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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

81 古歌-イニシエウタ-【五ノ歌】18/1 :2011/03/28(月) 00:24:56
【五ノ歌】

〈死〉はほとんど姿を見せなかった。精霊界の離宮へはもちろん、闇の城においても見か
けられることが少なくなった。ほんのときたま、城に棲みつく魔物たちや闇の貴族たち
が、なかば透きとおった影となって地下水路を徘徊する〈死〉を見たと噂したが、それも
噂にすぎなかった。魔物たちは人間への攻撃を禁じられ、退屈しきっていたが、王の命令
とあっては従うしかなかった。うさばらしに仲間同士で殺しあったり、森の動物を引き裂
いたりするものはあったが、人への禁令は固く守られた。
 主である王はといえば、しもべの存在すら頭の中から追いやっていた。今の彼にとっ
て、〈死〉と、それが思い出させるものほどおぞましいものはないのだった。なかば闇の
血を引いた息子はどうあれ、人間である妻は、いつか確実に死を迎える。その日が来るこ
とを、なによりも彼はおそれた。妻に気づかれぬよう何重にも守りの術をかけ、できるか
ぎり老いを遠ざけるとともに、いかなる病からも傷からも守られるようにしていても、か
つての妻、エリザベータが突然に〈死〉の手に奪われたことを考えると、不安でいてもた
ってもいられなくなった。いつか彼女がいなくなることを思うだけでも苦しみのあまり、
冷えた血が氷のように血管の中で凝固するように感じた。
 妻は夫のそのような思いを察していた。一日の課題を終えた公子が自室に引き取ってし
まってから、夫の頭を膝にのせて、妻はしずかに歌をうたった。古い穏やかな歌曲は夜の
しじまにやさしく溶けた。身じろぎもしない夫の黒かった髪は白く変わり、黒衣の上で息
子とよく似た白銀の色に光をはじいていた。
 人の血は彼の糧であり、その糧は保護された人々から献上されるもので十分に保証され
ていたが、本来、闇の魔力を本当に養う糧とは、血を吸うときにともに吸いとられる人間
の感情、恐怖や哀願、混乱、狂気、そして死なのだった。愛情のもとに絞られ、感謝と崇
敬の念をこめて捧げられる血は、肉体は保っても魔力の糧とはならなかった。闇によって
せき止められていた人としての老いが、徐々に彼の上に降りつもり始めていた。


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