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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

193 煌月の鎮魂歌9後半 8/24 :2016/07/31(日) 20:20:04
「あんな大物を送り込んできたっていうことは、相手もかなりせっぱつまっていると見て
いいのよね」
 イリーナはソーサーを支えたまま器用に姿勢を変え、寝転がった長椅子をさらに優雅に
かつ装飾的に占領した。肘掛けのところに腹這いになっていた虎猫が位置を変えて
背もたれの上に移動し、バーディが赤い羽毛を散らして女主人の肩にとまる。サファイア
色の小蛇はいつものように少女の細い手首でうつらうつらしており、口の開いたポシェ
ットから、小さな亀のとがった口が、お茶菓子のかけらを待って辛抱強く覗いている。
「いまは五月。あとほとんど一ヶ月しかないわ、ユリウスがヴァンパイア・キラーの使い
手として仕上がるまで。大丈夫なの、スーコゥ? 彼、ちゃんとできる?」
 まるで幼稚園の子供のことでも言っているような言いぐさだ。
 いつもの場所を奪われ、かといって女王のお気に入りであるところの肘掛け椅子に座る
ことも許されず、じゅうぶん快適ではあるがいささか見劣りのする一人がけのソファに
追いやられていたユリウスは、仏頂面でただ黙っていた。
 以前の彼ならば憎まれ口のひとつも叩いただろう。だが、あの地下の至聖所で眠るアル
カードを見、自らの真の心をつきつけられて以来、胸の奥にどうやっても解けない冷たい
塊が居座り、動かすことができなかった。
 アルカードの姿はない。もともと、この昼の光あふれるサンルームには姿を現すことが
あまりないのだが、あの地の底で眠る姿を見て以来、ユリウスはまだ彼を一度も見ていな
かった。
 主治医である崇光がリラックスした様子で茶碗を傾けているということは、もう側に
ついていなければならないほどの状態は脱したと考えていいのだろうが、それでも苛立
たしいような、それでいて恐ろしいような、不快な感じが腹の底に横たわる。
 今すぐ会いたい。会って無事を確かめたい。しかしいざ会ったとしても、何を言い、
どんな態度をとっていいのか、それがわからない。


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