下した。
「ユリウス・ベルモンドに、聖鞭の所持者の試練を。彼に準備ができていようと、いまい
と、あとのことは鞭自身が決定するでしょう」


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