したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

Awake

206Awake 18話(1/10):2013/12/23(月) 02:35:24
 再び地鳴りが辺り一面に轟くと、三人は音のした方に目を向けた。
ネイサンは二人から離れてから体を視線の先に向けた。討伐前の状況と重ね合わせて感慨深く
その様を崩壊する悪魔城を見つめながら、しばらく無言で冷たくも心地よい風に頬を、体
中を撫でられる清々しさを感じていた。
 やがて、峡谷の孤島から悪魔城は完全に瓦解し瓦礫の山と化すと、すぐに大量の灰とな
り一瞬にして風に攫われ消滅した。
 再びネイサンが後ろを見るとモーリスは疲労困憊の表情をさらに険しくし、脂汗をかいて唇を引
き締めていた。
「師匠、大丈夫ですか?」
「ネイサンか。ありがとう。よくやった。」
 立っているのもやっとの様だったが、耐えるように自分を見据えているモーリスの様子にネイ
サンはそれ以上声をかけられず、ただ粛々と師の言葉を受けるしかなかった。
「…一人前のハンターとして成長したな。」
 モーリスは改めてネイサンの精悍な姿を見て、亡きグレーブス夫妻の遺児をひとかどのハンターと
して育て上げた事に充足を感じた。
 そして――魔手に一度は絡め捕られたものの、晴眼を以って生還した我が子に希望と期
待を見出し、言葉を紡いだ。
「ヒュー。お前にも礼を言おう。だがお前は、もう一度修行をやり直しだぞ。」
「わかっているよ、親父。生まれ変わった気分で鍛え直してやるさ。」
――本当に、いいのか? 本当に……
 一瞬モーリスから睨めつけるような視線を感じたが、ヒューは微かに笑った父親の表情を見逃
さなかった。
 柔和な表情を見せたモーリスの姿に安堵し、また三人で歩む事を許された事に気づくと神に
感謝するとともに、朝陽を浴び精悍さが漂う姿を持って生還したネイサンの存在に心が高鳴る
と、他者を愛すれども神の教えと人の世には背き、戦いの中で愛を囁いた者と共に悲しき
想いを抱え生きる事を決意した。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板