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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

90 古歌-イニシエウタ-【五ノ歌】18/10 :2011/03/28(月) 00:29:48
『お答えする意味があるとは思いません、司教様』
『おまえは井戸に毒を入れ、人々に呪いをかけ、災いをこの地にまき散らしたのだ』
『いいえ、毒を入れたのはわたしではありません』落ちつきはらって彼女は言った。
『けれども誰が入れたかは、今わかりました。けれども、口にはいたしますまい。なんと
答えようとあなたがたは、魔女としてわたしを殺すおつもりなのでしょうから』
『なんという穢れた女だ!』宝石を指にきらめかせた男が叫んだ。これは自らの手で、毒
を下町の井戸に投げ込んで回ったことのある男だった。動揺を隠すために、彼はたっぷり
したガウンの袖の中にむっちりした両手を隠した。
『まさか、闇の力に触れたこともないと抜かすのではあるまいな、貴様は?』
『闇を統べるお方が、わたしの夫です』静かに彼女は答えた。そこには侵しがたい威厳
と、高い誇りが込められていた。
『あの方は誰からも見捨てられたわたしを拾い、愛し、妻と呼んでくださいました。その
ことについてなにひとつ、否定するつもりはありません。あの方は確かに闇に住まう王、
けれども、あの方ほどにすばらしい方を、わたしはほかに知りません』
『サタンの妻! 魔王の妃!』
 あまりのことに、司教は金切り声で叫んだ。群衆は震えあがった。その時まで石を投げ
ることに躊躇していた少数の人々も、目の前で堂々と発された、闇の者への愛という究極
の冒涜に、口もきけなくなった。
『魔王とお呼びになるなら、たしかにそうでしょう』と彼女は言った。
『あの方は闇の王、夜と影と暗黒に住まうすべてのものを支配する方。けれども悪魔では
ありません、少なくとも、あなた方が考えているような意味では。愛を知り、与え、また
求めることのできるものの、いったいなにが悪魔でしょうか』
『えい、黙れ。黙れ』
 狂ったように司教は杖でもって彼女を打ちすえた。女の目はあまりにも美しく澄み、彼
の内心さえも貫きとおすようだった。領主や商人たち同様、貧しい人間のための水源に毒
を入れることを、神の仕事を果たす手段として承認したことを、司教ははじめて恐ろしく
感じ、恥じた。だがそれはすぐに目前の敵、魔女、彼の秘めた悪事を見透かす者への強烈
な殺意にとって変わった。なんとしてもこの女を消してしまわねばならなかった。女があ
らぬことをしゃべりださないうちに。毒と疫病が本当は誰のしわざなのか、あの青く澄ん
だ夏空の色の瞳が、人々に告げてしまわないうちに。


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