したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

131煌月の鎮魂歌7 14/17:2015/11/12(木) 20:51:05
 老婆の目がぐっと細まった。ティーワゴンの取っ手に置かれたしわだらけの手に
わずかに力がこもったことをユリウスの慣れた目は見て取った。それがちぢかんだ
老婆とは思えない殺気のこもったものであることに内心ひそかな驚愕と興味を感じた。
「どうした。気に障ったなら勘弁しろよな。俺は知っての通り育ちが悪くてね、思った
ことがすぐ口に出ちまうんだよ。ひょっとしたら失礼な口をきいちまったかも
しれないが、あの車椅子坊やを悪く言う気はないんだ、ほんとだぜ。なんたって
わが尊敬すべき浮気な親父殿の息子同士なんだ。おふくろは違ってたって俺たちゃ
兄弟だ、かわいいちびの弟くんの悪口を言うほど俺も堕ちちゃいないさ」
「……貴方がミカエル様の血を継いでいるなどと」
 ほとんど喉の奥でささやいたようなものだったが、ユリウスには聞こえた。老婆の
灰色の目に瞋恚の炎が燃えているのを心地よくユリウスは見た。これでなくっちゃな、
とぞくぞくと背筋を駆け上がる興奮を感じながらひとり呟く。お上品なお茶会なんざ
飽き飽きだ。真綿にくるまれた中の棘をぼんやり感じて暮らすより、むき出しの嫌悪
と怒りをつきつけられたほうがよっぽどいい。そのほうがずっとすっきりする。まさか
相手がしわだらけの老婆とは思ってもいなかったが。
「アルカード様のお言葉でなければ、誰が貴方のことなど……」
「はいはいはい、落ち着いた落ち着いた」
 ふいに崇光が音高く手を打ち合わせた。鐘を打ち合わせたように高くよく響く神官の
拍手の音に、この場に覆いかぶさっていた重苦しい雰囲気は一気に吹き散らされるよう
に霧散した。
「せっかくのお茶が冷めてしまいますよ、ボウルガード夫人。君もいちいち無粋なこと
を言うのはおやめなさい、ユリウス、悪い癖ですよ。ここにいるわれわれは、夫人も
含めてみんな魔王封印のために一丸となるべき仲間なんです。血筋がどうこうなんて、
今さらここで話すことでもないでしょう。ごらんなさい、イリーナがびっくりしている
じゃありませんか」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板