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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

212 煌月の鎮魂歌10 3/43 :2017/08/12(土) 22:44:28
 記憶と夢のあの一夜が、自分にどのような影響を与えたのかはよくわからない。ただ、
あの日の翌朝めざめて、胸を食い荒らしていた怒りと焦燥、心臓を引きちぎる痛みが、嘘
のように消えていたのは事実だった。
 いつ眠り込んだのかもはっきりしない。腕の中で寝息をたてるアルカードのぬくもりと
重みを感じ、あふれ流れる銀色の髪に踊る月光をぼんやり眺めているうちに時間がたって
しまった気もする。気がつくとすでにアルカードはおらず、ユリウスは広いベッドに一人
で横たわっていた。
 身を起こすと、かすかな薔薇の香り、そして清水に似た夜の冷気がにおった。奇妙なほ
ど平静な気持ちでユリウスは腕を持ち上げ、そこにひと筋の銀髪が残っているのを見た。
ほとんどなにも考えず、自然にそこに唇を押し当てていた。唇の上で髪は泡雪めいて冷た
く、薫り高かった。
 脳裏であの男の顔、深く濃い青の瞳と左目をかすめる傷跡をもつ男の面影がまたたいた
が、それは苦痛ではなく、淡い哀しみと郷愁に似た念を呼び起こすにとどまった。それは
おそらくユリウス自身のものではなく、昨晩腕の中で眠った者の、心のこだまが痕を残し
たものだと思われた。
 ユリウス自身はといえば、自分でもおどろくほどに平静だった。あるいはあまりに揺さ
ぶられすぎた心が、ついに無感覚に陥っただけなのか。どちらともわからない。いずれに
せよ、生まれてこのかたユリウスを灼いてきた強酸のような憤怒は、月を抱いて眠った一
夜のあいだに、あっけなく解けて流れてうせていた。
 奇妙な寂寥感があった。自分がからっぽになった気がしないでもなかったが、それはい
まだかつてユリウスが慣れたことのない、平安というものによって身体を満たされていた
せいかもしれなかった。


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