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Awake

18Awake 2話(4/16):2013/09/20(金) 05:08:11
 ネイサンが物思いに耽っている間、モーリスとヒューは会話を続けていた。
「ろう。……そうは言ってもな、これに似た前兆を儂は思い出して、少し逡巡していたの
だ」
「真祖、ドラキュラか」

――真祖ドラキュラ。
ネイサンは少々背筋に寒気を覚え、生唾を飲み込んだ。そして目はテーブルに凝視して丸くな
り、表情を強張らせた。それを見たヒューは彼の正面を向いて、
「ネイサン、まさかヴァンパイアハンターとあろう者が、真祖の名を聞いただけで怖気付いた
のではあるまい?」
と軽口を叩きつつ微かに笑いながら彼の頭を小突くと、ネイサンは少々ムッとした。
「うるさい。兄弟子だからって言って良い事と悪い事があるだろう。やはり俺が聖鞭を継
承した事が気に入らないのか?」
「お前がどう取ろうと知った事ではない。俺は、お前の様子を見て感じたままを述べただ
けだ。もう、そんな問い掛けをするな!」
 ヒューはムッとし悲痛な面持ちでテーブルを拳で叩き、それから怒りをあらわにして踵を
返すと、給仕にコーヒーを頼むためカウンターの方へ向かった。
 ネイサンはヒューの矜持から来る不満の残る表情を一瞬見た。
彼は口にこそ出さないが、道中も含め暗にその様な表情を出すのでその度に苛立ち、徐々
にもどかしくなってつい、愚問をぶつけてしまった。そしていっそう惨めな気分に陥った。
 ネイサンはこのやりとりを周りに聞かれていないか心配で、キョロキョロと様子を見たが、
巡礼者で満杯のテラスは騒がしく、カトリック信徒のみならずグランドツアー中のプロテ
スタントの子息令嬢も混じって、ギュウギュウ詰めの店内でコーヒーの匂いとタバコの煙
を立たせながら、コーヒーカップを片手に議論し合ったり、恋の駆け引きを見苦しいくら
い大声で掻き立てていたから、彼らの問答はその状況にただただ呑まれていたに過ぎない。


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