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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

169 煌月の鎮魂歌9 6/22 :2016/06/18(土) 06:03:46
「ごちゃごちゃ言わずにとっとと開けろ」
 それだけ、ユリウスは答えた。
 崇光はしばらく扉に手をかけたまま、量るように赤毛の青年の横顔を眺めていたが、
やがて扉に向き直り、巨大な取っ手に手をかけて、引いた。
 非力そうなひょろりとした青年の手にもかかわらず、扉は動いた。地面の底からわき
あがってくるような軋みが、何者か地中深くに封じ込められたものの苦悶の声のように
とどろいた。緑青をふいた青銅の縁取りのむこうに、かすかな橙色の光に明るんだ、
うす闇が覗いた。
 声を殺してラファエルがすすり泣いていた。人ひとり通れるだけ開かれた扉の隙間を
崇光がくぐり抜け、続いてユリウスも歩を進めた。
 しめって冷たい地下の空気が頬をなでた。背後で扉がかすかな地響きと共に閉ざされ
た。ユリウスが立っているのは、どこまでも続くかに思われる、地下への螺旋階段の
頂点の小さな踊り場、その縁だった。

            2

 階段がついに尽きた。
 降りてゆく間、崇光は一言も口をきかず、振り返ろうともしなかった。ユリウスも
あえて話しかける必要は感じなかった。二人分の足音が気の遠くなるほどの長い縦穴に
反響しては消えていった。しんしんと二人はそれぞれ頭の中に唯一のものを思い描きつつ
進んだ。
 最底部はまた小さな踊り場になり、構えが上ほど仰々しくはない、両開きの質素な扉が
あった。見たところ、扉は扉だけでその場に自立しており、背後には壁もなければ部屋が
あるようにも見受けられない。ユリウスは答えを急かすように崇光を睨んだ。崇光は
あわてずさわがず、手をあげて扉の表面に手をあて、なんらかの言葉を二つ三つ呟いた。
 扉は開いた。というよりも、その場で霧のように薄れ、かわりに、扉に刻み込まれて
いた蔓模様がふいに生気を取り戻し、ほどけて、一気に空間全体に広がったように思えた。


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