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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

87 古歌-イニシエウタ-【五ノ歌】18/7 :2011/03/28(月) 00:28:08
「リサは」自分が喋っているとはとうてい思えなかった。声が唇からこぼれ落ちるのを別
人のことのように感じていた。
「リサはどうした。彼女は。わが妻は」
 嵐のように魔王は扉に向かった。人の真似をするためだけに身につけていた化粧着は一
瞬で蒸発し、魔力がかたちをとった黒と真紅の闇の王の衣服が、昏い薔薇のように全身か
ら咲き出てきた。
 黒い暴風となって部屋を出てきた主人に鼻先をかすめられ、ヘクターは苦痛に顔をゆが
めて飛びのいた。ただの人間であれば今の一瞬で跡形もなくこの世から吹き飛ばされてい
ただろう。荒々しい魔力の竜巻として進む主人を、急いでヘクターは追った。
 この日、奥方はいつものように息子を連れて、少し離れた街へと薬を持って出かけてい
た。たいていの訪問は夜間に行われるのだったが、この街は最近、夜になると聖別された
松明や武器で武装した夜警団がひっきりなしに徘徊するようになっており、夜よりも昼
間、人混みにまぎれて入りこむ方が安全だろうと彼女は判断したのだった。
 街では最近、奇妙な疫病が流行っており、罹った者はひどい腹痛と下痢の末に、衰弱し
て死んでしまうのだった。人間のみならず、牛や馬などの動物にも被害は広まっており、
このまま放置すれば、街一つが全滅しかねない様相を呈していた。
「これは病気ではありません」と貴婦人は顔を厳しくして言ったのだった。
「だれかがあの街の井戸や川に毒を投げ込んだのです。でなければ、同じ井戸や水源から
水を飲んでいる者にばかり症状が出るはずはありません。しかも、動物にまで。なんて酷
いことを。水がなければ、生き物は生きてはいけないのに」
 そして作れるかぎりの毒消しと胃腸を整える薬、水から毒を抜くための方法をわかりや
すく示した書き物を篭に詰め込み、決然と出発したのだった。昼間に出かけることの危険
を訴えるジュリアやヘクターたちは必死に留めたのだったが、苦しむ人々を救おうとする
彼女の決意をくつがえすことはできなかった。
 一陣の黒い暴風となって王は妻の離宮に躍り込んだ。精霊の侍女たちは部屋の一隅に固
まって泣いており、全身から魔力と憤怒を発散させる主人が入ってくると、細い悲鳴をあ
げてますます身を縮めて抱き合った。


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