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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

85 古歌-イニシエウタ-【五ノ歌】18/5 :2011/03/28(月) 00:27:06
 それに困窮して森に迷いこんだ者を救ってくれるという不思議な城の噂も、不満に拍車
をかけていた。実際にそれを目にし、また姿を消す人間があとをたたないのがその存在の
証明だった。動物以下の扱いを受けながら飢えて死ぬより、悪魔と契約しても人間らしく
暮らせるのならばと、多くの者が村を捨てて森に入った。その全員に城の門が開かれたわ
けではなかったが、確かに、森に消えて戻ってこない人間は増えていた。
 支配者たちは焦りはじめた。自分たちの支配をおびやかそうとする何者かがいる。それ
は超自然的な方法で民の心をとらえ、暗闇に引きこんで神の、ひいては、王侯や教会の支
配から人々を引き放そうとする。民草からしぼり取った税と収穫物で肥え太った彼らにと
って、金づるを闇に消え去らせてしまう者は、確かに、悪魔以外の何者でもなかった。
 そして富裕な市民の中にも、不満を抱くものはいた。医師は最近、自分たちのところに
かつぎ込まれる患者が減っていることを感じていた。
 町に流れる噂によると、それは、妖精のように美しい貴婦人が深夜、病に悩む貧しい者
のもとに現れて、薬を与え、治療法を教えていくためだという。その薬は医者の水薬や瀉
血などよりはるかによく効き、萎えた身体に力を与え、手のつけようのない熱病に劇的な
効果をもたらした。また食べ物を買う金もなく飢えている下町の貧民のもとにも貴婦人は
現れ、篭にあふれるほどのパンと、栄養豊かな果物や肉の燻製を与え、皆で分けるように
と言いおいて去っていった。
 治療費が払えず門前払いを食わせた患者が、別人のように健康そうになって町を歩いて
いるのを、彼らは何度も見かけることになった。また、パンくずひとつ買えずに青い顔で
物乞いをしていた子供が、ふっくらと赤い頬を取りもどして元気にはしゃいでいるのを見
て、商人たちは顔色を変えた。
 こうしたことはの彼らの矜持と、それより大事な世間体というものを深く傷つけた。町
の人々はしだいに医者や商人を軽く見るようになり、聖母のようにやさしく麗しいという
その不思議な貴婦人の来訪を待ちこがれるようになった。
 貴婦人の与える薬は香りを嗅ぐだけでも熱を追いはらい、苦痛を取り去ってくれた。ま
たそのパンは、まるでキリストが与えたパンと魚のようにいくら食べても減らないという
噂だった。独り占めすればあっという間になくなってしまうが、皆で仲良く分けさえすれ
ば、十人も子供のいる家族が二十いたとしても、けっして尽きることはないと。


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