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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

86 古歌-イニシエウタ-【五ノ歌】18/6 :2011/03/28(月) 00:27:38
 施政者、つまり王侯と教会、そして富裕な市民たちにとって、これらはゆゆしい出来事
だった。自分たち以上の権威をもつ何者かが、人々の心をとらえている。しかも強制と恐
怖とではなく、愛と施しとで。増長した市民たちは支配の軛を脱し、反対に自分たちに襲
いかかってくるかもしれない。考えただけで身の毛のよだつ事態だった。
 なんとかせねばならない、と彼らは衆議一決した。そのような怪しい女など、いずれ悪
魔の手先に決まっている。甘い言葉や誘惑を重ねて、神のもとの従順な仔羊であるべき市
民に、いらざる知恵を吹きこもうとしているのだ。一刻も早くその女を始末し、市民を悪
魔の魔手から救い出すべきだった。なぜならその女は間違いなく魔女であり、今は甘い餌
で人々を引き寄せているが、いずれは本性を現して、人々を地獄のしもべにしてしまうに
違いないからだ……。
 ひそやかに策略を練る人間たちの影に、暗い眼窩と、むき出しの歯を持ったなにものか
が動いた。大鎌がにぶく光り、黒い外套の裾が鼠のようにさっと物陰に消えた。


 ふいに、強烈な不安にかられて彼は目を開いた。
 いつもと同じ目覚めのはずだった。棺をとすることからは長く離れており、頭の下には
人間と同じベッドのやわらかい枕と絹の敷き布があった。昨夜呑んだばかりの血の盃が、
まだ滴をこびりつかせたまま脇の小卓に置かれている。
 彼は起きあがり、鼓動していないはずの心臓を抑えて身を丸めた。自分は夢など見な
い。魔物は夢を見ない。生きながら死んでいる吸血鬼は。自分の眠りはいかに偽装しても
人のそれと同じではなく、日の出ている間、自分は死者なのだ。死者が夢を見るわけもな
い。だが、最悪の悪夢を見たと同じ、いや、それより悪いかもしれない、このいてもたっ
てもいられぬ焦燥はどうしたことだ。
 寝台から降り、脇から昨夜脱いだままの化粧着を取りあげて羽織ろうとしたとき、あわ
ただしく扉が叩かれた。
「我が主。陛下」ヘクターの息せき切った声だった。
「陛下。若君様がひどい傷を負って戻られました。ただ今離宮で手当てを受けておられま
す、急いでお越しください、奥方様が──」


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