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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】
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古歌-イニシエウタ-【五ノ歌】18/17
:2011/03/28(月) 00:33:58
捕縛され、前に引き据えられたヘクターに冷たい一瞥を投げ、「愚かな」と呟いて、爪
でその身を引き裂いた。ぐったりとなって倒れ伏した彼を、手まねで運び出すように命
じ、あとは視線も向けなかった。引きずられていく同僚を、アイザックは眉根を寄せて見
送っていたが、その目に同情はなかった。彼にとって唯一の拠り所は魔王とその眷属であ
り、いかに公子の頼みであろうと、魔王を裏切ることは彼の理解を超えた行為だった。
城の拷問部屋で死んだ人々が投げ込まれる坑に入れられた彼がどのように城を逃れ、新
たな生を送ることになったかは、この物語の外にある。ヘクターが城を逃れたと同じ頃、
人間たちは通常の兵ではとうてい魔物の群れに立ち向かうことはできぬと衆議一決し、と
ある辺境に血を伝える一統の当主を選び、任務を与えることとした。
この家系は代々魔物狩りの力を持つとされ、〈吸血鬼殺し〉の異名を持つ聖鞭を受けつ
いでいた。だが、異能の力を持つ家系がどこでもそうであるように、この一族もまた魔物
同様に忌み嫌われた。もはや血筋すら絶える寸前であったその一族最後の若き当主に、魔
王、魔族の群の主とその本拠である闇の城の討伐の任が課せられたのであった。
魔物の跳梁を止めるため、また、失われた家名の栄光を取りもどすために、自殺行為に
もひとしい危険なこの任務を、若き当主は受けた。まだ二十歳、先年家督を継いだばかりの彼は、磨きぬいた鞭術と強靱な肉体をようやく役立てるときが来たと、装備を調え、伝
来の聖鞭を腰につるして、魔王の盤踞する闇の城へと一路旅だった。
そして公子、監禁からヘクターの助けによって逃れた公子は、どうにかして父のもとへ
行き、この蛮行を止めねばならぬと城の地下に身をひそめて考えていた。かつて自らの家
であった城はもはや敵地であり、混沌は彼を拒んで、城主のもとへ容易には彼を行きつか
せようとしない。
しかし、あきらめることはできなかった。悔恨が、そして母の遺した言葉が、彼を突き
動かしていた。『憎んではいけません、アドリアン、──』。父は母の遺志を知らないの
だ。自分があの時父を拒んだばかりに。
責めは自分が負わねばならない、と公子は思った。たとえ、父殺しの大罪を犯すことに
なろうとも、この手で、父を止めねば。
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